2020.1.14

シドニーパラリンピック柔道銅メダリスト松本義和氏の講演会開催

 2019年12月16日,経営情報学部マルチメディア入門の特別講義(7クラス合同授業;270名)として,松本義和氏講演会を開催しました.松本義和氏は全盲の柔道家として著名な方で,「視覚障害者とインターネット」というテーマで講演をしていただきました.

松本義和氏プロフィール

  • シドニーパラリンピック柔道100kg級銅メダル(2000)
  • アテネパラリンピック出場・日本選手団旗手(2004)
  • 講道館柔道五段
  • 大阪市立修道館柔道講師
  • 大阪府視覚障害者柔道連盟会長
 松本氏はまず,高校時代に緑内障にかかり,失明したこと,全盲の弁護士や教師がいることを知り勇気づけられたこと,視覚支援学校で柔道を始めたことを話されました.
 1992年にパソコン通信(注1)を始め,健常者とネット上でやりとりできるようになって世界が広がったことや,点字本はかさばるため,英語の辞書一冊分だけで本棚一つが必要だが,今はパソコンやスマホで手軽に本を読んだり辞書を使ったりできるようになったこと等を話されました.
 アメリカでは障害を持つアメリカ人法によって,情報機器は視覚障害者対応が義務づけられており,iPhoneにはVoiceOver(注2)が備わっていること,目的地までの道案内や印刷物の読み上げ,色を教えてくれる機能もあって柔道着が白か青かを自分で判断できること,経営する鍼灸治療院の自作ホームページ等を実際に操作(スクリーンに投影)しながら紹介されました.
 そして,ITが視覚障害者の生活を便利にしてくれる,と視覚障害者にとってのIT・インターネットの意義を強調されました.
 松本氏は自分が励みにしている言葉として,パラリンピック創始者であるグッドマン博士(注3)の
「失われたものを数えるな,残っているものを最大限生かせ」(注4)
を紹介されました.
 柔道については,目が見えなくても健常者の選手と普通に組み合える種目だ,と語られました.そして,講演会の8日前(12月8日)に行われた第34 回全日本視覚障害者柔道大会男子100kg級で優勝したことを話されると,学生達から拍手が起こりました.
 大人数講義では私語が多い学生達も,松本氏の講演には静かに聴き入っていました.
 講演終了後,HInTシステム(注5)を利用して学生達からスマホで打ち込んだ質問が寄せられました.
「もし目が見えるようになったら何を最初に見てみたいですか?」
「目が見えないと柔道で投げられるときに怖くないですか?」
「奥さんとの馴れ初めは?」
等の質問に,松本氏はユーモアを交えながら回答されました.
 最後に,講演会企画者(濵)と松本氏で,健常者が視覚障害者の歩行をサポートする方法の実演・説明を行って,講演会は終了しました.
 学生からは非常に多くの感想が寄せられました.いくつか以下に紹介します.
  • すごくポジティブに生きていて尊敬する。
  • 初めて目が見えない人の話を聞いて自分の知らない世界を知ることができました。
  • 視覚障害者でもパソコンとかを駆使しているのを見てすごいと思った。
  • 自分でホームページを作っていることに凄いと感じた。
  • 目の見えない方を助ける方法も教わったので、積極的に助けられる人になろうと思いました。
  • 自分の出来ないことより出来ることを探し、前向きに生きて欲しいという生き方や考え方を参考にし、自分が何か挫折しかけたときにこの言葉を思い出し生きていきたい。
  • 盲目でありながらも自立して行動してすごい方だと思った。健常者でも何もしてない自分は松本さんを見習って何事にも挑戦していきたい。
 なお,松本氏を取材した記事としては,「挑戦し続けるメダリストに敬服 全盲の柔道家・松本義和さん」(報知新聞2019年2月13日)がまとまっています.
(注1)インターネットの普及以前に利用されていたデータ通信サービス。電子メールや電子掲示板・チャット等でコミュニケーションが可能であった.日本では数百万人が利用していた.
(注2)画面読み上げソフト。アップルはアクセシビリティ(利用しやすさ,また障害者・高齢者にとっての情報の受信・発信の容易さ)に力を入れている.「株主総会で株主から「もっと利益に注力すべきだ」と言われた際、Apple CEOのティム・クック氏が珍しく声を荒らげ、「視覚障がい者向けの機能を開発する際、私はROI(投資利益率)なんてくだらないことは考えない。もし利益にのみ注力しろと言うのならうちの株は買うな」と答えた」(ITmedia Mobile 2015年7月6日)という.
(注3)ドイツ出身のユダヤ系神経医学者.ナチスの迫害を受けイギリスに亡命.戦争で障害者となった軍人の治療にあたるとともに,リハビリとしてスポーツを導入.
(注4)この言葉は,グッドマンに師事した中村裕が日本に紹介したとされる.
(注5)Hannan Internet Community Tool for E-Education.阪南大学独自の教育システムで,全教室でスマートフォンからアクセス可能.