2014.11.18

北海道標津町で現地調査合宿を行いました(2)

北海道標津町で現地調査合宿を行いました(2)

標津町での視察や体験を通じて、有意義な5日間を過ごしました

 国際観光学部1〜4年生の11人が、北海道標津町(しべつちょう)で体験型観光の活性化について検討するため、10月23日から5日間、現地調査合宿を行いました。初めて北海道を訪問する学生もおり、豊かな自然と親切な人びとに触れ、とても有意義な5日間になりました。
 2回目の今回は、サケ荷揚げ見学、イクラづくり体験、まちあるきに加え、学生が調査成果をまとめた上で最終日に行った、関係者の皆さまとの意見交換会の様子を報告します。最終日の意見交換会では、北海道新聞社の取材を受け、記事でも紹介されました。今後は調査合宿で得たことをまとめ、中間成果として第29回日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションで発表し、そこで得た知見も踏まえ、最終成果をとりまとめていく予定です。
 現地調査合宿の実施にあたり、多くの町民の皆さまに大変お世話になりました。ここに記して感謝の意を表します。(森重昌之)

当日の現地調査合宿の様子

  • サケ荷揚げ見学の様子

  • イクラづくり体験の様子

  • JA標津感謝祭の様子

  • 町内の広大な牧場にて

  • 意見交換会での発表に向けた準備作業

  • 町内の観光関係者との意見交換会での発表の様子

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参加した学生の報告

標津町の漁から見る食への安心・安全と地域HACCP
 国際観光学部4年 納村和也

 インカレねむろプロジェクトの3日目、まだ日も空けていない寒空の下、私たちは漁港に向かいました。この日はサケの荷揚げ見学のため、朝5時に漁港に集まりました。気温はマイナスにまで下がり、私自身これまでに経験したことのない寒さでした。
 漁船の帰りを待つ間、ガイドの方に標津町のサケ漁の話を聞くことができました。かつては日本一のサケの漁獲量を誇っていた標津町ですが、近年は地球温暖化などの影響で水温が変化し、サケの漁獲量が減少していることがわかりました。漁獲量が減少したとはいえ、年間数百万尾、1日数百から数千のサケが港に運ばれてきます。そのサケを漁師の方は一瞬でオスとメス、さらに色などを見てランク別に分けていました。手袋をつけていても手が凍るような寒さの中、漁師の方たちは辛い顔一つせずに仕分けを行っていました。また、挨拶をすれば元気に返事をしてくださり、標津町の方々の温かさに触れることができました。
 標津町にはHACCP(ハサップ)という独自の安全管理システムが存在します。このシステムは、消費者のために安心で安全で新鮮な商品を提供できるよう、漁獲から市場、加工、流通までを決められたマニュアルで管理するしくみのことです。実際、荷揚げ見学をしている時にも、漁師の方が迅速な動きでしっかりと鮮度管理を行っていました。また、漁港ということで磯の匂いや生臭さもあるのかなと思ったのですが、無臭に近かったので、驚きました。鮮度管理だけでなく、漁港や漁船の衛生管理にも力を入れられていたので、その点でも「安心・安全」を感じることができました。その後、サケは倉庫に運ばれ、選別・計量が行われ、その間も海水でつくられた氷で保管されていました。もちろん、倉庫内も清潔でした。倉庫内には見たことも聞いたこともない魚がたくさんありましたが、ガイドをしていた滝本さんが魚の名前の由来などを説明してくださったので、より興味を持つことができました。鮮度を保たれた魚は漁業協同組合の卸売に出され、加工業者の手に渡り、流通業者から消費者の元に届けられます。これらの市場や加工場、流通業者はすべてHACCPに対応しており、標津町は地域が一体となって「安心・安全・新鮮」をつくり上げていました。
 4泊5日の標津町の調査では、毎日魚が食事に出てきました。それを安心しておいしく食べることができたのは、朝早くから漁に出ている漁師の方と、地域が一体となってHACCPを推進し、細かいマニュアルをしっかりと実行しているおかげだと感じました。5日間、何気なく食べていた魚でしたが、荷揚げ見学をしたことで、漁師の方や地域の方の魚を通した食に関する思いが見えました。

地元に対する関心を持つ町民ガイドの必要性
 国際観光学部2年 絹田祐介

 10月22日から28日まで、インカレねむろプロジェクトに参加しました。プロジェクトの主な概要は、現地での宿泊を通して体験型観光による地域活性化の可能性を考えるというものでした。実際標津町に足を運ぶまで、北海道といえば札幌市や千歳市などが印象的で、標津町という場所は今回のプロジェクトに参加するまで知りませんでした。
 今回、標津町で体験型観光を試みるということで、サーモンパークや荷揚げ見学、イクラづくり、ポー川史跡自然公園や北方領土館の見学を体験しました。その中でも私が一番印象に残っているのは、イクラづくり体験です。イクラづくり体験では、その日に獲れた新鮮なサケを実際に自分で捌いてイクラを取り出し、イクラを食べられる状態まで完成させるという体験でした。サケを捌くことに興味があった反面、サケはもちろん生の魚を捌くことが初めてでしたので、気分が悪くならないか不安もありました。しかし、ガイドの方々がサケの捌き方からイクラのつくり方まで親身に教えてくださったので、不安はすぐになくなりました。
 今回、他の場所ではなかなかできない貴重な体験をさせていただいた一方で、イクラづくり体験の現状や課題も見えてきました。現状としては、イクラづくりを教えてくださったガイドの方々のほとんどがボランティアで、本職はお菓子屋さんなどの違う職業の方々ばかりで驚きました。また課題として、今回は私たちが捌いたサケの切れ身やつくったイクラを特別に自宅まで持ち帰ることができましたが、一般の観光客はイクラのみを持ち帰ることができるということでした。衛生面の問題などがあるので仕方ありませんが、その場で捌いたサケを食べられるようなサービスがあれば、今よりもより良い体験になると感じました。
 もちろんイクラづくり体験だけではなく、今回標津町に4泊5日滞在した中で、標津町の空気の新鮮さや自然の豊かさなどを肌で感じることができました。しかし、何よりも旅館のなりたさんやガイドの方々など、住民の皆さんの温かさを一番感じることができました。こんなにも温かい方々がいて、豊かな自然や観光資源があるにもかかわらず、一般の観光客を受け入れることが困難な理由は、標津町までの交通面もありますが、一番の理由はガイドの不足にあると思います。地元のことに詳しい住民が多いにもかかわらず、イクラづくり体験のガイドさんのように、積極的にガイドを引き受けてくれる住民の方が増えていないそうなので、もっと地域住民の方が積極的にガイドを引き受けてくれるようになれば、一般の観光客を受け入れることも可能になると思いました。

にぎわう秋のJA感謝祭 標津住民と触れ合う体験観光
 国際観光学部2年 劉俊峰

 阪南大学森重ゼミは10月23日、標津町エコ・ツーリズムの推進のため、標津町にやってきて、5日間の体験観光や現地調査を行いました。今回は、学生(若年者)の視点から研究提案を行うことをめざしています。そのため、現地でのエコ・ツーリズムに関する資源や施設の視察、また現地の関係者や地域住民の方々との交流を重視しました。その中で25日に、JA感謝祭の会場へ行きました。
 当日の12時頃に、学生11人でJA感謝祭の会場に行きました。会場は標津農業協同組合駐車場で、すでに大勢のお客さんが来場していました。普段の静かな標津町と違い、ここは賑やかでした。私たちは会場の中にいる人びとから、すぐに「外来者」として注目されました。昼食の時間でしたので、まっすぐに食事を販売しているテントへ向かいました。おすすめの焼き芋はもう完売していましたが、その他のうどんや肉まん、焼き鳥などはまだ販売していました。うどんが100円、肉まんが100円、焼き鳥が50円という値段で、かなりお得な価格でした。私はうどん1つと、肉まん2つ、焼き鳥2つを食べ、400円を払いました。
 来場したお客さんは、主にお年寄りと子供を連れてくる人びとでした。みんな大声で、話したり、笑ったりしていて、お互いに仲良く、北海道の人の豪快な性格が見えました。越冬野菜や海鮮などの販売も行われていました。北海道の気候や土壌に恵まれ、大根とキャベツが普段見ているものより、かなり巨大でした。また、新型のトラクターの展示もしていました。この中で、玉ねぎサービスとラッキー抽選会現金つかみどりのダブルサービスが一番の人気でした。1,000円以上購入すると玉ねぎサービスを受けることができ、さらに3,000円以上購入すると、ラッキー抽選会現金つかみどりの宝くじのチャンスがもらえます。この玉ねぎサービスは、小さなインタラクティブ・プラットフォームのようでした。
 観光客ばかりの観光地と比べ、JA感謝祭は地元の人びととの触れ合いの場で、私たちのような「外来者」は地域の端を見ているのではなく、この地域の核に触れ合えるように思えました。これは観光の本質で、すなわち「異文化交流」というものです。観光まちづくりは観光地、観光施設だけではなく、地域の人びとにもかかわります。地域住民にとって、地域外の人びととの触れ合いは「自分再認識」、「自分再発見」の過程です。さらに、地域外の人びとを受け入れるオープン・プラットフォームを構築できます。観光客だけではなく、住民もさまざまな形で利用し、さまざまな知識やノウハウ、評価が、町内全体に伝播・波及し、その効果を共有できます。これが、現在の標津町エコ・ツーリズム交流推進協議会のしくみであると思いました。

標津町へ来ていただくために
 国際観光学部1年 西内拓史

 今回、インカレねむろのプロジェクトで訪れた標津町は、滞在型観光客の割合が低く、都市部からの移住者も少ないため、若者の数が減り、人口減少の問題もこれから出てくると私は思います。しかし、今回私たちは標津町を訪れてみて、標津町に住んでいる方々の見慣れた風景も、本州などのよその地域から来た観光客が見ると、とても魅力的に感じられるものがたくさんあるということがわかりました。そこで、標津町の人口減少の問題を、標津町にある魅力的な観光スポットを使って、どのようにして活性化していけばよいかについて考えました。
 その中で、特に魅力的に感じられた場所を2ヶ所紹介します。
 1つ目は、ミルクロードです。今回の調査では自動車での移動が中心だったので、一番印象に残っている場所で、牧場の中をまっすぐに伸びる道路が地平線まで続く様子は、圧巻でした。車窓から見た風景も地平線まで開けていました。都市部では住居やビルがあり、逆に地方には山があるため、本州ではなかなかこうした風景は見ることができず、360度見渡しても草原や畑が広がっているような景色は、北海道ならではの風景だと感じました。ミルクロードの名前の由来は、牛乳を運搬するトラックがよく行き交う道であることからついたそうです。ちなみに、北海道以外には熊本県の阿蘇や三重県の四日市にもあるそうです。
 もう1つは、メロディーロードです。メロディーロードとは、自動車が法定速度でその道を通過した時に、メロディーが流れるように工夫されている道のことであり、そのメロディーにもさまざまな種類があります。今回体験した標津町のメロディーロードでは、「知床旅情」のメロディーが流れ、どのようなしくみなのか、とても興味が引かれました。
 しかし、ミルクロードとメロディーロードを体験して、どちらも宣伝不足だと感じました。標津町に住んでいる人びとからすると、ごく当たり前の風景なのかもしれませんが、他の地域から訪れた観光客からすると珍しく、実際に私も標津町の方からメロディーロードの話を聞いた時に、とても興味をひきました。特にメロディーロードに関しては、観光客からすると地図なしではなかなか見つけにくい場所にあるにもかかわらず、小さい看板がぽつぽつある程度で、わかりづらいと感じました。そこで、私は地元の学生や住民に協力していただき、住民同士の交流を図りながら、手づくりの大きなマップや看板を一緒に作成し、標津町内に設置することで、標津町を訪れた個人観光客も標津町を観光しやすくなり、個人の観光客も訪れやすくなると考えました。

まちあるきしやすいまちへ
 国際観光学部1年 山内菜美子

 標津町でのまちあるきでは、標津町の歴史やまちなみを知り、都会では味わえない、ゆったりとした時間の流れを体験することができました。ガイドの方が道案内やその土地の歴史について、教えてくださいました。自然が豊かで、住民の方々も挨拶や気軽に話しかけてくださり、雰囲気の良い町だと感じました。私は、あまり特徴のない町だと思っていましたが、実際は海が近かったり、標津駅跡の転車台があったりと、充実したまちあるきになりました。
 その中で、標津町のまちあるきでは、デメリットも多いことがわかりました。アイヌ種痘之碑や標津神社、標津駅転車台などを周りましたが、ガイドの方がいないとその歴史や生い立ちがわからなかったです。また、看板やパンフレットにも説明がなく、もったいないと感じました。さらに街灯が少なく、暗くなるのが早い標津町で、夕方からのまちあるきは困難です。自動車での移動が中心なので、町にひと気が少ないなどといった問題も出てきて、個人旅行者のまちあるきは難しいと感じました。実際、まちあるきを考案したのが今年度からだそうで、始まったばかりですので、問題を改善して標津町を歩く人びとを増やしたいと思いました。そこで、個人旅行者にどうやって快適にまちあるきしてもらえるか考えてみました。
 最初に思い浮かんだ案は、各場所に看板をつくって、街灯を増やし、地元のガイドの方に案内してもらうことです。しかし、看板や街灯をすぐにつくるための資金がなく、ガイドも不足している中で、これ以上仕事を増やすことには無理があります。そこで、簡単な工夫でできることを考えました。まず、まちあるきのパンフレットに各場所の説明を詳しく書きます。そこに何があるかだけでなく、なぜそこにあるのか、その歴史など、ガイドの方がいなくてもわかるように書くと、個人旅行者だけで周ることができます。
 次に、旅館での懐中電灯の貸し出しです。1日どこかで遊びに行った後でまちあるきをすると、外が暗くなっている時間帯になるため、明かりが必要です。そこで、懐中電灯を持って歩けば、暗い中でも歩くことができると考えました。こういった細かい工夫で、個人旅行者がまちあるきをしやすくなります。
 さらに、役場の方やガイドの方はおっしゃっていませんでしたが、夜の星空はとてもきれいでした。町民にとっては普通のことでも、私たちにとっては普段味わえない景色で、感動的でした。そのような景色の中でのまちあるきも楽しいと感じたので、標津町の海や星などの自然も見てもらえると、より充実したまちあるきになると感じました。建物や記念碑は何度も見ようと思いませんが、海や山、星などの自然の景色は何度でも見たくなります。それをまちあるきに取り入れたら、帰った後にまた標津町での景色が見たいと感じると考えました。まちあるきをする人が増えたら、町全体も明るくなるので、より雰囲気がよくなります。パンフレットに細かな説明を書く、懐中電灯の貸し出しなどで、ガイド不足や街灯が少ない問題を解決できると考えました。

観光まちづくりに取り組むことの難しさを感じた現地視察
 国際観光学部4年 水野巧基

 今回、インカレねむろ・大学等研究プロジェクトに参加するにあたって、私たちは北海道根室管内の中で標津町を研究フィールドに設定することにしました。今回のプロジェクトでは、一般観光客を受け入れるためのしくみづくりを提案することを目的としており、報告会に向けて提案内容を深めるために、11月23日から27日にかけて現地視察を行いました。
 標津町は体験型観光に力を入れている地域で、地域住民のアイディアやガイドの参加によって体験が実施されています。地域住民の方は、仕事と両立しながら体験型観光に取り組んでいるので、あらかじめ予約を取らないと対応できないという問題点があり、現在は修学旅行などの教育旅行をメインに受け入れています。今回は、修学旅行だけでなく一般観光客を受け入れるためのしくみを考えるために、標津町の観光資源を視察し、体験型メニューにも参加させていただきました。その後に体験型観光に携わる地域住民の方々との意見交流会を設けていただき、一般観光客を受け入れるためのしくみや取り組みについてのアイディアを2グループに分け、まとめたものを発表させていただきました。
 今回訪問するまでは、メンバーの誰一人とも標津町を訪問したことがなく、名前を知らないメンバーがほとんどでした。また、北海道と言えば札幌が観光都市であり、アクセスも良く、そこから約400kmも離れた標津町に一般観光客が来てくれるのかと考えていました。しかし、5日間にわたって標津町に滞在してみると、標津町には魅力ある観光資源が多くあり、何よりも地域住民の方の観光客への対応が親切でとても良く、また来たいと思えるような地域でした。今回は意見交流会について報告しますので、視察内容の詳細については割愛させていただきます。
 今回の現地視察では、視察を終えた後メンバーで集まり、現地で感じた標津町の魅力と課題について意見をまとめました。そこで、地域住民の方のホスピタリティが高いことが体験型観光の成功している要因であり、また体験型観光の内容だけでなく、観光客が地域を訪れる上で地域住民が重要な魅力となってくるのではないかと考えました。しかし、体験型観光では、地域住民の方々が本職とは別にガイドとして参加しているので、事前に予約が必要で、個人旅行者などの一般観光客を受け入れることが難しいことが課題となっています。標津町の資源や人の魅力が伝わる質の高い体験メニューを個人旅行者に向けて提供することが、観光客誘致に向けて重要だと考えられます。しかし、ガイドの増員などの課題があり、体験型観光での個人旅行者の受け入れは難しいのではないかと話し合い、ガイドがいなくても対応できる新たな観光の方法を考えることにしました。また、案内板の設置など、観光をする上で必要な施設の整備や設置についても考えました。その結果、レンタサイクルを活用したまち散策や案内板の設置、ご当地検定の実施などのアイディアが出ました。まだ実現に向けての課題やしくみの詳細については十分まとまっていなかったのですが、地域の方々の前で発表させていただきました。その後の交流会でも地域の方々の観光に対する意識や生の声を聞くことができ、報告会に向けて提案内容を深める上で、貴重な経験をさせていただきました。今後は毎週メンバーで集まり、提案内容を深めるために話し合いを進める予定です。今回の現地視察を終えて、地域の方々が観光客と交流することで、観光客にとって地域の魅力となり、観光客に対して感動や新たな価値観を与えることができると改めて実感しました。
 最後にこの場をお借りして、現地視察に向けてプログラムの計画や引率をしていただいた標津町商工観光課の方々、標津町観光協会の久保田さん、体験型メニューでご案内して頂いたガイド協会の皆さん、宿泊させていただいた旅館なりたの方々にお礼申し上げます。