2014.11.14
【阪南経済Now11月号】女性就業率の数値目標 -20~44歳の女性の就業率を2020年までに73%に-
【阪南経済Now11月号】女性就業率の数値目標 −20〜44歳の女性の就業率を2020年までに73%に−
2014年9月3日に組閣された第2次安倍改造内閣にて、「女性活躍担当大臣」が新設されました。10月31日には、「女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案」(略称「女性活躍推進法案」)が衆議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りしました。有村女性活躍担当大臣は法案の主旨を「仕事と家庭が両立しうる多様な勤務形態の整備など、それぞれの女性の意思に応じた働き方の実現を推進する」などと説明しています。なおこの法案は、国や地方自治体、従業員が300人を超える企業・団体に女性管理職の割合など数値目標を自主的に設定し公表することを義務づけていることで注目されています。
「女性が、仕事と家庭を両立させながら活躍できる社会環境の整備」が求められたのは、今に始まったことではありません。最近では、2010年6月に民主党政権のもとで閣議決定された新成長戦略は、2020年までに25〜44歳の女性就業率を66%から73%に上昇させると数値目標を掲げました。この数値目標の実現は、可能なことなのでしょうか。
図1は年齢階級別に就業率、潜在的労働力率についてみたものです。
「女性が、仕事と家庭を両立させながら活躍できる社会環境の整備」が求められたのは、今に始まったことではありません。最近では、2010年6月に民主党政権のもとで閣議決定された新成長戦略は、2020年までに25〜44歳の女性就業率を66%から73%に上昇させると数値目標を掲げました。この数値目標の実現は、可能なことなのでしょうか。
図1は年齢階級別に就業率、潜在的労働力率についてみたものです。
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図1 年齢階級別就業率及び潜在的労働力率(2010年) (出典 厚生労働省『平成22年版 働く女性の実情』)
注:就業率=就業者/15歳上人口×100
労働力率=(就業者+完全失業者)/15歳上人口×100
潜在的労働力率=(就業者+完全失業者+就業希望)/15歳上人口×100
労働力率=(就業者+完全失業者)/15歳上人口×100
潜在的労働力率=(就業者+完全失業者+就業希望)/15歳上人口×100
就業率は、25〜29歳では72.3%とほぼ目標数値を示しており、30〜44歳は60%台です。しかし、労働力人口に就業希望を加えて算出した潜在的労働力率は、どの年齢層も73%以上の数値です。この就業を希望している人たちが求職していないのには理由があります。最も多い理由は「家事・育児のため仕事が続けられそうにない」というものです。したがって、こうした女性の就業希望を実現するためには、仕事と家事・育児を両立できる環境を整備すればよいということになります。
それから3年が経過した2013年の労働力率と潜在的労働力率を、図2でみましょう。
それから3年が経過した2013年の労働力率と潜在的労働力率を、図2でみましょう。
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図2 年齢階級別就業率及び潜在的労働力率(2013年) (出典 内閣府『男女共同参画白書 平成26年版』)
労働力率をみると、25〜29歳層は79.2%、30〜34歳層は70.4%、35〜39歳層は69.7%、40〜44歳層は73.3%です。労働力率には完全失業者が含まれているので、就業率よりも若干高くなりますが、25〜29歳層と40〜44歳層は73%を超えています。30歳代は約70%です。就業希望者を加えた潜在的労働力率は80%を超えています。
わずか3年で成果が出たと言えるのかといえば、そうとは言えません。2013年の就業希望者は315万人いますが、そのうち正規の職員・従業員を希望しているのは16.3%で、72.4%が非正規の職員・従業員を希望しています。これは、子供を持つ女性が正規の職員・従業員として仕事をすることの困難さを反映したものと言えます。図3で、2013年の年齢階級別労働力率の就業形態別内訳をみると、35〜44歳の大半が非正規雇用者です。
わずか3年で成果が出たと言えるのかといえば、そうとは言えません。2013年の就業希望者は315万人いますが、そのうち正規の職員・従業員を希望しているのは16.3%で、72.4%が非正規の職員・従業員を希望しています。これは、子供を持つ女性が正規の職員・従業員として仕事をすることの困難さを反映したものと言えます。図3で、2013年の年齢階級別労働力率の就業形態別内訳をみると、35〜44歳の大半が非正規雇用者です。
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図3 年齢階級別労働力率の就業形態別内訳(2013年)(出典 内閣府『男女共同参画白書 平成26年版』)
ちなみに、正規雇用者には結婚していない女性や、結婚していても子供を持たない女性が多く含まれています。
現在の日本の課題は、第一子出産後も女性が継続して就業できる環境の整備です。ところが1985〜1989年の第一子出産前後の妻の就業継続率は39.0%であったのに、2005〜2009年には38.0%ヘと低下しています。2012年におけるOECD諸国の25〜54歳の女性の就業率でも、日本は69.2%と35カ国中25位です。OECDでは、日本の低水準の原因を約6割の女性が第一子出産後に退職していることにあるとし、「人的資源のフル活用が将来の経済成長を実現する手段」と、日本政府や企業に対して女性の就業支援を促しています。
2020年までに20〜44歳の女性の就業率を73%に引き上げることは、実現できそうです。しかし、「非正規でしか働けない」とか、「働ける環境にはないけれども、働かざるをえない」という人達によって、就業率が引き上げられたとしても、それは目標を実現したとはいえません。
人口や労働力人口の減少が進んでいる現在、出産後の女性の就労継続は将来の労働力確保のためにも必要なことです。就業率73%が実現できたとしても、その実態を見極める必要があります。
現在の日本の課題は、第一子出産後も女性が継続して就業できる環境の整備です。ところが1985〜1989年の第一子出産前後の妻の就業継続率は39.0%であったのに、2005〜2009年には38.0%ヘと低下しています。2012年におけるOECD諸国の25〜54歳の女性の就業率でも、日本は69.2%と35カ国中25位です。OECDでは、日本の低水準の原因を約6割の女性が第一子出産後に退職していることにあるとし、「人的資源のフル活用が将来の経済成長を実現する手段」と、日本政府や企業に対して女性の就業支援を促しています。
2020年までに20〜44歳の女性の就業率を73%に引き上げることは、実現できそうです。しかし、「非正規でしか働けない」とか、「働ける環境にはないけれども、働かざるをえない」という人達によって、就業率が引き上げられたとしても、それは目標を実現したとはいえません。
人口や労働力人口の減少が進んでいる現在、出産後の女性の就労継続は将来の労働力確保のためにも必要なことです。就業率73%が実現できたとしても、その実態を見極める必要があります。