2017.3.27

森田龍親氏(医師・医学博士・住職)をお招きした特別講義(自然科学史)

森田龍親氏(医師・医学博士・住職)をお招きした特別講義(自然科学史)

 一般教育科目の自然科学史では、2016年度の特別講義として、森田龍親氏(医師・医学博士・住職)をお招きし、濱との対談形式で授業を行いました。
 森田龍親氏は、日光診療所の院長として地域医療に携わる一方、但馬の名刹・真言宗妙見山日光院の住職でもあります。
 僧衣で登場された森田氏は自己紹介で、寺に生まれたこと、元々はお兄さんが住職を継ぎ自分は医師として働くつもりだったが、お兄さんの死去に伴って僧侶としての修行も行い、勤務医兼住職を経て、日光診療所を開業したことなどを話されました。

医師兼住職なんて、そんな人が本当にいるの?

 濱から、医師兼住職のイメージについて受講生に事前アンケート(注1)を行ったところ、
「そんな人が本当にいるのか疑問」(78%)(注2)
「心霊医療みたいな感じでインチキ臭い」(53%)
「イメージできない」(48%)
「そんな人がいるとすれば、やってることが色々矛盾していると思う」(45%)

等、いささか失礼な結果となったことを紹介され、森田氏も思わず苦笑い。(なお肯定的イメージとして「そんな人がいるとすれば、体のケアと心のケアの両方ができて良いと思う」(57%)もありました。)
 こやす珠世著の「病室で念仏を唱えないでください」(イラスト)では、勤務医兼僧侶の主人公が僧衣で病室に入ったところ、
「まだ死んじゃいねえのに縁起でもねえ!!」
と追い出されるギャグシーン(第4話)があります。森田氏も着替える時間がなくて僧衣で病院を歩いていると、ぎょっとされることもあった(注3)が、最近は皆さん慣れてこられたようだ、と語られました。

仏教と医療

 続いて東洋医学と日本における医学史の話題に移りました。濱が、中国の先進医療は仏教とともに日本に伝来し、古代の日本では仏教寺院が庶民の医療を担い、僧侶が仏教修行として治療や看護を行っていた(僧医・看病僧)ことを話しました。森田氏は、江戸時代に仏教が支配体制に組み込まれて葬式仏教という姿に変わったこと、現代医療におけるホスピスやターミナルケアにおける心のケアと仏教との関係、現在は医師が漢方薬を処方するのは普通のこと、などを語られました。

色即是空・無常概念と科学

 次は科学哲学に関連して、仏教哲学と科学の話題です。まず、森田氏から般若心経について解説をいただき、その中の「不生不滅不増不減」「色即是空空即是色」(注4)の仏教的解釈をしていただきました。次いで濱が、原子の不生不滅(質量保存則)、エネルギーの不増不減(エネルギー保存則)などは、化学や物理学の基本法則の訳語に般若心経の言葉が使われたことを話しました。また、真空に高エネルギーの電磁波を照射することで物質と反物質が生成する現象(対生成)やその逆(対消滅)は、「空」=真空と解釈すれば、色即是空空即是色とも言えるとしました。(注5)
 最後に、仏教の無常概念(注6)やヘラクレイトスの動的自然観について、森田氏から、生物を構成する細胞が常に入れ替わり続けていることは自然界における無常を示していることなどが語られました。(注7)
 受講生からは、
「医師兼住職の人が本当にいるとは思わなかった」
「医師も僧侶も大変な仕事なのに、その二つを一緒にやっているなんてすごいと思った」

等の感想が寄せられました。
 なお、この特別講義は公開授業として実施し、経営情報学部の一部の教員が来聴されました。

 森田氏を取材した記事・番組として以下があります。
森田龍親先生 仏教の精神で住民によりそう」(兵庫保険医新聞2013年8月05日)
住職と医師〜一対のわらじ〜」(やぶらぶWalker;youtube 2012年12月11日)

注1 選択肢は予備アンケート(自由記述)で学生から出されたもので、複数選択可。
注2 濱が友人の医師に尋ねてみたところ、友人の出身大学医学部の場合、親の職業で最も多いのが医師で、二番目が教師、三番目が僧侶、ということで、寺に生まれた医師は意外に多いようです。ただ、僧侶でもある医師は珍しく、住職を兼ねている人はもっと珍しいとのことです。
注3 森田氏が「病室で念仏を唱えないでください」の主人公のモデルというわけではありません。
注4 色即是空空即是色でいう「色」とは、目に見える物・実体のこと。
注5 色即是空空即是色と素粒子の対消滅・対生成については、宇宙物理学者池内了氏が既に述べておられます。
注6 仏語。この世の中の一切のものは常に生滅流転(しょうめつるてん)して、永遠不変のものはないということ。(大辞泉)
注7 ある宗教哲学の一部で自然現象の一部が理解できるからと言って、その宗教哲学全体が科学的に正しいというわけではありません。

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