2015.7.14

ユニバーシアード大会光州大会(The28th Universiade Gwangju 2015)短信その3(須佐監督)

グループリーグ第2戦vsブラジル戦

取り敢えずブラジルには1-0で勝ちましたが、最終3戦目で、2勝の日本と1勝1敗のマレーシアが直対決、それに今日は日本に負けはしたが、1勝1敗のブラジルとイラン戦との結果次第では、グループ3位に落ちて下位トーナメントに回る可能性もあります・・・最後まで気が抜けません!

この試合の評価はチームスタッフに譲るとして、ブラジルの戦略、「身体支配力」と技術、阪南大勢のプレーについて考えたいと思います。

1.ブラジルの戦略

 スカウティングでたいしたことがないように見えたブラジル。しかし、第2戦前日の夜、日本チームがミーティングを終えて、部屋を出ると隣の部屋からブラジル勢も出てきました。何か騒がしいなと思っていたら、ブラジルチームだったのです、しかも選手だけで。そのあと宿泊棟に戻る途中でブラジルスタッフがPCを抱えてミーティングルームがある棟の方に向かって歩いているのに遭遇。私が一旦宿泊棟に戻り、再び30分後にその棟にキャッシングしに向かうと、ちょうどミーティング終えたブラジルの選手たちがぞろぞろ出てくるところでした。中でスタッフが後片付けを・・・計1時間強ミーティングしていた計算で、日本戦への意気込みを感じさせました。

 実際対戦してみると、前半はかなり圧倒される場面も多く、日本の力量不足を、そしてブラジルチームの規律の高さを感じさせました。スカウティングしたマレーシア戦でのブラジルは、第2戦までの日本戦までをワンセットとして捉え、この第1戦は出来る限り省エネで勝つことのみ、勝ち点3をゲットすることを目的にしていたかのような戦いぶりでした。マレーシアが引いて守るなら、ボールを失わないようにゆっくりつなぎ、隙、綻びが出来たら、縦に行く、そうでなければ、仕掛けのリスクを避けてロングボールを入れるような戦術で戦っていたと評価しうるのではないでしょうか?FK、PKで得点してからは、一層その傾向を強め、ブラジルは強いのか、たいしたことないのかよく分らない状態を作っていました。

 私信および第2報で「明日はたいしたことがないとのスカウティング報告を受けたブラジルでも、イランもそうだったけど、一定の身体支配力は持っていそうなので、侮れはしませんが・・・」と書きました。しかし実際試合が始まってみると、開始早々はなかなかいい入り方をしたけれども、前半4分前後から主導権を握られてしまいました。というか、自滅して落ち込んでいくというか、アスリートとしてのベースで劣っているというか(後述)、日本は前半上手くボールが収まらず、相手の「身体支配力」に押されるシーンが多く、苦戦を強いられました。ボールを奪いきれないときに試合展開に応じて粘り強い守備を敢行しなければならない場面でもあっけなくファールを犯してしまい相手を利する結果を招いている状況でした。
 こういう試合展開を見ていると、ブラジルは最初の2戦をセットで考えるほど、周到で、なかなかしたたかだったということでしょう。
 日本はチームのリズムが長続きしないままでも、何とか呉屋大翔(関学大4年)のDFライン背後への動き出しを活かそうとし、5回ほどの突破を試みてはいました。何とか流れを引き戻しつつあった34分重廣 → 松下 → 呉屋で突破を仕掛けるも、非常にもオフサイド判定!後でVTR見直すとノーオフサイドでしたが。しかし、「身体支配力」の差が再びでて流れがブラジルに・・・  
 前半終了間際・ロスタイムの決定的ピンチを招くことになりました。前半上手くいかなくても、決定的ピンチにならなかったのは、この日ス初スタメン起用されたGK前川薫也(関西大3年)、萩間大樹(専修大4年)、湯澤聖人(流経大4年)らの心意気と能力によるものだと思います。そのロスタイムの決定的ピンチでも(前半上手くいかなかったとはいえ、決定的なのはこの1回のみでした)、DFを振り切って侵入してくる相手エース?(プロの2部でプレーしているという20歳、キャプテン:20名の登録メンバーのうち22歳以上が7名含まれる・・・28歳まで出場可能、スタメンには3名。その中でキャプテンを務めているほど技量が抜きんでているということでしょうか!? 顔は全く「老け顔」。経歴詐称する理由が見当たらないので、本当に20歳か!)に対する前川の飛び出し方はタイミング、角度、スピードは素晴らしかったです。このピンチが失点にならなかった意味は大きかったと思います!

2.「身体支配力」と技術について

 難しい短信が続いて申し訳ありません。日本が思ったような展開にならなかったのは、『自滅』的部分ですが、アスリートとしてのベーシックな問題:コォーディネーション能力に劣っている面があったからでないでしょうか! 特にバランス能力、空間定位能力、分化能力(合わせて空間定位・分化能力とも。自分とボールとの位置関係を、視覚情報に依存しすぎることなく、瞬時に定めて落下点を捉える能力のことで、単なる予測、読みでもなく、実際には相手のキックモーションや状況を見てアンティシペーションの側面は入ってくるが、先読み的な部分、ヤマ勘でボールを捉えるのとは異なる。そしてその落下点に向けて時・空間、タイミングを調節してボールへのアプローチを図り方:五歩でとか3歩でとか梯子をかけるようにボールに入っていくのが分化能力)に差があるように見受けられました。
 前半15〜16分までに空中戦の競り負け、拾い負けた、ベースとしての空間定位・分化能力に劣るシーンが5回、20分あたりまでに、拾っても、ボディコントロール効かずミスパスや相手に追い詰められたシーンが5回、さらに同様のケースが30分過ぎまでに5回というように、それでも何度か突破を試みるが(敢えてガンガンしかけさせずに失わないことを心がけさせるも)ボールを失った後競り負けたり、拾い負けたり、バランス保てずイージーミスに陥ったりすると、リズムの出ない、ちぐはぐな苦しい展開が続きました。
 ブラジルのアタッキング3rd(相手の攻撃ゾーン)での力量不足にも助けられた感もありますけれども、上述のロスタイムの決定的ピンチもことなきを得て無失点で折り返したのは大きかったと思います。これこそ、2年間近くかけて強化を図ってきた成果の一旦でもあり、選手育成の成長の証しでもありますが、苦しんだことも間違いないです。
 敢えてこんなことを述べるのも、日本の選手育成方法に疑問を感じることがあるからです!育成段階で、こじんまりまとまった(ようにしか見えない)、ボールコントロールの上手なプレーヤーを評価し過ぎるきらいがあるように感じます。それはそれでいいのですが、問題は上述した技術的側面のベースとしての「身体支配力」が上がっていかないことにあると思われます。よく素材の発掘・育成と言われますが、素材の何を観るかという点 : 技術レベルは低くてもその「身体支配力」が備わっているか、換言すれば伸び代があるや否かという点を、育成に関わる者は見落としてはいけないと思いますし、優秀な指導者・スカウト・科学者の経験値や英知を結集して、「観る&診る、見抜く」レベルを上げていかないといけないと思いました、特に彼らの前半の闘いぶりを観て主導権を握れないのはこの辺に原因の一端があるかなと・・・。

 日本の選手育成方法の改善のためには、ひとつは、「身体支配力」が高そうな子どもを発掘して、専門技術的要素を身に付けていく方途(『発掘の眼力』を持つこと)、もうひとつは、ある程度技術レベルの高い子どもに対し、コォーディネーショントレーニングや初動負荷法をはじめとする何らかのレジスタンストレーニングを施しベースを上げより高い次元での技術発揮可能なレベルに引き上げること(こういうふうにレベルアップするだろうという『見通し』、その方法論に関する『知識』を有すること)、が必要になってきます。
 ある程度の技術レベルにあっても、スピードが上がる、パワー出力が上がった状態でプレーしなければいけない、プレッシャーが厳しい中で力を発揮しなければいけない時、つまり動力的側面が強まっても自己の身体を、動力次元を落とすことなく制御しうる能力を養成することが、育成段階で必要なのです。日本の選手育成方法の問題点の一側面があるような気がします。

3.阪南大生のプレー

 この日は、予想通り、松下、八久保、重廣の阪南大トリオ揃い踏みというスターティングラインナップでした。第1報にも書きましたが、全日本大学選抜が4月の合宿で対戦した関東社会人チームのブリオベッカ浦安戦で(第1報では6月と誤ってました)、3本目にこの3人が絡み連動して得点につながったシーンがありましたが、そういったプレーが発現することが期待されての起用だと思います。 
 しかし、柔道や相撲、ボクシング等々の格闘技で自分の組手・スタイルに持っていければ、自分の得意技が出せるが、相手がそれを封じるような戦術行動を取ったり、力づくで阻んだりしてきたら、そういったプレーが発揮できないということがありますが、今回のケースがまさにそれと類似のことだったように思います。上述のごとき、競り合いに負ける、こぼれ球を拾えない、ボールが多少ずれて受けたら、ミスる、そこではミスらないがその後のプレーがズレて⇒そこでは失わないものの次のプレーヤーのミスを誘発する、両者ともミスにはなっていないが、相手DFラインの突破に向けた仕掛け・仕掛け直しに繋がらず、セーフティーにしかプレーできない=プレッシャーがより厳しい状況が発生すればよりアグレッシブにするようには身体制御できずに安全な方向に逃げるしかないようなプレーしかできない(攻撃のベクトルが自陣を向く)、等々というように、落下点を捉え、次のプレーをより攻撃的に持っていくような、技術発揮をそのようにさせしめる、ベースとしてのコォーディネーションに(特にバランス能力、空間定位・分化能力)ブラジル選手と比べると劣っているようにみえました。
 松下は国内レベルでは、かなりのレベルに達しています。八久保も少しムラはありますが、1年次に比べればよくなっていますし、重廣も然りです。ユニバーシアードレベルとはいえ、特に今大会のブラジルチーム(韓国チームも高い)とは差が出てしまいました。そういう点で、国際経験はあらためて大切だなぁと感じる次第です。
 彼らもこういう経験を今後に生かして成長するとともに、阪南大学のチームメートに浸透させていってもらいたいと思います。