※FIT…外国人個人旅行者
※新今宮TIC…Shin-imamiya Tourist Intormation Center

第3回FIT街歩きのレポート(レポーター:佐藤有)

 堺の町並みや住吉大社を巡る第3回目の街歩きを6月20日(土)に開催しました。第3回目と言っても実質は2回目です。前回のレポートでも記したように,新型インフルエンザによる休校措置の影響を受け,第2回目の街歩きツアーが6月21日に延期。当初から第3回目は6月20日に予定されていたため,想定外の連日の街歩き開催となりました。
 今回も手作りのポスターを作成し,翌日の新世界・四天王寺を巡る街歩きと共に参加者を募りました。参加していただいたのは,お仕事の都合で最近豊中に住み始めたイタリア人のご夫婦2名,カナダ人の男性,NY在住のアメリカ人男性,ドイツ人の男性と女性の各1名,それと,翌日の街歩きにも参加してくれたアメリカ人の男子学生2名の計8名です。イタリア人ご夫婦は事前にメールで申し込まれたそうですが,その他はホテルのポスターやチラシを見て,街歩き当日がその前日くらいに参加を決められました。
 ゼミ生は16人が参加。「釜ヶ崎のまち再生フォーラム」のありむら潜事務局長の息子・有村遊馬さんも,ボランティアガイドとして参加しました。これに加え,松村先生・OB濱中・阪南大職員の中上智夫さん・ホテル中央グループの山田英範社長も同行したので,総勢は29人。今回も大人数です。

6月の日差し照りつけるなか出発!!

 今回の街歩きは,チンチン電車に乗って「すみよっさん」まで行き参拝。またチン電に乗って堺市へ向かい,堺の伝統産業である刃物の博物館などを見学する内容です。ジューンブライド&友引を狙って開催日をこの日に決定したので,運が良ければ住吉大社で袴・白無垢をお召しになった新郎・新婦の結婚式に遭遇出来るかもしれません。
 13時,集合場所のホテル中央のロビーでゼミ生・安達七菜が初めのあいさつとコース概要を説明。この日も梅雨の時期にもかかわらず,天気もよく蒸し暑く気温が上がったため,水分補給はしっかりして,各自で体調管理に気をつけてほしいことなども伝えました。前回の街歩きは天候と参加者の人数に応じて選抜メンバーのみで行ったため,半数以上のゼミ生は今回が初めての街歩きツアーとなりました。なかには不安で緊張した面持ちのゼミ生もいましたが,お構いなしにツアーはスタート。総勢29名がぞろぞろとホテルを出発しました。

チンチン電車,略してチン電♪

 一行は歩いて最寄り駅の阪堺線南霞町駅に到着。レトロなチン電を待ちます。今回,チン電を複数回利用したかったので,阪堺電車が発行している全線1日フリー乗車券「てくてくきっぷ」を利用しました。この切符は600円で一日何回でもチン電に乗り降り出来ます。中身は少し変わっていてスクラッチ方式。利用したい日の年・月・日を削り,降りるときに運転手さんに見せます。大人数でいっぱいになった南霞町駅の小さなホームでは河嶌友紀がチン電の歴史と特徴,最近では一種の観光資源のようになっていること,「てくてく切符」の使い方などを説明しました。
 みんなでスクラッチしたのですが,2か月ぶりの街歩きに一番浮足立っていたのか,私が日にちを削り間違えるという失態。周りはアホやなぁ,と笑っていましたが,私は本気で焦りました。20日よりも後の日付を間違って削ったので,幸いにも何とかなりました。

住吉大社で神前結婚式に遭遇!!

 チン電に乗って約10分,住吉鳥居前駅に到着。さすがに30人以上の乗客を乗せたチン電はなんだか重そうに走っていました。次の発表者がそわそわし始めたとき,境内ではジャストタイミングで結婚式が行われていたので,説明者も一緒に駆け出して太鼓橋の上からみんなでその行列を見学。とても優美で非日常的かつ神秘的な情景がそこにはありました。このラッキーに参加者も大満足。「とってもきれいだわ…。」とため息をこぼしていらっしゃいました。
 住吉大社では,斎藤有沙・窪堀愛子・笹部和平・私が発表予定でしたが,斎藤の説明の一部と窪堀の説明全てが流れてしまいました。せっかく準備したのに…という気持ちは誰しもが持っていたと思いますが,ラッキーやハプニングにより,いつも予定通りにいくものではない,と学びました。笹部は日本の結婚式のスタイルを説明し,それに対する近年の変化を女子学生への質問を交えながらわかりやすく伝えました。私は日本独特の信仰対象である御神木,住吉大社ならではの心願成就のお守りである五大力の石の説明をしました。五大力はみんなで集めてお持ち帰りになる参加者の方がほとんどでした。

前田先生の待つ「鳳翔館」へ

 一行は住吉大社を後にし,またチン電に乗って一路堺へ。大和川を越えた綾ノ町駅で下車して,そのすぐ西ある町屋・鳳翔館へと向かいました。鳳翔館は今年度から同じ国際観光学科の前田弘先生のゼミが運営をサポートしている町屋で,展示室や休憩所を備えた交流の場です。当日も前田先生とゼミ生の方が迎えてくださいました。参加者8名とゼミ生数名が2階の和室へ上がり,茶道の体験をさせていただき,堺市民の方々との交流を深めました。
 適度な休憩をとった後,前田先生と一緒に火繩銃とその作り方を展示している堺鉄砲館へ。館長の柏木さんのお話しを前田先生に通訳していただき,参加者のみなさんは熱心に耳を傾けていらっしゃいました。次に,「藤井刃物製作所」にお邪魔しました。「藤井刃物製作所」では主に調理用の刃物を製造しており,それらの展示や実際に鍛錬と研磨を見学させていただきました。堺の打ち刃物は,堺を代表する伝統産業のひとつです。参加者の方々はその職人技や,住居兼工房であった日本家屋にも興味をもっていらした様子でした。
 堺旧市街地の風情あふれる狭い路地を行き,鳳翔館まで戻ってきました。前田先生とはここでお別れです。前田先生,ゼミ生のお二人,柏木館長,藤井刃物製作所の藤井さん,お忙しい時間を私達のために割いて頂きありがとうございました。前田ゼミと松村ゼミのすばらしいコラボレーションだったと思います。

もっと詳しく!! 刃物ミュージアムへ

 前田先生と別れた私たちは大通りを南へ約10分,最終目的地「堺HAMONOミュージアム」へ。ここは堺の刃物を広く深く知ってもらうために作られた博物館です。中には常設展示室や刃物を直接購入できる売店もあり,自由に無料で入場できます。展示室にはマグロを解体するときに使う死神が持っていそうな大きな包丁から,それぞれの食材に一番適した刃の形や薄さをした刃物がたくさん展示されていました。ナイフは海外にもありますが,こんなにも多様な用途に応じてナイフを作り分けるのは日本だけではないでしょうか。ここで笹部から終わりの言葉があり,16時半,街歩きツアーは無事に終了しました。

夏の夕暮れ,お寿司パーティー開催

 その後は新今宮に戻り,ホテルオアシスの屋上でお寿司パーティーを開きました。ドイツ人の男性,女性は二人とも予定があるということで別れましたが,引き続き6人の参加者が集まってくれました。一時解散のあとゼミ生は買い出しへ。飲み物やおやつを調達,串カツを買いに走り,下に敷く段ボールを集め…。そして18時,パーティーの始まりです。
 メインのお寿司は動物園前一番街に店を構える名店「すし寛」に出前を注文。若大将自らが大きな桶を二つ出前してくださいました。本場のすし職人の登場に参加者みんなが盛り上がりました。お寿司を食べながらFITの方には,ひとりひとり簡単な自己紹介をしていただいました。これこそ真の国際交流の場です。みなさんとてもおいしそうに箸をのばしていらっしゃいました。最後に参加者みんなで写真を撮り,日暮れと共に約一時間半の宴会をお開きにしました。

お疲れ様でした!!

 連日の街歩きの1日目,移動と乗降車が多く疲れましたが,ゼミ生もやり切った顔をしていました。現場では前田ゼミと連携を取って協力し合え,私たちも参加者たちに楽しめるツアーを提供できたのではないかと思います。FIT向けの街歩きツアーを初めて経験したゼミ生たちも,「どうにかなる」との自信を持てたことでしょう。今後も,大阪の知られざる魅力を伝えるツアーを計画・実施していきます。
 このツアーの動画はYouTubeにアップされています。当日同行したホテル中央グループの山田社長が,撮影してくださいました。そちらも合わせてご覧ください。

松村先生からの一言

 今回のこの住吉・堺ツアーは,とても魅力があり充実した内容のものとなりました。チンチン電車に乗って,住吉さんに詣り結婚式をのぞき,鳳翔館などの地域資源を活用して,堺の旧市街地を自由に散策する。このコースは,新今宮TIC発の着地型ツアーの定番になることでしょう。その手ごたえは充分ありました。
 ホテル屋上での国際交流パーティも,とても新今宮らしく,FITからも好評を得ました。新今宮界隈には美味しくて驚くほど安い飲食店がたくさんあります。FITと地域社会とをつなぐきっかけにもなるので,こうした屋上でのデリバリーグルメでのパーティも面白い。外国人が屋上にて段ボール敷きで正座して,お寿司や串カツをつまみながらビールを飲む。新今宮の新しい名物になるかもしれません。