1年間の研究成果を伝える現地発表会を開催しました

食に朝と夜の魅力を加え、宿泊客増加に向けた方策を提案しました

 森重ゼミでは今年度、島根県出雲市をフィールドに、食を活用した宿泊客増加の可能性について検討を進めてきました。その成果を現地に還元するため、3月5日(木)午後に出雲市役所を訪問し、昨年9月の聞き取り調査でお世話になった出雲市役所と出雲観光協会の皆さまに向け、現地発表会を開催しました。ゼミ生は「島根の食材を活用した新たな朝食メニュー」と、「島根の食材を活用した夜の屋台」の2つを提案しました。どちらもライトアップされる出雲大社や稲佐の浜の朝日など、朝や夜の魅力と食を組み合わせた提案で、市役所や観光協会の皆さまからさまざまなご意見をいただきました。
 今年度は大学から離れた場所をフィールドとして選んだため、現地でのフィールドワークが1回しかできませんでした。しかし、日本観光研究学会全国大会での学生ポスターセッションや国際観光学部ゼミ報告会など、発表と質疑応答を繰り返す中で、課題が明確になり、提案の内容も充実していきました。
 本学の国際観光学部は「実験観光学」を標榜しており、地域で多彩な活動を展開しています。その成果を地域の方々に還元する機会を設けていただくことは、学生にとっても大きな学びと励みになります。今回、ゼミ生の成長の機会を与えてくださった出雲市役所ならびに出雲観光協会の皆さまに、改めて心より御礼申し上げます。(森重昌之)

当日の様子

  • 学生による開会挨拶の様子

  • 発表の様子

  • 発表の様子

  • 学生の発表を聞く職員の方々と学生

  • 発表後の質疑応答の様子

  • 発表終了後の記念撮影

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参加したゼミ生の報告

1年間の活動を通して得たこと
 国際観光学部3年 岡島美紀

 3月5日、出雲市役所において、市役所の職員の方と出雲観光協会の職員の方に向けて、1年間ゼミで取り組んできた「食を活用した宿泊客増加の可能性」についての成果報告と提案をさせていただきました。出雲市は観光入込客数に対して宿泊客数が非常に少なく、宿泊客数は隣接する松江市の4分の1という現状にあります。そこで、私たちは昨年の春から行ってきたインターネットでのデータ収集や文献調査、9月に実施したフィールドワークや出雲市役所や出雲観光協会での聞き取り調査の結果から、出雲市は自家用車中心の観光周遊であること、宿泊施設が減少していること、朝と夜の魅力が少ないことという3つの課題を見出しました。その中でも、朝と夜の魅力が少ないという課題に焦点を当て、出雲大社での早朝参拝や稲佐の浜で見る朝日、出雲大社のライトアップなどの魅力的な既存の観光資源と食を組み合わせ、朝と夜の魅力を高めることで、宿泊客の増加が期待できるのではないかと考えました。
 12月の学会ポスターセッションや今年1月のゼミ報告会でいただいた意見も踏まえて、今回現地で提案をしました。提案内容は「島根の食材を使った朝食の提案」と「島根の食材を使った屋台の提案」の2つです。私は「島根の食材を使った朝食の提案」を担当しました。私たちが考案した朝食メニューは、出雲のそば粉でつくるガレットやご縁コーヒー、縁結びスイーツをセットにした「ご縁を感じる洋食メニュー」、出雲そばぜんざいや出雲の漬物、出雲精茶をセットにした「出雲を感じる和食メニュー」、うず煮や藻塩を使った焼き魚、しじみ汁、出西生姜茶をセットにした「健康と新鮮をテーマにしたメニュー」です。その朝食メニューと出雲大社の早朝参拝や稲佐の浜で見る朝日を組み合わせることで、松江市に流出していた宿泊客を出雲市に留めることができるのではないかと考えました。
 これらの提案に対して、「ご縁ガレットのような新たなメニューの定着は難しいのではないか」、「価格設定やターゲットなど、提案内容を明確にすると実現できるかもしれない」というご意見や「夜行バスで朝に到着した観光客は朝食をとるところがないので、朝食が食べられる場所ができるという意味で、朝日や早朝参拝と朝食を組み合わせることは良い案だと思う」という感想をいただきました。私たちの提案に対してどのような反応をされるのかという不安もありましたが、貴重な意見やアドバイスをたくさんいただくことができました。また、1年間取り組んできた活動を提案という形で報告し、職員の方に評価していただけたことが達成感につながりました。今回の発表を通じて新たに改善すべき点が見えたので、今後も研究を進めていきたいと思います。

実践する力が身についた現地発表
 国際観光学部3年 谷口真帆

 今年度の森重ゼミ3期生は、島根県出雲市をフィールドに、食を活用した宿泊客増加の可能性について検討してきました。これまで、現地調査や学内外での発表を行ってきましたが、今回はその成果を出雲市役所観光交流推進課の方と観光協会の方へ発表してきました。
 今まで行ってきた学生ポスターセッションや学内での発表では、出雲を知ってもらうために、出雲市の概要や観光資源を伝えることに重点を置いてきました。しかし、今回は現地の方に聞いていただくので、フィールドワークでどのようなところを周り、何を感じたのか、詳しく説明することにしました。だからといって、ただ観光施設を紹介することや「素敵だった」といった感想を述べるだけでは、聞いていただく現地の方にメリットがないと先生からアドバイスをいただいたので、フィールドワーク時を思い出しながら、どのように発表すればよいか考えました。4日間で18箇所以上の観光施設を周りましたが、地域住民の方との間で起こったエピソードや、観光客の立場として私たちが感じた不便だったことをそのまま伝えることにしました。
 また、提案の内容が不十分だったので、ゼミ生みんなで掘り下げて考え、より具体的にしたほか、他地域の事例も追加しました。パワーポイントのスライドは当初の2倍以上に増えましたが、現地の方の前で発表しても恥ずかしくないものになったと思いました。
 当日は、移動の飛行機や車内、昼食の最中も発表練習を行い、ギリギリまで修正を行いました。練習の甲斐もあって発表はうまくいき、市役所の方からお褒めの言葉をいだたきました。だた、私が担当した屋台の提案は、やはり実現することが難しいためか、高い評価を得られませんでした。屋台と限定しなくても、夜に出雲に滞在してもらう工夫が必要であるということをもっと上手に伝えられたら、もう少し興味を持っていただけたのかなと感じました。
 自分のプレゼンテーション能力がまだまだだと実感したので、来年度のゼミでは、自分の考えをわかりやすく相手に伝える力を身につけたいです。また、今年度のゼミを通して、一部の人だけでゼミを進めるのではなく、一人ひとりが責任感を持ち、ゼミに協力する姿勢を見せることが、ゼミを円滑に進めるためには必要だと感じました。周囲の人の状況や話をよく聞き、考えを尊重し、柔軟に対応する力が私には欠けているので、補っていきたいと思います。主体性だけではゼミはうまくいかないということがわかりました。
 今回、市役所の方や観光協会の方から、出雲市のより詳しい現状や以前の取り組みについてなど、貴重なお話を直接おうかがいすることができ、大変勉強になりました。今回の成果は、5月に行われるキャリアゼミ成果報告会での発表につなげたいと思います。

出雲市役所での成果発表とその事前準備で感じたゼミ生同士の一体感
 国際観光学部3年 上垣彩夏

 4年生の先輩の卒業研究発表会とゼミ報告会に続いて、3回目となった出雲市役所での成果発表を2015年3月6日に行いました。当日は市役所の方が3名と、出雲観光協会の方が1名、私たちの発表を聞きに来てくださいました。発表自体は30分ほどで終わり、その後質疑応答の時間が設けられました。市役所の方からいくつもの質問や感想が飛び交い、提案のひとつである、「出雲の食材を使った朝食の提案」については、実現性の高さや朝食の充実が宿泊客の増加につながるのではないかという点に焦点を当てたところから、高い評価をいただきました。雰囲気も堅苦しいものではなく、学生と職員の会話も見られ、非常に和気あいあいといた様子で、約1時間半の有意義な時間を終えることができました。
 ところで、私たちが発表した内容は、1回目の卒論発表会や2回目のゼミ報告会の時とまったく同じではありません。調査目的や提案内容は同じですが、聞き手が変わるごとにパワーポイントのスライドや話す内容も変えなくてはなりません。出雲市の方々に説明するのに、出雲市の観光地の概要や歴史などを説明しても、あまり意味がありません。私たちがフィールドワークをした際に出雲市について感じたこと、もっとこうした方が良いのではないかという考えを伝える必要があります。それにあたり、9月に行ったフィールドワークで調査した観光資源ひとつひとつについて、感想や良いと思った点、改善すべき点の3項目を短い文章にまとめ、写真付きの1枚のスライドにまとめました。ここは1回目と2回目の発表ではなかった部分です。また、私たちは「食を使った朝と夜の魅力の創出」を目的としていましたので、当然提案内容が重要となってきます。夜の提案は出雲大社周辺の神門通りで、出雲市の食材を使ったメニューを屋台で販売するというものです。それに際し、成功事例として北海道帯広市の「北の屋台」の説明を加えました。提案するにあたって、他の地域での類似した成功事例を用いることで説得力を増します。これも新しく付け加えた箇所です。
 フィールドを出雲市に決め、事前調査をしてフィールドワークを行い、さまざまな提案内容を出し合ったり、パワーポイントを作成したりするなど、協力し合った結果、良い発表ができたと思います。実際に出雲市で発表したのは6名でしたが、これには全員がかかわっています。ゼミ生が一丸となって準備した資料を、責任を持って発表するので緊張しましたが、市役所の方からも観光協会の方からもたくさんお褒めの言葉をいただき、達成感を得ました。しかし、その達成感は単に発表が滞りなく終わったからというだけでなく、ゼミ生みんなと協力して準備した有意義な時間があってこそだと感じました。

1年間の成果報告と私の思い
 国際観光学部3年 井上さやか

 私たちは3月5日、出雲市役所に「出雲市の宿泊客増加に向けた提案」を発表するために訪問しました。私の地元である島根県出雲市をフィールドワークの拠点に決めてから約1年、念入りな事前調査からはじめ、9月には実際に現地に訪れ、現状を把握し、分析を進めてきました。
 出雲市の現状として、観光入込客数は県庁所在地の松江市よりも多いものの、宿泊客数は松江市の約4分の1であることがあげられます。また、フィールドワークを通して、自家用車中心の観光周遊であること、宿泊施設が減少していること、朝と夜の魅力が少ないことが課題として明らかになりました。特に3つ目にあげた、朝と夜の魅力が少ないという点は、主な観光資源の中に宿泊につながるような場所がなく、また朝食や夕食で出雲の特産物を食べる機会が少ないため、日帰り観光客が増えてしまうのではないかと考えました。そこで、私たちは食を活用した宿泊客増加に向けての提案を研究テーマに設定しました。
 出雲市の朝の魅力として、出雲大社の早朝参拝や稲佐の浜での朝日があげられます。出雲大社での早朝参拝は、新鮮な空気を感じながら運気を授かり、またご縁のある朝食を食べることで、さらにご利益を高めることができると考えました。この2つの魅力に「ご縁」や「出雲」、「健康」と「新鮮」をテーマに、3つの朝食を提案しました。出雲の朝の魅力に魅力的な朝食を加えることで、松江市に流出していた宿泊客を出雲市に留めることができると考えました。
 一方、夜の提案としては、夜の魅力である出雲大社で行われるライトアップ、日本酒発祥の地とされていて地酒が多い魅力を活かし、これらに何かを組み合わせることが必要と考え、島根の食材を使った屋台を提案しました。夜の屋台で酒類を提供することで、観光客は自動車の運転を気にせず楽しむことができ、宿泊にもつながると考えました。これは課題であげた自家用車中心の周遊につながっています。
 まとめとして、食と既存の観光資源を組み合わせ、朝と夜の魅力を高めることにより、宿泊客の増加が期待できることを明らかにし、提供するメニューを検討し、試行的に販売することで、新たな「名物」の開発も期待できることを明らかにしました。
 これらを当日発表し、市役所や観光協会の方々からたくさんの意見をいただきました。朝の魅力に関しては実際に検討する余地があるという言葉をいただき、大変嬉しく思いました。提案の実現に向けてさまざまな課題はありますが、少しでも出雲市の宿泊客増加につながればと思います。
 この1年間、自分の地元を仲間と研究し、地元住民とは違う目線で地元を知り、良さも再確認することができ、改めて出雲市が大好きになりました。