2009.2.25

松ゼミWalker vol.12 田谷成美と山本絵理の濃い~1日

全ては「今日はこの後,暇か?」から始まった

簡宿の見学と聞き取り調査

 2月25日(水)の観光案内所の運営は,2回生の丸市先輩と田谷成美と山本絵理の3名でやった。朝は雨で人が全然来なかったけど,午後は雨が止んだこともあって,4組の外国人が観光案内所を利用してくれました。外国人は日本でどんなお土産を買って帰るのか,外国人にどこをおすすめの観光地として紹介するのか,色々と学び考えなくてはならないことを発見しました。先輩方のように英語で外国人を案内できるようになりたいと改めて思いました。(写真奥が田谷,手前が山本,来山北館にて)

予想外に清潔で快適そうな部屋

 昼過ぎに来られた松村先生は,簡易宿所のフロントに飛び込みの聞き取り調査に向かい,15時半過ぎに観光案内所へ戻って来られました。「君らはまだ簡宿のなかを見たことないやろう,今から来山(らいざん)へ聞き取りに行くけど,一緒に来るか?」と『ビジネスホテル来山南館』と『ビジネスホテル来山北館』を見に連れて行ってくれました。
 宿泊料金は門限の無い南館が1泊2,300円,門限のある北館が1泊2,100円。北館は労働者も宿泊されているので,夜中に騒ぐと苦情が出るため,門限を設けているとのことでした。南館のロビー奥にはパソコンやテレビが置かれたオープンスペースがあり,外国人旅行者が4名ほどいた。北館のフロントのご厚意で,シングル和室・シングル洋室・ツイン洋室を見せていただきました。部屋は想像していたよりも,ずっと広く清潔で,お風呂が部屋にない点は不便ですが,これが2,100円なら快適で安いと思いました。

タクシーでリーガロイヤルへ

 来山から帰ると松村先生は突然,「時に自分ら今日はこの後,暇か?」と私たちに尋ねられました。「実はこの後,中之島のリーガロイヤルホテルのロビーで,知り合いが能を舞いはんねん。社会見学がてらついてくるか?」。ということで,JR新今宮駅東口からタクシーに乗り大阪を代表する超高級ホテルへ。タクシーのなかでも,松村先生は大阪のまち案内をしてくださり,とても勉強になりました。
 タクシーはリーガロイヤルの正面玄関に到着,私たちはなかに入りました。さすがはリーガロイヤルホテル,規模も大きく雰囲気も高級感が漂う…。つい1時間前に見学していた来山とは全く違う世界。ホテルスタッフは制服を着ていて,宿泊客の服装もお洒落。松村先生も私たちも全くの普段着,ちょっと場違いかなと思いつつも,地下街の高級なレストランやショップを見て回りました。何もかもが高過ぎて,そこにいることに違和感を覚えました。「俺はこんなとこで高い飯食うんやったら,君らと河内天美か塚本で食べて飲む方がええわ」と松村先生。
 ホテルのスタッフは胸にバッチを付けていて,そのバッチは何語で対応できるのかを示しているとのことでした。リーガロイヤルホテルは安い部屋でも1泊2万円くらい,来山の約10倍。リーガロイヤルホテルでの1泊で新今宮では10泊もできる。1日で大阪のホテル事情のピンからキリまで見ましたが,どっちが良い,どっちが悪いというよりも,どういう人がどういう旅をするのかでホテルは選ばれるのだと思いました。

ダイビルよさようなら!!

 能舞台が始まるまで,まだ1時間以上もあるということで,松村先生の知り合いがいるダイビルへと向かいました。松村先生にリーガ特製のマシュマロを買ってもらい,食べながら歩きましたが,これがフワフワでとろけて美味しかった。ダイビルは船の形をモデルにして作られていて,天井や壁は時代の積み重ねを感じさせる凝った装飾がされ,建物自体がひとつのアートみたいな感じだった。
 松村先生からこの建物は近々壊されると聞いて,非常に残念だと思った。1階のエレベーターホールの壁に郵便箱が設置されていて,上層階の郵便箱に手紙を入れたら,1階まで落ちてくるように工夫されていた。郵便箱も建物の雰囲気に合うようにデザインされていて,独特の味わいがあった。松村先生の案内で屋上に向かったが,時間が遅かったので入れなかった。エレベーターに『閉』のボタンがなかったことにも驚きました。

いよいよ能舞台が始まる!!

 夕暮れの中之島を散歩しながら,リーガロイヤルへと戻りました。リーガロイヤルのロビーには,宿泊客をお部屋まで案内するポーターが何名かいるのですが,そのなかに何と阪南大学の先輩がいました。森山ゼミの辰巳さんという方で,制服姿が良く似合い,格好良かった。
 いよいよ能舞台が始まります。今回のイベントはリーガロイヤルのメインラウンジで『至高の舞』というタイトルで行われるものです。主な出演者は能楽師の梅若玄祥先生,狂言師の茂山逸平さん,ソプラノ歌手の田村麻子さん,ピアノ奏者の竹森啓子さんでした。主な演目は舞囃子「船弁慶」,田村麻子さんが歌う「アヴェ・マリア」と梅若玄祥先生の舞のコラボレーションです。19時半からの開演で,料金はリーガロイヤルでのお食事付きで3万円。
 開演前のロビー近くで,偶然にも玄祥先生とばったり遭遇しました。玄祥先生は松村先生を見つけて,深々とご挨拶されましたが,その動作がとても素敵。松村先生は本当に恐縮されておられました。「玄祥先生はなあ,能楽の世界では人気・実力ともトップの方や。たまたま西尾先生を通じて,私のことも知っていただいているけど…。あんな丁寧な挨拶をされたら,俺ら土下座するしかないで,ほんま…。しかし,ほんまもんの偉い人は偉そばらんいうけど,玄祥先生はその典型やなあ。自分らも舞台を観たらわかるわ。」とのこと。
 このイベントの企画制作はダンスウエストという会社が行っており,その代表が阪南大学の観光芸能論で講師をなさっている西尾智子先生で,松村先生と大の仲良しとのこと。西尾先生のご紹介で,梅若玄祥(当時は梅若六郎)先生が阪南大学で「土蜘蛛」という演目を披露され,その後も,観光芸能論の授業にゲスト出演していただいているとも聞きました。
 西尾先生のダンスウエストでは松村ゼミ2回生の窪堀愛子さんもお世話になっているそうで,イベント当日も会場でお手伝いをされていました。今回も西尾先生の「学生たちに最高のものをみせてあげたい」という熱意とご厚意から,松村先生も含めた4名,会場の片隅(実は最高の席だったかも…)に特別なお席を用意いただき,何と無料で見せていただきました。

至高の舞で鳥肌が…

 私たち二人は初めて「能」という芸能を見ました。「船弁慶」の最初は静御前の舞,お囃子が緊張感を高めるなか,玄祥先生が能面を付けて登場されました。その瞬間,すごい鳥肌がたちました。とても穏やかな動きなのですが,玄祥先生の全身から,何かもの凄いエネルギーが発せられているようで,とにかく驚きました。出て来た瞬間から「船弁慶」の世界を作られていて,舞台の後ろを流れ落ちる幻想的な滝ともマッチしていて,何とも言えない空間でした。玄祥先生の動きはとてもゆっくりでなめらかなのに,最初から最後まで引きつけられ,一つ一つの動きに目が離せませんでした。
 「船弁慶」の後半はがらりと様子が変わって,平知盛の亡霊が荒々しく暴れまわる。玄祥先生はそれを全く無駄がそぎ落とされた動きで舞われていましたが,もの凄い躍動感を感じました。生まれて初めて見た能でしたが,その独特の世界に圧倒されました。お囃子の雰囲気や掛け声も,緊迫感を高めていて,興味深かった。
 最大の見所は,玄祥先生と田村麻子さんのコラボレーション。まず能楽のお囃子のなか玄祥先生が真っ白な能面と装束で登場された。その神々しさで最初の鳥肌がたち,ひと舞されたあたりで,田村さんの透明感と存在感を同時に感じる細く澄んだ歌声が…。これで二回目の鳥肌がたちました。能楽とソプラノ歌手,始まる前はどんな共演になるのか全く想像できなかったが,これがぴったりとあい,前半の能楽のお囃子とその後の「アヴェ・マリア」の対比が,とても興味深かった。
 会場の後ろを流れる滝,会場内を流れる川,その水音が鮮明に聞こえ,今までに体験したことのない静寂を味わいました。音がしっかりと聞こえているのに,静かに感じるという不思議な感覚。癒しってこんな経験をいうのかなと思います。
 松村先生によると,「「船弁慶」は古い演目やから,足利義満や豊臣秀吉らもたぶん同じの見てるで。君らは今日,最高の演者でそれを見たんや。ラッキーやで。」とのこと。西尾先生,今日は最高の経験をさせていただき,本当にありがとうございました。

玄祥先生のあとは雅さん

 さて,玄祥先生の舞の後,松村先生に食事に連れて行っていただきました。リーガロイヤルからタクシーに乗り,JR塚本駅と阪急十三駅の間くらいにあるトミーズ雅さんのお店へ。
 まずは松ゼミWalkerで松村先生がすすめていた『焼き鳥 喜多村』へ。ここの焼き鳥,松村先生のいう通り,すごく美味しかった。4名でカウンターに座って焼き鳥を食べていると,その後ろのテーブル席には,トミーズ雅さんがお友達といらしてました。トミーズ雅さんの独特の声が後ろから聞こえてきて,その話の内容が耳に入り,思わず何度か吹き出してしまいました。お店を出る際,握手していただき,記念撮影もお願いしました。ありがとうございました。雅さんは本当にテレビのままの人でした。
 その後,となりのお店『キッチン 喜多村』でデザートをいただきました。『お米アイス』は初めて食べたが,美味しかった。お店のスタッフも面白い人たちでした。
 改めて,今日をふりかえると,本当に濃い〜1日。「去年の今頃,君らは女子高生やってんなあ。その頃と比べたら,刺激的な日々やろう。」と松村先生。本当にその通りです。
 前回,観光案内所にボランティア参加した日は,午前中に釜ヶ崎のまち歩きをして衝撃を受け,観光案内所に帰るとNHKの取材とNEW23の三澤さんがいてビックリ。あの日もとても濃い〜1日でしたが,今日の濃さはそれをうわまわりました。
(レポーター:国際観光学科1回生 田谷成美・山本絵理)

松村先生からの一言

 今日は私にとっても濃い1日でした。梅若六郎改め梅若玄祥先生の能楽は,文字通りの「至高の舞」です。田谷と山本はある意味で不幸かもしれません。あの舞台をあの雰囲気のなかで観たら,他の舞台を観ても,もう感動できないかも…。至高とはそういうものです。
 今年もたぶん秋に,比叡山延暦寺で玄祥先生が出演される能舞台があります。西尾智子先生への恩返しも兼ねて,この能舞台に松村ゼミでボランティアスタッフとしてぜひ参加しましょう。西尾先生,ありがとうございました。
 『焼き鳥 喜多村』,やっと学生と行けました。マスター,雅さん,また行きますからよろしく。『キッチン 喜多村』のノーさんと八木っち,今度はがっつり食べに行きます。
 今日は特別な1日でしたが,私と一緒に行動していれば,何かと面白いことに遭遇します。また「今日はこの後,暇か?」と誘います。
 断言します。その時は,バイトがあろうが,何があろうが,参加した方が絶対に得です。
 わかったか!?!?