2016.1.20

全日本大学サッカー選手権2015(インカレ)レポート

全日本大学サッカー選手権2015(インカレ)レポート

優勝には一歩届かずも、阪南大学史上初のインカレ決勝進出を果たし、準優勝!

 念願の全日本大学サッカー選手権(インカレ)初優勝を目指し、2015年度のインカレに臨んだ阪南大学サッカー部。関西学生サッカーリーグ準優勝で、関西第2代表として2回戦からの出場となったインカレでは、初戦の鹿屋体育大学戦を2−1で下すと、準々決勝では難敵の大阪体育大学を延長戦の末、撃破。
 これまでに2度、決勝の舞台を目前にしながら、涙を呑んできた準決勝では強豪、国士舘大学を下し、初の決勝進出を果たした。
 決勝戦の相手は、総理大臣杯優勝校であり、関西学生サッカーリーグも制した関西学院大学。実に1985年の大阪商業大学対大阪体育大学(引き分け)以来、30年ぶりとなる「関西勢頂上決戦」となった。

 今季、関西学生サッカー選手権決勝戦で敗れ、リーグ戦でも1分け1敗と勝ち星のない関西学院大学に対し、「関学さんには、2008年に関西が通年制のリーグになって以来、5年間くらい負けなかったのが、ここ3年間はそれを10倍返しくらいに返されて勝てていない。この3年間勝てていない関学になんとか最後に勝って、‟終わりよければすべて良し“というように持って行こう」(須佐徹太郎監督)と、「関学を倒して日本一」を目指して臨んだ決勝戦だが、シュート数は阪南大学12本対関西学院大学9本と上回りながらも結果は0−4で敗戦。
 初の栄冠には届かなかったものの、2001年、2012年度と2度の総理大臣杯優勝を誇る阪南大学にとっても、これまでなかなか破れなかったインカレベスト4の壁を突破し、初めて決勝の舞台に到達。
 残念ながら準優勝となったが、阪南大学サッカー部の歴史に新たな1ページを加えたことに間違いはない。
 また、今大会でも昨年に引き続き、2年連続のフェアプレー賞を受賞したことも称賛に値する。
 悲願のインカレ日本一にあと一歩と迫った阪南大学サッカー部の2015年度第64回インカレの戦いを初戦から振り返ろう。

<2回戦>阪南大学2—1鹿屋体育大学
初戦の鹿屋体育大学戦は先制されるも前田選手の2得点で初戦突破!

 インカレ初戦の相手は、鹿屋体育大学(九州第2代表)。「相手によったり、試合の流れによって、戦術を変えて、どんどんトップに(ボールを)当てたり、あるいはつないだりと多彩な戦い方のできるチーム」(須佐監督)と警戒する相手に、開始10分で失点するも、41分に、MF重廣卓也選手(2年)のパスを受けたFW前田央樹(3年)選手が同点弾を上げ、試合は振り出しに。
 81分にはDF康翔貴選手(3年)のスローインをDF甲斐健太郎選手(3年)がヘッドでつないだボールを、前田選手が頭で合わせて逆転に成功。2−1で鹿屋体育大学を下し、準々決勝進出を果たす。

<準々決勝>阪南大学3−2大阪体育大学
延長戦にもつれ込む大阪体育大学との激闘を制し、準決勝進出!

 味の素フィールド西が丘で行われた準々決勝は大阪体育大学(関西第5代表)との関西勢対決となった。関西学生リーグでは今季1勝1敗、後期においては6−0で快勝した相手だったが、今大会では延長戦にもつれ込む大激戦となった。
 先制したのは阪南大学。8分、FW前田選手が2試合連続ゴールとなる先制弾を決める。
 早い時間の得点で勢いづくかと思われたが、21分大阪体育大学に同点ゴールを奪われ1−1に。前半は同点のまま後半に向かう。
 互いに追加点を狙うなか、59分に大阪体育大学のDFが2枚目のイエローカードを受け退場。数的優位に立った阪南大学だが、追加点を奪えないまま、試合は延長戦へ。
 延長前半、待望の追加点は阪南大学に。延長前半11分、MF重廣選手のループパスを受けた前田選手が追加点を奪う。ここで試合の流れを一気に掴むかと思われたが、1点リードを守り切れず、延長前半15分に大阪体育大学に執念の同点ゴールを奪われ、またも試合は振り出しに戻る。
 延長後半も一進一退の攻防の続く厳しい試合に決着を着けたのは、途中出場のFW外山凌選手(3年)。「途中交代だったので、自分が決めて勝ちたいというのがあったし、絶対にシュートを打とうと決めていた」と言う外山選手が延長後半2分、価千金の決勝ゴールを挙げた。
 得点直後の延長後半3分には大阪体育大学が2人目の退場者を出し、11人対9人の戦いとなるが、「体大が9人になってからのほうが、11人のときよりもボールが回しづらかったし、圧力が凄くありました」(DF甲斐選手)と2人少なくなったなか、大阪体育大学は一歩も引かず、前線からプレスをかけ続けてくる。対する阪南大学は数的優位を生かしきれず最後まで拮抗した試合展開が続いたが、阪南大学が3−2で激闘を制し、昨年に続く準決勝進出を果たした。

 9人になっても、最後まで試合をあきらめなかった大阪体育大学の不屈の闘志に、「体大は9人になろうが関係なかった。メンタルが凄い。あのあきらめない姿勢は見習わないといけない」と甲斐選手。大阪体育大学の気迫のこもったプレーや決してあきらめない姿勢を体感した上で、その相手の猛追を振り切り、勝ち切ったことは、大きな経験値となったことだろう。
 殊勲の決勝ゴールを挙げた外山選手は、試合後、「今年は結構4回生が少なくて、試合のメンバーに入ってない4回生の部員たちが、試合の他会場に行って、(自分たちの対戦相手の)分析などを行ってくれていたり、見えないところで助けてくれてるので、そういうひとたちの分まで、次も勝って、決勝まで行って優勝したいです」と、決勝進出、そして日本一を見据えた。

 実はこれまで阪南大学は、この味の素フィールド西が丘では勝ったことがなかったが、その「西が丘で勝てない」というジンクスを打ち破った。次に破るべきジンクスは過去ベスト4を突破したことがなく、「インカレ準決勝で勝てない」というジンクスだ。

 試合に出られない選手や、支えてくれるひとたちの想いも背負って、チームは初の決勝進出を目指し、準決勝の国士舘大学戦に向かった。

<準決勝>阪南大学3−1国士舘大学 国士舘大学を3−1で下し、初の決勝進出へ!

 今大会で17回目のインカレ出場となる強豪、阪南大学だが、これまでベスト4の壁を破ったことはなかった。
 昨年は準決勝で関西学院大学と戦い、MF松下佳貴選手の得点で先制したものの1−2で逆転負けを喫している。
 昨年も今季同様、主力として戦い、今季はさらに主将としてもチームを率いる松下選手は準決勝を前に、「去年、主力としてやらせてもらっていたなかで、準決勝で逆転負けして悔しい思いをしたので、今年は自分が決勝に導くという強い気持ちを持ちながら、みんなを信頼してやりたい。チームとしてやるべきことをやったときに点につながると思うし、自分たちが今やっている、目指しているサッカーは大学サッカーのなかでもトップレベルにあるんじゃないかというのは思う。ただそれに満足せずに、さらに上を目指しながら、まず決勝に行くことを目指して、目の前の試合を戦いたいと思います」と意気込みを語った。

 初の決勝進出を懸けて戦う相手は国士舘大学(関東第5代表)。
 「関東と関西とどっちがレベルが高いかと言われたら、関東と言われるかと思うんですけど、ここ最近は関西の方が結構上位を占めているという現実はあるので、ここはしっかり自分たちも、関西でも問題ないし、むしろ関東より上だというのはプレーで示したい。関東のチームとやれるのは楽しみにしています」(松下選手)と、今大会、初の関東勢との対戦となった準決勝に挑んだ。
 試合は序盤から阪南大学がペースを掴む。
 「“国士舘大学に速攻をかけられないように、こっちもバランスをちゃんととってやって行こう”というときに、いいタイミングでパンパンと点が入りました」(須佐監督)と、開始早々の4分、20分に、FW前田選手が3試合連続となる2得点を挙げ、試合の流れを引き寄せる。
 73分にはMF八久保颯選手(4年)が追加点を挙げ、3−0とリードを広げると、国士舘大学に76分に1点を返され、怒涛の反撃を仕掛けられるも、GK大西将選手(4年)の好セーブもあり、追加点を許さず3−1で勝利。
 「準決勝の壁」を破り、初の決勝に駒を進めた。

 今大会前に中盤の脇坂泰斗選手(3年)、山口一真選手(2年)という攻撃的な2選手を故障で欠くという、苦しいチーム事情もありながら、ここまで3試合連続2得点を挙げ、「11月から急に伸びた。ボールが収まるようになったし、そうなってくるとうちの攻撃が多彩になってくる」と須佐監督もその成長を高く評価するFW前田選手の大ブレークなどもあり、脇坂選手、山口選手を欠きながらも、「逆にその分、粘り強く戦った」(須佐監督)と、1試合1試合、全員で力を合わせ掴みとった決勝の舞台。
 だがもちろん決勝進出で満足するわけにはいかない。決勝の相手は今季一度も勝っていない関西学院大学。
 「とにかく次だぞ!関学もそう思ってるよ!」と須佐監督は選手たちを引き締めた。

<決勝戦>阪南大学0−4関西学院大学
「関西決戦」となった決勝戦。惜しくも初タイトルはならず

 2015年12月19日、浦和駒場スタジアムにて行われたインカレ決勝戦。
 初のインカレ決勝進出を果たした阪南大学は、日本一を懸けて、関西学院大学との決勝戦に臨んだ。
 関西学院大学には、今季リーグ戦では1分け1敗。関西学生サッカー選手権大会決勝では関西学院大学のエース呉屋大翔選手(4年)に5得点を奪われ2−5で大敗するなど、今季、一度も勝っていない。
 「関学とやるまでは負けられない。関学にも勝ち進んでもらって、決勝の関学戦でリベンジしたい」(DF甲斐選手)と、選手たちも関西学院大学との戦いに並々ならぬ闘志を抱きながらインカレを戦ってきた。そうして両チームともに厳しい試合を勝ち進み、念願の決勝で戦うチャンスを掴み、「”終わりよければすべて良し”というように持って行こう」(須佐監督)と、「関学に勝って日本一で終わる」ことだけを期して決勝戦に挑んだ。

 「試合の入りは素晴らしかったと思うんですよ。全然なんの問題もなかった。あれは嵐の前の静けさだったのかなと思いますけど(苦笑)」と須佐監督が振り返った序盤は阪南大学が果敢に相手ゴールに迫り、主導権を握りかけていたが、「最初のピンチが失点につながった」(須佐監督)と、14分に関西学院大学に先制点を奪われる。
 関西学院大学はこの試合、累積警告による出場停止でエース呉屋選手が欠場。警戒していた大学屈指のストライカーが不在のなか、「みんなで誰が出てきてもしっかり勝ち切ろうという形で」(GK大西選手)試合に臨んでいたが、呉屋選手に代わり1トップに上がった普段はトップ下の出岡選手に早い時間帯で失点を喫してしまう。

 「出岡選手の動きそのものは素晴らしかったし、タイミングもよかった。シュートも角度がついてましたし。問題は失点したそのあと。そこで踏ん張り返さないといけないところで、球際で負けたり、脆さと弱さを出してました。そこが問題です」(須佐監督)

 失点の時間が早かっただけに、そこで気持ちを切り替えて再び阪南大学ペースに持ち込みたいところだったが、先制点を奪った関西学院大学の勢いを止められない。28分には相手CKからゴール前の混戦を再び出岡選手に押し込まれる。
 「しっかり前から守備に行くのか、しっかり引いて守るのかというところでバラバラになってしまった。最低でも2失点目のところで失点を止めないといけなかったなかで、そこからも守備がバラバラになっていて、中盤だったり真ん中だったりがスカスカだったので、そこを立て直せなかったのが敗因かなと思います。僕が真ん中にいるので、もっと明確な守備のスタイルを僕が伝えたりしないといけなかった」と攻守の要のボランチを司る松下佳貴選手は悔やんだが、前半は崩れ出した守備のバランスを修正できないまま37分にもCKから失点。41分には出岡選手に4点目を決められ、0−4。出岡選手にはハットトリックを達成された。

4点をリードされて迎えたハーフタイムに、「チームになったんじゃないかと感じた」(須佐監督)

 前半で4点差をつけられ突き放されたものの、このままでは終われない。
 「4−0というのは凄く難しいスコアでひっくり返すのは簡単じゃないけど、その中でも割り切って行こうというのはハーフタイムに監督を始め全員で言っていて、4失点してるということは攻撃的にいかないといけないということになった。”気持ちの切り替え”というのは凄く言ってました」と松下選手。
 個々に前半の4失点を引きずり、混とんとしていたハーフタイムのロッカールームに、その松下選手の大声が響いた。
 「多分、初めてと言っていいくらい、(松下)佳貴が本気で吼えた。『なんでみんなで、よっしゃ行こうというようにならないんだ!』というようなことを言ってましたね。そうして佳貴が仲間を鼓舞したなか、選手の中から、『4点差をひっくり返して歴史を作ろう!』という声が出た」と須佐監督は語る。
 「4点差をひっくり返して歴史を作ろう!」と声を掛け合い、後半戦に向かう選手たちを見て、須佐監督は、「そこで初めてチームになったんじゃないかと思った」と言う。

 気持を切り替えて、「攻撃的にいくしかない」と腹をくくった選手たちは、後半、果敢に攻撃を仕掛けていく。
 「後半は相当積極的になったと思う。あの気持ちを1点獲られる直前、あるいは獲られた後に感じなければいけない。得点には至りませんでしたが、後半はあれだけ果敢に仕掛けられた」(須佐監督)と攻撃を立て直した後半は守備も修正。前半、阪南大学7本、関西学院大学8本とほぼ互角だったシュート数も後半は阪南大学5本に対し、関西学院大学には1本しか打たせなかったが、前田選手らが放った阪南大学のシュートもゴールネットを揺らすには至らず、4−0のまま試合終了。
 残念ながら、インカレ初優勝にはあと一歩届かなかった。

届かなかったインカレ日本一を後輩に託して

 決勝戦後の表彰式を終えて、スタンドで声を枯らして応援してくれていた部員たちに挨拶に向かった松下選手の目からはそれまでこらえていた涙がこぼれた。

 「試合云々というよりかは4年間の大学生活を振り返ってみて、やりきったなというか、振り返って込み上がるものがあったし、いろいろお世話になった方とか支えてくださった方々に優勝という形で恩返ししたかったので、優勝を達成できなかったのは凄く悔しかったですし、そういう意味での涙が出ました。(初の決勝進出を果たしたが)日本一を目標にしていたので、ここで満足ではないですし、ここで勝ち切らないといけなかったのに、その力がなかったというのがわかったので、しっかりそこは後輩たちに来年につなげてもらえたらなと思います」と松下選手。

 今大会、再三の好セーブでチームの躍進を支えてきたチームの守護神であり、主務としてもチームを支えたGKの大西将選手(4年)も、「決勝の結果は惨敗である意味歴史に残るんですけど、初めてインカレ決勝まで行ったのは誇らしく思ってます。僕自身、決勝ではシュートを止められなかったので、後輩に優勝させてあげられなかったのは残念でしたけど、これで来年、後輩たちがこの悔しさを払しょくできるような、そんな後につながるような大会になったら、僕自身は一番いいなと思います」と後輩たちに自分たちの果たせなかったインカレ日本一の目標を託した。

 4点差を跳ね返し、歴史を作ることはできなかったが、0−4と追い込まれたハーフタイムのロッカールームで「4点差を跳ね返して歴史を作ろう!」と奮い立った選手たちの熱い想いはきっと今後のチームの指針になる。

 「負けて悔しいですけど、最後にああいう気持ちを出せたのは次につながる意味でも大きかった」と須佐監督。
 「ああいう”熱”を持って常にやっていかなければ。決勝戦だけそういう熱い気持ちになってもダメ。常日頃からの積み重ねが必要だし、常日頃のトレーニングからそういう気持ちを出してやっていけるのか。来季はそういう”熱、情熱、熱情”というところを重要視した取り組みをしていきたい」(須佐監督)

 あと一歩、インカレ優勝に届かなかった4回生の悔しさは、きっと後輩たちが晴らしてくれることだろう。

 2015年12月19日にインカレ決勝を終えたわずか3日後の12月22日。新チームはすでに2016年度に向けて練習を開始。
 新たな歴史に向かう一年が始まった。

(取材・文/フリーライター・尾崎ルミ)