ゼミ3年生が学会で発表

 12月4日、千葉県の江戸川大学において日本観光研究学会大会が開催され、塩路研究室の3年生5人が同学会のポスターセッションにおいて発表しました。今回は、学生たちが学会発表を通して感じたことや考えたことについて報告します。

日本観光研究学会に参加して
3年 田中葉月

 12月4日に、千葉県の江戸川大学で開催された「日本観光研究学会」に参加してきました。私たちは、「フットパスの発祥地、イギリスを歩いて ‐コッツウォルズ地域の観光資源の活用‐」という題でポスターセッションを行いました。今年の9月に英国で行ったフットパスの国外調査についての内容です。ポスターセッションを終えて、多くの先生や学生とお話しをする中で、今までになかった視点や観点、気付きがあったので報告します。
 ポスターセッションで、多く聞かれた質問として「フットパスとまち歩きの違い」についてです。あまり明確にはこの差異について考えていなかったので次回への反省点として活かすべきだと思いました。私の中での「フットパスとまち歩きの違い」は、一言でいうとフットパスは自然なもので、まち歩きは人工的なものです。フットパスは何百年も前から歩かれ自然にできた道です。その道を、自然を感じながら歩くのです。まち歩きは整備された街の道を歴史やその土地の特色を見て感じながら歩くことです。似ているように思っていましたが、実は全く違うものであり、これらが融合するのは難しい部分もありますが、新しい観光形態を生み出せる可能性を感じました。
 ポスターセッションを終えて感じたことは、3つあります。1つ目は、学生の方々は「フットパス」という言葉を知らない人がほとんどだったということです。若者にも周知していくことで、より多くの人々にフットパスの魅力を知ってもらえるのではないかと思い、今後の課題としていく必要があると改めて感じました。2つ目は、コッツウォルズ地域を観光地として発展させる必要性があるのかという点です。実際にコッツウォルズ地域のフットパスを歩いたことのある先生に頂いた意見として、観光地化することで増える多言語の標識による景観美の低下の心配がありました。本当に美しい景観を楽しむことができるからこそ、その外観を変えず大切に守り続けることはとても重要なことだと気付きました。3つ目は、日本でも同じですが、イギリスの若者の中でも昔から続く伝統から距離を置き始めているということです。イギリスの場合は、移民の人々も多いのでそこが原因の1つです。未来に残すためにも、より多くの若者に興味を持ってもらい、守り続けて行くことが必要だと感じました。
 「日本観光研究学会」でのポスターセッションを通して、観光とフットパスに興味のある人をどのように一緒に誘致していくことができるのか、またどのようにすれば若者にも興味を持ってもらうことができるのかという部分が今後の課題だと思いました。これらの課題の解決策を考えながら、吹田での活動にも活かしていければと思います。

フットパスの現状と観光資源としての課題
2年生 山口 実土里

 今年の夏、フットパスの海外調査を行った私たちイギリスチームは、千葉で開催された日本観光研究学会に参加しました。“フットパスの発祥地、イギリスを歩いて〜コッツウォルズ地域の観光資源の活用〜”をタイトルに、フットパスによるまちづくりやそれぞれの地域の特徴、活用の提案などをまとめたポスターを作成しました。初めてフットパスという言葉を耳にした学生からコッツウォルズ地域の魅力に惹かれ何度も訪れているという研究者まで、幅広い層の方々がポスターを見て足を止めてくれました。
 私たちは、多様な立場の方々に、どのように意見を伝え、説明すれば理解してもらえるのかを工夫することに苦戦しました。ある学生は、「イギリスといえばロンドンくらいしか思いつかない。フットパスという言葉も、郊外にも素敵な場所があることも、初めて知った」と話し、フットパス自体がまだ日本人には馴染みがなく、認知されていないという現状を痛感しました。また、ある研究者の方からは「日本は何でも‘いわゆる観光地化’する傾向がある。どこへ行っても同じような雰囲気にしてしまう」との意見を頂きました。私たちは、外国人観光客(英語圏外)向けとして、外国語対応のフットパス標識や看板の設置を提案しました。しかし、便利さを重視したあまり、景観を損ねるといった考えには及ばず、行き届きすぎた配慮はまちの魅力を半減させてしまうことにも気づきました。その他にも、日本の観光地は至る所に無料トイレが設置しており、観光客にとってみれば非常に便利な一方で、そのような便利さがない海外では、トイレを利用するために店にお金を落としてもらうことでも利益を得る仕組みを取っています。観光による集客を考える上で、何を優先させるべきなのかを考えさせられました。
 他の参加者が発表したポスターのアレンジや説明の工夫にも、学ぶべき点をいくつも発見しました。円グラフや線グラフを用いることで調査結果を分かりやすく提示したり、初めに調査の目的や経緯、最後には参考文献や謝辞を記述しているポスターもありました。なかには全て手書きで作成されているものもあり、手が込んでいて温かみのある印象を受けました。理由を尋ねると、手書きのほうが本当に言いたいことが書けるからだと教えてくれ、表現の仕方にも工夫が施されていることに感心しました。
 私は、このような学会発表の場に参加したことは初めての体験で、気づきと学びの連続でした。他者からの意見や指摘を受けることで、自分たちには見えなかった視点が浮かび上がってきました。今後の学内発表会では、今回の収穫を活かせられるよう、さらに内容を推敲し考察を加えていきます。

学会発表から得たこと
3年生 薗田 輝弥

 12月4日に千葉県の江戸川大学にて開催された、第31回日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションに参加しました。私たちは「フットパスの発祥地、イギリスを歩いて〜コッツウォルズ地域の観光資源の活用」というテーマでポスターにまとめ、発表を行いました。
 まず感じたことは、参加者には学生も多く、フットパスが何かを知らない人が多数いたということです。私たちのポスターを見た学生は最初に、「フットパスとは何ですか?」と聞いてくることが多く、楽しそうなものであると感じている人がほとんどでした。発表を終えると、ぜひフットパスを歩いてみたいなどの意見をいただきました。日本にもフットパスがありますが、存在を知っている若者はもちろん、実際に利用している若者も少ないのが現状です。今回のように、フットパスの魅力を若者に伝えることができれば、興味を持ってもらうことができます。そしてフットパスを歩く若者も増えるでしょう。
 他大学の先生方からは、私たちが気づくことのできなかった点をいくつか指摘していただきました。ひとつは、私たちはコッツウォルズ地域のフットパスに外国語の案内板を設置することを提案していたのですが、これにより景観が損なわれるという意見です。確かに、日本語や韓国語などで書かれた看板が建っているだけで、その場の雰囲気も変わると感じました。しかし、言語が分からないことで道に不安が生じることもあります。一方で、この不安な気持ちになることが良いとおっしゃっている先生方もいました。日本のフットパスは、ルートが完全に仕上がっているため、皆が同じ道を歩きます。一方、イギリスのフットパスはある程度のルートは決まっていますが、牛や馬、羊のいる牧場などの草原の中や、個人の敷地内を通ることもあります。私たちも現地で実際に歩いているときに、この道を通って良いのかと不安な気持ちが生まれました。それと同時に冒険心も生まれ、その地域や道がより印象に残りました。このように日本のフットパスでは体験することができないことを、イギリスのフットパスでは可能にしてくれます。プライバシーの問題などから実現することは難しいかもしれませんが、日本のフットパスも冒険心を生むようなルートを作成することで、利用者はより一層増えると感じました。
 今回のポスターセッションでは、多くの方々から様々な指摘や意見をいただくことができました。学ぶことが多く、有意義な時間になりました。いただいた意見を今後の活動に役立て、さらに深くフットパスについて追究していきたいです。

他大学と交流して学んだこと
3年生 中尾 美帆

 12月4日に江戸川大学で開催された日本観光研究学会のポスターセッションに参加しました。私は、「オーストラリア・メルボルンを歩く〜フットパスという視点から」という題で9月に訪れたメルボルンの街並みや食文化、自然景観について発表しました。発表を通して気付いたことや今後の課題、また他大学の発表を聞いて感じたことをまとめます。
 私たちが発表をした中で言われたことが、フットパスとは何かということです。フットパスという言葉を聞いて、足湯のことかと思った、この言葉を初めて聞いたと言う意見が多くありました。日本でも各地域にフットパスが存在していますが、知らない人が多くいることに気づきました。また、まち歩きとフットパスの違いは何かということを聞かれ、私たちも説明することが難しかったです。これは、先月行った吹田フットパス交流会でも言われたことです。道を歩くということに変わりはありませんが、それぞれどのような違いがあるのかということを明確にしていくことが今後の課題だと思いました。
 次に、他大学の発表を聞いて感じたことをまとめます。特に印象に残った発表が2つありました。1つ目は、立教大学の「男らしさと観光」というポスターセッションです。今までの男尊女卑の社会への反省として「自分らしさ」、「女性の権利」を大切にするがあまり、「男性らしさ」が失われる傾向にあり、男性差別へと変わる可能性があるそうです。そのような堂々巡りを避けるために観光の場においての「男性らしさ」の魅力的部分に注目したそうです。実際に秋田県の角館の祭りに参加し、「男らしさ」及び「非日常的男らしさ」を確認していました。今の観光業界は、女性に目を向けがちですが、敢えて男性と観光を結び付け検証をしていたところに興味を持ちました。
 2つ目は、愛媛大学の「滞在型観光を促進するための地域の快適性はなにか」というポスターセッションです。滞在型観光を促進するために、尾道商店街と道後商店街における快適性の比較をしていました。検証を通して、どちらの地域も、住民も観光客も居心地が良いと感じているが、居場所の内容に違いが現れていると感じたそうです。道後商店街は観光客向けの居場所となっており、住民向けではないため、交流が生まれにくいですが、尾道商店街は住民向けの居場所で観光客もくつろぐことができるので、交流が生まれやすいそうです。ここから、居心地が良いと感じることが根幹となり、良い居場所に繋がると考え、交流も生まれやすくなることで再来訪のきっかけになり、滞在型観光の促進に繋がる可能性があると結論づけていました。愛媛大学のポスターは様々な色や図を使っていたり、2つの商店街を比較した表があったりしてとても見やすかったです。
 この学会に参加して、観光の多様化を改めて感じることが出来ました。20以上のポスターがあったにもかかわらず、テーマが全く違っていたことがとても印象的でした。日本観光研究学会での交流を通して、私たちの課題や他大学の観光に対する考えを学ぶことが出来、良い経験になりました。