2016.4.19

国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 第16号」 体験企画のキーパーソンから大学生へのアドバイス

国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 第16号」 体験企画のキーパーソンから大学生へのアドバイス

竹内街道・横大路まつりに参加

 2016年3月13日(日)にLICはびきの(羽曳野市立生活文化情報センター)で開催された「竹内街道・横大路まつり」に和泉ゼミの学生など6名が参加しました。竹内街道は難波宮(大阪市中央区)から二上山を越えて当麻(奈良県葛城市)まで通された道、横大路は当麻から桜井市まで横(東西)一直線に通された古代の街道です。およそ飛鳥時代に通されました。沿線には大阪市・堺市・松原市・羽曳野市・太子町・葛城市・大和高田市・橿原市・桜井市、そして明日香村などの10市町村が連なります。2013年からそれらの自治体が連携し、さまざまな地域活性化事業を行なう実行委員会を立ち上げました。そして、このたびは羽曳野市がメインとなってイベントを開催したのです。
 会場では、地酒やワインを販売するブースや、ダンスや和太鼓などのパフォーマンスもあります。さらに、地元のゆるキャラなども登場し、幅広い年代が家族みんなで楽しめるようなイベントになっていました。その中で、阪南大学の学生は小さな子どもをターゲットにした体験コーナーのお手伝いをしました。まずは活動に参加した新3回生の板金優依(いたがね ゆい)さんと新2回生の小手田奨太(こてだ しょうた)君の活動報告をお読みください。(湯栗未名実)

活動報告① 大人も夢中になる勾玉作り

 羽曳野市のLICはびきので開催された「竹内街道・横大路まつり」のうち、私たちが参加させていただいたのは、百舌鳥・古市古墳群のPRイベントです。イベントでは、開催場所の南隣に、峯ヶ塚古墳のある市民公園があるので、それらを回ることができるスタンプラリーや、埴輪の実物大レプリカのパズル、また、滑石という柔らかい石を使用し、紙やすりで削って作る勾玉体験や、古墳のスタンプを使ったトートバッグ作りなど、さまざまな体験コーナーが設けられました。私は勾玉体験のスタッフを担当。参加者の方に勾玉の作り方を説明し、フォローをしました。参加者は、子ども連れの方がほとんどでした。滑石を勾玉の形にしていく作業は、小さな子どもでは、少し力が足りません。途中から親が手伝うのですが、かえって夢中になっていたような。「子どもと作っているうちに、勾玉作りにハマってしまった」という方もいらっしゃいます。私も勾玉作りにチャレンジしたところ、完成後にもう一つ作りたくなってしまうほど面白い。その方の気持ちがわかりました。そうなれば、楽しさを伝えるのが役目です。「勾玉を作って楽しかった」と思って帰っていただけるよう、最後まで笑顔での応対を心がけました。参加させていただき、たくさんの方々とお話ができ、多くの方から「楽しかった」と声をかけていただけました。みなさんの笑顔を忘れず、これからも積極的に活動に参加したい、そう思える1日でした。(板金優依)

活動報告② 子どもにも伝わる古墳の魅力

 今回のボランティア活動は古市古墳群を世界遺産登録の候補にするためのPR活動という内容でした。古墳という歴史的な遺産に興味をもつのは、年配の方ばかりだと思っていましたが、このように親しみやすいイベントを企画すると、子どもも親しみやすく、古墳や文化財に興味をもってくれます。実際に体験のサポートをさせていただき、企画の効果と大切さが実感できました。活動の成果です。(小手田奨太)

 いかがでしたか。たった1日の活動でも、社会で活動すると、何かに気づくことがよくわかりますね。野外活動の大切さを再確認しました。ところで、このような楽しい体験コーナーをプロデュースしたのはNPO法人楽古(らっこ)さんです。子どもたちの歴史体験をサポートするグループで、八尾市にある「しおんじやま古墳学習館」の指定管理者として施設運営もされています。学生たちは法人の代表者である福田和浩さんにご指導いただき、その行動力に大きな刺激を受けました。そこで、会場で福田さんに思い切って取材を申し込み、大学生に向けてのアドバイスをいただきました。(湯栗)

※この活動は、阪南大学給付奨学金制度によって運営しています。

楽しめる古墳学習館をめざす福田和浩さん

湯栗:「しおんじやま古墳学習館」の館長をされていらっしゃるのですね。具体的にはどんなお仕事なのでしょうか?
福田:しおんじやま古墳学習館は前方後円墳に隣接する展示施設です。古墳を見学に来た人たちへの案内をするのが普段の業務で、理解を深めてもらうための講演会も定期的に行なっています。
湯栗:「しおんじやま」とは?
福田:漢字では心合寺山古墳と書きます。八尾市を含めた中河内で最大の前方後円墳で、築かれた当初の姿に近づけるよう復元整備されています。
湯栗:古墳の案内が主なお仕事なのですか?
福田:それだけではなく、今日のように、子供向けに体験学習を行なうこともありますね。もちろん、施設を維持・管理することも大切な仕事です。
湯栗:維持・管理とは、具体的に…
福田:古墳を含む広い史跡公園で、芝生も多く、雑草がどんどん生えてくる。草むしりをしたり、落ち葉を掃除したり。水道が壊れれば、直します。
湯栗:お仕事の幅が広いですね。
福田:そうですね。博物館の学芸員は「雑芸員」と言われるくらいですから(笑)。できることは、なんでもやりますよ。
湯栗:あまたあるお仕事の中で、どんな所にやり甲斐を感じられますか?
福田:人に喜んでもらうことです。何かしなければ、ただ古墳を見て帰ってもらうだけになります。それではリピーターが育ちません。
湯栗:たしかに。
福田:面白い企画を提案して、楽しんでもうことができれば、次は知り合いを連れて来て下さいます。そういう効果があると、心から「頑張ってよかった」と思いますね。

自分にしか出来ないことを

湯栗:今日のようなイベントや企画で大切にしていることはありますか。
福田:オリジナリティーですね。
湯栗:独創性ですか?
福田:誰が作っても全く同じ工業製品のようなものは、面白みに欠けます。自分らしさやオリジナリティーが出るような企画作りを大切にしています。
湯栗:自分にしかできないことを、ということですか?
福田:はい。たとえば、このトートバックは、古墳時代にないものですが、古墳や埴輪に関連するスタンプを自由に押してもらって、自分の作品を作ることができます。
(会場では、古墳に関連するモチーフをあしらったスタンプを無地のトートバックに押して、
自由にデザインする体験が行なわれていました。)
湯栗:先ほど、小学校低学年の子どもたちが体験しているのを拝見しました。色とりどりのスタンプを楽しそうに押していました。埴輪をモチーフにしたスタンプもあり、目を輝かせて眺めていましたね。
福田:それはよかったです。まずは、興味を持ってもらうことが大事ですから。今後、この企画をイチオシにして頑張っていこうかな、と考えています。
湯栗:ほかに今後やってみたいことはありますか?
福田:古墳の形をしたお皿にペイントをする企画も考えています。お皿のペイント体験が流行っているそうです。専用のペンでお皿に絵を描いて、それをオーブンで焼くと、焼き付けができるのです。今、知り合いの陶芸屋さんにお願いして、前方後円墳のお皿を作ってもらっています。
湯栗:面白そうですね。私もやってみたい!
福田:これはヒットするんじゃないかな、と期待しています。

「失敗」が許される今のうちに

湯栗:それでは最後に、大学生へのアドバイスを、ぜひ。
福田:社会とのつながりを持って下さい。いろんなところに行って、たくさんの出会いのなかで、さまざまな社会人と触れ合うことですね。
湯栗:今日のようなイベントに参加するとか?
福田:そうですね。出会いの数だけ、自分の肥やしになると思います。ただ、出会いだけではダメ。考えることが大事です。
湯栗:考えること、というと?
福田:このようなイベントに参加しても、「これは子供に楽しんでもらえた」「いや、あの時間は少な過ぎた」「次はこんなPRをしたほうがいいかも」などなど、とにかく考えることです。学生のうちは、いろんな場所に行くことができます。失敗もできます。
湯栗:失敗も重要な経験だということですか?

福田:もちろんです。社会に出れば、失敗はそう何度も許してもらえません。だから失敗が許される学生のうちに、思い切ったことに挑戦するべきだと思うのです。もし、行き過ぎることがあっても、我々のような大人が周りから止めに入ることができますからね。そのために先生がついていらっしゃるのでは…
湯栗:心強い言葉ですね。
福田:最初はできなくても、やっていくうちに慣れます。経験をしなければ、わからないことが沢山。たとえば、いろんな世代への気の遣い方とか。とにかく積極的に、自分自身でどんどん学んで、どんどん経験を積んでください。
湯栗:たしかに、社会と関わることで、教科書に載っていないことを学べそうですね。私も失敗が許されるうちに、自分のやりたいことを思いっきりやってみようと思います。ありがとうございました。

インタビュー後記

 八尾市立しおんじやま古墳学習館の館長として、人々の興味を引く企画を打ち出しつづける福田さん。イベント当日の忙しい時間にもかかわらず、快くインタビューに応じて下さいました。ありがとうございます。「学習館の館長って、どんなことをするのだろう」という素朴な疑問から、大学生へのアドバイスまで、まとまりのない質問に、丁寧に答えて下さいました。お話しにありましたように、前方後円墳をかたどったお皿にペイントをする体験は、もうすぐ古墳学習館で体験できるようです。一度、訪れてみてはいかがでしょうか。新たな出会いや発見があること、間違いなしです。