2009.4.12

松ゼミWalker vol.19 『桂ちょうばひとり会』に行ってきました

若手落語家の星・桂ちょうばさん

 4月12日日曜日,新世界の動楽亭で行われた『桂ちょうばひとり会』という落語会に,松村先生と行ってきました。動楽亭は桂ざこば師匠が建てられたビルの2階にある寄席小屋です。新世界のジャンジャン横丁と動物園前商店街とをつなぐ大通り沿い,住所でいうと西成区山王1丁目にあります。山王1丁目界隈はかつて芸人さんたちが数多く住まわれていて,寄席小屋の近くには「てんのうじ村」の石碑もあり,ざこば師匠の動楽亭は新たな地域資源として,地元の人々からも注目されています。
 この日は桜も散り始め,花見をするには最後のチャンスの晴天に恵まれたにもかかわらず,開場前から行列ができ,50人を超える聴衆が入る盛況でした。
 桂ちょうばさんは,阪南大学国際観光学科の第1期の卒業生で,桂ざこば師匠のお弟子さんです。テレビのレポーターなどでも活躍され,最近では一本松海運が行っている「なにわ探検クルーズ」の案内役としても人気があります。
 桂ちょうばさんは,昨年観光芸能論の講義の一環で行った阪南大学寄席にもご出演いただき,今年も特別ゲストとして講義に来てくださるそうです。母校への想いも貢献も大きな先輩で,本業の落語家としても大活躍されている素晴らしい方です。
 と,まぁヨイショはここまでにさせていただきまして…。

大物になる予感!?

 今回の寄席は,松村先生が誘ってくださいました。松村先生は大の上方落語ファンであり,ちょうばさんのファンでもあるハズです。松村研究室の戸棚には,桂春團冶師匠や桂枝雀師匠らの落語のDVDがずらっと並び,愛用のフィールドノートには,笑福亭鶴瓶さん・桂文珍さんなどのサインが…。その他にもプライベートで親交の深い桂梅團冶さんをはじめ,多くの落語家さんたちと面識があります。僕が思うに,大学教授をやってなかったら,落語家をやってたんじゃないかな…。
 そんな落語好きの先生が授業でもそれ以外のところでも常に,「ちょうば君は大物になるでぇ!! 若手落語家のなかで間違いなく腕はピカ一や!!」と言っています。しかし,普段から落語に親しみのない僕らにとってその言葉の意味はあまり理解できません。今回の落語会は,生で落語を聞く貴重な機会でもあり,先生の言葉の意味を確認するためにも重要な落語会でした。

若手落語家ピカ一の腕はいかに!?

 さて,寄席のほうは当初準備されていた座席はほぼ満席。お客さんの年齢層もご年配の方から20代の若い方まで幅広く,落語ブームといえども,ちょうばさんの人気の高さをうかがうことができました。会場の動楽亭は詰めて座って,何とか100名が入れるくらいの規模。松村先生は,「落語を見るならこのくらいの規模が一番いい。こまかい仕草や表情が見えるから。」とおっしゃっていました。
 14時の開演とともに,ちょうばさんが出てきて,『ちょーばとーく』というフリートークで最近の出来事を語り,会場を温めました。「ピーナッツおじさん」の話,これは面白かった。続いて『煮売屋』という演目を桂咲之輔さんが披露されました。桂春之輔師匠の入門2年目の新弟子さんですが,テンポの良い若さあふれる落語でした。
 その次は,いよいよちょうばさんの登場!! 演目は『はてなの茶碗』。油売りのおやじが強引に手に入れた安茶碗が,思わぬ評判を呼び高値で売れ騒動になるというお話でした。ちょうばさんの落語は,表情豊かで動きのある演出で,会場は笑いあふれました。僕も久々に腹を抱えて笑いました!!
 20分ほどの休みをはさんで,いよいよ最後のネタ『ねずみ』を披露。このネタは先生とも親交の深い桂梅團冶師匠に稽古してもらったそうで,岡山の宿場町を舞台にした笑いあり涙ありの人間模様の話です。すごくひねって言えばホテルビジネスにも繋がり,観光学科の卒業生にふさわしいネタでした。このネタも多様な人間の役を巧みにこなし,話のテンポも良く確実に笑いを取っていました。
 会が終わると,会場を後にするお客さんひとりひとりに挨拶をするちょうばさん。全てのお客さんが満足そうな顔で帰って行かれるのを見て,落語初心者の僕にもちょうばさんの実力がどれほどのものなのか理解できました。そして,松村先生がいうよう,必ず大物になると確信しました!!

やっぱり落語ってすごい!!

 当然,僕自身もすごい充実感に包まれて家路につきました。何かすごく洗練された綺麗な笑いだったというか,笑いで爽快感を得れたことに感動しました。本当に一つの演劇を見ている感覚で,そのなかは当然笑いが大部分を占めるのですが,泣かせる人間模様があったり,ドラマがあって,そこに落語家さんの動きや表情や声色などが相まって,大笑いする部分もあればほろっとくる部分もある。たとえ言葉や言い回しは難しくても,落語家さんの仕草や表情など役者的なところを見ていても十分に楽しめるものだと思いました。落語家さんというのは,ただ面白い「お笑い」だけの人ではなく,役者以上に役者な方々なんだなと,落語の本質のようなものを心から実感できる本当に素晴らしい一日でした。(レポーター:丸市将平)

松村先生より一言

 落語三席とちょうばとーくでたっぷり2時間楽しんだ。これで前売り1500円はほんまに値打ちがある。「はてなの茶碗」も「ねずみ」も,とてもいい出来で,お客さんもいい雰囲気であった。ちょうばさんの実力と真摯さを改めて実感した寄席でした。
 動楽亭は新世界の賑わいを南(西成区)へと広げる貴重な地域資源であり,千客万来の定席に育てば,上方落語の振興のみならず,地域活性化にも多大な貢献が期待される。
 桂ざこば師匠の心意気に感謝しつつ,地域としてもこの寄席を育む心意気が必要であると痛感している。そのためならば,松村研究室は協力を惜しみません。
 その動楽亭で待望の昼席が開かれます。日程は6月1日から10日,7月1日から10日,8月1日から10日。三ヶ月連続で月初めの上旬,13時半開場の14時開演。
 毎日6人の米朝一門の落語家さんたちが舞台をつとめられます。ざこば師匠はもちろんのこと,都丸さん,雀々さん,米團治さん,南光さんなども出演されます。ちょうばさんも出ます。たっぷり落語が6席で何と木戸銭は2,000円。10日間の通し券は15,000円。値打ちある! 安い! 行こう!