2023.4.27

ビジネスとしての伝統工芸:西陣織の現場を訪ねて

産学連携先:手織りミュージアム織成館 

2022年度の安城ゼミ基礎演習では、キャリアゼミ活動の一環として、日本を代表する伝統工芸品の一つである西陣織について理解を深めるべく、以下のような活動を行いました。本活動の特徴として、西陣織のビジネスとしての側面に注目し、西陣織が直面している課題と解決策についてゼミ生一人一人に考察を促すということが挙げられます。

2022年10月 事前学習として、①「織」と「染」とはそれぞれどういうものか着物の実物に触れて理解する ②西陣織とはどういうものか ③西陣織以外に日本の伝統織物にはどういうものがあるのか ④ビジネスとしての伝統織物の現状と課題 をグループごとに調べる
2022年11月 京都西陣にて1泊2日ゼミ旅行(西陣織会館にて実際に手織を体験する教室に参加、手織ミュージアム織成館にて西陣織の工房見学)
2022年12月~2023年1月 西陣織を含む日本の伝統織物の現状と課題について、グループごとにプレゼンテーションを行う
  • ジャガード織機を使用した西陣織製作現場の見学の模様(織成館にて)

西陣織の帯の文様や価格に関する解説を受けるゼミ生たち(織成館にて)

学生活動状況報告

今回、織成館で西陣織の工房を見学し、特に印象に残っているのは、ジャカード製織のための紋紙がPCを使用して製作されていたことです。西陣織は伝統工芸品の一つで、繊細な技術が求められるため、あらゆる工程を手作業で行っているものとばかり思っていました。PCという現代の技術を利用して伝統的な技術が継承されていっていることに驚かされました。しかし、現状として、西陣織を含む伝統工芸は衰退が危惧されています。伝統を残していくためには、例えば、若者向けのファッションブランドと西陣織メーカーがコラボレーションすることで、認知度を上げることができると考えます。ものを売るためにまず認知度を上げる必要があります。そもそも西陣織というものを知らない若者も少なくないので、認知度が徐々に高まっていけば、若い世代にも西陣織や着物の文化が継承され、関連商品を手に取って購入に至る可能性も高くなるのではないでしょうか。
流通学部 川崎涼太+松本結美グループ

参加学生一覧

岡崎 希海、藤田 悠斗、安座間 心愛、網本 叶、川崎 涼太、國川 想、高倉 隆秀、別所 羽菜花、堀江 美南、松本 結美、三田 怜央也、山本 翔、毛利田 小桜

連携先コメント

公益財団法人手織技術振興財団
館長代理 金田九拝 様

公益財団法人手織技術振興財団『織成舘』は西陣織の織元・渡文株式会社の店舗・工場兼住まいとして昭和11年に建てられた建築を活用し「手織を中心とする染織文化、工芸文化」の普及、振興を目的とした手織りミュージアムです。
西陣織は分業化された専門の手技によって成り立っており、今回、みなさんが見学した現場は製織の工程になります。製織の前段階である紋意匠図・紋彫・紋編の工程では、明治期に導入されたジャカード機によって飛躍的に発展し、現在PCを活用するなど、最先端の技術を取り入れながら伝統を継承しています。便利で効率的な技術が導入されても、それを扱う一人一人の職人たちの感性と経験に西陣織は支えられています。美しい織物を生み出すために、これまでの、またこれからの西陣の魅力と可能性を感じる機会になったことは幸甚です。次世代の方々に関心を寄せていただくことで、染織文化、工芸文化の発展と継承に励んでいきたいと思います。

教員コメント

流通学部
安城 寿子 准教授

安城ゼミでは、これまでにも、西陣織に関連するゼミ活動を行ってきたが、今年度は、新たな試みとして、西陣織会館にて実際に機(はた)に触れて手織を体験した上で、手織ミュージアム織成館の見学会を行うことにしました。今回、ゼミ生が手織として体験したのは、単純な平織で、西陣織のように複雑な文様を織り出していくものではないが、平織の生地を完成させるだけでも、神経と体力を使う大変な作業であることが分かったようでした。その上で、織成館を見学させていただき、西陣織の職人さんのお話をうかがったため、これまでに比べて、技術を継承していくということがどれだけ重要かつ容易でない課題であるかの理解が深まったように思います。ゼミ旅行後のプレゼンテーションにおいて、技術の継承の問題に触れていたグループが少なくなかったのは、その表れと言えるでしょう。あえて厳しいコメントを付け加えると、このプレゼンテーションの中で、西陣織を含む伝統織物が思うように売れない現状の打開策として、「SNSを活用したマーケティング」を安易に挙げる傾向が見られたのが気になりました。「販促のためにSNSを活用する」ぐらいのことは誰でも思いつくことで、何も言っていないに等しいので、具体的にどのようなSNSを使ってどのような情報をどれくらいの頻度でどのようなターゲットに向けて発信し、その結果としてどのような販売促進効果が期待できるのか、といったところまで詰めた考察を心がけてもらいたいです。