2014.1.15

「平和と宗教」にフォトジャーナリストの宇田有三先生をお招きしました。

「平和と宗教」にフォトジャーナリストの宇田有三先生をお招きしました。

 「平和と宗教」(守屋担当)で、1月10日にゲスト講師として、フォトジャーナリストの宇田有三先生にお越しいただきました。宇田先生は約20年間、軍事独裁国家のビルマで取材を続けてこられましたが、授業ではその取材の難しさとともに、最近のビルマ情勢についてもお話しいただきました。
 最初に、私たちがふだん何気なく目にする事件やイメージが、錯覚や先入観のために実際と違って認識されることについて、実際にゲーム風に体験しながら気づかせていただきました。正しい情報と思っていても、それがマスメディアや自分の固定観念によって作られている場合があると、私たちは自覚しておく必要があるからです。情報を得る際に「賢い」消費者になることが大事だと教えて下さいました。
 というのも、ビルマ(ミャンマー)という、情報が少ない国については、実態がわかりにくいだけに一面的で誤った情報に惑わされてしまいやすいのです。それは「ビルマ/ミャンマー」という国名、地理的な位置や人名表記についての誤解に始まり、「ビルマ軍事政権の独裁者」の黒幕が誰なのか、私たちがわかっていないということに及びます。
 ビルマには、世界で最も長く続いた内戦があり、それはビルマ国軍と少数民族であるカレン民族同盟(KNU)の間で続いてきました。中東のように市街地で紛争が起こり、海外のジャーナリストが報道しやすい環境とは異なり、ジャングルの中での戦闘であるため、国際社会に向けて報道されることは少なく、あまり知られていません。とりわけ、1962年のクーデター以降に軍事政権の支配が続くなか、自由な取材活動は大きく制限されてきたのです。
 ビルマが抱える問題には、民主化、民族対立、宗教対立、麻薬、環境破壊、核疑惑などさまざまなことがあり、宇田先生が軍事政権下で続けてきた取材は、実に難しいものでした。厳しい情報統制と監視のために実態がつかみづらく、また取材での安全をどう確保するか胃が痛くなるほど気を遣われたとのことです。「安全」とは宇田先生自身のためではなく、取材したビルマ人が軍情報部に逮捕されないようにすることだそうです。そうした取材の難しさを、2007年の民主化デモの動画を見ながら、私たちが見過ごしそうな場面の解説を通して教えて下さいました。
 さて、形ばかりとはいえ「民政移管」を行ったビルマは、現在どういう課題を抱えているのか。近海に天然ガスなどの資源が発掘されたこと、ビルマ西部から中国へ抜ける新道路の建設など、著しく経済開発が進められようとしています。しかし経済発展が大きく報じられる影で、少数者とりわけイスラームを信奉するロヒンジャと呼ばれる人々への弾圧はむしろ厳しさを増しています。
 大きな変化の岐路に立つビルマについて、一面的な情報に惑わされず、綿密な現地取材に基づく情報によって、様々な問題を考えることの大切さを教えていただきました。