2017.10.23

【阪南経済Now(2017)⑬】カンボジアでのフィールドワーク

【阪南経済Now(2017)⑬】カンボジアでのフィールドワーク

 カンボジアは東南アジアに位置し、タイとベトナムに挟まれた小さな国です。世界遺産にもなっているアンコールワット遺跡群で有名です。少し上の世代の人たちであれば、1970年代の「ポルポト時代」の惨劇や、その後の内戦時代に埋められた地雷のことが脳裏に浮かぶでしょう。
 私のゼミではこのカンボジアでフィールドワークを実施しています。具体的には、カンボジアに進出している日本企業(日系企業)や農村などを訪問し、学生があらかじめ設定したテーマに関して、インタビュー等による調査を行っています。これまでのテーマには、子どもたちの健康や教育にまつわる問題、農村の人々の食生活、日系企業による従業員の雇用やその労働条件、日本の外食企業や食品小売業が抱える問題、といったものがあります。
 私自身カンボジアの経済や人々の暮らしに関する研究をしていて、調査のために年に何度となくカンボジアを訪れてきました。このフィールドワークは、そうして私自身が培ってきたカンボジアについての知識や経験、現地でのネットワークを活かして実施しています。
 農村での調査では農家の方々に直接話を聞きます。学生たちは、カンボジアの言葉は分かりませんので私が通訳を務めていますが、身振り手振りも交えて村の大人たちや子どもたちとコミュニケーションをとっています。村の人たちは人懐っこく、村でのこうした交流は、このフィールドワークの醍醐味です。
 もちろんこれは観光旅行ではありません。私としては学生にとってフィールドワークを次のような機会にしたいと考えています。
 一つ目は、発展途上国の人々の暮らしやその直面する問題について、それを肌で感じながら学んでほしいということです。事前準備として、学生たちはカンボジアの人々の暮らしについておよそのことは学んでいくわけですが、実際に現場で自分の目で見て、話を聴くことには勝りません。水道もトイレもない暮らしであること、肉は高価なのでめったに食べないこと、経済的理由で中学校にも行けない子どももいること、など、訪問する村には今の日本では想像もしにくい現実がまだあります。
 二つ目は、このように途上国の実態を知ることで、それとの比較を通じて、日本の社会のあり方や、自分自身の生活や生き方について改めて考えてほしいということです。フィールドワークに参加した学生の多くが「日本に生まれてよかった」ということを口にします。それは率直な感想でしょうが、そこでとどまらず、日本のような先進国では、豊かで快適な暮らしは何によって成り立っているのか、ということにまで考えを深めてほしいのです。一方で、経済的には厳しい生活を送りながらも、村の人たちは私たちのような訪問者を親切に笑顔で受け入れてくれますし、村の中で子どもたちは無邪気に遊びまわっています。また、村によっては、重病人が出た家に対して村ぐるみで寄付をするという仕組みもあります。村でこうしたことを見聞きすることで、私たち1人1人の人生や社会にとって何が本当に大切なのだろうか、ということにも思いを巡らせてほしいと思います。
 三つ目は、将来の進路を考えるきっかけとしてほしいということです。フィールドワークでは、カンボジアに進出した日系企業を訪問して、日本人スタッフの方の話を聞きます。このことを通じて、日本企業がカンボジアのような途上国で直面する様々な問題やそれへの対応策などについて学ぶことができます。これはこれで大事なことですが、私がいつも強く感じることは、日本人スタッフの方々が、慣れない環境で日本では考えられないような困難に直面しながらも、それに果敢にチャレンジし、やりがいを持って仕事に取り組んでいるように見えるということです。このようなことを学生たちにも感じてもらいたいですし、大学卒業後に始まる職業人生において自分は何を求めるのかを考えるきっかけになればと思っています。
 このフィールドワークは1週間程度の期間しかありませんが、それは中身の濃い1週間です。私としては、フィールドワークが、学生たちにとって日本の社会や自分自身の現在と将来のことを見つめ直すきっかけとなり、たとえすぐにではなくとも、彼らにポジティブな変化をもたらしてくれることを願っています。