新今宮TICは毎日休まず運営しました。

 新今宮TICは2012年2月4日(土)から4月1日(日)まで,春休み期間の58日間,毎日休まず運営しました。この間,8代目の先輩方が卒業したこともあり,英語のできるスタッフのいない日が数日間ありましたが,OBの濱中勝司さんや他ゼミの留学帰りの学生が助けてくれたので,何とか大きな問題なく運営できました。
 前半はまだ寒くて外国人も少ない季節で,利用者が2,3名という日もありましたが,3月末になると,タイ・インドネシア・台湾・香港など,アジアからの旅行者が増えるのを実感しました。花見のシーズンが近づくにつれ,欧米の旅行者も急に増えてきたような気がします。20名を超える利用者があり,そのほとんどが外国人という日もあり,新今宮界隈は,東日本大震災の影響から,ようやく抜け出しつつあるのかもしれません。
 利用者が少なく暇な時期,私たちスタッフは,就活のエントリーシートを書いたり,季節の観光情報を調べたり,英語の勉強をしたり,仲良く会話をしながら楽しく過ごしました。この春休みの毎日運営から,和田昂之の提案で「Lunch Break」も導入されました。これまでスタッフは交替でお昼ごはんを食べに行っていましたが,利用者が少なそうな日は,思い切ってシャッターを閉め,Lunch Breakの看板を掲げ,みんな揃って地域のお店へ食べに行くようになりました。地域の美味しいお店を知り,お店の方に顔を覚えてもらうのも大事なことだと思います。
 さて,松村ゼミでは,新今宮TICの日々の運営が終わると,情報共有のため,スタッフから松村先生経由でゼミ連絡網を使い,運営報告が回ります。実際の運営報告はこんな感じです。

2月27日報告 OSAKA CITY MAP英語版1部配布

【来訪者】 松村先生,大阪市ゆとりとみどり振興局の職員3名,山田英範社長,大分大学垣田裕介先生・大阪市立大学水内俊雄先生と学生たち15名,3回生小林志帆
【利用者】 3組3名
 台湾,韓国,韓国と全てアジア人の利用でした。大分大学の学生らが授業の一環で来られたので,TICのなかで活動内容などを説明しました。
 先日,CVG大阪2011で優秀賞を受賞したということで,学長賞を受賞しましたが,その賞金で冷蔵庫と掃除機を購入しました!! 大事に使ってください。 小路望

松村より

 冷蔵庫と掃除機,ありがとう。ようできたゼミ生たちに囲まれ幸せです。今日,大阪市の観光施策担当者が視察に来られたので,山田社長と地域を案内しました。私たちの活動が確実に実を結びそうです。あと,3回生幹部らと新世界・西成芸能祭を構想し始めています。近々,2回生とも相談します。

 毎日17時頃,このような報告が回ってきて,翌日スタッフへの連絡や,松村先生からのコメントなどもたびたび添えられます。さて,春休みと夏休みの毎日運営は,新今宮TICの新戦力を育てるチャンスです。この春休みも,数名の1回生がスタッフとして,積極的に参加してくれました。新人スタッフには,私たちが先輩たちから教わったのと同じよう,優しく丁寧に指導します。松村先生も来訪されると,新人スタッフを誘っては,新今宮界隈のフィールドワークや地域の名店へ食事によく行かれます。その成果もあってか,1回生の新人スタッフも立派に育ってくれました。1回生(2012年4月から2回生)たちの感想をまとめました。

1回生(2012年4月から2回生)たちの感想

橋田翔子(2011年入学・大阪府貝塚市出身)

 2011年春に入学してから2012年の春休みの毎日運営まで,何回か新今宮TICのお手伝いをさせていただきました。
この春休みの毎日運営,特に3月後半に入って,新今宮界隈を歩く海外からの旅行者が増え,それに比例して新今宮TICの利用も増えたことが実感できました。利用者は日頃から問い合わせの多い京都や奈良の観光情報に加え,桜の開花状況や名所など,日本の春の風物詩の情報も求めて来られました。
 毎日運営に何度か参加すると,そうした日々の微妙な変化がよくわかりました。また,春休みを利用して大阪観光する日本人旅行者の利用も多く,やはりこの新今宮TICのような,観光情報を提供する場所が必要であると強く思いました。先日は,松村先生と通天閣観光の社長室を一緒に訪問させていただきました。西上社長が出迎えてくださり,美味しいソフトクリームをおごっていただきました。ありがとうございました。

西出美穂(2011年入学・和歌山県出身)

 2012年の春休みに,初めて新今宮TICのお手伝いをさせていただきました。私は松村先生のゼミ生ではないのですが,新今宮TICは入学前から興味があったので,ぜひ参加してみたいと思い志願しました。最初は色々と戸惑いもありましたが,新今宮TICはとても楽しめました。
 新今宮TICには,本当に色々な国の方々が訪ねられます。春休みの毎日運営で特に感じたのは,日本語を上手に話す外国人が多かったということです。外国人利用者が尋ねられたことに応えて終わり…ではなく,その後に色々な話題で話が弾むことも多々ありました。その方のお国の話や日本の話などなど…。こうした外国人との生きたコミュニケーションが楽しめるのも,この新今宮TICならではの良さだと思います。
 外国人を案内していて,もっと日本のことも知りたくなりました。外国人利用者の方が地図を指さし,「この場所は何が有名なのですか?」と聞かれても答えられず,スタッフみんなであわてて調べて答えることもありました。尋ねられて分からないことがあれば,一生懸命調べる。その繰り返しで,新たな発見が積み重なります。新今宮TICの運営を体験して,日本人ならば日本のことを知っている訳ではない…ということを痛感しました。運営の合間を縫って,松村先生とこの地域を歩く経験もしましたが,大阪出身でない私にとって,とても貴重なものでした。これからも新今宮TICに参加させてもらい,色々な経験を積みたいと思いました。

酒井美依奈(2011年入学・大阪府岸和田市出身,写真中央:山本能楽堂の奥様の左隣)

 せっかく国際観光学部に入学したのだから,授業以外で何か国際観光に関係した活動がしたいと思い,入学前から興味のあった新今宮TICに参加させていただきました。新今宮TICの運営を経験してみると,大阪で育ったにもかかわらず,大阪のことで知らないことが多い自分に少しショックを受けました。
 電車やバスの路線,観光名所の場所など,全くといっていいほどわからず,訪ねてきた観光客に,先輩方がすらすらと行き方などを説明している横で,私はただ見ていることしかできませんでした。また,ほとんどの利用者が外国人なので,英語リーダーの先輩が英語で対応されるのですが,私の英語力ではまだまだだとも実感しました。
 わからないことだらけなので,もっともっと国際観光について,大阪について,知る努力をしようと思いました。外国人が窓口に来て話していることが分かったり,笑顔でありがとうと言ってもらえた時は,とても嬉しく楽しい経験となりました。上方伝統芸能ナイトも先輩方と一緒に観に行きました。春休みの毎日運営は終了してしまいましたが,これからも参加させていただきたいです。

岡村綾佳(2011年入学・奈良県出身,一番端のおどけている女性)

 入学した時から松村ゼミだった私は,これまで何度も新今宮TICに行かせてもらっています。外国人の利用者が多いため,英語があまりできない私は,いつも先輩たちの横で見ているばかりです。しかし,受け答えをしている先輩や,英語の得意な同期の姿を見ていると,自分もこんな風になりたいと思うようになりました。利用者には必ず出身を伺うことになっているのですが,“Where are you from?”などと,少しずつですが,質問できるようにもなりました。
 2011年は東日本大震災の影響もあって,外国人観光客が少なくなり,新今宮TICの利用者もかなり減少したそうです。ところが,2012年の春休みに入ると,外国人利用者が増え,コミュニケーションするチャンスも多くなり,外国人が私たちに何を質問されているのかが,徐々にですが聞き取れるようになりました。日本語が話せる外国人だと,私も元気に対応でき,奈良県出身なので,奈良のことならば,先輩よりも上手く対応できるかもしれません。
 新今宮TICでは,外国人と触れ合う機会が多いだけではなく,スタッフ全員が私たちの先輩なので,先輩の留学体験,お薦めの授業など,たくさんのことを教えていただけます。大学生活で分からないことや悩むことなども,丁寧に答えてくださり,楽しい時間が過ごせます。
今はまだまだですが,新今宮TICで役に立てる存在になれるよう,これからも頑張りたいと思います。

松川和矢(2011年入学・大阪府堺市出身)

 この春休みも,新今宮TICの運営のお手伝いをさせていただきました。震災後,新今宮の外国人観光客は減っていましたが,今年に入って少しずつ戻ってきつつあるように感じました。
 新今宮TICに訪ねて来られる外国人観光客と窓口で話すことで,私にとっても勉強になることがたくさんあります。先輩方は色々な手段を使って,大阪のまちを紹介し案内されます。私はそれを横で見ていて,外国人観光客がどこへ行きたいのか,何を探しているのか,理解できない時があります。そんな時の先輩方の姿を見て,自分もこうなっていかなければいけない,と感じています。
そのためにも,まず自分自身が,もっとこのまちの魅力や現状を知らなくてはいけないと思いました。2回生になっても,TICの運営のお手伝いができるように勉強していきたいです。

津村明衣(2011年入学・和歌山県出身)

 新今宮TICは,季節にもよりますが,春休みは基本に暇なのだそうです。でも,その暇な時間が,先輩方と色々話して知識を蓄えることのできるとても良い時間になりました。私は松村ゼミではなく,初めて会う先輩とスタッフに入る時は,いつも緊張します。でも,先輩方はとても優しくて,面白い方もいて,すぐに馴染むことができました。
 春休みの最初の方は暇でしたが,最後の方は日本全体で観光客が少しずつ回復してきた証拠なのか,忙しい時が多々ありました。最近ではそろそろ花見の時期だからか,大阪城に行きたい,という観光客が目立ちました。他にも色々質問されましたが,私は,大阪周辺の知識がないうえに,英語力もないので,ほとんど何も出来ませんでした。TICに入れていただいた松村先生に感謝しています。大衆演劇も,上方伝統芸能ナイトも,京都上賀茂神社でのイベント(近日紹介予定)も,全てに参加させていただきました。この春休みの経験で何かを得た気がします。
 今までも目標にしていましたが,これからは,もっと英語力を高めていきたいと思うし,大阪周辺の知識も少しずつ蓄えていけたらと思います。
春休みの間,TICに入っていた方々,お疲れ様でした。一緒にスタッフを務めた先輩,同期の人たち,ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!!

松村先生からのひと言

 この春休みもあっという間に過ぎてしまいました。西成特区構想の影響もあり,新今宮TICを来訪される方や視察される方も増えつつあります。この春先から,地域に宿泊する外国人も確実に回復していて,東日本大震災の影響から脱しつつあるのを実感しています。特にアジアの大都市から格安航空券で関空へ飛んでくる外国人旅行者が,タイ・マレーシア・インドネシアからの旅人が目立って増えてきています。
 新人スタッフもよく頑張り,よく成長しました。自分で自分のことはなかなか客観的に判断できないので,自覚していないでしょうが,最初の頃と比較すると,みなさんは格段に色々なことができるようになりました。津村さんと西出さんは,はるばる和歌山から1時間以上もかけて,多額の交通費も自己負担して,新今宮TICの運営に参加。大阪市在住の小傳茂佳菜さんも,何度か手伝いに来てくれました。新人スタッフはみんな,損をしてでも経験を積みたいという心意気を持ち,できなくともやろうと挑む勇気を持っていて,私はその人間性や素質を高く評価しています。

 松村ゼミでは5月11日から12日かけて,新入生や新2回生も巻き込んで,大規模なフィールドワークを実施する予定です。春休みの毎日運営を経験した新人スタッフは,このフィールドワークから,経験者として指導する側に回ってもらいます。指導する側になると,また違った世界が見えます。感想をくれた新人スタッフたちは,もう充分,指導する側の能力を備えています。
 国際観光学部の新入生たちに,ぜひとも伝えたいことがあります。阪南大学での4年間の学生生活はとても貴重な時間です。時間は万人に平等で有限,1日は24時間,1年は365日で,その時間をどう有意義に使うのかが重要です。学生生活のなかで,よく「自分探し」をする学生がいます。私はその姿勢を否定はしませんが,可能性のある若者をとりまく選択肢はほぼ無限にあります。無限の選択肢のなかで自分探しをすると,間違いなく迷い,ともすれば迷い続けて息苦しくなります。
 自分は探すものではなく,つくるもの,つくり続けるものです。こうなりたい,ああしたい,と思ったら,自分の意志でそこに飛び込んで,成功や失敗を重ねながら,つくりあげていくものなのです。これもできるしあれもできる,という環境にいると迷いに迷い,できたような気にだけなって,結局は何もしないことがありますが,それは最悪。また,ある程度自分をつくりあげたら,それにしがみつこうとする人もいますが,それも悲しい姿です。つくりあげた自分をためらいなく壊し,もういちどつくり直すくらいの勇気を,私も持ち続けたいと思っています。
新入生のみなさん,松村ゼミの活動に興味を持ったら,自分をつくるため,ためらいなく飛び込んできてください。