2023年11月18日付で、池澤先生が阪南大学叢書(125)として出版した『小売業と不動産業の境界領域に関する研究ー百貨店とショッピングセンターのビジネスシステムー』(同友館、2023年)に対して、公益社団法人日本不動産学会より「2022年度日本不動産学会著作賞(学術部門)」が授与されました。同学会は全国規模の不動産研究に関わる学術団体であり、建築、都市政策、経済・金融、法学などの学際領域をまたぐ研究領域を所掌しています。同書は池澤先生の10数年に及ぶ研究の集大成です。学会から通知のあった授賞理由は以下のとおりです。
 

公益社団法人日本不動産学会 授賞理由

本書は、百貨店業態とショッピングセンター(SC)の商業機能を対比させたうえで、「百貨店のSC化」と「SCの百貨店化」という二つの経済現象に研究の切り口を見出している。原著論文等として発表されたものを一つの主題に集約し直したうえで、より多くの読者を想定した書籍としての再構成を図っており、論旨が明確な著作になっている。特に、小売業と不動産業の境界領域に焦点を当てた厳選された詳細な事例分析は独創的な内容である。
また、土地・不動産政策がビジネスシステムに対してどのような影響を持つのかを知るうえで重要な貢献をしている点も本書の優れた点である。2000年施行の定期借家制度がSCの百貨店化の一つの契機となっていることを論理的に解説し、店舗賃貸期間の短縮化が、時宜にあった商業施設のリニューアル化を促していることを明らかにしている。
さらに、百貨店の凋落とそのビジネスモデルの転換やSCの百貨店化といった現象が、高齢化率上昇や都市の縮退に伴って今後どのように変動するのかを考える上で本研究には発展性の余地があるといえる。
以上により、本著作は、日本不動産学会著作賞(学術部門)授与にふさわしいものと評価できる。