2016.8.11

ニュージーランド便り 第8回 初めてのオークランド訪問~ニュージーランドのもう一つの顔を尋ねて~

ニュージーランド便り 第8回 初めてのオークランド訪問〜ニュージーランドのもう一つの顔を尋ねて〜

 「ニュージーランド便り」いつもご覧いただき、ありがとうございます。4月末より2週間おきにレポートしてきましたが、初めて3週間ぶりの報告になります。そこで今回はいつもよりボリュームを増やし、拡大版としてお届けします。
 8月は日本では夏休みの時期です。この期間を利用して、今月3日から9日までの間、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の山岡道男先生が大学院生をつれて現地調査に来られると聞き、この機会にオークランドを訪れることにしました。私は山岡先生にお願いして、幸いにもスケジュール前半の3日から6日まで行動を共にすることができました。
 オークランドは、周辺部を含め人口150万人を擁するニュージーランド最大の都市で、ニュージーランドの人口450万人のうち3分の1が集中する国内唯一の大都会です。この集中度は、人口540万人中190万人が集中する北海道の札幌に似ています。札幌だけが北海道ではありませんが、札幌を知らずして北海道を語ることが出来ないのと同様に、経済・文化の中心であるオークランドを知らずしてニュージーランドを理解することは出来ません。というわけで、ニュージーランドのもう一つの顔を知ることでさらにこの国への理解を深めるべく、オークランドを訪れました。
 訪問2日目の8月4日は、午前中にオークランド総領事館を訪ね、横山佳孝総領事から総領事館の仕事とオークランドの現状について次のようなお話しを伺いました。「総領事館の主な仕事は、①管轄する地域の在留邦人の保護、②日本企業支援、③文化交流の三つです。オークランド総領事館が管轄するオークランドとその周辺の北島北部には約1万人の日本人が住み、日本企業約150社が進出しています。文化交流の面では、オークランドで毎年開催されるジャパンデーに今年は4万5千人の来客がありました。またJETプログラムにより、主に外国語指導助手として日本の学校で英語を教えるニュージーランド人が過去30年で3000人(うちオークランド地域から1100人)に達しており、両国間の人的交流に大きな役割を果たしています。オークランドは多文化共生社会であり、昨年ニュージーランドが受け入れた移民7万人のうち約半数の3万5千人がオークランドに住みつき、国内から移り住む人も加わった人口増加が、二つの深刻な問題を引き起こしています。その一つは、住宅不足とそれがもたらす価格上昇で、この2年で住宅価格が30%上昇し、住宅取得が困難な人が増えています。またもう一つの問題として、公共インフラの不足、中でも交通渋滞が大きな問題になっています。渋滞緩和のため、現在地下鉄を建設中で、3〜4年後に完成する予定です。」そして、しばらくの質疑応答の後、私たちは市内にあるオークランド大学に向かいました。
  • オークランド総領事館にて 

  • オークランド大学図書館の日本関連書籍

 オークランド大学は、メインのCity Campusが市の中心部に位置する都市型の総合大学で、大学院生を含めると学生数3万人を超えるニュージーランド最大の大学です。私たち一行はまず大学図書館を訪れ、日本人スタッフの方に館内を案内していただきました。総合大学らしい充実した立派な図書館で、アジア研究が盛んなため、中国語の文献4万冊、日本語の文献2万冊、韓国語の文献1万冊が収蔵されています。その後、私たちは工学部で阪本留美先生の日本入門の講義を聴講させていただきました。この日は、幕末から明治にかけ日本がどのように変わったかがテーマで、明治維新の持つ意味についての明快な講義に学生が真剣に聞き入る姿が印象的でした。その後、オークランド大学で日本研究に携わるスタッフ・学生のみなさんとの交流会に参加し、お互いに親睦を深めました。
  • 阪本留美先生の日本史の講義

  • オークランド大学のみなさんとの交流会



 翌8月5日は、オークランド大学に隣接するオークランド工科大学(AUT)を訪れました。AUTは2000年に大学に昇格したニュージーランドで最も新しい大学です。キャンパスには新しいビルが建ち並ぶ完璧な都市型大学で、新興大学としての勢いを感じさせます。この日は、山岡先生の友人で地理学が専門のCharles Johnston先生に大学の隣にあるアルバート公園について特別講義をしていただきました。そして講義後は、実際に公園に足を運び、講義の内容を目と足で確かめました。南島と異なり、オークランドのある北島は火山島です。オークランド市内に多くある丘は火山の噴火によって造られたもので、この公園のあたりも元は火口のあったところらしく起伏に富んでいます。広すぎず狭すぎずのちょうどよい大きさで、個性的な形をした木々と歴史を感じさせるモニュメントがほどよく配置された心地のよい公園です。
  • AUTの建物群

  • アルバート公園でJohnston先生による解説

 午後からはオークランド博物館を見学しました。市の中心に近い小高い丘の上にある建物は3層からなり、地上階(1階)は先住民マオリと太平洋の人々、中階(2階)はニュージーランドの自然、最上階(3階)はニュージーランドの戦争をテーマにした展示になっています。図書館も併設されているのでニュージーランドの自然と歴史について詳しく学ぶことができます。1階には惜しくも絶滅させてしまった巨大な鳥モアの剥製、3階には珍しい零戦の実物が展示され見応えがあります。
  • オークランド博物館に展示された零戦

  • スカイタワーから見たオークランド港

 オークランドのランドマークであるスカイタワーに登ると眼下にオークランド港を見下ろすことができます。ニュージーランドの玄関口としてのオークランドの発展にはこの天然の良港が大きく寄与しています。また北島の北部という立地はユーラシア大陸に近いという利点があり、気候も温暖で暮らしやすいところです。坂の多い町ですが、中心部は意外にコンパクトで歩いて回ることが出来ます。住民の約4割が海外生まれといわれる国際化の進んだ都市で、簡単に仕事を見つけることができます。ニュージーランドらしさを感じさせるものはあまりありませんが、都会的な生活を好む人や外国から来た人には居心地のよい街です。反面、大都市化に伴う生活費の高騰に頭を悩ませる人が多いのも事実です。住宅は富裕層が投資目的に購入するものも多く、外国からの資金も入って投資が投機化し、「買うから騰がる、騰がるから買う」のバブル状態です。また交通渋滞が深刻化するオークランドの中心部には小さなスーパーが一つあるだけで、日常のまとまった買い物は、郊外のスーパーかショッピングモールに行かなければなりません。ここで生活するにはやはり車は必需品です。4人のうち3人がマイカー通勤する車社会ですが、最近は供給不足で駐車場代が高くなり、聞くところではオークランド大学のスタッフでも大学の駐車場を借りるのに年間16万円支払っているそうです。治安の面でも凶悪犯罪こそ少ないものの窃盗事件は多発しており、多くの日本人が被害にあっていると聞きました。
 人口の大都市集中は経済的には全く合理的なことです。しかし、一方でその行き過ぎが混雑現象による社会的費用を発生させるという点では、オークランドも世界の大都市の例に漏れません。さまざまな問題を抱えながらも活力と魅力あふれるオークランドは、ニュージーランド経済の中心として、また国際都市としてこれからも発展しつづけるでしょう。