夏休みの方が平常よりも忙しい??(レポーター:松村嘉久)

 大学生の夏休みはとにかく長い。前期試験は7月末から8月初頭までに実質的に終わり,夏休みに突入する。それから9月24日までのおおよそ2ヶ月間も休みが続く。この夏休みをどのように過ごすのか,大学生活においてはとても重要な課題です。
 一般的にはアルバイトと自由時間でしょうが,国際観光学科の学生なのだから,自分で旅を企画して良い旅をして欲しい。最近は,海外語学研修,短期の語学留学,国内・国際インターンシップ,国際観光学科教員企画の各種ツアーなどがあり,積極的な学生たちは何かと忙しい。これらに参加しないで2ヶ月も教員と顔を合わさず,アルバイトと遊びに明け暮れていると,お互いふと名前が出てこなくなることも…。
 そうならないよう,これまで松村ゼミでは何かあるたびに,ゼミ生たちに声をかけ巻き込んできました。今年は新今宮TICを毎日運営するので,たくさんの観光学科の学生たちと毎日のように顔を合わせます。夏休み期間中,松村ゼミのゼミ生たちは少なくとも10日前後,松村ゼミ以外のボランティア学生も5日間近く,新今宮TICの運営に参加してくれます。
 今年の松村ゼミの夏休みは,新今宮TICの運営を基本として,その合間に色々な調査研究活動やゼミでのイベントがあります。この報告では8月前半の松村ゼミの活動を報告します。積極的に参加している数名のゼミ生たちからは,夏休みに入ってからのゼミ活動の方が忙しい…,との声も聞こえてきます。

8月6日(木) 新今宮TIC発の調査活動が始動

 新今宮TICを拠点にこの8月から9月にかけて,様々な調査研究活動が企画されています。夏休みに入りゼミ生たちが平常授業を気にしなくてもよい環境が整ったので,ぼちぼちと動き始めています。調査研究活動は大きく分けて,1.FIT向けのアンケート調査,2.新今宮界隈地域マップ作り,3.簡宿関係者への聞き取り調査の三つです。調査設計段階では佐藤有・丸市将平・石橋涼子・茶谷みなみなどゼミ幹部に加え,有村遊馬君が助っ人参加してくれました。
 1はすでに8月1日から,新今宮界隈の8軒のゲストハウスにご協力いただき,フロントでチェックイン時に配布して,チェックアウト時に回収する方法で始まっています。
 2の新今宮界隈地域マップはWebでの公開を考えています。松村ゼミにはITスキルが決定的に欠けているので,経営情報学部の北川悦司先生のゼミに技術協力していただくことになりました。北川先生のアドバイスのもと,我々はWeb公開のイメージと具体的なコンテンツ作成に励むことに。早速8月6日に松村ゼミ幹部を集めWeb公開の絵コンテなどに関して話し合い,地域の商店街の有志にコンテンツ作成のお願いに伺いました。

 3の簡宿アンケート調査の設計に向けての議論も8月6日に行いましたが難航。このアンケートでは,労働者向けの簡宿的経営とFIT向けのゲストハウス的経営の違いをうまく整理し,各々の経営面での課題を引き出そうという趣旨で企画されています。議論の末,簡宿とゲストハウスのハード・ソフトの両面に精通していなければ,アンケートそのものを設計できないという結論に達しました。そこで,簡宿組合事務員の吉田さんの案内で,新今宮界隈の典型的な簡宿を視察させていいただきました。FIT向けのゲストハウスを見慣れている学生たちにとって,昔ながらの簡宿は衝撃的だったようです。新今宮界隈の現状では,簡宿とゲストハウスという差異のほか,生活保護受給者向けの福祉マンションとの差異も考えなければなりません。ソフト面での差異はかなり明確ですが,ハード面となると同じ部分が多く,なかなか差異が浮き彫りにならない…。結論としては,我々でアンケート調査のたたき台を作り,それを現場に精通する方々に見てもらい,修正しようということになりました。

8月7日(金) 阪南大学ジュニア・オープンカレッジ

 この日は高校生の応募者を対象に,「大阪の街を歩き,大阪観光をフィールドワークする」というテーマで,松村が通天閣・新世界界隈の国際観光事情を紹介しながら歩く日でした。高校生の応募者は何と1名のみ,最少催行人数は5名…。でもこの1名がとても意欲が高く良い高校生だったので,通天閣・新世界界隈をあまり知らない新今宮TICのボランティアスタッフ2名も誘い,フィールドワークを実施しました。人数が少ないので個別に連絡をとって,集合場所を阪南大学サテライトから新今宮TICに変更。ジュニア・オープンカレッジの補助のため予定をあけてくれていた佐藤・丸市・石橋の三名は結局出番なし。TICでの案内を手伝いながら,調査活動の詰めの作業をしてくれていました。いつもすまんのぉ,感謝!!!

 新今宮TICにて通天閣・新今宮界隈の講義を10時から30分ほど行い,チェックアウト前後のFITで賑わう新今宮界隈の主なゲストハウスを見学させていただきました。ロビーに集い雑談や旅の情報交換をする光景の見学,FITやフロントスタッフへの素朴な質問,ゲストハウス内部の施設や部屋の見学などなど。ゲストハウスによってそれぞれ異なる特徴があるので,地域社会の現状も説明しながら,1時間弱で5軒をざっと見て回りました。とても暑い日だったので,昼前に新今宮TICに帰り冷房のきいた室内で休憩。新今宮TICには世界各国を自転車で旅しているというフランス人カップルがいて,自転車旅行の苦労話など面白い話が聞けました。
 昼過ぎから通天閣方面の街歩きへ向かい,観光客は絶対通らない道を歩きまわって,通天閣界隈の異様なまでの賑わいの裏に潜む危うさを学んでもらいました。当然ながら通天閣の展望台にもあがり,この界隈の歴史を学び,ビリケンさんの足の裏もさわりました。とにかく暑い日だったので,無理はせず…。通天閣の真下から歩いて30秒のところにある甘党の老舗「三好」に入り,名物の糸切りだんごほか,ミルク金時やソフトクリームを皆で食べました。これがどれもとても美味しい。この休憩で復活しました。
 その後は新今宮TICに帰り,ボランティアスタッフとのおしゃべりを楽しみながら,高校生にも実際の運営の一端を担ってもらいました。高校生にとっては刺激的な一日になったことでしょう。街そのものから学び,実践を通して学びを深める姿勢が理解してもらえたら何よりです。

8月8日(土) 松村自宅からなにわ淀川花火大会を見学

 松村の自宅マンションは,なにわ淀川花火大会の会場に近く,花火がよく見える絶好のポイントです。歴代ゼミ生たちも我が家から花火大会を見学してきました。最も多い年は十数名の学生たちが,狭い我が家に集いました。ところが,我が家に三つ子が誕生した影響で07年・08年の花火見学会は行えず,今年09年は実に3年ぶりの花火見学会,我が家のチビたちも「お兄ちゃん,お姉ちゃんと遊ぶねん」と来客を楽しめるまでに成長しました。
 今年のゼミ生は3回生18名,4回生6名なので,参加者が多いと困る…とビビっていました。そのニュアンスが伝わったのか,結局のところゼミからの参加者は佐藤と丸市の2名,OG1名と交換留学生3名が来てくれて合計で6名,近所のお友達も加えてほどよい人数となりました。
 我が家での花火見学の特典は,始まるぎりぎりまで冷房のきいた空間でビールなどを飲みつつのんびり過ごせる,花火の低層部は見えないが至近距離で迫力を楽しめる,花火をゆっくり楽しみ終了後も混雑が引くまでゆっくりできる,くらいでしょうか。今年遊びに来た学生たちも,楽しんで帰ってくれたようでした。残念ながら様子を伝える写真を撮り忘れた…。

8月10日(月) 答志島へのゼミ旅行

 今年を含めて連続4年で,鳥羽方面にゼミ旅行に出かけていて,夏の答志島への1泊旅行は,松村ゼミの恒例行事になりつつある。大阪からは鶴橋から近鉄特急に乗り鳥羽へ,鳥羽から鳥羽市営連絡船に乗り30分弱で答志島に到着する。おおよそ3時間弱くらいの旅程。九鬼水軍ゆかりの地で史跡も多く,山あり海ありで自然はとても豊か。何よりもリアス式海岸に守られた天然の良港で,海産物がとにかく美味く,良い意味でも悪い意味でも何もないから,のんびりとした時間を過ごせるところである。
 実のところ,まじめでやる気のある大学生たちの夏休みは意外と忙しい。この夏のゼミ最大のイベントは台北への調査旅行。しかしながら,インターンシップへの参加などで,これに参加できるゼミ生が少ない。そんな状況のなか,台北に参加できないゼミ生を中心に,答志島旅行には3回生9名(佐藤・丸市・石橋・茶谷・藤井・松原・山岸・久保田・齋藤)が参加した。

 台風が接近するなか,東海地方で大きな地震も発生。我々は台風の進路を見切って,当初の予定通り行動しましたが,これが大正解。海水浴を楽しみ,松村ゼミ恒例のスイカ割りで盛り上がり,宿に帰り美味しい海鮮料理を食べ,温泉に入り,ぐっすりと寝る。起きたらまた美味しい朝ご飯を食べ,お伊勢さんをお参りして,おかげ横丁で遊び食べ,ぐったり疲れて近鉄特急で帰りました。
 さて,その過程でゼミ生たちの交流や絆が深まり,数々の名場面や名言が生まれます…。昨年秋の長野旅行では河嶌友紀が「キャリー…」で注目を浴びました。今回の答志島では久保田早也佳の異次元キャラクターが注目の的に。旅館での晩餐でサザエの壺焼きを食べている時。京都の漫画ミュージアムの話題から「漫画本のサザエさんでは意外とタラちゃんがイタズラキャラやねん」という話題になり,早也佳が一言,「そしたらカツオの立場はどうなるの…」で皆が大爆笑でした。

8月13日(木) 新今宮TICの新装オープンと釜ヶ崎の夏祭り

 松村ゼミが答志島で楽しんでいる間も,新今宮TICは居残り組のゼミ生やボランティアスタッフたちの活躍で運営されています。毎日16時半頃になると,松村の携帯電話にその日の責任者から簡単な運営報告メールが入り,ゼミ生たちに転送されます。
 さて,その新今宮TICの外観は試験的運営の時のまま,むき出しの外壁ボードに手作りの仮設看板がかかり,ポスターなどでカモフラージュしていました。常設運営に移行するなら,外観にももう少し手を加えた方が…と常々話題にあがっていました。それを受けてOIG委員会が動き,8月11日(火)と12日(水)の午後,念願の外装工事が行われました。新たな外観はシックな素地に,「Shinimamiya Tourist Information Center」という看板が銀色文字でくっきりと浮かび上がりました。8月13日(木)のスタッフが新装開店での初日,午前中の繁忙がおさまると,スタッフ皆が集まり記念撮影。

 8月12日から15日は,毎年恒例の釜ヶ崎夏祭りが三角公園で開かれました。今年で何と第38回目の伝統あるお祭り。8月13日(木)は松村ゼミとも交流のあるSHINGO☆西成さんが,俳優の赤井英和さんとの共演で,17時からこの夏祭りでライブパフォーマンスを見せるとの情報が入りました。松村は新今宮TICでSHINGO☆西成さんの「UYC(ゆーてることと,やってることが,ちゃいますねん)」Tシャツに着替え準備万端。その日のボランティア学生を誘うと,何と女の子ばかり6名(茶谷みなみ・井原成美・山本絵里・井上咲季・昌山志保・加藤宏実)が参加したいとのこと。学生たちの半分は街歩きで三角公園の日常を知っていました。知っている者も知らない者も,夏祭りの三角公園の雰囲気にかなり驚いていましたが,そこには松村の友人がたくさんいたのでリラックスできたようです。

 OIG西口会長,CCOCOROOMやカマンメディアセンターなどNPOのスタッフたち,紙芝居劇集団むすびのおっちゃんたち,釜ヶ崎のまち再生フォーラムのありむら潜さん,ふるさとの家の本田神父,紙芝居師の鈴木常勝さん,阪南大学非常勤の原口剛先生の顔も…。「毎度,毎度,どうよ。お久しぶりですね。毎度毎度。(脱帽して)お早うございます…。」といった感じでした。しかし,釜ヶ崎の夏祭り,さすがに女子大生の一群は目立ちました…。
 さて,我らのSHINGO☆西成さん。会場との絶妙の間合いのなか,SHINGO☆西成さんは,背伸びせず,肩ひじ張らず,地域のおっちゃんたちや先輩方への深い敬愛を込め,いつも通りのアツいステージを繰り広げました。舞台の前の方には,SHINGO☆西成さんの熱烈なファン,かなりお酒の入ったおっちゃんたち,地域の子供たちが,入り乱れて一体となり楽しんでいました。我々は赤井さんの登場を待たず,SHINGO☆西成さんのステージのみを小一時間も楽しみ,興奮冷めやらぬまま夏祭り会場を後に。学生6名とともに,地域マップ作りでお世話になっている焼き肉屋『友園』へ向かい夕食。その後は,8月16日にオーストラリアでの3週間に及ぶ国際インターンシップに旅立つ茶谷みなみと2回生を誘って,通天閣近くの隠れ家へ。とても楽しく地域のパワーを感じた1日でした。

新今宮TICの来訪者たち

 新今宮TICには毎日,色々な方々を来られます。外国人や日本人の利用者だけでなく,視察に来られるVIPや地域で日々活躍する方々から,お酒が入り機嫌良くなったおっちゃんまで…。取材の方も多い。
 差し入れを持ってきてくれる方も少なくありません。TICを利用した外国人の方が,お礼にとチーズケーキなどを持ってきてれたり,吉兼ゼミの学生が堂島ロールを差し入れてくれたこともあります。レストラン「タカラ」のマスターも,飲料水の入った段ボール2箱を差し入れてくれました。タカラのマスター曰く,「ボランティアで頑張っている学生さんたちを見てると,本当に元気をもらえる。若いっていいねえ。」
 先日,新今宮TICのカウンターに来た酔っ払いのおっちゃんも,「君らはボランティアなんか,そうか…。まだ日本も捨てたもんやないなあ。そうか…頑張ってや。きっと誰かが見てくれてるからな。」と本当に涙を流して帰られました。