【松ゼミWalker 番外編】 コミュニティツーリズム論に桂ちょうばさんと森乃石松さんが来訪(教員 松村嘉久)

 毎週月曜3限には,阪南大学南キャンパスで松村嘉久が担当するコミュニティツーリズム論という講義があります。簡単に言うならば,まち歩き観光の実践や理論について学ぶ講義なのですが,2014年6月23日(月),この講義に阪南大学国際観光学科1期生で落語家の桂ちょうばさんが,落語家の森乃石松さんと一緒に来訪されました。

 桂ちょうばさんは,2009年度「咲くやこの花賞」大衆芸能部門受賞者に選ばれた上方落語界の逸材,大学卒業後に桂ざこば師匠に弟子入りされ,落語家としてのキャリアを積んで来られました。「落語家と行く なにわ探検クルーズ」の案内人もされています。
 
 さて,大阪市内には,天満の繁昌亭や新今宮の動楽亭といった上方落語を常時行っている劇場【定席】があり,上方落語のなかに登場する名所も数多くあります。これらがコミュニティツーリズムを支える地域資源にもなっているため,落語を聴いたことのない学生たちに落語を聴いてもらい親しんでもらおう,ということになり,桂ちょうばさんらに講義にお越しいただくことになりました。

 講義が始まると,まずは森乃石松さんが高座に上がり,桂ちょうばさんの司会進行のもと,いくつかの落語の型を演じてくださいました。登場人物を一人ずつ増やしながら演じ分けていく落語独特の表現方法,扇子と手ぬぐいだけで色々なものに見立て,観ている側の想像力をうまく利用して演じる技法などなど。

 その後,森乃石松さんは,古典落語の名作「寝床」を,桂ちょうばさんは,「世帯念仏」というネタを演じてくださいました。上方落語を実際に寄席で聴いたことのある受講生は,松村ゼミ関係者のみで数名程度,受講生のほぼ全員が初めてライブで落語を聴く経験をしました。

 落語を聴いての受講生たちの感想は,「一人で演じる独特の芸能だということがよく理解できた」,「予想していた以上に面白かった」,「ぜひもう一度やって欲しい」など好評であった。一方,演ずる側のちょうばさんと石松さんの感想は,「寄席ではいつも自分たちよりもご年配の観客ばかり,こんな若い学生が真剣に落語を聴いてくれるような経験はまずないので,とても勉強になりました」「ぜひまたこのようなチャンスをください」とのことでした。

 伝統芸能でも大衆芸能でも,演ずる側の努力研鑽は当然であるが,聴く側や観る側もしっかりと育てていかなければなりません。それこそ「芸能」が「大衆」のなかで生き残り,「伝統」へと昇華する唯一の方法だと思います。「大衆」のなかで生き残る芸能には,必ず何か他人を感動させ楽しませ,また観に行きたい,と思わせる何かが宿っています。
 
 他人にものを教える立場となってから,芸能やエンターテイメントのファンとして,若い学生たちに色々な「本物」を聴いたり観たりする経験の大事さを説き,その現場に若い学生たちを誘うよう心がけています。

 上方落語,能楽,大衆演劇,西成ジャズ,大西ユカリさん,SHINGO☆西成さん,この10年余りで,素晴らしい芸能やエンターテイナーとの出会いがあり,私の人生は間違いなく豊かになりました。