2018.5.14

ポスト爆買い時代に向けた訪日中国人観光客の実態調査

活動テーマ:ポスト爆買い時代に向けた訪日中国人観光客の実態調査
連携先:すみれナレッジ(代表 岡部佳子)

 最近、大阪の街は外国人観光客の急増により、すっかり様変わりし、道頓堀・心斎橋の中心街では様々な外国の言葉が飛び交うほどの喧騒状態となっています。昨年度の来阪の訪日外国人観光客は1100万人にも達し、なかでも中国人観光客の「爆買い」行動は、際立った社会現象にもなり注目を集めました。
 こうした現象に着目し、石井キャリアゼミでは、特に訪日中国人観光客に的を絞って、彼らの買い物行動が今後どのように変化し、それが大阪の将来の観光のあり方や商店街振興、さらには街づくりにどうつながっていくのかを課題に取り組むことにしました。この課題には、これまでグローバル化については、英語を学んで海外に出て活躍することを中心に考えてきましたが、海外の人々が大挙して集中的に観光に訪れることによって、日本の社会や経済・文化が大きく変容することも、「内なるグローバル化」の進展ととらえることができるという視点や発想があります。
 こうした課題にアプローチするために、最初に行ったことは、中国上海に長年生活し仕事に従事してきた連携先の岡部佳子氏とコラボして、訪日中国人観光客の理解のための勉強会を2回開催しました。そのうえで、直に見て、聞いて、肌で触れて実感をつかむために、中国人の観光ルートに沿って、関空・りんくうタウン、大阪城、黒門市場、心斎橋・道頓堀エリアのフィールドワークを実施しました。今後の本格的な調査の準備的フィールドワークの成果として、参加者全員が路上観察による実態について、それぞれの独自の着目点から、現場の写真を添付したメモや記録を編集しまとめました。今回実際に歩いて見たことによって、お店に中国語の通訳や中国人のバイトを多数雇っていることを知り、日本・大阪は中国人観光客の爆買いに助けられていることを学ぶことができ、フィールドワークの意義や価値を見出すことができました。
経済学部 2年生 田中 祐智

学生活動状況報告

 最近「爆買い」で話題になっている訪日中国人観光客について、その現状と今後の展望ということでゼミでは学習を深めてきました。
 1月18日に実施したフィールドワークでは、関西国際空港をはじめ、りんくうタウン、大阪城(ミライ座)、黒門市場、心斎橋・道頓堀界隈の実態調査を行いました。
 私たちゼミ生が訪れた観光スポットでは、平日にもかかわらず、すれ違う人は、そのほとんどが中国人という印象で、大阪にいるのに日本人とすれ違うと珍しいという感じがしました。特に大阪城では、お城という日本独特の建築様式のものに興味津々の様子で、カメラを向けて写真を撮影していたことが、とても印象的でした。大阪の街も、すっかり変わり、外国人が大阪の街に溶け込み、日本人との共生・共存のあり方を考えることの必要性を痛感しました。今回のフィールドワークでは、話に聞いていた訪日中国人観光客について、自分の足で現地に訪れ、自分の目で見て実感することできました。こういうことが大学でできるというのもあまりないことだと思っていた私としては、とても新鮮で貴重な経験をすることができて、本当に良かったです。今後とも、中国をはじめ訪日アジア人観光客の増加が見込まれると予測されるので、そのことが日本や大阪の社会・経済にどのような変化をもたらすのか、引き続きキャリアゼミの課題としてフィールドワークを実施できればと思っております。

経済学部 2年生 冨田 凌河

参加学生一覧

太田 心蕗、森田 純、井崎 敬太、小笠 駿哉、奥田 大雅、樋口 藏助、藤本 一輝、大井 康司、田中 祐智、和田 瑞、縣 弘樹、大西 駿也、三堂 仁秀、立山 拓海、藤田 莉彩、森脇 玲美、冨田 凌河、南原 誠

連携団体担当者からのコメント

すみれナレッジ
岡部 佳子氏

 リピーター客が増える中で彼らが求めるものは日本らしいものに触れたり、体験をしたりといった日本の文化です。その一つがアーケード商店街です。実際には、衰退しつつある所が多いのですが、受け入れ態勢を整え誘客することができれば、街の活性化につながります。
 その態勢の整備にはスマートフォンの活用は不可欠です。しかし、高齢化している商店街の店主たちには使いこなすことが苦手な方が多いと思われます。
 ゼミでは学生たちが最も興味を示したのは中国人のスマートフォン活用の現状でした。また、スマートフォンは学生たちとっても身近なもので使い慣れているので、彼らのノウハウやアイデアを活かすことができるのではないかと思い至りました。しかし、彼らから実際に引き出すところまでには達することはできませんでした。今後は更に意見のキャッチボールをしながら、長年中国人と密接に付き合ってきた私の経験と学生たちの斬新な発想を融合して形にしていきたいと考えています。

教員のコメント

経済学部 石井 雄二教授

 最近の訪日外国人観光客の急増は、大阪の中心街の雰囲気をすっかり変えてしまい、その喧噪ぶりには目をはるものがあります。こうした変化が日本や大阪の社会や経済をどのように変容させ、将来外国人と共に暮らす状況が必ず生まれるのではないか、という問題関心から、キャリアゼミの課題として取り組むことになりました。何から手を付ければ良いのかわかららない状態からスタートを切りました。まずは、連携先の中国の上海で暮らし、タイムリーな著書を出版された岡部佳子氏(すみれナレッジ代表)から、勉強会を通じて、中国人の爆買い現象の背後にある中国人特有の文化や生活スタイルについて多くのことを学びました。2回の勉強会は、日々中国人観光客が街中で多く見られることを感じていた学生たちにとって、中国の経済発展ぶりや中国人観光客が急増する社会の行方について、改めて考えるきっかけとなりました。
 関空から黒門市場・大阪中心街エリアに至るフィールドワークは、学生たちにとって、様々な動きや実態を肌で感じることによって、各自各様さまざまなことを意識的に考えるうえでの刺激となりました。その成果を簡単な文章で表現してもらいましたが、若い人特有の斬新な指摘やユニークな発想が散見されるなど、今後の活動につながる成果をあげることができました。いまの学生たちが、将来外国人と共に暮らす社会で活躍することを想定しながら、現在急増する訪日外国人観光客の実態と動向に注視し、それが大阪の街をどのように変容させ、それを活かした共生・共存社会のあり方について、今後とも学生たちと一緒に考えて共に模索していきたいと思います。