活動の目的及び取り組む課題

 清水ゼミでは将来の就職先として旅行会社を目指している学生が少ながらずいるが、行政の観光政策も含め、旅行業の現状や今後の可能性に関して、授業で多少の知識は身につけているものの、現場(旅行会社を利用した経験等)を知る学生は多くない。21世紀に入り、われわれを取り巻く社会にネットが浸透していく中、旅行会社のあり方は大きく変化している。80年代以降旅行会社は黄金期を享受していたが、今経営の壁にぶつかり、必死で生きる道を探り、その存在感をアピールすべく尽力している。
 ゼミ活動ではこの現状を把握し、旅行業の将来について考察を行なう。具体的には、旅行会社との共同研究を行う。支店長と何度か話し合いをし、店舗調査を行い、またスタッフから現状の問題について話を聞き、店舗が抱える問題の解決を目標とする。サービススキル、顧客の満足度、商品展開、企画イベント、社員教育、店舗環境など様々なテーマが考えられるが、学生は自らで研究課題を探し出し、その課題の解決に向かって学生の目線から提案を行なう。3チームに分けて研究を行うが、研究過程で各チームが数度の旅行会社とのミーティングを行い、最終的には旅行会社への提案を行い、評価をいただく。加えて研究成果を観光関連の学会の学生大会で発表することにより、この問題をより深く理解することができるようになり、将来の旅行会社への就職にもつながる。企業との共同研究により、社会人基礎力を養うことを最大の目的とする。

活動内容

 JTB、HIS、日本旅行の3チームにて以下の活動を行った。

テーマ
JTB 「JTB店舗での新規ビジネス〜来店者数増加に向けて〜」                          
HIS 「HISとの共同研究〜団体旅行の新たなビジネス拡大の提案〜」
日本旅行「学生の顧客化〜日本旅行Tis天王寺支店との共同研究〜」

① 旅行業関連の文献、トラベルジャーナル、トラベルニュースの記事など先行研究の整理
② 各旅行会社での支店長、役職者とのミーティング(約4〜6回)
③ 各旅行会社の店頭調査(現地調査、定点観測等)、ヒアリング調査、顧客へのアンケート調査
④ 各旅行会社(支店長)への中間報告発表
⑤ タイ・バンコクでの発表会(現地JTB,HISなどの企業)9月実施
⑥ 中間報告、タイでの発表会を受けて、完成へ向けての研究の継続
⑦ 千葉県江戸川大学にて日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションでの発表、12月実施。
⑧ NPO観光力推進ネットワークの学生研究発表会にて研究成果の発表。2チームが受賞

NPO法人観光力推進ネットワーク関西・理事長賞(最高賞)
「HISとの共同研究〜団体旅行の新たなビジネス拡大の提案〜」発表グループ(阪南大学:森木麻衣、安田瞳、奥翔一郎、飯田有)

学生連絡協議会賞
「学生の顧客化〜日本旅行Tis天王寺支店との共同研究〜」発表グループ(阪南大学:安村莉緒、川内志織、藤岡怜那、三木智弘、長野諒太)

⑨ 共同研究の集大成として、最後に各旅行会社への課題解決の提案

HISチーム

  • HISチーム活動写真1

  • HISチーム活動写真2

  • HISチーム活動写真3

  • HISチーム集合写真

JTBチーム

  • JTBチーム活動写真1

  • JTBチーム活動写真2

  • JTBチーム活動写真3

  • JTBチーム集合写真

代表学生の感想

 私たちのチームは株式会社JTB関西様と共同研究を行い「店舗で行う新規ビジネスの提案」というテーマに沿って、学生目線で新たな店舗の利用価値を提案しました。
この研究を行うにあたり、まず現状把握のため旅行代理店で申込数が最も多い20代女性(JTB総合研究所より)を中心とした100名にアンケート調査を行い、「旅行代理店」に対する率直な意見と要望のヒアリング調査を行いました。次にJTB関西様の全ての店舗を、都市部に位置しているのか、郊外部に位置しているのか、そしてモール内に位置するインショップ型店舗なのか、路面に位置するロードショップ型店舗なのか、4種の項目に分類し各エリアで定点観測を行いました。そして若者の女性が多いエリアを明らかにし、アンケート調査で得た20代女性のニーズであった「美容」を取り組んだ提案をしました。私たちの提案内容は国内だけでなく海外の学会でも発表し、さらに明確な根拠が必要だったのでJTB様の店舗でもアンケート調査を行わせていただきました。
 私たちは様々な調査を行うことにより、この研究を通して論理的な思考力を高めることができました。中でも一番成長したのは「人間性」だと思います。私たちは大きく変わることができました。今まで人前に立つのを避けていた学生が、今では自ら前に出るようになりました。今まで活動を疎かにしていた学生が、今ではチームの中心になりました。今まで自分の意見に固執していた学生が、今では異なる意見にこそ興味を持つようになりました。
 私たちが人間として大きく前進することができた、そんな一年間でした。このチームで一年間研究清水ゼミをやり切れた事を、私は心から誇らしく思います。

国際観光学部 3年生 米原 佑貴

参加学生一覧

阿部 壮馬、池谷 悠、井上 茜、岩間 愛、上江洲 清輝、新城 朱里、西澤 明広、林 莉緒、藤原 醇、峯松 健、稲垣 万夢、北 拓真、清水 敦弘、高橋 香菜子、松宮 勲旺、奥 翔一郎、加藤 千晶、飯田 有、川内 志織、佐竹 奈緒子、塩山 恵理菜、津嘉山 理沙、長野 諒大、藤岡 怜那、藤田 理沙、中島 麻衣、三木 智弘、森木 麻衣、安田 瞳、安村 莉緒、米原 佑、HUANG PAO-HAN

連携団体担当者からのコメント

株式会社JTB関西 有馬一仁氏

 今回、学生の方々に研究いただいた「JTB関西店舗を利用した新提案」は大変難しい課題だったと思います。
 ですが、学生の方々は、自らJTB関西店舗へ足を運んで、店舗スタッフへのヒヤリングや、お客様へのアンケート調査を実施したりと、積極的に取り組んでいただきました。
 また、チーム一丸となって約90ページにわたる企画書をいただいた時は、皆さんの真摯な努力が伝わり、本当に驚き、大変嬉しく思いました。
 学生の方々からいただいた貴重なアイデアを是非とも活用させていただきたいと思います。これからも学生ならではの新鮮かつ斬新なアイデアを楽しみにしています。
 どうぞよろしくお願いいたします。

教員のコメント

国際観光学部 清水 苗穂子 教授

 この一年間3チームが各テーマごとに旅行会社との共同研究を行った。大きな視点からの課題は企業と話し合って決めるが、その先の研究テーマは学生たちで決めることを促した。何度も話し合い、何を研究の目的とし、ゴールとするのか、そのためにはどのようなスケジュールを立て、どのような実証をどのような方法で行うのかを毎回のゼミで真剣に話し合った。企業の担当者に何度もゼミに参加していただき、学生たちが企業へ何度も調査、報告に行き、店舗で顧客の動向を調査したりと、目的に向けてのあらゆる調査活動を行った。その結果を企業に報告するだけでなく、タイでのゼミ研修で、旅行会社やコンサルの方に来ていただいての発表会、観光の学会でのポスターセッション発表、学会関連のNPOでの発表大会と立派に発表を行った。どのチームも100枚にも及ぶパワーポイントを作成し、どんな質問にも答えれるように準備を行った。結果、NPO発表会では、HISチームが最優秀賞の理事長賞を受賞するに至った。自分たちで問題を発見し、ゴールを予想しながら、現場での研究を経て問題を掘り下げていき、課題解決に導く。かなりタフなゼミ活動を全員があきらめることなくやり遂げたことは、本当にすばらしいと感じる。社会で最も必要とされる問題解決能力をこの1年間でゼミ生全員が培ったことを実感する。

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