2016.9.29

ゼミ3年生が海外調査旅行(オーストラリア)

ゼミ3年生が海外調査旅行(オーストラリア)

 9月1日から8日まで、塩路研究室の3年生が、オーストラリアに調査旅行にでかけました。今回は各自の調査テーマにもとづいて、彼らが現地で視察、体験した内容を報告します。

オーストラリアの食文化について
3年生 舟引 千春

 9月1日から8日まで、ゼミ3年生の3人でオーストラリアのメルボルンを訪れました。私たちは、主にメルボルン市内を散策し、グレートオーシャンロードやヤラバレーを訪ね、現地ツアーにも参加するなど、メルボルンとその周辺地域を堪能しました。
 今回、私はオーストラリアの食文化について調査しましたが、オーストラリアならではの料理は、実は少ないことが分かりました。これはオーストラリアが移民の国であることが関係しています。オーストラリアは1828年に全土がイギリスの植民地となり、開拓が進みました。またその段階で移民たちが先住民のアボリジニから土地を取り上げて殺害し、1830年までに純血のタスマニア先住民は絶滅させられるという歴史がありました。その後、移民の国となりました。現在では80%以上がヨーロッパ系、アジア人が約12%、アボリジニなどが約2%となっています。特にイギリス、ニュージーランド、中国、インド、イタリア、ベトナムからの移民が多く在住しています。よってオーストラリア料理というものが少ないのです。実際3軒ほどデパートのフードコートを訪れましたが、日本料理・インド料理・イタリア料理・中華料理などさまざまなジャンルの料理がありました。日本の寿司店は市内にも多くありました。

 次に、私たちが体験したオーストラリアの料理、食材、特産品について報告していきます。まずはオージービーフです。オージービーフはオーストラリア産の牛です。オージービーフは、オーストラリアでは「マリーグレー」と言われています。このマリーグレーは、オーストラリア東南部のマレー地方原産でショートホーンとアバディーンアンガス種をかけ合わせて生まれました。白色の牛と黒色の牛から生まれた子で被毛は灰褐色になったそうです。マリーグレーは紫外線にもとても強く、オーストラリアの環境に強い牛です。この牛肉はミンチ用やカレー、シチューなどの煮込み料理に適しています。オーストラリア料理の一つにオーストラリアン・ミートパイがあります。さいの目切りにされた肉にグレービーソース、タマネギ、マッシュルーム、チーズなどが入っているパイです。オーストラリアにおいて自国の象徴的な食べ物と考えられており、人々がよく食べる料理です。
 メルボルンといえば、ヤラバレーのワインが有名です。ヤラバレーは80以上のワイナリーがあり、オーストラリア有数のワインの産地として知られています。私たちが訪れたときも、牛や羊、アルパカなどを遊牧している土地が多くあり、広範な丘陵地帯が広がっていました。ヤラバレーは冷涼な気候と良質の土壌からブドウが育ちやすく、あたりにブドウ畑が広がっていました。私たちは、イエリングステーションとドメイン・シャンドゥーンで試飲を行いました。白ワイン・赤ワイン・スパークリングワインなど苦みがあるワインから甘いワインまで色々飲んでみました。その中でも珍しかったのは赤のスパークリングワインです。ドメイン・シャンドゥーンにしか売っていないそうです。次回訪れた時はぜひ購入したいと思います。

 オーストラリアには、日本ではみられない野菜もたくさんありました。ヴィクトリア・マーケットや町中のスーパーマーケットを訪れた時に調査しました。印象に残っているのはピーマンです。日本のピーマンよりもサイズが大きくとても驚きました。日本では、ジャガイモは、主にメークインと馬鈴薯という2つの種類が売っていますが、オーストラリアでは約6種類ほどのジャガイモが販売しており、どれを買えば良いか迷いました。オーストラリアでは炭水化物をジャガイモで摂る人が多いそうです。また、リンゴの大きさが日本のものよりも小さいことにも気づきました。街中ではリンゴをまるごとかじりながら歩いている人がたくさんいました。オーストラリアの野菜はとてもおいしく驚きました。とくに、ニンジンがとても甘かったことが印象に残っています。
 

 最後にコーヒーです。オーストラリアのコーヒーは種類がとても豊富です。ロングブラック、ショートブラック、フラットホワイト、カフェラテ、カプチーノ、エスプレッソなどたくさんの種類がありました。イタリア系移民が多いため、本格的なカフェ文化が根付き、カフェやコーヒーの種類が多いのです。実際に私はエスプレッソとカフェラテをいただきました。エスプレッソはとてもコクが深く体にしみわたりおいしかったです。カフェラテはアートになっており、飲むのがもったいない気がしました。
 日本とは違った食材や、こだわっているワインやコーヒーを実際に食べることで日本の食文化との違いについて考えることができました。食材や料理の大きさや量の違い、また見たこともないような野菜など、珍しいものが多くあり驚きました。食材や料理にはその国や地域の歴史や環境が影響しており、その国の文化に直接触れることができるものだと実感することができました。今後、他国や日本国内のさまざまな地域を訪れるさいも、そのような観点から食材や料理に目を向けていきたいと思います。

メルボルンを歩いて見えた芸術
3年生 中尾 美帆

 メルボルンの芸術として有名なものは落書き通りです。日本で落書きというとあまり良いイメージを持ちませんが、メルボルンでは一般的に「Graffiti(グラフィティ)」と言われています。そしてこの落書き通りは「Street Art(ストリートアート)」と言い、世界的に知られています。ストリートアートとは、街をキャンバスとしてペンキやスプレーで描く美術様式のことです。この様式は、古くは街の随所に見られた公共の、もしくは建物に付随した彫刻など(パブリックアート)とは違い、その土地の管理者もしくは施設所有者とは無縁の第三者が描く街頭大衆芸術の一種です。その多くは建物や施設を汚損する器物損壊行為の範疇として取り締まられています。
 私がメルボルンで見たストリートアートの題材は、抽象的な模様から具体的に書かれた絵など様々でした。特に印象に残っているアートは話題となっているポケットモンスターやスーパーマリオブラザーズなどの日本でも有名なキャラクターのものです。また写真にもあるように「Will you marry me ?」と書かれたアートがあり、実際この場所でプロポーズしたのかなと気になりました。一生の思い出に残るとても素敵なアートだと感じました。

 これらのアートが所有者に無断で描かれる場合は、アートを称していても器物損壊にあたる犯罪行為であるので、多くは深夜にゲリラ活動的に描き込まれます。しかし、特に描き手を募集して描かれる場合は、平日の日中に制作されることもあります。今回は、実際にその現場に遭遇することが出来ました。メルボルン・セントラルステーションのビルに4人の描き手の方がアートを作成していました。とても大きなアートにも関わらず、奥行きを出すために黒で影を描くなど繊細なタッチでペンキを塗っており、作成過程を見て素敵だと感じました。
 このように、メルボルンでは市街地の様々な場所にストリートアートが施されていますが、中でも有名なのがフリンダース・ストリート駅の近くにあります。この駅から逆の対角線上に交差点を渡り、右側に進んでいくとある、Hosier Lane(ホージャーレーン)という裏路地です。ちなみにここの駅の時計台はジブリ映画の『魔女の宅急便』のクライマックスシーンのモデルになったそうです。この路地は、壁からゴミ箱まで全てにペンキでアートが施されていました。このアートはずっと同じではなく定期的に変わるそうです。また、この路地を見上げると多くの靴がつるされており、この場所に何か意味があるのかなと気になりました。私たちのような観光客も多くいましたが、地元の中高生達が見学していたことも印象に残りました。

 ストリートアート以外にもメルボルンでは様々な芸術の形に触れることが出来ます。今回訪れることは出来ませんでしたが、サウスバンクにあるビクトリア国立美術館はメルボルンにおける芸術のシンボル的存在でもあります。ここはオーストラリア最古の美術館であり、常設展であれば誰でも無料で入館することが出来ます。ここには世界の美術品や絵画が集められていて、コレクション数は7万点以上だそうです。誰でも気兼ねなく訪れられるのは素晴らしいと感じました。
 まるで王宮のような外観なのがビクトリア州立図書館です。6階建ての4階から6階までが吹き抜けになっていて、建物の造りが印象的でした。ここでは日本の図書館と同様、勉強をしたり、調べ物をしたりすることが出来ますが、絵画の展示や小さな本屋、カフェが併設または隣接している点が特徴的でした。またパソコンやフリーWiFiが使えることも便利だと感じました。入場が無料なので100席以上ある座席がすべて埋まるほどの利用客と吹き抜け部分から景色を見る観光客などでかなり人が多かったです。
 また、ヨーロッパの街並みを再現したような通りのブロックアーケードとロイヤルアーケードという場所がありました。どちらもショーウィンドーで何を売っているのか、何を展示しているのかがすぐに分かり、歩くだけで楽しむことが出来る場所だと感じました。ブランド品やチョコレートを販売している店、土産物を売っている店だけでなく、小さなギャラリーがあり、このような場でも気軽に芸術を楽しむことができると感じました。
 以上のことから、メルボルンは誰でも簡単に芸術に触れることが出来る場所だと感じました。今回はストリートアートを主に見てきましたが、絵によって町の雰囲気が変わることや、見ている側の気持ちも変わることに気付きました。アート自体が定期的に変わっているということなので、もし次回行くことがあれば同じ場所を訪れたいと思います。またアートだけでなく、メルボルンまたはオーストラリアの音楽にも興味があるので、今後は音楽というテーマで調べてみたいと思いました。

オーストラリアの動植物と絶景
3年生 淵上 貴弘

 オーストラリアは自然と動物が豊かで自然保護がとても手厚いです。オーストラリアの植物、哺乳類、爬虫類、カエルの80パーセント以上はオーストラリアの固有種で、他の場所では見られないものです。とくに、固有の動物は、人々を惹きつけてやまない魅力の1つとなっています。オーストラリアには、378種以上の哺乳類、828種の鳥類、4,000種の魚類、300種のトカゲ、140種のヘビ、2種のクロコダイル、約50種の海洋哺乳類が生息しています。 なかでも有名なのは、カンガルー、コアラ、ハリモグラ、ディンゴ、カモノハシ、ワラビー、ウォンバットです。
 このように固有の動植物が生息しているため、オーストラリアの入国審査は世界でもトップクラスの厳しさがあり、薬、食品の持ち込みには大変厳しい制限があります。特に卵、肉、豆等が禁止されており他の食品に関しても事前に申請して検疫官に持って入れるものか判断してもらわないといけません。オーストラリア留学センターのホームページによると、万が一、入国カードに申告せずに持ち込もうとすると容赦なく罰金が課せられます。《比較的軽微なものはA$220(22,000円ほど)で済みますが、重大な違反の場合は、起訴された上A$60,000(約600万円)以上の罰金、10年以上の懲役などが科せられる可能性があります。》その為、持ち込めるかどうか、申告が必要かどうかが不明な場合は、とりあえず申告をして、税関の職員にチェックしてもらわないといけない。結果、持ち込み不可の場合、破棄を求められるか、送料本人負担で第三国に送り返す事を求められるが、罰金を科せられることはありません。

 オーストラリア固有の生物を野生で観察することはなかなか難しいですが、主要都市や各地方にある世界有数の動物園やワイルドライフ・パークに行けば誰でも気軽に出会うことができます。例えば、シドニーのタロンガ動物園、ポート・ダグラスのレインフォレスト・ハビタット、ビクトリア州のヒールズビル・サンクチュアリ、南オーストラリア州のクリーランド・ワイルドライフ・パーク、クイーンズランド州のオーストラリアン・ズーなどが存在します。中でも、今回私達が訪れたメルボルン動物園はメルボルン市内から少し北に位置し、オーストラリア最古の動物園で、世界でも3番目に古い歴史ある動物園です。動物の種類は多いが頭数は少なく日本の動物園などと比較してしまうと目劣りしてしまうところもありますが、広さも大きすぎず小さすぎず見て回るのに適度な広さで一日掛けて見回るのに適した大きさでした。オーストラリアでしか見ることが出来ない動物を見ることができたのでとても満足しました。メルボルンを訪れて、動物園以外で驚いた点は、市内から少し離れたところになると、道のはずれにあるユーカリの木にコアラが手の届く距離にいたり、カンガルーがゴルフ場で寝そべっていたことです。日本では考えられない光景を見ることができました。

 また、私たちはグレート・オーシャン・ロードにも行きました。オーストラリアでも有名な自然に生成された断崖絶壁の道で、第二次世界大戦で活躍したオーストラリアの兵士に捧げるために建設された全長200km以上にも及ぶ海岸線の道路です。戦後オーストラリアの失業者を解消するための大規模な公共事業として着手され、最初はダイナマイトとツルハシによる手掘りでの作業だったらしいです。ワールドクラスのサーフィン・スポットのベルズ・ビーチや花崗岩の奇岩「12使徒」があります。「12使徒」とは、海に陸が浸食される過程で出来上がった異景です。海は、高い台地を浸食するときに崖を形成してきたのですが、一部固い岩盤が混じっていたため、そこだけ浸食のスピードが遅くなり、「塔」のような形の浸食漏れを起こした地形です。海の上に残った岩が12使徒と呼ばれ絶景でした。ほかにも 漁村、沈没船、黄金色に輝くビーチ、熱帯雨林、国立公園などがあり多様性に富んだこの地区では、回遊するクジラも観察できるそうです。

12使徒から少し離れたところでは日本の国民的歌手「Mr.children」の「tommorow never knows」のPVで使われたところもあります。そこはジブリ映画でも有名な「紅の豚」の主人公ポルコの隠れ家のモデルとなったといわれる場所でもあります
 日本と違っていて驚いたのは、このグレート・オーシャン・ロードと言われる道は、カーブや起伏が沢山あり道幅が広くないにも関わらず、制限速度が時速80kmだったことです。私たちはツアー経由を利用してこのグレート・オーシャン・ロードを訪れたのですが、周りの車も時速70〜80kmで走っていました。グレート・オーシャン・ロードに限らず普通の広域農道でも制限速度が時速100kmでした。しかし、速度の取締と駐車違反の取締はとても厳しく、オービスが多数あり制限速度から7〜8kmの超過で検挙されるみたいです。
 今回、オーストラリアを訪れて日本では見る機会が少ない動物を沢山間近で見ることができたことにとても驚きました。メルボルン周辺においても動植物保護が手厚いことにも納得できました。また、オーストラリアの絶景は日本とは違った広大さがありました。オーストラリアに再び行く機会があれば他の都市も訪れてみたいと思います。