北海道標津(しべつ)町で現地調査を実施しました

 国際観光学部には、実際に国内外の現地に出かけ、観光資源や観光現場を視察したり、関係者への聞き取り調査を行ったりする「観光実習」という授業があります。今年度の「観光実習1(国内)」は3、4年生の計7名が受講しているほか、2、3年生4名も授業外で参加しています。今年度は北海道道東にある標津(しべつ)町を対象に、地域社会と一体になって、観光ガイドへの聞き取り調査、観光客への質問票調査、土産物実態調査、「しべつカード(仮称)」作成に向けた情報収集調査の4つの調査を進めています。
 前期授業では、標津町の概要を学ぶとともに、標津町観光協会と連絡を取り合いながら現地調査に向けた準備を進めてきました。準備がおおむね整ったことから、8月21日(月)から5日間、現地調査を実施しました。現地調査では、4つの調査を効率よく進めるために、11名が午前、午後、夕方のパートごとにグループに分かれて調査を進めていきました。また、8月26日(土)から27日(日)には近隣観光地である世界自然遺産・知床を視察しました。
 現地調査の様子を参加学生がまとめましたので、2回に分けてレポートします。第1弾の今回は標津サーモン科学館の視察、観光ガイドへの聞き取り調査、観光客への質問票調査の様子を報告します。(森重昌之)

フィールドワークの様子

  • 標津町役場、観光協会との打ち合わせの様子

  • サーモン科学館での展示説明の様子

  • 観光ガイドへの聞き取り調査の様子

  • 観光ガイドへの聞き取り調査の様子

  • 川北温泉での質問票調査の様子

  • 旧根室標津駅転車台での質問票調査の様子

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参加学生のレポート

サーモン科学館で学ぶサケやその他の生物の魅力
 国際観光学部3年 世木杏佳

 私たち観光実習1(国内)の受講生は、8月21日〜25日まで北海道標津町で現地調査を実施しました。8月21日に標津町に到着し、翌日午後に標津町の全体像を把握するため、観光資源を見て回りました。そのうちの1つが標津サーモン科学館です。
 サーモン科学館はサケの水族館で、サケの仲間18種30種類以上が展示されています。最初に「サケ映像室」でサケの誕生から回帰までのビデオを見ました。次に、サーモン科学館のメインにあたる大水槽へ行きました。この水槽には、世界中のサケ科の魚だけでなく、ホッケなどの魚も展示されていました。ここでは、実際に泳いでいる魚を見ながら、スタッフの方が映像とともに、サケの種類について説明していただきました。サケにもさまざまな種類があり、呼び方も地域によって違うなど、さまざまな知識をわかりやすく学ぶことができ、サケについて興味がわきました。
 サーモン科学館にはサケ以外にもたくさん魚が展示されていて、「川の広場」では幻の魚と言われているイトウの餌やり体験やチョウザメの指パク体験、ドクターフィッシュなど、サーモン科学館でしかできない貴重な体験ができます。展望台に行くと、標津町が一望でき、北海道の美しい自然を感じることができました。
 今回、私たちは西尾副館長にチョウザメの餌やりを見せていただきました。指パク体験のチョウザメとは違い、120cm前後の巨大なチョウザメが副館長の手から直接餌を食べる、「指パク」ならぬ「腕パク」を間近で見て、その迫力に驚きました。他の水族館では味わえない驚きや感動、サケに対しての関心が深まり、標津町のことをより知ることができました。
 サーモン科学館の隣にあるサーモンハウスでは、サーモンを使った料理やその他さまざまなメニューが揃っているほか、標津町のお土産やイクラソフト、サケコロッケなど、軽食が購入できる売店もあります。遊具やミニカーなどもあり、サーモン科学館は小さな子どもから年配の方まで年齢問わず楽しめる場所です。実際、観光客をたくさん見かけたので、標津町を代表する観光地だと感じました。さらに多くの方々にサーモン科学館を知っていただけるよう、SNSなどを通じてもっとPR活動を行ってもよいのではないかと感じました。よりたくさんの方に訪れていただき、サケの魅力、標津町の魅力を知っていただき、サーモン科学館を起点に、標津町のさまざまな観光地の活性化につながればよいと感じました。

地域住民の声を聴けた聞き取り調査
 国際観光学部3年 井上佑太

 私たちは今回、観光実習1の授業の調査で8月21日から27日まで、北海道標津町を訪れ、フィールドワークを行いました。私自身にとって、標津町でのプロジェクトは3年目になりました。今年度は土産物冊子の作成、しべつカード(仮称)の作成に加え、観光客が標津町を訪れた目的や標津町を知ったきっかけなど、標津町を訪れた観光客へのアンケート調査、そして普段エコツアーガイドを行っている観光ガイドの方々への聞き取り調査を行いました。観光ガイドの聞き取り調査の目的は、ガイドの方々が持っている技能やノウハウを棚卸しするとともに、ガイド協会内での情報共有の実態を把握することです。1回につき1〜5人のガイドの方に対し、学生側は2〜4人で、質問係と記録係、調査の様子を撮影するカメラ係と担当を分けました。1回あたり1〜2時間の調査で、6回に分けてインタビューしました。
 私は計3回、聞き取り調査に参加しました。これまで標津町で暮らし、町内のことをよくご存じの方々から話をうかがう機会が少なかったので、今まで知ることができなかった標津町の観光の実態が見えてきました。多くのガイドの方々は漁師や建設業などの本業があり、それぞれの得意分野を持っておられるので、それらをガイドでどのように生かしておられるのか、また標津町の魅力は何かなど、多くの質問をさせていただきました。ガイドの方々への聞き取り調査は、ガイド業務や本業の仕事終わりにお時間をいただいて実施しました。直前に聞き取り調査の協力をお願いしたにもかかわらず、皆さまいずれも積極的に協力していただき、とても感謝しています。これらの貴重な情報は、これからの調査の糧になります。まずは、今年12月に行われる日本観光研究学会全国大会での学生ポスターセッションに向けて、今回聞かせていただいた内容を整理し、資料を作成していきます。
 私は今回の調査で、さまざまな方向から標津町の観光を見ていらっしゃるガイドの皆さまからお話をうかがい、皆さまの標津町に対する熱意を感じました。聞き取り調査を行ったことで、私たちが普段勉強させていただいている標津町に対し、少しずつではありますがご恩返しができるよう、一生懸命頑張っていきます。また、今回もさまざまな調査にお手伝いをいただいたほか、調査初日に懇親会を開いてくださった標津町観光協会や標津町役場の方々、そして私たちのために「魚農食堂」を開いていただいた標津漁師会とベコスケの皆さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。

聞き取り調査でわかった観光ガイドの思い
 国際観光学部3年 平澤ななみ

 8月21日から25日の5日間、私たちは北海道標津町を訪れ、現地調査を行いました。今回の主な内容としては、町内の土産物調査、町内の観光スポットでの観光客へのアンケート調査、ガイドをされている方への聞き取り調査、しべつカードの作成に向けた情報収集調査の4つを中心に調査を進めていきました。
 私はガイドへの聞き取り調査において、北方領土学習の体験ガイドをされている福澤さんにお話をうかがいました。町内のガイド協会が発足した当初から積極的にガイドとして活動されてきた方であったので、ガイドとして活動するにあたってのことはもちろん、ガイド協会発足の経緯であったり、当時と近年のガイドの皆さんの様子の違いであったり、事前に考えていた質問項目以外にもさまざまな観点から、より詳しくお話をうかがうことができました。私自身、標津町を訪れるようになって今年で3年目になります。複数回訪れる中で、いくつかの体験メニューを実際に体験させていただきました。体験中の交流を通してお話をうかがうことはあっても、ガイドの皆さんの本音であったり、ガイドとして活動される中で工夫であったり、短い時間では深い部分までなかなかうかがうことができなかったので、とても新鮮で勉強になりました。また、お話をうかがった福澤さんは国後島のご出身であったため、自身の実際の体験をもと、北方領土での様子や現地訪問をされた時や現地に住んでいるロシア人との交流の様子、そしてロシアの侵略により本州にやってきた際のエピソードなど、非常に貴重なお話も同時にうかがうことができました。
 標津町には約40種類もの体験メニューがあると聞きましたが、標津町でしか体験できない、他の地域とは一風変わった体験メニューもあります。特に、今回聞き取り調査を進めていく中で、北方領土についてのお話を実際にお聞きし、写真や地図とともにたくさん教えていただきました。実体験を交えたお話をうかがいながら、北方領土についての学習ができるというのは、標津町を観光で訪れた際の体験ニューとして、とても大きな価値があると感じました。また、当時を知る人がどんどん少なくなっていく中で、大切に伝え続けてほしい出来事であると思いました。
 今後は、今回の調査内容をみんなでまとめ、標津町での体験メニューのさらなる充実や発展につながるきっかけになればと考えています。最後になりましたが、5日間たくさんご協力いただき、いつも温かく迎えてくださる標津町の方々に心より感謝申し上げます。

魅力が詰まったまち・標津町
 国際観光学部3年 松井昭憲

 2017年8月22日から25日までの4日間、北海道東部にある標津町において、いくつかのフィールドワークを行いました。その中で、私は観光客への質問票調査について記したいと思います。この調査は標津町を訪れる観光客の動向を把握し、今後の標津町の観光のあり方を考えるための情報を収集することを目的に実施しました。調査方法は事前に作成したアンケートに答えていただくというものです。
 標津町内にいくつかある観光資源の中で、私は川北温泉を担当しました。川北温泉はただの温泉ではなく、クルマで走った山の中にある秘境温泉であることが特徴です。私が最初に川北温泉に到着して感じた印象は、秘境にあるがゆえに「このような山奥の温泉に観光客は来るのか」、「地元住民ですら滅多に来ないのではないか」と思いました。
 しかし、この予想とは裏腹に、たくさんの観光客が訪れていました。観光客の特徴として、温泉愛好家が多く集まることがわかりました。地元の方の中には定期的に訪れている方もおられ、来ることができる時にはいつも訪れているとおっしゃる方もおられました。他にも、道内の秘境温泉を回っておられる方は、「川北温泉を外すことはできない」と話されており、この方のように川北温泉を目的として訪れている方が見られました。
 このようにたくさんのエピソードがありましたが、その中で最も印象的だったことは、道外の群馬県や千葉県からクルマで、また愛知県から飛行機で訪れていた方々です。どの方々も以前に川北温泉に訪れたことがあり、1年に一度訪れておられる方や10年前の記憶を頼りに訪ねられた方もいらっしゃいました。訪れた方に川北温泉の魅力を尋ねると、自然の豊かさや雰囲気の良さと答えておられましたが、全員が口を揃えて「泉質がとても良い」と答えていらっしゃいました。実際に私も足湯で確かめてみましたが、硫黄がとても出ていることや匂い、肌触りなど、泉質の良さを体感しました。この泉質の高さがリピーターの獲得や道外からわざわざ訪れたくなる要因だと私は考えました。
 私は標津町に滞在している間、海や山、川などの自然の風景、そこでとれた魚や野菜、それを利用した食材など、川北温泉も含めてたくさんの魅力的なモノやコトに触れました。私はこのプロジェクトに参加するまで標津町を知りませんでしたが、私と同様に標津町の魅力を知らない人はまだまだたくさんいると思います。今回の調査で得たものを分析し、仲間同士で話し合い、少しでも多くの人に標津町を訪れてもらえるよう、さまざまな視点から考えていきたいと思います。

現地でのアンケート調査を通して感じた観光地としての可能性
 国際観光学部3年 山本真由美

 私たち、観光実習1の受講生は、8月21日から25日まで北海道標津町で現地調査を行いました。4つある調査事項を事前に分担し、日にちごとにグループに分かれて調査を行いました。私は23日と24日に、旧根室標津駅転車台と川北温泉で午前10時から午後4時まで現地に立ち合い、観光客へのアンケート調査を行いました。アンケート調査を行う目的は、標津町を訪れる観光客の実態を調査し、今後の標津町の観光のあり方を考える情報の収集をするためです。
 旧根室標津駅転車台は、もともと転車台しかありませんでしたが、今年8月の町内でのお祭り「水・キラリ」で、C11型蒸気機関車が移動してきました。調査中に訪れた人数は1日中天気が良かったこともあり、事前に聞いていた観光客数よりも多かったです。しかし、通りすがりで訪れる観光客が多く、1時間に1〜2組という現状でした。私はSLが来る前の転車台を見たことはありませんが、SLがあることで存在感が増し、実際に見てみると迫力や歴史を感じることができます。以前鉄道を利用していた人や鉄道が好きな人たちも訪れていました。また、アンケートをお願いすることができませんでしたが、外国人観光客が興味深そうに転車台を見ていたことも印象的でした。
 翌日の川北温泉での調査は、近辺でヒグマの目撃情報が出たため、町役場の方と一緒に調査を行いました。温泉までの道のりはとても険しく、あまり整備されていないところが多かったので、本当に人が来るのか不安でした。しかし、調査を開始してすぐに男性が1人で訪れてきました。その後も立て続けに観光客が訪れ、1人で来られる方はもちろんですが、夫婦や親子で来られる方も多く見られました。また、地元の方や遠方から来られた観光客の中には、何十年も前から通っているというリピーターの方も何人かおられ、一度来たらもう一度行ってみたいと思う場所であると感じました。このような多くの利用者の方々のためにも、道路の整備や自然災害の対策などの安全面が今後の課題であると感じました。これからも多くの方に利用され続けてほしいところです。また、道中の看板や案内表示を増やせば、より多くの観光客が訪れると感じました。転車台と同様、予想していた人数よりも多くの観光客が川北温泉にも訪れていました。しかし、午後1時を過ぎた頃から天気が崩れ、訪れる人はいなくなりました。
 旧根室標津駅転車台と川北温泉では、多くの観光客の方々に協力していただきました。調査を行っていると、多くの方々からいろいろなお話を聞くことができ、とても良い経験になりました。アンケート調査の結果を分析し、今後の標津町の観光のあり方について考えていきたいと感じました。

標津町での新たな発見と出会い
 国際観光学部2年 安田知弘

 北海道標津町に滞在し、2日間にわたって、標津町を訪れた観光客に対して事前に準備したアンケート項目に答えていただく調査を行いました。調査地は旧根室標津駅転車台と川北温泉、金山渓谷を予定していましたが、金山渓谷はヒグマの目撃情報が寄せられた影響で、旧根室標津駅転車台と川北温泉の2か所で実施しました。アンケート項目は基本情報をはじめ、交通手段や町内で使用した金額、町内で訪れた場所などであり、今後標津町の観光を発展させるための情報をアンケート調査で得るという目的で行いました。これまでの調査とは異なり、直接観光客の声を聞くことができたので、とても新鮮で貴重な経験になりました。
 私はアンケート調査2日目に、旧根室標津駅転車台の調査に参加しました。午前10時から調査を開始し、ひたすら観光客が来るのを待ち続けました。しかし、当日の天候が濃霧ということもあり、午前中に観光客が訪れることはありませんでした。午後も観光客が来る気配がありませんでした。結果的に、調査が終了する午後4時直前に2組の観光客が訪れました。1人目はクルマで関東地方からお越し方で、北海道各地の湖でシーカヤックをされているとお聞きしました。そして、昔に標津町で漁師の手伝いをされていたそうで、この旧根室標津駅から大阪へ帰宅した記憶があるという、貴重なお話をうかがうことができました。2組目はバイクで関東地方から来られ、北海道を一周しているという方でした。お話をうかがうととても優しく答えていただき、安心しました。結果的に私たちが調査した日は観光客が2組だけでしましたが、貴重なお話をうかがうことができ、アンケートにも答えていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
 今回の観光客へのアンケート調査を通して、いろいろな方と出会い、そして会話をする中で、自分の知らなかったこともあり、新たに勉強になったこともありました。普段、生活をしていて観光客の方と直接会話をする機会はあまりありません。その意味で、今回のアンケート調査では観光客の動向や考えていることを聞くことができ、とても良い経験になりました。実際、アンケート調査のデータだけでは見えてこない、人びととの会話の中からわかってくることもあると思います。そして、人と会話する楽しさや大切さを、今回の調査で改めて感じることができました。今後も観光客に標津町の良さや魅力が伝わるよう、この調査を参考にみんなで話し合いながら、アイディアを出していきたいと考えています。今回も標津町の関係者の方々には多大なご支援をいただきました。心より御礼申し上げます。