2018.3.9

国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 55号」JTBに勤める先輩による仕事論と就活論

国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 55号」JTBに勤める先輩による仕事論と就活論

新卒から12年間JTBに勤務する筈井さん

 19卒の就職活動の解禁となり、街中でスーツ姿をみかけることが多くなった今日この頃。志望する業界を決めて、動き出した人もいれば、まだ将来について悩んでいる人も多いでしょう。周りにまどわされず、自分のペースで納得いく就職活動をしてくださいね。さて、今回は就職活動では旅行会社を志望し、実際に大手旅行会社からいくつも内定を勝ち取った、OBの筈井さんに取材をさせていただきました。これからの就活生に向けて、旅行業界についてお話をお聞きしましたので、
 旅行業界を志望するのであれば是非参考にしていただきたい記事です。(川畑亜紀)


※この広報活動は、阪南大学給付奨学金制度によって運営しています。

大企業だからこそできること

川畑:JTBにお勤めとのことですが、仕事内容はどんなことを?
筈井:JTB西日本の大津支店(滋賀県)で法人営業をしています。
川畑:企業向けの営業というと、慰安旅行しか思い浮かばないのですが…。
筈井:成果報酬といった形で、旅行を活用する場合も旅行会社が企画しています。例えば、「営業成績が優秀な10名様限定でラスベガスへ招待」など社内限定キャンペーンを催すことで、社員の土気を高めるきっかけ作りに。
川畑:なるほど、言われてみれば、その領域も「旅行」のお仕事。
筈井:「車を契約したら、抽選で温泉旅行が何名様に当たる」などの消費者向けのキャンペーンも。業績が低迷しているなどの悩みがあれば、キャンペーンなどを提案営業することもあります。
吉兼先生:インセティブ・ツアーだね。
筈井:あとは文化庁の関連業務で、比叡山坂本地区の活性化事業のプロジェクトメンバーとして動いています。
川畑:興味のある学生が多そうな仕事内容ですね。
筈井:文化庁からの受託業務ですが、最終的には、地域全体として利益を生み、地域を活性化できるしくみを考えなければなりません。5年以内で実行するのは、骨の折れる仕事です。だからこそ、面白いのですが。
川畑:JTB全体の仕事領域に関してもお話を伺いたいです。
筈井:旅行のイメージが強いですが、地域交流にも力を入れています。ふるさと納税の「ふるぽ」っていうサイトの運営も。土地管理の仕事もしています。調査業務も手掛けていますし、グループ会社も多数あります。
川畑:るるぶなどの雑誌を出版しているのもJTBパブリッシングなのですよね。
筈井:JTB商事という会社が、旅館の内装やアメニティグッズなどの消耗品も、手掛けています。
川畑:旅行のお客様と近いJTBだからこそ、旅館・ホテルのサービス向上の力になれるというわけですね。いまお話をしていただいたなかでも、多岐にわたる事業ですね。
筈井:インターネットの発展により価格競合の激しい時代になりましたが、お客さまに満足していただくためには、旅行だけではなく、多角化した事業展開が必要になります。
川畑:旅行会社で働くにあたり、やりがいに感じることはなんですか。
筈井:旅行を通じてお客様と親しくなれることですね。旅行会社の営業の醍醐味です。
川畑:旅行に同行するからこそ、他の企業の営業と比べて、より親密になれそうですね。
筈井:だからこそ、プライベートと仕事とのメリハリをつけられない人は向いていないかもしれない。

営業でトップを走り続けるということ

川畑:お仕事のなかで意識して取り組んでいることはありますか。
筈井:スピードをもって取り組むことです。スピード感のない方もいますよね。例えば、レポートを提出するように言われても、ギリギリになるでしょ?営業は、人よりも一歩早く取り組むことによって、「仕事ができる人」だと思っていただくことができます。
川畑:まさに、スピードが命ですね。
筈井:いちばん難しいことは、何かをまとめたり、優先順位をつけること。これが苦手な人が多いと思います。会社で勤めていると、さまざまな仕事が同時進行しています。
川畑:次々に仕事を任されると、手一杯になりそうです。
筈井:スピードを求めている人には早く返信をしたり、言われたままの順番でこなすのではなく、優先順位をつけながら仕事を進めないといけない。常に頭の中をフル回転させて、考えることが大切です。
川畑:相手のことを考えている、ということですね。返信が早ければ、その分相手にも余裕が生まれる。
筈井:それだけは徹底しています。あとは、お客さまが話したくなるような雰囲気作りですね。
川畑:私も見習います。そういえば、人の話を引き出すのが、お上手だと、吉兼先生から聞いております。
筈井: 日々の何気ない会話の中で無意識でしていたことなのですが…。ポイントは、相手に質問をするようにして、会話を膨らますことです。
川畑:こちら側が話すのではなく?
筈井:モノではなくサービスを売る営業なら、自分がたくさん話すのではなく、お客様の悩みを引き出すことが鍵となります。そのためには話したくなる空気を作ることです。相手の悩みを知ることができたら、そのための解決の糸口を見出すこと。これが私たち営業の仕事です。
川畑:先ほどの車のキャンペーンや、社内の福利厚生などのお悩みが浮き彫りになってくるわけですね。

学生生活が原点に

筈井:遊びながらも、授業は休まず出席し、単位もきちんととっていました。
川畑:印象に残る授業はございますか。
筈井:吉兼先生の地域交流に関する授業を専攻していました。面接でアピールしましたね。この授業は役立ちました。
吉兼先生:地域との交流とその環境を作り出すことの双方により、お金につながるしくみを授業で取り上げていたね。
筈井:面接では授業で学んだ地域交流のことを熱く語りました。偶然にもJTBは地域交流事業に力を入れる方向性でした。それがよかったのかは、わかりませんが。
吉兼先生:JTBが交流文化産業になるまえだね。そういう時代の風潮だったね。
筈井:学生時代は、吉兼先生ともよく呑みに行きました。研究室をたまり場にしていて、教授を交えての談笑は、普段は話題にしない時事・政治ネタも。勉強になりました。
吉兼先生:就職活動のときも、みんな面接帰りによく来ていたね。ここ最近は、みんな就活の進捗情報を誰かと共有せず、個人戦で戦う人が多い。
筈井:みんなの交換ノートが置いてあって、就活で忙しくても、「これから面接!」とか「落ちた!悲しい!」なんて書いていて、ノートをみて勇気をもらったり。懐かしいです。

就職活動は努力のたまもの

川畑:旅行会社を目指そうと決めたのはいつ頃ですか。
吉兼先生:入学当初から、旅行会社と言っていたね。
筈井:とはいえ、本格的に始めたのは、大学3年生からです。旅行会社のサマーインターンに参加して。実は、大手旅行会社はほとんど受かっています。自慢になってしまいますが。
川畑:そうなのですね…!本命の企業から内定をもらうための秘訣を、ぜひお聞きしたいです。
筈井:特に秘訣というものは…。就職活動では、ES(エントリーシート)を120社出して、旅行会社以外の企業も含めて、業界研究をしました。面接はおそらく40~50社行き、実践的に面接練習を。各業界ごとに質問された内容や反応が良かった自分のエピソードをメモ。SPI対策は、1冊繰り返し解くくらいです。
川畑:さらっと言いましたが、相当努力されていますね。
筈井:努力した人間ナンバーワンではないでしょうか。ねえ、先生。
吉兼先生:そうだね。秘訣なんてものはなくて、努力が結果を生み出というわけだね。
筈井:内定をいただいたあとは、友人のエントリーシートの添削をしたことも。それで実際に、内定を勝ち取った友人もいます。人柄は抜群だけど、エントリーシートの書き方が悪く、損をしてしまう人もいます。
川畑:たしかに、自分で書くよりも、だれかに見てもらうほうが抜群によくなります。
筈井:内容は変えられませんが、書き方次第で伝わり方が全然違います。読み手のことを考えずに書くとただの独りよがりの文章になってしまい、なにも響かない。就職活動はひとりで行なうものではないですからね。

就職活動は目先より後先を考えて

筈井:私が就職活動をしていたときは、面接官から話を引き出すように心がけていました。最終面接のときは、「OB訪問をしたいが、OBが大学にいないからどうすればよいか」と連絡をしたことも。それで実際にOB訪問をすることに成功しました。
川畑:就職活動中から、売り込みというか営業力がありますね。
筈井:芸能人になったような感覚を持つとよいかもしれません。
川畑:OB訪問はやはり大事ですか。
筈井:その分、自分が何になりたいのか、その会社ではどんなことができるのか、勉強しないといけない。
川畑:どれだけ売り込んだところで、とんちんかんなことを言っていたら、逆効果ですもんね。
筈井:自分が何をしたいのか分かっていない人が多いように感じます。
川畑:たしかに、就活中、やみくもにいろんな企業を受けている子、多かったように感じます。就活であっても、目標を持って、取り組むことは大事ですね。
筈井:社会人になっても、会社や上司から聞かれますよ。3年後、5年後の目標を。
川畑:職種選びの軸は、したいことのために「経験しておいたほうが良いこと」ですか。
筈井:地域交流に興味がありましたが、まずは旅行業界そのものを知らないと。地域における交流事業なのですから、まずは、どのような人がどのような旅行に興味をもち、足を運ぶのか、知識をつけるためには営業を経験する必要があると思いました。
川畑:営業は、組織の中核ですもんね。先を見据えた決断ですね。
川畑:最後に、就活生に向けて、アドバイスをお願いします。
筈井:とにかく自分に自信を持つこと。世の中自信のない人が多いので、それだけで強みになります。でも自信を持つためには自分は何をしてきたか、見つめ直すことが大事です。
川畑:どんなことでもいいのですか。
筈井:もちろん。ひとつでも。話が上手いとか、悩み相談をよくされるとか。それも立派な特技。それから「なんとかなる」(吉兼語録)って気持ちも大事にして、頑張ってください。

後記

筈井さんに取材をさせていただき、楽しみながら仕事をしているような印象を受けました。
就職活動中の意欲を失ってしまっている4年生も多いのではないでしょうか。就活生は、内定=ゴールかのように考えてしまいがちですが、内定を得て、会社に入るまでの間も、もちろん入社してからも「自分は「何をしたいのか、どうなりたいのか」常に考え続けなければいけません。目標を持つと、人はその分頑張ることができ、確かな自信につながるのだと、教えていただきました。そして時には、「なんとかなる」の精神で、挑戦してみましょう。旅行業界を目指す国際観光学部生なら、OB訪問歓迎とのこと。わたし達にはせっかく素敵な先輩方がいらっしゃいます。ぜひ、疑問を先輩方にぶつけてみてください。その行動力が、あなたを強くするかもしれません。