長い夏休みも後半に…(レポーター:松村嘉久)

新今宮TICの8月利用実績

 9月に入り,長い夏休みもようやく後半にさしかかりました。新今宮TICの運営は日々淡々と続けています。8月は500件,854名の利用者がありました。7月の運営実績を合わせると,すでに新今宮TICの利用者数は8月末で1,000名(37延べ運営日)を突破しました。8月の利用件数で最も少ない日が8件,多い日は30件。利用者では最も少ない日が11名,多い日が51名でした。利用統計は件数ベースで記録していますが,500件の利用のうち日本人は96件だったので,全体のおよそ8割が外国人。外国人利用件数のうち,いわゆる欧米系の利用が7割強を占め,夏場の新今宮界隈は欧米系の外国人でいっぱい,という感覚がこのデータからも裏付けられました。もう一方のボランティアスタッフの方は,この8月に延べで233名が携わりました。新今宮界隈の外国人旅行者滞在のピークは8月で,9月に入ってからは新今宮TICの利用件数も,10数件程度で落ち着きつつあります。

 ボランティアスタッフたちも,8月の経験で運営に慣れスキルアップして大きく成長しました。大きな変化は,英語がうまくないボランティアスタッフでも,利用者のニーズを理解して,対応できるようになったことです。3回生のゼミ生は全員がスタッフからヘッドへ,1・2年生から優秀な人材も発掘できました。20歳前後の学生たちの日々の成長には心の底から驚嘆します。成長の延び幅がとても大きい。
 駅前留学やテキストを読むだけの大学での講義よりも,利用者とのリアルなやりとりが展開する新今宮TICでの社会的実践の方が人間を育てる,ボランティアスタッフとして真剣に関わってくれた学生ならば,この真意が理解できることでしょう。
 9月に入って,新今宮TICの活動が順調に進むなか,ぼちぼちと色々なメディアが取材に来られるようになりました。テレビ朝日取材陣が9月初旬から1週間,新今宮TICの活動を密着取材されています。雑誌「Meets Regional」のライターも取材に来られました。さて,松村ゼミのゼミ生たちは相変わらず,何かと大忙し。
 さて,今回の「松村ゼミの夏休み日記 その2」ですが…。まずは,松村やゼミ生たちの多くが戦線離脱を余議なくされるなか,新今宮TICの日々の運営を支えたボランティアスタッフたちのレポートを紹介します。次に,国内インターンシップに行ったゼミ生たちを代表して,沖縄のホテルで活躍し学んだ(であろう)3人娘からのレポートが続きます。

8月半ばから9月上旬の新今宮TICについて(レポーター:松岡慶祐)

私たちが何とかしなければ…

 8月上旬の新今宮TICはとても盛況で,お盆も毎日運営して乗り切り,その勢いで9月も…,と思っていました。ところが8月末から9月上旬にかけて,松村ゼミの主要なメンバーが海外・国内のインターンシップで抜け,松村先生もゼミ生たちを連れて台北のナイトマーケットの調査合宿に向かう,という窮地に立たされました。松村先生からは「日本にいて動ける松村ゼミの3・4回生たちで何とかしてくれ」と頼まれました。
 ヘッドで残っているのは,カナダ留学経験のある私(松岡慶祐:写真の赤シャツの方,2008年韓国釜山で撮影by松村),カナダ留学へ行く直前の高橋はる香の2名のみ。これに就職活動の合間を縫って4回生がバックアップし,3回生の久保田早也佳が加わり,1・2年生および足立ゼミの吉本さん・吉兼ゼミの森中さんが協力する,という態勢がシフト担当の石橋涼子から提案されました。正直なところ,「ヘッドの数が足りないし,経験の浅いスタッフが多いからキツイなあ」と思いました。でも,松村先生から「何とかしてくれ」と頼まれたので,私たち居残り組のゼミ生たちが何とかしなければ…,とボランティアスタッフみんなと一丸になって頑張りました。

色々な方々にお世話になりました

 松村先生の留守中は,西口宗弘OIG会長やホテル中央の山田英範社長が何度も様子を見に来てくださり,OBの濱中さんも毎日のように手伝いに来てくださりました。西口会長の紹介で関西外語大学学生の墨さんも助っ人参加,とても助かりました。8月から9月に入って,新今宮界隈の外国人個人旅行者が少し減ったこともあり,助っ人やボランティアスタッフの奮闘で,何とか乗り切ることができました。新今宮TICの窮地を救うべく,ボランティア学生のほか色々な人たちのお世話になりました。ここで改めて,感謝いたします。本当にありがとうございました。
 松村先生の留守中の出来事で特に報告すべきことは…。今年春に卒業したOGの周藤真子さんが8月31日に,衆議院選挙で当選した中島正純議員(民主党)が当選御礼を兼ね9月1日に,新今宮TICを訪ねて来られました(写真は今年2月に釜ヶ崎視察に来た鳩山民主党代表by松村)。雑誌やテレビの取材依頼も何件か来て,台北の松村先生にメールで相談しつつ対応しました。9月に入って新今宮TICに来るFITは8月よりも減りつつありますが,国際観光の最前線でFITと交流できる経験は貴重です。新今宮TICの運営をまかされ,後輩たちを指導する立場となり,何かとプレッシャーもかかりましたが,充実した夏休みがあっという間に過ぎつつあります。

松村先生から松岡君へ一言

 何かと留守が多く申し訳ない。松岡君の奮闘には特に感謝しています。松岡君は,武骨で不器用で目立たないが,真面目で誠実で礼儀正しく男気があり,先輩を立て後輩を思いやりつつ,縁の下の力持ちとして黙々と頑張るタイプ。とても頼りにしているゼミ生です。高校時代は応援団,大学ではウェイトトレーニング部に所属した猛者。ゼミ活動に責任感を持って積極的に参加し,新今宮TICを支える柱になっているにも関わらず,いざ探してみると松岡君の写真が見当たらない…。この事実こそが,彼の縁の下の力持ち的役割を表しています。
 私はやはり男気・女気のある学生が好きやなあ。銭金や損得勘定だけではなく,周りを見渡して「今は俺が(私が)頑張らなあかん」と,義理と人情から無理してでも動こうとする人物。松岡君は今時珍しいそんなタイプのいい奴…,なのに,なぜ就職が決まらない…。社会に見る目がなくなったのかもしれない。松岡君,クサらんと頑張ろう,君の姿勢は間違ってない。
 ただ,記録ノートの字は汚い…,何とかならんかなあ…。

沖縄インターンシップ報告 その1(レポーター:石橋涼子)

松村ゼミ3人娘が沖縄へ

 8月23日から9月8日まで,松村ゼミの石橋涼子・山岸枝里子・松原歩美の3名は,沖縄県名護市にあるブセナテラスホテルでのインターンシップ実習に行ってきました。この沖縄インターンシップは,今年から琉球大学との共同事業として新しく始まった取り組みで,私たちはその第1号として沖縄へ向かいました。もしかして実験台??(笑) ブセナテラスホテルでの実習開始前,琉球大学観光産業科学部観光科学科の花井正光教授より,沖縄県の観光事情やリゾートホテルの現状などについて講義をしていただきました。阪南大学では学べない沖縄観光の貴重なお話はとても興味深く,大変意義のある時間でした。本当にありがとうございました(右写真はホテル客室からの風景)。
 ホテルでの実習は24日から始まりました。私たちの実習内容は,レストラン業務とハウスキーピングです。私はレストランを選び,ディナーのみのイタリアンレストランに配属されました。ディナーのみの営業なので,毎日14時から22時30分までの実習でした。業務内容は,清掃やテーブルセットのオープン準備や食器下げ,料理運びなど,簡単なことから始まりました。私はアルバイトでもレストランで働いた経験がなく,トレイを持つことやお皿を3枚持つことなどできませんでした。最初は本当に困惑しただあたふたしていただけでした。

大阪へ帰りたい?!

 最初の3日間はそんな状態が続き,さらに慣れない環境での寮生活で,大阪に帰りたくて仕方ありませんでした。これは私だけではなく3人とも同じ気持ちだったようで,病気になって強制的に帰されたい,と言っていたほどです(笑)。でも逃げられない!! この状況を乗り越えるしかない!! 3人で互いに励まし合いながら,最後まで頑張る決心をしました(右写真は研修を受けたレストラン)。
 業務に慣れて来たこともあり,その日を境に従業員の方ともコミュニケーションをとりながら楽しく働けるようになってきました。最初は出来なかったトレイ持ちやお皿の3枚持ちもできるようになり,次第に任される仕事も増えました。最終的にはオーダーを取ったり,少しですがお料理の説明もできるようになりました。
 結果として,2週間のインターンシップはとても短く感じました。高級ホテルのレストランで,一流の接客やサービスを学ぶことができました。何よりも,従業員の方との会話のなかでこの仕事のやりがい・楽しさ・難しさ・大変さも聞くことができ,これからの職業選びにとても参考になりました。従業員の方は優しく親切で,丁寧に指導して下さりました。また,仕事終わりに飲みに連れて行っていただいたいり,最後はみなさんからのメッセージが書かれた色紙をいただき,勤務時間以外でも大変よくしていただきました。このレストランで実習ができて,本当によかったと思っています。

インターンシップのお休みは観光,行ってよかった沖縄

 2週間の実習でお休みは3日あり,そのうち2日は観光に出かけました。美ら海水族館や万座毛,御菓子御殿などの有名な観光地,ビーチにも足を運びました。初めて目にした深いブルーからスカイブルーのグラデーションの海に感動しました。海に入っても水が透けて底が見えます。こんな場所がまだ日本にも残っていることが嬉しくなりました。
 残念ながら沖縄観光は2日間でしたが,沖縄のリアルな生活や文化を体験することができました。寮で夜寝ていると,どこからともなく三線の音色が聞こえ,スーパーでは沖縄独特の食料が並び,道端にはハイビスカスが咲き,民家の門前には必ずシーサーがいました。ちょうど旧盆と重なったので,道で突然地元の人がエイサーを踊り始めたこともありました。通常の観光ではなかなか踏み入れない地域の生活を体験することができました。実習ではありましたが,地域密着の着地型観光でもあり,とてもよい経験になりました。
 沖縄での実習を通して感じた感想は「行ってよかった!」この一言です。高級リゾートホテルで働くことの厳しさ,楽しさ,一流のサービス,そして新しいことに挑戦する勇気,様々なことを学びました。そして,初めての沖縄でおもいっきり遊べたこと,沖縄の文化・歴史を身をもって体験できたこと,大学生活の最高の思い出のひとつになりました。私は沖縄に大変興味を持ったので,これからもっと沖縄について勉強したいと思っています。いつか3人で絶対また沖縄に行きたい!!

松村先生から石橋さんへ一言

 台北調査を蹴ってまで行った沖縄インターンシップ。つらいこともあったようですが,次に活かせる経験になったようで幸いです。私の経験から本当に仕事に慣れるには少なくとも半年くらいの時間が必要。半年経過して身体も精神も慣れた上で,その仕事を一生続けられるかどうかを考えるべき。そういう意味ではもっと長期のインターンシップ,大学の単位とは全く関係なく,給与ももらえるような形のものが理想的です。NPO法人でも立ち上げて,新今宮TICでインターンシップを受け入れたろうかな…。

沖縄インターンシップの感想 その2(レポーター:山岸枝里子)

 私はブセナテラスホテルのビュッフェスタイルのレストランで研修を受けました。早番は7時から15時半,中番は12時から21時,遅番は15時から23時半,というシフトのなか,初日の私は中番でした。初日はレストラン業務の流れや雰囲気を知るため,専任スタッフの方が色々と説明してくださいました。主な研修内容は,飲食の注文を受けたり,バッシングをしたり,食器を下げたり…,と一般的なレストラン業務の全般にわたりました。慣れるまでは指導担当の方の後ろについてうろうろしていましたが,時間とともに私でも出来る業務が増え嬉しかった。
 研修で一番辛かったのは,履き慣れていないヒールのパンプスでの長時間にわたる立ち仕事。研修でお世話になった方々に優しく丁寧に接していただいたので,何とか乗り切れましたが,パンプスには悩まされました。慣れない土地で慣れないことをすると,とてもストレスを感じます。今回の沖縄でのインターンシップ,ゼミ生たちと一緒で本当によかったと思います。沖縄は蒸し暑いし独特の時間が流れるところだけど,人は優しいし文化や伝統も珍しいものが多くて良い刺激になりました。今回のインターンシップは,就活する上で自分の強みになるし,将来就職してからも色々と活かしていきたいと思いました。

松村先生から山岸さんへ一言

 確かに履きなれていない靴は辛いやろうなあ。私もたぶんネクタイをしめての仕事なら,半日でギブアップすると思います。しかし,ヒールが辛いとは山岸らしい…。

沖縄インターシップの感想 その3(レポーター:松原歩美)

ハウスキーピングというお仕事

 私は宿泊部のハウスキーピングという部署で2週間働かせていただきました。ハウスキーピングと聞くと,客室清掃やベッドメイク…といったイメージがわくことでしょう。しかし実際は,ゲストの過ごす環境を提供するため,チェックしたり準備したり,広いホテルの館内を歩き回る体力勝負の仕事です。自分の中で思っていた仕事とのギャップに戸惑い,不安のなかインターンシップが始まりました(右写真は1泊57万円のロイヤルスイートルーム)。
 仕事内容は,インスペクション(アメニティに不備はないか,タオルは綺麗に畳まれているか,電気はちゃんと点くか,トイレの流れは悪くないかなど,客室をゲストに提供するための最終チェック),ランナー(ベビーベッドやベッドガード,DVDプレーヤーなど,ゲストのリクエストに答えるための準備),ターンダウン(オープンベッドや使用済みタオルの交換,カーテンを閉め照明を点けるなどおやすみ前の準備)などです。
 働いてみて,ゲストからのリクエストは様々で,リクエストに答えるため,ホテルの裏側ではたくさんの人が動いていることを知りました。チェックアウトからチェックインまでの短時間で,数多い客室を準備するので,要領よくこなさなければならず,時間の大切さを実感しました。

さすがは一流のリゾートホテル

 ホテルには様々なタイプの客室があります。研修中は様々なタイプの客室を見せていただきました。海に面した客室,山に面した客室,2部屋が行き来できるコネクトルーム,2階建てのようになっているメゾネット,部屋の外にジェットバスがありバスルームがふたつもあるガゼボ,スイートルーム,1軒家でプールもある完璧なプライベート空間のコテージ。どの客室からも見える青い空と綺麗な海の景色に,仕事をしながらも癒されていました。
 2週間という本当に短い期間でしたが,ホテルの裏側を経験的に学べました。挨拶や時間厳守,身だしなみ,言葉遣い,コミュニケーション力など,これまで以上に一層大切にしなければならないと実感しました。就職活動前にこのような経験ができて良かったです。

松村先生から松原さんへ一言

 松村ゼミが普段から活動している新今宮界隈のゲストハウスとはえらい違いですね。宿泊施設もピンからキリまでありますが,観光客の実態も多様なので,多様な宿泊施設の選択肢があるということが大切。
 1泊57万円の部屋も,価格なりの値打ちがあるから存立するのでしょう。新今宮界隈なら半年分の宿代…。宿泊施設のピンからキリまで見た経験はとても貴重やなあ。
 しかしええホテルやなあ。家族と一緒に行って,1週間くらい,特に何もすることなくぼーっと過ごしたい!!