2020.4.7

ソフト開発企業及びゲーム分析会社と連携した、サッカー戦術の質的把握のための分析ソフト活用【最終報告】

活動テーマ:ソフト開発企業及びゲーム分析会社と連携した、サッカー戦術の質的把握のための分析ソフト活用
連携先:株式会社ダートフィッシュ・ジャパン


 表記活動に関して、ゲーム分析ソフトウェアを取り扱う「ダートフィッシュ・ジャパン」の取締役・営業本部長の藤井透氏の協力を得て、4年生を中心に、3年生ゼミ、2年生ゼミを巻き込んで、キャリアゼミとして取り組んできた。活動内容としては、以下を中心に活動した。
阪南大学サッカー部の公式戦のゲーム分析
  1. 映像分析:
    ①撮影&映像のキャプチャ、②映像編集(タグ付け)・情報収集・評価ソフトダートフィッシュを活用し分析、③プレー能力の評価・達成度・問題修正点を、ゼミ生中心に試合出場メンバー(一部重複)とともにディスカッション
  2. 数量データ分析:
    ①試合進行中リアルタイムに全部員を動員し(輪番制での協力を得て)、数量データを収集、②ゼミ生と試合出場メンバーとでデータ整理、③表・グラフの作成
  3. 映像分析と数量データ分析を検討し、試合の達成度評価、問題点と課題の抽出を行う。
    3D映像分析、TV映像等の平面画面から走スピードの測定が可能とした、ゲーム分析ソフト
    「DARTFISH PRO S」搭載の3Dアナライザーを活用して、ワールドカップや本学の突破スピードの測定を試みた。
  4. SNS(ツイッター)を通じた阪南大サッカーの告知活動

学生活動状況報告

 ダートフィッシュ・ジャパンの藤井氏からゲーム分析ソフトの基本操作、ゼミ生間で課題を共有する際にプレゼンしていくためのプレイリストの編集作業(ダートフィッシュではモンタージュ編集という)、抽出したイベントリストから統計データをとる方法やエクセルデータへのエクスポートと編集作業等を指導してもらえたので、昨年度よりら自分たちのデータ活用能力が向上したと実感し、実際の公式戦であるリーグ戦での試合改善に役立てようとした。しかし、実際の試合内容を分析しタグ付けしていくための分析項目(タギングパネル作り)が、試合を重ねるごとに気になる点が出てきて、それを毎回毎回改善していったため、作業が大変になり、前の試合を反省し、課題を抽出し練習に落とし込み、改善に役立てたとは言えなかった。特にゴールデンウィーク中に4試合と立て込んだ時に関してはどうしても作業が追い付かず中々試合改善にはつながらなかった。
 分析技術に関しては先述の藤井氏の指導や分析回数を重ねていった事によってかなり向上したと思うが、実際にタグ付け作業を行っていくとき、もちろん自動的に項目付けされることはなく、かなり集中して考えながらやらなければならなかったので、大変だったというのが本音である。分析を現場に落とし込むという目標を最初に立てて、学生だけではまだまだという反省が残りはするが、夏休みに前期の見直しを集中的にやり、全体的にまとめ直すことによって戦術面や技術面の問題点を客観的に捉えることができ、それをトレーニングの改善と選手の意識改革に役立てられたという点は一つの成果と言える。
 阪南大サッカーの戦術的課題に取り組んだグループの他、ヨーロッパトップリーグの『縦パス』分析グループ、『SNSを活用した阪南大サッカーの告知活動』を研究したグループも各グループで課題を出し、グループメンバーで話しながら意欲的に、能動的に作業ができていたので、それなりの成果を挙げたと思う。

流通学部 名良橋 拓真

参加学生一覧

呉 世心、小笠 姫馬、小國 憲弥、岸元 海、石橋 幸太郎、佐藤 瑠己安、四ヶ所 昌宏、清水 大輝、名良橋 拓真、長谷川 隼、林 雄飛、朴 賢太、深見 蓮、吹ケ 徳喜、弥村 信幸、宮本 啓介、山田 楓真、横江 空、平石 健祐、石川 慧、LEE CHANGYU、宇佐見 大雅、大野 泰成、大野 郁哉、垣花 一斗、片岡 永典、亀安 晃太、川本 雅也、迎田 健太、小林 拓真、小山 開喜、神門 優呂、坂本 大地、澤田 祐輝、白石 健、田中 彰馬、稗田 圭吾、真瀬 拓海、山口 拓真、池下 龍磨、石橋 亘、今村 直也、江口 稜馬、大坪 蘭、梶原 和希、河合 航希、川上 秀人、喜多村 泰雅、佐藤 駿多、陶山 柾、田中 景也、ツノ ジュウリオ心、富田 竜朔、永井 絢大、福羅 光希、松岡 昂哉

連携団体担当者からのコメント

株式会社ダートフィッシュ・ジャパン
藤井 透 様

 「ダートフィッシュ・ソフトウェア」は映像をベースに運動学的観点から「動きの相違・経過・分析・評価」を行うソフトウェアです。
 2016年リオデジャネイロオリンピック、2018年平昌オリンピックなどオリンピック大会、世界各国のプロスポーツクラブチーム、ナショナルチーム、学校教育・研究・ 放送・医療など、幅広い分野で活用されています。
 ワールドカップ、世界各国のクラブチーム、代表チームで活用されているソフトウェアです。日本国内のサッカー分野では、Jリーグチームから大学チームのトップパフォーマンス分析、スカウティング、選手育成で活用され、チームスポーツにおける情報戦略の現場で多用されています。
 本研究協力により、情報分析に必要な分析項目、データの分析視点、分析内容のフィードバック法、活用術などが研究により実践活用を目的としました。
  1. 簡易的に操作し収集する方法
    <ゲーム分析のタギング機能>
    ショートカットキーの作成してリアルタイム分析の実現。
    モンタージュ機能を利用して、各スキル別プレイの集約を作成。
    <3Dドローイング>
    ビデオカメラで撮影した映像内のサッカーフィールドに、規定したキャリブレーションを加え、距離間や移動スピードなどのデータを簡単に表示させることができます。
    口頭での説明に加えて、これらの分析映像を共有することで、より分かりやすいコーチングが実現。
    キャリブレーション方法など撮影課題、設定方法について進めた。
  2. タギングパネル項目の作成方法
    ゲームコンセプトを明確にする分析項目の検討
    収集されたデータから、ゲーム内容の評価、映像ファイルのデータベース化がされ、フィードバックが容易にされた。
    統計データ抽出に向けて、タギングパネルの作成案も学習として進めた。
  3. データの個数、統計情報
    収録データから、マトリックス表示、統計データ表示が出力可能
    統計に関して、クロス集計、グラフ表示の方法について学習を続けた。

教員のコメント

流通学部 須佐 徹太郞 教授

 今年度の主要分析ポイントも昨年度に引き続き、リーグ戦の分析と現場への落とし込み作業であった。具体的には①全攻守のシーンを取り出し、その中での突破・被突破の回数・時間分布とその型の分析(チャンス‐ピンチのシーンを学生の作業がグレードをつけてゲームの流れを追いながらの分析)、②突破できないボールプログレスの問題点の分析、③守備の問題点の分析であったが、今年度は分析項目(ダートフィッシュ分析ソフトではタギングパネル内のイベントボタン / キーワードボタンという)を整理し、増加させたこと、シーンの切り取り方を変更させたことで、学生には混乱を招いたように思われる。タグ付け作業自体も大変になっただけでなく、タグ付け作業のやり直しや分析の甘さに起因する見直し作業の多発によって、【現場】への落とし込みどころではなくなったというのが実感で、もっとうまく学生を誘導していかなければと反省してます。
 必ずしも「地域社会の課題」に取り組んだわけではないけれども、産学連携の一環として分析ソフトの専門家や実際にJリーグで分析等に従事している卒業生にも話を聞く機会を設けたりしたことは学生の分析の幅を広げられたと思います。またシーズンを通してデータ収集、分析、課題の抽出・提示に取り組み、【現場】の改善に向き合ったこと、特に前期終了後総括し、夏期のトレーニングに分析の一部を活かし改善に役立てられたことは彼らにとって前向きな体験となったと思います。8月下旬の横浜遠征から9月上旬にかけての試合での出来栄えは【前期の試合】⇒【分析】‐【総括】⇒【トレーニング改善】⇒【もっといい試合】という、いい図式を実感できたと思います。がしかし、余談ですが、その後中心になるはずの選手=Jリーグ内定選手、後期開幕戦前日練習で2人の中心選手=のちにJリーグ内定選手&JFL内定選手(2人のクラッシュによる故障)という3人の中心選手を失ったことの痛手は大きく、一連の改善がリーグ戦の結果に結びつかなかったことは返す返すも残念でならない。