2016.8.26

ニュージーランド便り 第9回 ニュージーランドと北海道の類似点

ニュージーランド便り 第9回 ニュージーランドと北海道の類似点

 8月も下旬になり、日ごとに昼の時間が長くなってきました。このところ朝晩の冷え込みも緩み、春の足音を感じます。北半球と南半球のちがいはあるにせよ、札幌とほぼ同緯度のクライストチャーチですが、冬の札幌が雪と氷で覆われるのに対し、クライストチャーチでは最低気温がマイナスになる日はあっても、この冬雪は一度も降りませんでした。さて、前回の「便り」の中で、オークランドにニュージーランドの人口の3分の1が集まる集中度合いが、北海道の札幌に似ているという話をしました。実は、それ以外にもニュージーランドと北海道は類似点が多いのです。簡単に要約すると、「ほぼ同時期に本格的な開発が始まった両者は、約150年後の現時点で、人口と経済規模がほぼ同程度で、なおかつ産業構造も似通っているという共通点がある。」ということになります。その点についてもう少し詳しく見てみましょう。
  • 北海道に似た牧場の風景

  • ヘレフォード種の肉牛

 各種統計データに表れる類似点として、第一に、人口に関しては、北海道の人口540万人に対して、ニュージーランド450万人と北海道が2割ほど多くなっていますが比較的近い数字です。この数字はいまの北海道の人口減少とニュージーランドの人口増加のペースからすると10年以内に逆転するでしょう。第二に、経済規模を総生産額で見ると北海道の18兆円に対し、ニュージーランド1900億米ドルと近い水準です。為替レートが常に変動するので、正確な比較は難しいのですが、1人あたりGDPでは、ニュージーランドが北海道を約2割上回っています。第三に、産業の面では、北海道の第一次産業(農林漁業)従事者比率が7.6%(2010年)、ニュージーランド6.8%(2013年)と近い数字です。ただ、産業別総生産の構成比で見ると、ニュージーランドの6.4%に対して北海道は3.7%と低くなっています。これは、ニュージーランドの第一次産業従事者の平均所得水準がほぼ全産業平均並みであるのに対し、北海道のそれは全産業平均を大きく下回っていることを意味します。また、北海道の特徴は、第一次産業の中でも畜産とりわけ酪農が盛んで、牛乳(生乳)は全国の約5割を生産しています。ニュージーランドでは、輸出の4分の1を乳製品が占めており、世界一の輸出量を誇るバターをはじめ、世界の輸出の約3割を占める世界最大の乳製品輸出国です。そして北海道もニュージーランドも農業生産の35%を乳製品が占める点でも共通しています。 
 北海道の本格的な開発が始まったのは19世紀後半の明治に入ってからです。寒冷地の北海道は米作に適していなかったため酪農が奨励されました。一方、ニュージーランドも19世紀の半ばから開発が進みますが、温暖な気候が牧草の生育に適しており、世界でも珍しい放牧による酪農がおこなわれています。遠く離れたニュージーランドと北海道ですが、どちらも主要な生産物である生乳が大きな消費市場から遠く離れているため、乳製品として加工し国外(域外)に輸出(移出)する必要があります。しかし、ニュージーランドは海外に輸出するために国際競争力を持たなければならないのに対し、北海道は国内の他地域に対する競争力があればよかったのです。北海道はTPPによりニュージーランドから安い乳製品が入ってくることに脅威を感じており、そのためTPPに強く反対しています。ただ、最近は北海道の中にもニュージーランドを競合するライバルと見なすだけでなく、そこから学ぼうという酪農家も出てきました。そして、ニュージーランドの側からも政府と民間企業が北海道の酪農家と協力して酪農業の改革を支援する動きもあります。
  • ラム肉の料理

  • 安くて豊富な乳製品

 さて、今日は少し難しい話題になったので、最後に別の角度からの共通点を紹介します。ニュージーランドでは牛肉と並んで羊肉(ラム)をよく食べます。同様に北海道の人々も日本では珍しくジンギスカンのような羊料理を好みます。また、北海道に先住民族アイヌが住んでいるように、ニュージーランドにも先住民マオリが住んでいます。そして、北海道の地名に札幌はじめアイヌ語由来の地名が多いように、ニュージーランドにもよく知られたワイカトやロトルアなどマオリ語の地名がたくさんあります。ちなみに、ニュージーランドにはワイ(WAI)で始まる地名が多いのですが、ワイとはマオリ語で水を意味するそうです。有名なハワイのワイキキのワイも水を意味するということなので、ポリネシアに共通した言葉のようです。