2013.8.28

第42回研究フォーラムを開催しました

第42回研究フォーラムを開催しました

 さる6月15日、阪南大学サテライトにて第42回研究フォーラムを開催しました。ビルマ近現代史が専門の根本敬教授(上智大学)をお招きして、「ビルマの現状と課題—来日したアウンサンスーチー氏の発言から考える」と題した講演をしていただきました。当日はあいにくの大雨でしたが、学内外の研究者、NGO、一般の方々を含めた約20名が参加されました。
 今年4月、27年ぶりにアウンサンスーチー氏が来日しました。その際に日本各地で行われた演説や根本先生が臨席された会議での発言などの意義について、彼女の思想やビルマの現状を踏まえて解説していただきました。
 アウンサンスーチー氏は、周知のように軍事政権下で自宅軟禁に遭いながらも民主化運動を推進してきた指導者であり、ノーベル平和賞を受賞しました。昨今の「民政移管」による情勢変化に伴い、彼女は昨年の補欠選挙に出馬して下院議員となりました。これまでの国民民主連盟(NLD)書記長としての政治活動に加え、下院議員としての新たな課題にどう応えようとしているのでしょうか。
 「私は魔術師ではない」とは、カリスマ的政治家として過大な期待を背負うゆえの言葉です。彼女一人で魔法のように、民族間・宗教間の対立も経済問題もすべて解決してくれると傍観するのではなく、一人一人が民主化の担い手になることが大事だからです。リーダーに無批判に従うだけでなく、自主的に考え、適切な進言をして反対意見も述べる「よきフォロワー」になることがよきリーダーとなる道だというのは、若い世代へのメッセージでもあります。議員として彼女は、「法の支配の確立」を訴えるとともに、歴史的に形成された宗教的・民族的対立を克服して対話を進める「和解者」としての、困難な仕事に取り組んでいます。また、雇用をもたらし環境破壊のない経済開発をどう実現させるか、という問題で日本を含む諸外国と交渉することも大きな課題です。
 参加者から多くの質問がありましたので、いくつかご紹介します。「民政移管」でビルマは本当に民主化したのかという質問に対し、変化はしたが変わらない面もある、と根本先生。軍人主導の議会や憲法の改革が必要なのは変わらない問題ですが、軍政の姿勢の変化をアウンサンスーチー氏が巧みに利用するという、新たな側面が見られるそうです。日本の「官民挙げて」の支援の問題としては、日本企業の利益優先があり、むしろ教育支援が重要である点を指摘されました。
 また別の方は、「成功できなくても手段が正しければ自信を持ちなさい」という発言に感銘を受けたそうです。これはビルマの民主化運動において非暴力抵抗の道を選択してきたことと関係がありますが、日本の私たちがビルマと関わる上で重要な視点ではないでしょうか。目的のためのなりふり構わぬ行動ではなく、その手段が公正であるかを吟味することは、今だからこそ、大事なのだといえるでしょう。