2013.7.26

文化財の新しい活用への挑戦

文化財の新しい活用への挑戦
4回 門脇七恵

「門脇家住宅」庭内でのコンサート様子

 私の実家は国の重要文化財に指定されている鳥取県の「門脇家住宅」というところです。200年以上も前に建てられた民家の建物であり、今もその建物の空間で実生活を営みながら、家族みんなで文化財としての「門脇家住宅」を支え続けています。門脇家住宅では、毎年、春と秋に一般公開が行われますが、今年度は、春の一般公開はせずに、新しい企画として6月8日にコンサートが実施されました。文化財「門脇家住宅」の新しい活用法を模索する取り組みとして行った「大屋根の郷コンサート〜ホタルのいざなう宵に〜」の様子をレポートさせていただきたいです。
※この報告は、阪南大学【実学志向型総合的キャリアシステムの構築】事業の2013年度キャリアゼミ支援事業「異文化交流と比較文化論的調査により多文化共生を目指す(CHOゼミ)」の「門脇家住宅」の活用法に関する調査報告の一部です。
※この学生教育研究活動は阪南大学学会より補助を受けています。
 今回のコンサートは「大屋根の郷コンサート〜ホタルのいざなう宵に〜」と題し、門脇家住宅の前庭にて行われました。門脇家住宅の大きな象徴でもある、茅葺の大屋根をライトアップし、幻想的な雰囲気が演出されました。県内をはじめ、関西などから100名以上の方々に足を運んでいただきました。歌い手には、門脇家12代目当主の長女(私の姉)である門脇美和氏、そして神戸を拠点に全国をまわっておられるピアノ弾き語りシンガーソングライターの松中啓憲(まつなか あきのり)氏をお迎えました。県外で活躍されているアーティストをお招きすることで、県外に住むそのファンの方達にも足を運んでいただき、1人でも多くの方に重要文化財の「門脇家住宅」の建物を見ていただくことが出来たと思います。

「門脇家住宅」建物周辺見学の様子

 この日はコンサート以外にも、 文化財である「門脇家住宅」屋内や建物周辺を見学していただけるように開演までに時間を設けました。また、門脇家住宅の周辺にはホタルが飛び交う季節でしたのでコンサート後にホタルツアーを敢行しました。お越しいただいた方に、門脇家住宅の周辺環境を含め、歴史や建物に少しでも興味を持っていただくことが目的でした。私も解説やツアーガイドをさせていただきましたが、自分が育った当たり前の環境が、自分以外の方にとっては当たり前でないこと、また、正しい情報(歴史)を伝承していかなければならないということに改めて気付かされました。

 200年以上の歴史の中で、大屋根をライトアップしてコンサートを行うということは初めてのことでした。コンサートホールではないので、音響・照明をはじめとするスタッフの手配、看板作り、座席の準備等、本当に全てが手作りの企画でした。今回のコンサートは、今まで門脇家住宅に何度も来られた方からも「新鮮だった」と評価して頂けました。勿論、初めて来られた方にも「文化財でのコンサート」ということで、非常に喜んでいただけたと思います。これからもコンサートだけに留まらず色々な形で、文化財「門脇家住宅」の活用法の企画を考えていきたいと思いました。これからも残していかなければならない重要文化財の建物を、どのように活用するかを考えるということは、やはりこの家に生まれた人間の宿命だと考えています。私の研究テーマである「文化財の保存」と「文化財の活用法」について、より深く考える機会となりました。