2017.12.22

キャリアゼミ2017中間報告その3 経済学部 石井ゼミ2年生

キャリアゼミ2017中間報告その3 経済学部 石井ゼミ2年生

活動テーマ:ポスト爆買い時代に向けた訪日中国人観光客の実態調査
産学連携先:すみれナレッジ(代表 岡部佳子)

「爆買い」から「ポスト爆買い」中国人観光客へのシフト

−岡部佳子著『中国人観光客の財布を開く80の方法』を読みながら−
 2015年頃から、訪日中国人観光客の急増による「爆買い」の社会現象がマスコミで喧伝されるようになりました。これは、日本に居ながら、中国からやって来た中国人の「爆買い」行動を通して、日本の社会に大きなインパクトを与える「国内のグローバル化」とも言える現象とみることができます。
 石井キャリアゼミでは、これまでタイを中心に東南アジアを舞台に、海外研修プロジェクトを実施してきました。これは、急速ピッチで進むグローバル化時代を背景に、海外に目を向けた国境を越えた活動で、海外の現場に直に触れ、そこから多くのことを体験し学んできました。それは、いわゆる「外向きのグローバル化」に沿う活動でした。それに対して、石井ゼミでは、訪日中国人観光客の急増を契機に、「内向きのグローバル化」という視点からも、同時に今後のグローバル化社会のあり方を考えていくチャレンジ課題を設定いたしました。その手始めに、中国の上海に留学し、現地の企業にも長年従事し、中国人の社会と文化に精通している、すみれナレッジの代表岡部佳子氏とのコラボで、訪日中国人観光客の実態と行動パターンを明らかにしていくプロジェクトを立ち上げました。
 岡部佳子代表は、中国人の日本へのインバウンド観光客の急増に対して、それをビジネス・チャンスにつなげるためには、もっと深く中国人を理解し、その買い物行動の特徴や性格を把握する必要があることを提起されています。現在の「爆買い」はいずれ終息し、「ポスト爆買い」時代に備えた受け入れ体制を構築するためにも、中国人観光客を取り込む観察眼と洞察力を磨きながら、その新たな需要を掘り起こすことを喚起されています。
 今年2017年には、そのことを80のトピックスに簡潔に整理されて、誰でも気軽に手に取って読める『中国人観光客の財布を開く80の方法』を刊行され、巷間では大反響の著書となっています。そこでは、訪日中国人観光客が急増する中で、その観光行動には大きな傾向的変化がみられるようになったことについて、次の4点を指摘されています。①団体旅行から個人旅行の比重の上昇、②リピーター客の増加、③爆買い型買い物からコト消費の重視、④マス観光から個性的・差別的観光への魅力度のアップ。
 本活動の最終的な課題は、これまでの爆買いに象徴される中国人観光客の行動の変化を見据えて、特に商店街エリアにおける交流型コト消費の地元のまちづくりの活性化と結びつけた観光振興の視点から、今後の受け入れる環境や体制づくりを検討することを目的としています。

岡部佳子氏を交えた第1回勉強会の開催

以上のようなプロジェクトの文脈にもとづいて、岡部佳子氏を講師として招聘し、第1回の勉強会を下記のように開催しました。
日 時:10月19日(木)11:00〜12:20
場 所:1号館131教室
参加学生:石井ゼミ2年生
学習内容:①中国人観光客の人数と動向 ②中国人のキャシュレス化(お金を使わない決済システム)③中国人の自転車シェアリング ④中国の食とお茶の文化について、パワーポイントの資料を見ながら学習し、現在の中国の情報システム化の進展と文化論の観点から、「爆買い」中国人観光客についての基礎知識の一端を学ぶことができました。

岡部佳子氏を交えた第2回勉強会の開催

日 時:12月14日(木)11:00〜12:20
場 所:1号館131教室
参加学生:石井ゼミ3年生
学習内容:①訪日中国人観光客の買物行動とスマホによる具体的な決済の仕方、②中国人のSNS活用による日本の観光情報、③訪日中国人観光客の品目別購入率などについて、パワーポイントの資料などで説明いただき、学生との双方向の情報交換を行いました。QRコードを使ったスピーディーなお金の決済方法、微博(中国版ツイッター)や微信(中国版LINE)などの最新の動向、それが現代の中国人の生活や価値観を大きく変化セさせている実態について学習した。
以上の2回の勉強会をふまえて、2018年1月には、今後、ポスト爆買いの買い物行動からコト(体験やイベント、交流)消費に移行するという言われる中で、訪日中国人の観光スポットで賑わっている黒門市場を中心に、大阪城や心斎橋界隈、大阪観光の起点となる関西国際空港などのスポットのフィールドワークを行う予定にしています。商店街への中国人観光客の取り込みと、彼らとの交流・交歓のあり方や、将来の相互理解を通した共存・共生社会のパースペクティブについても探求することにしたい、と考えています。

学生活動状況報告

 なぜ中国人は、「街中で声を張り上げて話をするのか?」など、中国人の行動パターンやキャラに対して多くの疑問を持っていましたが、岡部佳子氏の最近出版された著書と授業からある程度納得し理解できるようになりました。かつての私の中国人のイメージは、爆買いとマナーの悪さが大部分でした。彼らの文化や習慣を知って理解したい自分がいることを気づかせてくれて、自分が彼らに持っていたイメージを変えることができた良い機会になりました。それとともに、同時に中国と日本の大きな差を知りえる機会にもなりました。
 中国では、お金での支払いの場合、ほとんど現金ではなく、銀聯カードや支付宝(中国のスマホ型クレジット)で行っています。中国では、日本よりもスマホの普及率が高いために、このような形の決済になったと言われています。また、多くの情報を入手するために、街中にQRコードが用意されてアクセスが可能となっています。実際、日本でもQRコードを取り込む動きが多くなりましたが、まだまだのように思われます。スマホと同時にWi−Fiの設置も行われてきましたが、これもまた日本では大きく遅れているのが実情です。
 岡部氏の著書と授業から学んだ中国の現実は、日本が大きく情報処理・活用面で大きく遅れていることを自覚させてくれました。確かに「爆買い」の時期は終息し、次第に彼らにもモノを見る目が養われてきました。だからこそ、中国人の目線で見ると、日本の遅れている部分が浮き彫りになり始め、逆に日本の改善すべき部分が理解できるようになりました。
 さらに第2回目の岡部氏を交えての勉強交流会で多くのことを学びながら、中国の文化や社会についての理解と認識を深めていきたいと思います。 

経済学部 2年生 小笠 駿哉

参加学生一覧

太田 心蕗、森田 純、井崎 敬太、小笠 駿哉、奥田 大雅、樋口 藏助、藤本 一輝、大井 康司、田中 祐智、和田 瑞、縣 弘樹、大西 駿也、三堂 仁秀、立山 拓海、藤田 莉彩、森脇 玲美、冨田 凌河、南原 誠