2015.7.31

「環境」と「経済」の密接なカンケイ

「環境」と「経済」の密接なカンケイ

 阪南大学経済学部のホームページをご覧の皆さま、こんにちは。千葉知世と申します。私は2015年4月より阪南大学で勤め始めました。
 いまこのページをご覧いただいている方には、きっと「阪南の経済学部ではどのような学びができるのだろう?」というご関心をお持ちの方が多いのではないでしょうか。私が本学で主に担当しているのは「環境経済論」という科目です。この科目では、「環境経済学」や「環境政策論」と呼ばれる学問領域の基礎の基礎を学んでいます。そこで以下では、「環境経済学」や「環境政策論」とは一体どんなものなのかをお話ししてみたいと思います。

(なお、以下の説明は一般の方々向けに分かりやすさを重視しましたので、正確さには欠ける部分があります。専門家の方がご覧になっていれば、どうぞお見逃しください)。 
 皆さまは「環境問題」と聞くとどのようなものを思い浮かべられるでしょうか。本学の学生に尋ねてみると、「地球温暖化」「PM2.5」「ごみのポイ捨て」といった答えがよく返ってきます。これらは確かにいずれも環境問題です。地球温暖化(気候変動)問題は、人類の直面する最も解決困難な課題の一つですし、PM2.5は越境大気汚染の問題です。ごみの不法投棄も深刻な自然環境汚染の原因となっています。その他にも、例えば生物多様性の損失の問題、エネルギー供給の問題、資源枯渇の問題など、様々な問題があります。
 こうした環境問題に共通しているのは、第一に、人間の何らかの社会経済活動が原因で起こっているということです。第二に、あらゆる国において重大な問題となっているということです。その国が資本主義国であっても社会主義国であっても、先進国であっても発展途上国であっても、北半球の国であっても南半球の国であっても、いまの社会が普遍的に直面している問題と言ってよいでしょう。
 人間の何らかの社会経済活動が原因で起こっているにも関わらず、従来の経済学では、環境問題は主な関心の対象とされてきませんでした。しかし、特に産業革命以降、先進国の各地で公害問題が噴出するようになると、経済学は環境問題をいよいよ無視できなくなりました。さらに1980年代頃から、経済のグローバル化が進行し、国際的な経済の相互依存関係が深くなるにつれ、人間の活動は地球規模の環境悪化を引き起こすということが認識されるようになりました。いわゆる地球環境問題の顕在化です。

 こうした中で、「環境と経済の関係」を理解しようとする動きが大きくなります。つまり、環境問題を引き起こす経済の仕組みは一体どういうものなのか、環境破壊によってどれほどの経済的損失が生じるのか、環境破壊を防ぐためにはどのような措置をとるべきなのか、といったことが盛んに論じられるようになったのです。こうした問題が「環境経済学」の主要な課題と言えます。そして「環境政策論」は、環境経済学をはじめとする様々な学問分野の知見を借用しながら、環境問題を生じさせる社会構造を分析し、現実の環境問題に応用できる具体的な政策を考え出すことを目指しています。

 さて、このような分野を扱っていると、たまにこのようなことを仰る方に出会います。「環境も大事かもしれないが、人間にとっては、経済発展の方が大事ではないか。環境を守るために、経済発展が妨げられるのには同意できない」。もしかしたらここを読んでくださっている方々の中にも、こうしたご意見をお持ちの方もおられるかもしれません。
【※写真:よく自宅近くの里山林を散策しています。自然に癒されリフレッシュできる,これも人間が環境から受けるサービスのひとつです。】
 しかし考えてみて頂きたい。環境が深刻に悪化した状況で、持続的な経済発展は可能でしょうか。人間が自然環境から享受している財やサービス(自然の恵み)のことを、環境経済学の用語で「生態系サービス」や「環境サービス」と呼びます。この生態系サービスの多くは、金銭的な価値をもたない(価格がついていない)ため、「タダ」だと思われてきました。しかし、これに莫大な経済的価値があると考える経済学者たちもいます。中には、地球生物圏の生態系全体のサービスの金銭的価値を評価し、その価値を当時で年間16兆〜54兆USドルとした研究例もあります(注1)。つまり、環境破壊は経済的損失を生み出し得ます。また、経済が資源の状況に依存している以上、長期的に環境破壊は経済活動それ自体を制約する要因となるのです。
 さらに、高い経済成長を達成していながら、汚染された環境の中で暮らさねばならない状態を、人々は「幸福だ」と思えるでしょうか。
 「経済か環境か」ではなく、「経済も環境も」高めていく必要があり、そのために環境経済学や環境政策論は不可欠な学問です。経済学部に興味を持たれた皆さま、環境破壊を最小限に抑えて豊かに暮らす道を、そのための社会・経済のつくりかたを、一緒に模索してみませんか。
 今回は初めての投稿でしたので、「環境経済論」で扱っている内容のおおまかな紹介をさせていただきました。次の機会には、私の具体的な研究内容の紹介をできればと思います。またお目にかかるのを楽しみにしております。

(注1)Costanza,R., d’Arge,R., de Groot,R., Farber,S., Grasso,M., Hannon,B., Limburg,K., Naeem,S., O’Neill,R.,V., Paruelo,J., G.Raskin,R., Sutton,P. and ven den Belt,M. (1997) “The value of the world’s ecosystem services and natural capital” Nature, Vol.387, pp.253-260.