2021.11.19

2020年度法学検定試験関連事業及び法実務家による勉強会実施のご報告

1.法学検定試験に対する取組

 ビジネス法パッケージでは法学の授業のみならず、課外でも法律学の学修に勤しんでいる。
 特に法学検定試験に対する取り組みを挙げる事ができる。法学検定試験とは、法学に関する学力を客観的に確認・評価する検定試験である。法学検定試験の内容は、易しい順からベーシックコース(法学部2回生修了程度)、スタンダードコース(法学部3回生修了程度)、アドバンストコースの3コースが設けられている。ベーシックコースは法学入門、憲法、民法、刑法の知識を問う。スタンダードコースはこれに加えて選択科目が1科目加わる。具体的には行政法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、基本法総合である。本学では経済学部でありながら、これらの科目の充実と受検促進の両面で取り組んでいる。
 まず科目の充実について説明する。まずベーシックコースに必要な科目の内、基本科目である法学入門に該当する法学、それから憲法、民法、刑法は本学で開講されている。スタンダードコースの基本法総合以外の選択科目の内、行政法、商法が開講されている。
 ただしこれらの科目はそれぞれの科目の基本の習得が目標であるから、ベーシックコース合格水準相当であるといえる。そこでスタンダードコースに合格するために、より高度な法的素養が必要になるから、スタンダードコース合格レベルの知識習得を目標とする法学検定憲法、法学検定民法、法学検定刑法がそれぞれ開講されている。
 次に受検促進についてだが、まず広報活動が挙げられる。パッケージ所属教員担当の授業での広報はもちろん、TKC提供の自学自習学習ツールモニターに応募し、全学に広告した上で10人を超える学生にアプリを提供した。さらに本学部では法学検定試験団体受検を実施してきた。これは大学・企業等でまとめて受験することにより、受験料の割引や詳細な試験結果の提供を受けられる制度である。本学では初級コースであるベーシックコースと中級コースであるスタンダードコースを実施してきた。
 昨年は本学南キャンパスにおいて実施され、8人が受験した。その結果、ベーシックコースは受験者4名に対して2名が合格し、スタンダードコースは受験者4名に対して1名が合格した。
 なおベーシックコースの2名は何れもパッケージ教員が担当する講義科目あるいは演習の履修者であった。
 また本学には、あくまで部活動ではあるが、パッケージ教員の松村准教授が顧問をし、指導をしている法学研究会がある。同部は法学検定等の合格を目指して日々法的素養の研鑽について切磋琢磨している。スタンダードコースの合格者は同部部員であった。

2.外部講師による勉強会

 実学教育を標榜する本学にあって、学生がビジネスの現場を知る機会を設けることは大切であり、これはビジネス法パッケージとしても同様であるから、本パッケージでは企業法務等の実務に精通した法曹・準法曹(法曹三者以外の法律系専門職。司法書士、行政書士等)からの協力を得ながら学士課程教育の質保証を目指している。その一環で、本パッケージ内に設置されている松村准教授担当の「ビジネス法特講1」の授業において、熊野雅恵氏(行政書士・ライター)を外部講師として招き、「コンテンツビジネスを巡る法的問題」というテーマで、Teamsを利用したオンライン講義を行った(令和2年7月28日)。
 さまざまなSNSを通じて情報発信をすることが容易となる中で、それが社会に受け入れられ、発信者がクリエイターとしての地位を得ることも稀ではなくなっている。そうした中でどのような法的問題が起こりうるのかについて、企業法務のみならず、映画・クリエイター関係の法務に明るい熊野氏に、かみ砕きながらもレベルの高い講義をして頂いた。高度な内容であったが、講師の教授力の高さもあり、受講した学生からは、「これまで知らなかったことを知ることが出来た」「法律関係や権利関係について正確に理解しておく必要を強く感じた」「続きを受講したい」といった満足の声が寄せられた。そのため、この続編を10月14日、21日にも実施し、その際には講師と学生との双方向のやり取りによって、学生を理解を深める姿を確認することができた。

3.FD勉強会

 松村准教授主催による学生向けのFD勉強会が2月22日にteamsオンラインで開催された。外部講師として行政書士の熊野氏を招き、池田准教授がコメンテーターを務めた。
 勉強会開催の趣旨は以下の通りである。ビジネス法特講(AI社会と法)の受講者、教養演習等で法律学を学修した学生を主たる対象として、授業で扱ったAIと法規制という観点から、いわゆる準法曹として位置づけられる士業事務所から講師を派遣してもらい、士業に対してAI社会の進展がどのような影響を及ぼしつつあるのかについて、今後の展望も含めた講義を実施する。これにより授業内容を深めながら、ともすると無目的に資格取得のみを目標としがちな学部生が主体的に各自のキャリア形成という観点から資格取得という問題について考えていくためのヒントを提供することを目指した。
 当日は松村、池田担当の演習履修生から数名が参加し、講演では適宜講師より質問が投げかけられ、双方向的に進められた。
 熊野氏によれば、弁護士以外の士業の多くはAIによって仕事を奪われる事が予測されるが、コンサルタント的な仕事は残っていくだろう、ということであった。その他士業を利用する際の心構え等が教授された。
 コメンテーターは紹介された士業の他に宅建士、管理業務主任者等、マンション管理士についても言及し、前二者は法律により必置である強み、それからマンション管理士はコンサル業である事等を紹介した。
 松村准教授からはAIが自動車開発において集約されている事等が紹介された。