黒部ゼミ「スポーツイベントで地域を活性化せよ!」

<山道を走り抜けろ!トレイルラン>

遅い梅雨入りを果たした7月7日。

私は兵庫県美方郡香美町にある、兎和野高原野外教育センターへ来ていました。

時刻は午前5時30分…午前5時30分?!

いやいや、こんな早朝からいったい何を…

と思っていると、聞こえて来たのは太鼓の音と野太い歌声…。

よーく聞いてみると…

「受付ここ~♪記念品も~もらってね~♪」

もしや…

あ、先輩たち発見!!

実は、流通学部の先輩達が今日ここで行われる「姫ボタル・瀞川平トレイルラン」の運営のお手伝いにやって来ていたのです!

トレイルランとは、舗装道路以外の山道などを走る過酷なレース。「姫ボタル・瀞川平トレイルラン」は今年で7回目、今回の参加者はなんと600名以上!一番長い距離を走るコースではなんと33㎞も走るんだとか!

阪南大学は3年前から大会運営に参画しており、企画や運営、プロモーションを経験する中でスポーツイベントを通した地域活性化について学んでいます。今年は早乙女ゼミ・加藤ゼミを中心に31名の先輩達が参加。そんな先輩達が、受付の案内をしていた訳ですね♪

にしても…

「…みんな、元気すぎやしませんか、早乙女先生?(汗)」

早乙女先生
「…朝から…しんどい…。」

「あ、先生の指示ではないんですねコレ(笑)今からこんなテンションで、最後まで続くんでしょうか?」

早乙女先生
「これが続いたらもう卒業認定ですよ(笑)お手並み拝見ですね。」

  

大人達には信じられないこの若いエネルギーを携えて、先輩達はコース途中の補給所など、各担当場所へと散って行ったのでした…。

<いよいよスタート!撮影班も始動!>

午前6時40分、スタート直前。

スタンバイするランナーの、ドキドキ・ワクワクの鼓動が伝わってきます。

大会の応援ソング『トレイルラン』を歌うCRAZY WEST MOUNTAINも東京から駆け付け、生ライブを披露!会場の熱気はMAXに!!

そして、午前7時00分。

3、2、1…スタート!!

目の前を走り抜けるランナー達、すごい迫力です!

CRAZY WEST MOUNTAINも、笑顔のハイタッチでランナーを送り出します。

と、そんな様子を懸命に撮影する1人の女の子が…。

彼女は早乙女ゼミの花田絹香さん(4年生)。

大会のプロモーション動画を制作する撮影班なのです!

今からトップランナーを追いかけるとのこと、私も密着させて頂きました!

黒部先生の運転する車で、頂上付近へ移動。頂上へ近づくにつれて濃い霧が立ち込め、小雨まで降ってきました。舗装されていない砂利道を走る車がガタガタと跳ねます。

私は内心、こう思っていました。

「え、マジでこの中、走るの…?正気…?」

16.3㎞地点、鉢伏山登口エイドに到着。

花田さんは頂上から降りてくるランナーを撮影するため、こちらで待機。

黒部先生と男性陣は頂上に登ってランナーを迎えるとのこと。

花田さんと待機する気満々の私に、黒部先生が「あれ、頂上、登らないんですか?」

「あ、じゃあ、行きます!」と気軽に答えた私に、黒部先生が何故かニヤリ

私はその笑顔の意味を、すぐに知ることとなるのです…。

いや、これは無理―っ!!(涙)

「え、マジでここ走るの…?正気…?(2回目)」

私は大人しく、花田さんの待つエイドまで舞い戻ったのでした。

ランナーを待つ間、花田さんにお話を聞くことに。

「なんで撮影班に?」

花田さん
「Youtubeでスポーツメーカーとランニングイベントのコラボ動画を見て、それがすごくかっこよくて、自分も作ってみたいなって。そしたら先生がこの活動を勧めてくれたんです。去年も撮影と編集を担当し、今年で2回目です。」

「今年はどんな動画にする予定?」

花田さん
「去年はほのぼのした雰囲気だったので、今年はカッコイイ感じで撮りたいと思っています。必死で走ってる姿とか、苦しそうな表情とかも含めて。実行委員会からも、トップランナーを追いかけて欲しいという要望があり、そのために撮影スケジュールを組んで、昨日はコースの下見や移動時間の計測もしました。

「おお、計画的!」

花田さん
「そうですね、去年は結構行き当たりばったりで、皆のイメージがバラバラのまま撮影していたので、編集段階で『この角度じゃないんだよな』とかいうのがありました。今年はその反省から、どんなものを撮りたいか具体的に共有しています。

「なるほど、去年は苦労したんだね…編集にはどのくらいかかったの?」

花田さん
「最初のミーティングから納品まで、195日ですね。」

195日?!

花田さん
「はい(笑)途中色々トラブルもあって、もう何回泣いたか…!」

「そんなに苦労したのに、なんで今年も?」

花田さん
「なんで…何故か息をするようにここにいるんですよ。しかも、『今年は編集、業者さんに委託する?』と聞かれた時『私がやります』って言っちゃったんですよね…ほんとなんでやろ……恐怖体験ですね。

「何かの魔力だね(笑)でも、この活動を通して成長したんじゃない?」

花田さん
「そうですね。撮影班のメンバーに『こういう絵を撮りたい』って伝えるんですが、自分の指示の量や伝え方で撮れる絵も変わってくる。その中で、自分の想いをちゃんと言葉で、誤解なく的確に伝えられる人になりたいって思ったんです。私、キャプテンをやるようなタイプではなかったんですが、この経験からチームや組織を引っ張っていける人になりたいって思うようになりました。」

「リーダーシップの大切さを身をもって学んでるんだね!」

そんなことを話している内に、あの絶望の坂道からランナーが!

「駆け下りる」というよりは「滑り落ちる」というようなスピード感!

そして、息を切らしながらも、皆さん笑顔なのです!!

トレイルランの魔力、恐ろしや…。

そんなランナーを、いろんな角度から撮影します。

良い絵が撮れたかしら♪完成動画が楽しみです!!

<阪南エイドへようこそ!>

さて、撮影班とは一旦お別れし、ゴール地点へと戻る最中。

霧の中から、何やら聞き覚えのある声が…。

あ、スタート地点に居た、あの先輩達だ!!

ここは、ゴールまであと2㎞の展望台エイド、通称阪南エイド

ラストスパートを支えるべく、飲み物や飴、ゼリーを提供しています。

何よりすごいのは、その応援!!

全力の掛け声、笑顔のハイタッチで迎えると、霧の中、苦しい表情で走って来たランナーが、一気に笑顔に!これぞ応援のチカラ!!

私も参加させてもらいましたが、5分でヘトヘトに…。

ランナーはひっきりなしにやって来るため、休む間もありません。

全力で歌い、叫び、叩き、跳ぶ、その姿はどこかの部族のよう(笑)

私は知りました…応援もスポーツなのだと!

この阪南エイドの企画発案者である鍛冶野さんに話を聞きました。

早乙女ゼミ4年生 鍛冶野有里さん

「えーと…朝からあんな感じ?」

鍛冶野さん
はい、朝4時に起きてからずっとあのテンションです(笑)

「すごいね!あの応援は、実行委員会からの要望なの?」

鍛冶野さん
「いえ、私達がやりたくて。この阪南エイド自体、私が企画・提案させてもらいました。1回目に参加した時はエイドのお手伝いやゴールテープくらいしか出来ることがなくて、もっとランナーさんと関われる機会があれば、学生自身も楽しめて、ランナーさんにも喜んで頂けるんじゃないかと思って、去年から始めました。サッカー部の子が多いので、その応援の仕方を活用してみようということで、太鼓も学校から持ってきました。」

「あの応援は絶対喜んでもらえるでしょ!」

鍛冶野さん
「はい、皆さんに『元気もらえる』って言って頂けて…その言葉が嬉しくて、私達も頑張れるっていう感じですね。」

「すごく良い循環だね。」

鍛冶野さん
「はい。手作りのゼリーも喜んでいただけて。」

え、これ手作りなの?!

鍛冶野さん
「はい。去年はチョコを作ったんですが、今年は桃とレモンのゼリーにしました。去年は製作過程でトラブルもあったので、今年はレシピも作って、材料も予め送らせてもらって、頑張って作りました。」

「去年の反省が活かされてるんだね。こうして毎年参加するのはどうしてなの?」

鍛冶野さん
香美町の方々の温かさ、ですかね。香美町の方が、来てくれる人を迎える優しさに、もう一度来たいと思っちゃうんです。何回も参加しているランナーも居て、皆そういう所に惹かれてるんじゃないかな。」

私が阪南エイドにいるわずか数分の間にも、たくさんのランナーさんが、

「よっしゃ2キロやー!ええとこでゆーてくれた!」

「若いパワーもらった!ゴールまで頑張れそう!」

と笑顔を見せてくれて、本当に喜んでもらえているのを実感しました。

卒業後は東京で番組制作スタッフのお仕事に就く予定の鍛冶野さん。

大学で学んだ企画力やチームワークを活かして、頑張って下さい!

<ゴールラッシュとご褒美♪>

さて、私は一足お先にゴール地点へ。

ランナーの皆さん、達成感に満ち溢れた笑顔で、次々とゴールテープを切ります!

もちろん、このゴールテープを持っているのも、阪南大生♪

完走した人には全員、完走証が手渡されます!

そして、ゴールしたランナーの中に…

流通学部の杉田先生を発見!!

実は、ランナーとして参加していたんです!トレイルランは初めてという杉田先生でしたが、27㎞のコースを3時間51分57秒、25位とかなりの好タイム!

「死ぬかと思った時が何回かありました…。」とのこと。

でも、それを乗り越えるとこの笑顔!これがトレイルランの醍醐味なんですね♪

さあ、ゴールしたランナーには素敵なご褒美が!

まずは、うわの鍋(特製豚汁)など、疲れた体に優しいお食事。

もちろん、こちらも阪南大生から受け取りますよ♪

そして、地元で採れたお野菜を農家の皆さんから直接プレゼント!これは嬉しい♪

そして…

この大会をさらに良くするため、参加者の声を集めることも重要なお仕事。

このアンケートを集計し、実際に現場で感じたことも含めて、2月に行われる報告会で改善案や新しい企画を提案するのが、この活動の大きな目的なのです!

そんな中、「FEELCAP」というランナー用のキャップを販売しているブースを発見!

「日本人の頭の形を研究して作られており、マジックテープで深さも調整できるんです!」

そんな風に教えてくれたお兄さん、実は…阪南大学の卒業生!!

株式会社コカジ 藤長悠平さん(2018年卒)

「僕も学生の時、この大会の運営に参加しました。皆さん本当に温かくて…それ以来、ここ香美町が大好きなんです!もっと大規模なスポーツイベントはありますが、アットホームで温かいこのイベントがやっぱり好き。だから是非この場所でブースを出して、直接ランナーさんの声を聞いて、製品にも活かしていきたいなと思いました。

こうして卒業してからも繋がっていけるって、素敵ですね♪

さあ、そんな素敵なご縁の中心になっているのが、この方。

姫ボタル・瀞川平トレイルラン実行委員長

株式会社むらおか振興公社 代表取締役社長 田丸明人さん

「阪南大生の活躍はどうですか?」

田丸さん
「皆が頑張って新しいことをやってくれるお陰で、他のスタッフも毎回新鮮で楽しめるんですよ。スタッフも参加者も両方楽しめることが1番です!」

「皆、香美町の方々は温かいと言ってましたが、ほんとですね。」

田丸さん
阪南大生はね、『いらっしゃい』の関係じゃないんです。『ただいま』『おかえり』という感じ。例えば、就職活動中に参加していた学生が、次に会った時『就職決まりました』なんて報告をしてくれたら、『よっしゃ!』って思いますしね。」

「なんだか、お父さんみたい!」

田丸さん
こういう繋がりを大切にして、色んな人を巻き込んでいくと、良い化学変化が起きるんですよ。阪南大生にはこれからもずっと参加し続けて欲しいなと思っています。」

人との繋がりを大切にする田丸さんだからこそ、良いスタッフが集まり、参加者もどんどん増えるのでしょうね♪

最後に、このトレイルランの活動を見守ってこられた先生方を代表して、黒部先生にお話を伺いました!

「トレイルランでの活動は3年目とのことですが、今年はいかがですか?」

黒部先生
「年々、良い大会になっていますね。それはおそらく、報告会での提案など学生が良い仕事をしているからだと思います。都市型のスポーツイベントだと、どうしても決まった手伝いをするだけなんですが、この大会は手作り。学生がしたいと思うことを田丸さんがやらせてくれるので、学生達も楽しんでいます。

「楽しみながらイベントの企画・運営を学べる良い機会ですね!」

黒部先生
「はい。こういった現場では決められた台本がなく、自分達で必要なことを考えて、その場その場で判断して業務に当たらないといけない。そういう適応力、応用力を養ってもらえたら良いですね。」

<もう一つのゴール>

午後3時00分、姫ボタル・瀞川平トレイルラン、終了―――

長い1日が終わり、いそいそと片付けを始めるスタッフ一同。

その時、数人の先輩達が一度しまったはずのゴールテープを引っ張り出して来ました。

そう、8時間応援し続けた阪南エイドのメンバーが戻って来たのです!

ゴールテープを持って迎える一同。そして…

ゴール!!

声を枯らし汗だくになってゴールした表情は、ランナー並みの達成感に満ちています!

朝はその元気が続くのか半信半疑だった早乙女先生も、その頑張りをハイタッチで讃えます!

皆、本当に良く頑張ったねっ!!(感涙)

「スポーツイベントを通して、地域活性化を。」

そのスポーツイベントを作るのは、やっぱり「人」なんですよね。

つまり、地域を活性化するのは「人のチカラ」なんだ、と改めて感じました♪