【松ゼミWalker vol.108】 CB・CSOアワードへの挑戦から学んだもの

コミュニティビジネスに取り組む本気の集団が集まるアワード!! (4回生 小林志帆)

 今回のCB・CSOアワード(以下,アワード)への応募について,少し説明しておくと,応募したのは阪南大学国際観光学部松村嘉久研究室で,評価対象となる事業が「新今宮観光インフォメーションセンターの運営」でした。本来ならば松村先生がプレゼンすべきなのですが,プレゼン当日に先約があってどうしても参加できないとのこと。そこで私たちゼミ生4名(高橋菜央・昌山志保・小林志帆・大宅和佳)が,研究室を代表してプレゼンを担当することになりました。もちろんアワードに出場するのは初めてで,どのような方々が来場されるのか,会場の雰囲気も含めて,全く想像がつきませんでした。
 アワードに応募してくるのは,近畿地方でコミュニティビジネスを創業している団体や個人で,歴代の受賞団体を調べてみると,法人格を持っているような組織ばかりでした。松村先生によれば,「アワードは本来,大学生が出ていくような場ではなく,実現するのかどうかようわからん夢みたいなビジネスを語る場でもない。その道のプロがコミュニティビジネスを本気で構想して,その構想を事業化したようなところが出てくるとこや。」とのことでした。そんな場に私たちが出ていいものなのか,プレゼン当日が近づくにつれ不安な気持ちも高まりました。

 しかし,私たちが運営する新今宮TICは,CBコミュニティビジネスではありませんが,事業の公益性が高く地域活性化を目的とする,CSO市民社会組織であることは間違いないので,ゼミでアワードに応募すると決めました。そう決めた以上,私たちに課せられた役割は,松村研究室の活動内容を分かりやすく伝え,西成区あいりん地域で私たちが活動することの意義を,聴衆や審査員たちに理解してもらうことでした。そのためには,しっかりと伝わるようなプレゼンを作らなければならないので,プレゼン担当の4名で何度も集まり話合い,プレゼンの構想を練りました。
 発表用のパワーポイントの作成では,松村先生も加わり,「この方がいい! でもやっぱり…」,などと試行錯誤しながら作り込んで行きました。パワーポイントを仕上げてからは,スライドごとに担当を決め,プレゼンで発表する説明文を考え,プレゼンの練習をしつつ,説明文をどんどんと削って洗練して行きました。

 プレゼンの最終チェックは,12月13日(木)午後のゼミで,松村先生とゼミ生のみんなが集まるなか行いました。時間を計りながら,私たちが考えたプレゼンを実際に見てもらい,みんなから意見やアドバイスをもらいました。松村先生からは,アワードの選考基準である事業内容の公益性,事業の企画実行力,地域活性化への貢献度・波及効果の三つを意識して,プレゼンの見せ方や話の持っていき方などをこう工夫した方がしっくりくる,といった極めて具体的な指摘をいくつも受けました。どれも納得の指摘ばかりでした。
 プレゼン以前の問題で私たちの活動そのものが何よりも重要なのですが,その活動を適切かつ効果的に聴衆や審査員に訴えるのが私たちの役割で,プレゼンが上手くいかなければ,結果として活動自体の評価もさがることになります。研究室を代表するプレゼンテーターとして,私たちはとても大きな責任を感じました。

 みんなからのアドバイスを受けてプレゼン内容を確定してからは,練習あるのみでした。声のトーンや話し方,話すスピードやリズムなどを意識しながら,何度も練習しました。練習するなかで,実に微妙なニュアンスや間合いで,伝わりやすくなったり,伝わりにくくなったりすることがよくわかりました。松村先生も練習を横で聴いてくださり,色々と指導していただきました。
 プレゼン当日には質疑応答もあるので,どんな質問が出るのかみんなで色々と考えました。今回のプレゼンでは歴代松村ゼミの先輩方の活動内容が含まれていて,現役ゼミ生が知らない活動も含まれていました。なので,松村先生から過去のゼミ活動の概要をしっかりと伺い,プレゼン担当者各自で,質問が出るかもしれない内容をまとめ,プレゼン当日に備えました。

予想を上回る大規模で本格的なプレゼン大会…(4回生 高橋菜央)

 アワードのプレゼン大会は,12月15日(土)午後に大阪産業創造館で行われました。イベントそのものの正式名称は,「CBフォーラムおおさか2012 (Community Business Forum Osaka 2012)」で,前半に「ソーシャルビジネスプランコンペ近畿2012」が,後半に私たちがプレゼンする「CB・CSOアワード2012」があり,その日のうちに表彰式を行うというスケジュールでした。私たちは堺筋本町駅で待ち合わせして,みんなで揃って大阪産業創造館に向かいました。
 4階のプレゼン会場へ入ると,そこはとても立派な空間で大きなスクリーンがあり,「こんなところで発表するんや!?」と驚き緊張感が高まりました。会場受付で発表者用の資料を受け取り,発表の順番を確認したところ,一次審査通過6団体のなかで私たちは3番目,順番的にはちょうどいい位置でした。
 その後,プレゼン発表者向けのオリエンテーションが始まり,「表彰式後に名刺交換会を予定しています。」と聞き,みんなで「あっ,しまった!!」となりました。ゼミで松村先生から「色々な団体や企業の人が来はるから名刺は持って行きや。」と言われていたのに,誰も名刺を持参していませんでした。この日は土曜日だったのでTICが開いていて,TICには松村先生の名刺が山積みされています。なので,応援に来る予定の加藤宏実さんに連絡をとり,TICに立ち寄って松村先生の名刺を持って来るようお願いしました。

 オリエンテーションの後,プレゼンのリハーサルを行い,パワーポイントの動きを確認したのですが,アニメーションの動きが練習の時よりもやや遅く,プレゼン本番は可能な限りスクリーンを見て発表しよう,とみんなで決めました。
 昼食休憩を挟んで,大阪産業創造館の外で,プレゼンの最後の練習を行ったのですが,タイムは6分35秒。大学での練習では7分ちょうどくらいだったので,みんな緊張からか早口になっていたようです。プレゼン本番ではあわてず落ち着いて,緊張に負けないよう,しっかりと声を出して行こうと確認し合いました。

 前半のSBプランコンペ近畿2012の5団体による発表が終わり,10分間の休憩を挟んで,いよいよアワードのプレゼンが始まりました。トップバッターの特定非営利活動法人「神戸定住外国人支援センター」のプレゼンが終わると,私たちは壇上近くの椅子へ移動。2番目の特定非営利法人「ハートフレンド」のプレゼンを,ドキドキしながら間近で聴いていました。二つのプレゼンを聴きながら私が思ったのは,「どちらもすごい取り組みで,私たちよりもレベルが高い…」でした。

 そしていよいよ私たちの順番が来ました。壇上に立つとたくさんの観客がよく見え,その全ての目線が私たちの方を向いていて,本当に緊張しました。「早口になるな…ゆっくりと…」と自分に言い聞かせながらプレゼンを進め,私から小林さん,小林さんから昌山さんへとバトンをつなぎ,制限時間内に無事発表を終えました。

 質疑応答では,大阪ミナミの活性化で活躍されているエール学園の長谷川理事長から,「新今宮はミナミとも近い,ぜひ一緒に何かしましょう!」とのお言葉をいただき,とても嬉しく緊張もほぐれました。また「ここはもっとこうしたらいいね」など,優しい語り口で的確なアドバイスもいただき,「現場で活躍されている方は,こんな短いプレゼンを聴いただけで,違う現場でも問題点をちゃんと見抜きはるんや。」と思いました。妙に感心し納得して,私たちの出番は終了しました。

ドキドキワクワクの結果発表…(4回生 昌山志保)

 プレゼンしている際の会場の雰囲気,質疑応答での審査員の方々の反応,このどちらも良かったので,壇上から降りて,私は手ごたえと充実感を感じました。私は大勢の人の前でプレゼンをしたことがなく,プレゼンのなかでも大切な最後の部分を任されていたので,壇上ではこれまで経験したことがないほど緊張しました。緊張していたからこそ,終わった後の解放感が心地よく,とても良い経験となりました。

 フロアーに戻ってから,残りの三組のプレゼンを聴いた後,何人かの方々と名刺交換を行い,阪南大学広報担当の方々からインタビューを受けました。プレゼンを終えた解放感からか,インタビューでは何を聴かれ何と答えたのか,ほとんど思い出せません。広報担当職員の谷垣大輔さんから,「プレゼンとても良かったよ。結果発表の瞬間をばっちりとカメラで狙っとくから,いいリアクションしてね!!」と言われ,結果発表が残っていることを思い出しました。

 表彰式では高橋・小林・昌山の三名が壇上に上がり,パワーポイント操作担当の大宅はフロアーで待機でしたが,気持ちはみんな同じでした。結果は,奨励賞3組,優秀賞2組,大賞1組の順で発表されることになっていました。一次選考を通過してこのプレゼン大会に進出しているのが6組なので,何か賞をいただけるのは確実,先に呼ばれるよりも後に残った方が良い,という状況でした。
壇上で結果発表を待つ他の5組を見回すと,本当にすごい活動をされているところばかりなので,早く名前を呼ばれるだろうな,と覚悟していました。

 ところが,なかなか「阪南大学…」と呼ばれませんでした。先に名前を呼ばれて奨励賞に決まった団体のなかには,「大賞はあそこなんちゃう!?」,と私たちが噂していたところも含まれていて,正直びっくりしました。
 奨励賞3組の発表が終わり,3組を残して,優秀賞の発表へ入りました。最初の優秀賞で名前を呼ばれたのは,何と,私たちではなく他の団体でした。最後に残ったのは,私たちともう1組のみ。次に呼ばれた方が優秀賞で,呼ばれなかった方が大賞です。確率は2分の1,こんなドキドキワクワクした経験は,生まれて初めてでした。「もうここまで来たのなら,呼ばれたくない!! 呼ばないで!! 大賞がいい!!」という気持ちで一杯でした。

 プレゼンテーターにみんなの注目が集まるなか,コールされたのは「阪南大学…」でした。この「阪南大学」の最初の「Han」が発声され,とても複雑な気持ちになりました。発声された瞬間は,正直なところ「ああ残念!!」でした。しかし,壇上の他団体のそうそうたる取り組みを改めて考えると,このなかで私たちの活動が評価され,優秀賞をいただけたのは,とても嬉しく大喜びすべきことなのはわかっているし,実際に嬉しいのですが…。レベルは違うのでしょうが,オリンピックで銀メダルをとった選手の心境がよくわかりました。谷垣さんが期待されていた「いいリアクション」は,おそらく出来ていなかったと思います。

 表彰式が終わると,「とてもわかりやすいプレゼンでしたね!」など,色々と声をかけてくださる方々がいて,とても嬉しかったです。その後は,発表者全員で記念撮影していただき,私たちだけでも記念撮影しました。全てを終え,小雨が降るなかみんなで堺筋本町駅へ向かいながら,報告を兼ねて松村先生へ電話を入れました。松村先生からは「上出来や。お疲れさん。」との言葉をいただき,その日は解散しました。

先輩方のプレゼンを見守って(3回生 大宅和佳)

 アワードで私は発表者の1人として,先輩方がプレゼンするパワーポイントの操作を担当させていただきました。プレゼンを作成する段階から,練習,手直し,ゼミでのプレゼン見せ,再度の手直し,練習,プレゼン本番,とずっと先輩方に付き添い見守りました。

 この秋は社会人基礎力育成グランプリの近畿地区大会もあり,そちらのプレゼンは3回生中心,アワードは4回生中心という感じで,わずか2ヶ月足らずの間に,二つのプレゼンをゼミ内で作成しました。私は社会人基礎力もアワードも,プレゼンを間近で見ました。社会人基礎力の方はやはり学生中心の大会,緊張感は圧倒的にアワードの方があり,アワードでは聴衆も多様な方々が集まっていて,どんなプレゼンをするのかしっかりと見てやろう,という雰囲気を感じました。

 プレゼン担当の高橋・小林両先輩は,昨年のキャンパスベンチャーグランプリ(CVG)でプレゼンされた経験があるのですが,CVGのプレゼン審査は聴衆のいないところで行われ,あまり緊張しなかったそうです。
 アワードのプレゼン大会に出た6組のなかで,大学生の発表は唯一であるにもかかわらず,先輩方は全くひるむことなく,最後まで凛々しく発表されていました。パソコン操作していた私は,周囲を観察する余裕はあまりなかったのですが,聴衆の反応も,審査員の反応も,良かったと思います。先輩方のおかげでプレゼンの緊張感や結果発表のドキドキ感を共有できたことに感謝しています。

CBアワード2012のプレゼン大会を聴いて(4回生 加藤宏実)

 アワードのプレゼン大会当日,他のゼミ生たちは何かと予定が入っている者が多く,新今宮TICの運営もあり,応援に駆けつけられたのは私ひとりでした。
 私が会場入りしたのは1組目のプレゼンが始まった頃。松村ゼミ代表のプレゼンは3番目,発表者も私も,とても緊張しました。今回のプレゼン担当は普段から冷静で人前で話す経験も豊富なメンバーなのですが,高橋さんは緊張からか少し声が震え,後で聞いたのですが,小林さんも足が震えていたそうです。とはいうものの,こうした大舞台にビビらないのが松村ゼミの強み,プレゼンの方は順調に進み,質疑応答も上手く対応でき,審査員からお褒めの言葉も頂いていました。
 全てのプレゼンを見終えてから,私は用事があったので,結果発表を聞くことなく,会場を後にしました。後で,優秀賞を獲得した,と連絡をもらいました。アワードのプレゼン大会を聴いて思ったのですが,他の団体の活動やプレゼンも素晴らしく,「これは本当に素晴らしい,すごいなあ!!」と素直に思える団体も多く,あのなかで優秀賞を獲得できたのはとてもすごいことだと思います。
松村先生は,「みんな当たり前になってるから,意識でけへんかもしれんけどな,うちのゼミは,ホンマにすごいことをやってるんやで。」とよくおっしゃいます。あのプレゼン大会のなかで評価されたことで,松村先生の言葉を実感しました。
 毎日の活動はそう大変でもありません。むしろ楽しんでやっています。正しい方向性をしっかりと定め,軸がブレることなく地道に活動を積み重ねれば,見る人が見ればちゃんと評価してもらえる…アワードのプレゼン大会を経験してそう確信しました。残り少ない学生生活ですが,私たちも活動を続け,後輩たちも継承して行って欲しいと思います。

CB・CSOアワード2012受賞団体一覧

【大賞】
 団体名:ドクター・オブ・ジ・アース株式会社(大阪府茨木市)
 事業名:ITを活用! 産地直送野菜の飲食店向け卸売事業
【優秀賞】
 団体名:阪南大学国際観光学部松村嘉久研究室(大阪府松原市)
 事業名:新今宮観光インフォメーションセンターの運営
【優秀賞】
 団体名:特定非営利活動法人神戸定住外国人支援センター(神戸市)
 事業名:在日外国人の力を活かしたNPO事業の展開
【奨励賞】
 団体名:特定非営利活動法人ハートフレンド(大阪市東住吉区)
 事業名:「おとなのてらこや」事業
【奨励賞】
 団体名:一般社団法人OSAKAあかるクラブOSAKA GREAT SANTA RUN実行委員会(大阪市西区)
 事業名:OSAKA GREAT SANTA RUN
【奨励賞】
 団体名:ビープラスシステムズ株式会社(大阪市鶴見区)
 事業名:ちゅうしゃうっ太郎によるクラウド予防接種台帳を普及させて子どもを病気から守ろう!

松村先生からのひと言

 アワードのプレゼン担当者の4名は,本当に頑張ってくれました。受賞者リストを見ると,そうそうたる団体が並んでいます。このなかで優秀賞はやはり上出来です。
 今回,プレゼン担当者は,歴代松村ゼミの「代表」という立場で参加しました。どんな試合でも大会でも,個人ではなく「代表」という立ち位置を理解して出場すると,その重みがずっしりと双肩にかかるものです。真の「代表」と呼ばれる存在は,代表になれなかった者の想いまで背負って戦える資質を備えた人物です。高橋,小林,昌山,大宅には,間違いなくその資質があるので,文字通り真剣に取り組んでくれました。
 人間が成長するためには,自分のリミッターを外して,時には自分の限界を超えなければなりません。ところが自分のリミッターを自分で外すのは,なかなか容易ではありません。代表という名のもと,色々な人たちの想いを背負うことで,結果として,その大きな一歩を踏み出せることがあります。
 我らがヒーローのSHINGO☆西成さんは,「別に勝たんでええねん,大切なのは負けへんこと。」とよく言います。名言だと思います。色々な人たちの想いを背負えば背負うほど,「負けへん…,負けられへん…,もし負けてもぶざまな負け方はでけへん!!」という気持ちが強くなります。
 たとえ現在の自分の力が足りなくてボコボコにされようとも,そんな強い気持ちで相手の前で踏ん張り「負けへんで」と意思表示すると,たいていはその気迫に押されて,勝てはしなくとも決して負けません。
 プレゼン担当者たちは歴代松村ゼミの想いを背負い,胸がキュンとするようないい経験をしたと思います。後に続くゼミ生たちも,ぜひ「代表」の看板を背負って,そのような経験をできる人物になってください。

※この教育研究活動は阪南大学学会の補助を受けています。