2013年の3月から準備を進めてきました「松原こども探検隊」活動は、8月5日(月)から10日(土)までの6日間にわたって行われ、無事に終了しました。活動はNPO法人子育て支援「ぽけっと」が街づくり夢基金の助成を受けて主催し、阪南大学国際観光学部・松原市まちの案内人・関西こども文化協会が協力、松原市教育委員会・松原ロータリークラブ・松原中ロータリークラブ・松原ライオンズクラブ・松原青年会議所・松原社会福祉協議会・松原市文化情報振興事業団が後援に当たる民学官連携事業として行われました。さらには、松原高等学校からも多くの学生たちがボランティアスタッフとして参加して下さり、幅広い年齢層の人々が力と心を合わせる活動となりました。

 こども探検隊は松原市内の小学校から応募した25人の小学生で結成されました。1年生2人、2年生4人、3年生5人、4年生7人、5年生4人、6年生3人の構成で、さまざまな学年の子どもたちです。25人は5人ずつ5班に分かれ、それぞれに高校生・大学生・まちの案内人がついて探検活動をサポートしました。国際観光学部の学生だけでも6日間でのべ人数96人が参加して子どもたちのサポートをしました。探検隊の基地は松原市役所のロビーと阪南大学の南キャンパスに設け、そこを起点として、こどもたちが日替わりで5つの体験コースを巡り、最終日の8月10日(土)に松原駅近くのふるさとぴあプラザで探検マップを作成して発表するという計画です。こどもたちの頑張りはもちろん、スタッフのサポート体制がうまく働くかどうかで成否が分かれます。今年は記録的な暑さが続きましたので、事故防止に加え、熱中症対策が求められました。阪南大学は周辺の地域と協働して、さまざまな連携事業を行っています。こどもたちの郷土愛を育む地域教育はその柱です。この夏の活動は、大学にとっても、新たな地域教育のあり方を模索する試みでした。民間と行政と学校がそれぞれの知恵と力を出し合い、活動を成功に導けたことは、今後の展開を引き起こす貴重なステップとなりました。
 参加した学生は、国際観光学部4回生の泉田真美子さん・今福義明君・井本有亮君・北山亜純さん・孔シュさん・河野充宏君、3回生の植林明日香さん・王欣さん・岡本英里香さん・高飛娜さん・ラッターナアムポン=ターウィトリーさん、2回生の磯野晃君・福崎美帆さん・赤坂貴之君・石田淳君・掛尾敦史君・片山依莉さん・菅野樹彦君・小石川幸福君・坂井大記君・阪本妙恵さん・坂本愛美さん・長坂恵さん・布廣有紀さん・馬場ふみなさん・平池晴菜さん・三好千夏さん・村田真菜さん・山入端海月さん・山本歩さん・山本紗希さん・渡瀬菜花さん、1回生の峯松健君・上江洲清輝君の34人です。以下、活動の内容を学生たちの報告記事で綴ります。
 
※なお、この学生教育研究活動は阪南大学学会と国際観光学部教育改革推進費より補助を受けています。

黄色いてんぷらと黒蜜ところてん
国際観光学部4回生 泉田真美子

 西田孝司さんをはじめとする松原市まちの案内人のみなさんと私たち学生が子どもたちの探検に同行しました。私は6日間のうち、初日と3日目の活動に参加しました。探検隊は参加者である子ども5人に対し、スタッフとしてボランティアガイドのみなさんと学生ボランティアが4、5人ついて1つの班を作り、行動を共にします。子どもたちは朝の9時に集まってきますので、スタッフは8時45分までに松原市役所に集合しました。NPO法人子育て支援「ぽけっと」の高田かおりさんが指揮をとり、出発の準備が整えられました。簡単に自己紹介をしたあと、注意事項を確認して、いざ出発です。
 初日は北のコースをめぐる1班につきました。探検は松原市役所の館内から始まりました。市役所の職員から各部屋の説明を聞き、市議会などが行われる本会議場にも入らせていただきました。私たちにとっても貴重な体験です。子どもたちは緊張していたのか、黙って話を聞いていました。最初ですので子どもらしさがまだ出ていません。次に向かったのは阿保神社です。松原市役所からは少し距離があり、なおかつ猛暑でしたが、感心なことに、子どもたちは弱音を吐かずに歩きました。阿保神社へ着くと、宮司さんが神社の歴史や神社へ参る時のマナーを詳しく教えて下さいました。神社の近くには「清水の湯」という、昔ながらの銭湯があります。ご主人から銭湯の良さと歴史の話をうかがいました。脱衣場の棚の上には常連客のお風呂セットが置いてあり、生活感があふれています。最近の子どもたちは銭湯にあまり行かないようで、見るものすべてが珍しいのか、興味津々の様子です。「それでは」ということで、お風呂場の中まで入らせていただきました。銭湯の向かいには喫茶店があり、その中でしばし休憩をとります。「昔なつかし黄色い天ぷら」の看板が立っています。その天ぷらと凍らせたチューペットをいただきました。天ぷらを頬張る子どもたちは口々に「おいしい」を連発しています。微笑ましい表情です。

 一息つくと、村の中にある金網工場と豆腐工場を見学しました。金網は松原市の地場産業のひとつです。編み方によって強度が違ってくるということです。実際に編むところを見せていただきましたが、工場内は機械がたくさんあって危険ですので、子どもたちをしっかりとガードしました。豆腐工場では豆腐ができるまでの工程を聞いたあと、できたての豆腐をいただきました。子どもたちは熱々の豆腐を口に入れて首をかしげています。スーパーで売っている豆腐とは味が格段に違うようです。私も試食しましたが、味に深みがあります。最後は、作った豆腐を販売する店舗です。トコロテンをいただきました。最近の子どもたちはあまり食べません。黒蜜のトコロテンに子どもたちは戸惑った顔をしながらも珍しがっています。探検のあと、子どもたちと一緒に昼食をとって、この日の活動は終了しました。半日も炎天下を歩いたにもかかわらず、誰一人弱音を吐かなかったことには驚かされました。子どもの安全を図り、無事に終えられたことに安堵し、同時に達成感を覚えました。

遊ぶ手・作る手によって生まれるつながり
国際観光学部4回生 北山亜純

 私は8月6日から8日までの3日間、活動に参加しました。6日は松原市役所を基地とする探検隊に同行しました。グループには男の子が2人、女の子が3人いました。他のグループにはやんちゃな子がいますが、この班は静かな子が多いようです。逆に「うまく打ち解けてくれるだろうか」と、心配になるほどでした。まずは市役所に隣接した消防署を見学しました。署員が各部署の説明をしてくれますが、子どもたちは緊張して、質問を出せる雰囲気ではありません。ところが、消防署の目玉である消防車を見たとたん、子どもたちの目の色が変わりました。消防車や救急車は子どもの憧れなのでしょう。キラキラした眼差しで見入っているかと思えば、次々に質問の声をあげ始めました。ワクワクしたのは子どもだけではありません。車の好きな私にしても、ふだんは間近に見ることのない特殊車両の外観や細部に興味が引かれ、心が躍ります。いい体験をさせていただきました。柴籬神社ではクイズラリーがあり、神社の北側に隣接した松原市立の「ふるさとぴあプラザ」では、一階の資料館で松原市の歴史を学びます。そこにはお手玉・剣玉・だるま落としなど、昔ながらの玩具が置いてあり、体験させてもらえます。子どもたちはそれぞれが好きな玩具で遊び、私たちも一緒に楽しみました。グループの雰囲気が変わったのは、そのころからです。子どもたちは学校が別々で学年も違うのですが、遊びを通じて壁がなくなり、遊び方を教え合ううちに、打ち解けてきます。子どものコミュニケーションが遊びで生まれることを、改めて感じさせられました。
 2日目は阪南大学の南キャンパスで宝探しをしました。大学生と小学生が2人1組になり、宝の隠し場所へ導く「宝の地図」を順番に探し当ててゆくゲームです。私とペアになった女の子は、大学生のお姉ちゃんが苦手なのか、あるいは1対1なので緊張しているのか、子どもらしさが出てきません。地図を探す子どもが首から下げている水筒は、どう見ても邪魔なように思えましたので、ルールを破って持ってあげました。すると、動きやすくなったのか、子どもらしい元気さが出てきました。早く宝を見つけたくて辛抱できない様子です。一目散に次の地図が隠された場所へ走ってゆきます。こちらはついていくのがやっとで、息が切れます。ようやく見つけた宝は色ガラスのおはじきが詰まった小袋でした。

 宝探しから昼食までの時間を利用し、南キャンパスの東隣にある「えるで」を訪問しました。さまざまな障碍を持つ人たちが作業を通じて働く喜びを知る福祉施設です。最初は戸惑っていた子どもたちも、作業に打ち込む真剣な姿と作業そのものに興味を引かれたのか、手元をじっと見つめています。そこでは皮のキーホルダー作りを体験させていただきました。自分たちが作るマイ・キーホルダーに満足した様子が印象的でした。3日目は森田呉服店で浴衣の試着体験、敬恩寺で籠乗り体験、上田ファームでトマトの収穫体験と、体験づくしで、子どもたちだけでなく、学生も楽しませていただきました。盛りだくさんのメニューを考え、実行してゆくのは大変な骨折りですが、確実に子どもは成長しました。

家に招かれ、思わぬ交流ができました
国際観光学部4回生 孔シュ(KONG SHU)

 開催日が8月の初めで、耐え難い日本の夏でも特別に暑い時期でした。探検隊の活動に参加した子どもたちの元気さは、別の意味で熱く感じました。若い世代にもっと松原の歴史や魅力を知ってもらうことが、この活動の目的であると聞きました。また、世代を超えた地域の輪を作ることもめざしているということです。子どもたちと松原市まちの案内人の人たちの間に大学生が入り、世代を結びつけます。そのような若者の役割は世界に通じるものですので、外国人留学生の私にもいい勉強になりました。
 私が担当した班は、小学5年生のフウキ君、4年生のアン君、3年生のコウタ君とメイちゃん、2年生のアコちゃん。男の子3人、女の子2の5人グループです。フウキ君は一番年上で、やる気も満々です。アン君とコウタ君は元気に走り回ります。女の子2人は話が少ないけど、将来の夢はしっかり持っています。アコちゃんは大人になったらケーキ屋さん、メイちゃんはお花屋さんになりたいとか。メイちゃんは妹が嫌いだそうで、わけを聞けば、まだ赤ちゃんでよく泣くからだそうです。やはりまだ子どもです。 活動は南キャンパスでの宝探しから始まりました。ここは大学生が主に付き添います。そして、楽しい宝探しのあと、福祉施設の「えるで」を訪問しました。障碍をもつ人たちが一生懸命にモノづくりをしていますが、ゆっくりです。1人でできる仕事を何人もの人がやっています。「効率が悪いのでは」と内心で思いましたが、センター長の話しを聞いて納得しました。「不自由な人も働くことによって社会の一員として生きている意識が強まります。社会のなかでの自分の大切さも実感できます。自分の手で作った商品をお客様に提供することによって、自分の価値も表わせるのです」との説明でした。子どもたちにも、その意味がよくわかったようです。

 次の日のイベントは天美西商店街にあるインターネットラジオへの出演でした。スタジオに入ると、元気いっぱいの子どもたちが、とたんに静かになりました。生放送のラジオ番組に出演するというプレッシャーから、子どもたちも私たちも、そして案内人のおじさんやおばさんたちも緊張しています。マイクを向けられると、みんな真剣な顔になってしまいます。残念ながら、アコちゃんは緊張しすぎて、声が出せませんでした。でも、いい経験になったことでしょう。1日おいて、4日目に再び同じ班を担当しました。こんどは松原市役所を基地としての活動です。意外なことに、アコちゃんがいろいろな話しをしてくれました。アコちゃんの自宅は松原市役所の近くにあるそうで、自慢げに自分の家や近所の話をします。活動が終わったあと、出迎えに来たアコちゃんのお母さんに会い、家に招かれました。おとなしいアコちゃんも家では別人です。宝物のシールも見せてくれました。お母さんとも中国の話で会話が弾みました。帰る時にメールアドレスも交換しました。親子のような年齢差があるにもかかわらず、アコちゃんとは友達のような関係になりました。なかなか留学生が体験できない日本人との交流が生まれたことに感謝しています。

意外な自分を見つけました
国際観光学部4回生 河野充宏

 8月5日から7日まで、松原こども探検隊のボランティアスタッフとして活動に参加しました。初日の担当は松原市役所周辺の探検でした。松原駅の南にある上田町には西田姓の家がたくさんあります。題して「西田家を探せ」というクイズラリーをここで行いました。クイズシートに印刷されている表札の写真を見て、子どもたちが家を探し当てます。見つけたら、私が1枚ずつシールを貼ってゆき、10軒でゴールです。どの子どもたちも競うようにして、一目散に駆け出してゆきます。そして、表札を見つけると、早くシールを貼ってもらおうと、こちらに全速力で駆け寄ってきます。それが一斉に集まってくるので、こちらはパニック状態。手際よく貼ってあげようと努力するのですが、「俺のも早く」と言って押し合いになります。逆に焦ってしまい、手間取りました。このゲームは子どもに大人気でしたが、スタッフ泣かせです。
 2日目は、阪南大学の南キャンパスで宝探しです。ビー玉・おはじき・ガラス小物を小さなビニール袋に入れて宝としました。その場所を描いた地図を隠し、その地図の場所を描いた地図をまた隠し、最後の地図を子どもに渡します。子どもの学年に応じて地図の枚数を調整しています。大学生と子どもが2人1組になって探します。学生は地図と宝の場所をすべて記した虎の巻を密かに持って、子どもを誘導します。これも楽しい遊びですが、ヒントの出し方にコツが必要です。私とペアを組んだのは6年生のハヤト君。参加した25人の子どもの中で最もやんちゃな「ガキ大将」です。もちろん、宝探しの難易度は最高レベルで、6年生でもなかなか見つけることができません。そのうちハヤト君の口から「暑いし、分からんから答え早く言ってよ」「ほんまにここにあるんか」と愚痴が出ます。私も一緒に悪戦苦闘しましたが、何とか宝を見つけることができました。思わずハヤト君も「全部見つけたぞ」とガッツポーズ。大きな達成感を味わっていました。その後、余った時間で学生と子どもたちが鬼ごっこを始めました。私も童心に帰って加わりましたが、季節は真夏です。全員が汗だくになりました。

 クイズラリーや宝探しは、私自身もそれなりに楽しむことができたのですが、3日目の体験は手に汗を握りました。天美西商店街にOMBCというインターネットラジオのスタジオがあります。そこにお邪魔して生放送で出演するというのです。極度のあがり症である私は、スケジュールを聞いたとたんに緊張し、スタジオに入る前から口が渇きました。こういうときこそ元気な子どもたちが頼りです。ところがなんと、あのガキ大将のハヤト君が委縮しています。それが他の子どもにも伝わり、誰も声を出そうとしません。マイクが次々と子どもたちに向けられますが、かろうじてうなずく程度です。これではラジオ放送にならないということで、マイクがこちらに向けられました。「君たちに聞きますが、子ども探検隊に参加してどうですか」との質問。心臓が口から飛び出るかと思いましたが、しゃべり始めると、自分でも驚くほどの落ち着きぶりで、無事にインタビューに答えられました。これを機会にあがり症を克服できそうです。

質問攻めで子どもの殻をやぶりました
国際観光学部3回生 植林明日香

 私は5日と8日の2日間参加しました。5日は阪南大学の南キャンパスが活動の拠点でした。9時前に集合し、打ち合わせをしたあと、班の子どもたちと顔を合わせました。残念ながら2名が欠席です。ということで、参加者は小学5年生のイクミ君、4年生のカンスケ君とミナちゃんの3人だけでした。スタッフの数のほうが多く、3人は大人に囲まれて、かなり緊張しています。活動の初めは国際観光学部の学生もよくお世話になる呉服店の森田屋さんで浴衣の試着体験をすることでした。森田屋さんに向かう道中でも、子どもは恥ずかしがっています。大学生と案内人の方も接し方がよくわからず、不安げな顔をしています。子どもの殻を壊すには、たくさん話かけるのが一番。そう思った私は質問攻めにしました。「夏休みに何か予定があるの」「宿題はどれほどあるの」、「学校ではどんなことをしているの」などと、話題を変えながら、途切れることなく、話しかけ続けました。その甲斐もあって、3人の緊張は少しほぐれたようです。
 森田屋さんに着くと、奥さんが私たちを出迎えてくれました。ここで子どもたちが体験するのは、浴衣の着付けです。奥さんの計らいで、子どもたちの着付けは私たち学生が担当することになりました。私の担当はミナちゃんです。とくに気にかけていた女の子です。まだ恥ずかしさは残るものの、夢中になっているうちに打ち解けてきました。「帯がきつくない?」と尋ねると、はっきりと答えてくれました。次の上田ファームでは、実っているトマトを収穫して、その場で試食をしました。思いのほか、子どもたちはトマトが好きです。蜜蜂の巣ものぞきました。おっかなびっくりですが、このあたりから子どもたちがはしゃぎ始めました。最初の心配がウソのようです。

 8日も同じ班の子どもたちと歩きました。すでに探検隊も4日目となりますので、子どもたちも互いに友達になったのか、初日のようなぎくしゃくした感じは消えていました。「今日はどこに行くの?」としきりに聞いてきます。この日のルートは河内天美駅の近くにある地蔵尊を見て、敬恩寺に行き、ラジオ収録を体験し、最後に魚屋さんへ向かって南キャンパスへ帰るコースです。敬恩寺はご住職の奥さんが子ども相手の活動をよくされるそうで、扱いがとてもおじょうずです。けっして甘やかしません。参拝の仕方を厳しく教えてもらい、昔のタクシーと言われる籠に乗る体験をしました。実は私も参拝の仕方をあまり知りませんでしたので、ためになりました。天美西商店街の魚屋では、ご夫妻が店で温かく出迎えてくれました。スーパーの魚はすでに処理されていますので、目の前で生の魚がさばかれる様子を子どもたちは食い入るように眺めています。見ていると、おじさんが鱧の骨切りをしています。テレビでは何度か見たことがありますが、大学の近くで実演を見られるとは、思ってもみませんでした。私の活動はこの日が最後でした。子どもに「また会おうね」と声をかけられ、胸に温かいものを感じました。

アクシデントでやり直せたラジオ収録
国際観光学部3回生 ラッターナアムポン=ターウィトリー

 私は6日間のうちの3日間、活動に参加しました。8月5日は南キャンパスを基地として探検に出かけました。スタッフのなかには松原高校の学生がいました。高校では夏のボランティア活動を勧めているそうです。大人・大学生・高校生・小学生が組になって活動をするのは奇妙ですが、世代を越えた仲間づくりができそうで、ワクワクします。そこで、まずは自己紹介をして記念撮影。そして、街へ出かけます。探検隊のメニューは盛りだくさんです。この日の最初は「まちかど写真クイズ」です。クイズシートに並べられた街角の面白写真を歩きながら見つけてゆくクイズです。誰が最初に見つけるか。子どもたちは競い合います。一番元気な3年生のノン君が2ヶ所も見つけて得意顔です。つづいては天美西商店街を通ります。松原まちの案内人のおじさんが店を紹介してゆきます。商店街の狭い道を自転車がスピードを出して通りますので、私たちは子どもを守るだけで精一杯です。幸い、子どもたちはルールを守って1列で歩いてくれました。学校でしつけを受けているのでしょうか。むしろ子どもたちのほうが真面目なのでしょうね。

 河内天美駅まで歩いてきました。駅の近くにある弁天社や「大坂」と刻まれたお地蔵さんの由来などをおじさんが説明しますが、ノン君は暑さに負けて道に座ってしまいました。この日の探検地はあと2ヶ所。「ノン君、頑張れ」という気持ちです。魚屋さんには、たくさんの魚が並んでいます。ノンくんは「魚は嫌いだ」とはっきり言いました。「骨が嫌いだ」ということです。そこで店のおじさんは子どもたちに骨の取り方を教えてくれました。ノン君、少しは魚を好きになってくれるのでしょうか。ここでアイスが配られます。主催者の子育て支援「ぽけっと」さんが、熱中症を防ぐために、毎日アイスを配ります。みんな、声も出さず、黙々と食べていました。松原インターネット放送局のOMBCでは2度のアクシデントがありました。収録開始の3分前に、突然ノン君が「トイレに行きたい」と言い出したのです。これで時間が遅れました。始まると、元気な子供たちが急に静かになってしまいました。インタビューを受けても返事をしません。そのため、私たちまでインタビューを受けることになりましたが、子どもも学生も不本意な結果に終わりました。ところが、キャンパスに戻ってしばらくすると、放送局の人が器材を持って、やって来られたのです。なにか先ほどの収録で、録音がうまくできていなかったそうです。このアクシデントは私たちにはラッキーでした。こんどは少しましなコメントを返すことができました。別の日に本キャンパスの近くにある上田ファームに行きました。経営者の息子さんが色々な畑の道具について説明してくれました。「暑い、暑い」と言う子どもたちに勧めて、ビニールハウスに入らせました。中は60度くらいあるということで、出てくると涼しく感じました。子どもたちにトマトが出されましたが1人の女の子はあまりトマトが好きではありません。そこでトマトの好きなノン君が活躍。二つのトマトをあっという間に食べてしまいました。嫌いなところを好きなところで補う。子どもたちの社会もうまくできています。

お寺と神社の参り方を学べました
国際観光学部3回生 王欣

 8月5日は活動の最初の日でした。その日の活動は南キャンパスで宝探しでした。子どもたちは小学5年生のフウキ君、4年生のアン君、3年生のコウタ君とメイちゃん、2年生のアコちゃんです。指導して下さったのは和泉大樹先生。説明が終われば、さっそくキャンパス内で宝探しゲームの開始です。宝の場所を記した地図を別の場所に隠し、その地図の場所を記した地図をまた別の場所に隠しています。何回か地図を探して宝を見つけるゲームです。隠し場所はキャンパス内の庭や校舎の1階です。男の子たちは最初から元気いっぱいです。最年少のアコちゃんは、女の子ですね。細かいところまで気がつき、みんながなかなか発見できない宝を見つけました。宝探しゲームは子どもに大人気でしたが、私たちも楽しめそうです。この日の後半は南キャンパスの隣にある「えるで」という福祉施設で手作り体験をしました。障碍をもつ人たちがハンガーやキーホルダーなどを作っています。子どもたちは施設に入ったときに驚いていましたが、そのうちに理解し、スタッフの話を聞きながら、革製のキーホルダー作りに挑戦しました。子どもの時から、分け隔てなく人を尊重する気持ちをもつことは、とても大切だと思いました。
 7日も南キャンパスを基地としましたが、こんどは河内天美駅の周辺まで街角探検に出かけました。コースは森田屋・敬恩寺・上田ファーム・本キャンパスの順番です。森田屋は呉服店で、奥さんが子どもたちの活動に理解があって浴衣の試着体験をさせてくださいました。浴衣の正しい着方を勉強します。また、昔の子どもたちの遊びや服装など、いろいろな話をして下さいました。留学生の私にも、一昔前の日本を知る絶好の機会となりました。敬恩寺の奥さんも子どもたちの活動に熱心です。本堂にあがると、まずは仏様に挨拶をしなければなりません。子どもたちに正座をさせます。こういう作法はなかなか教えてもらえません。いい勉強です。また、仏教や敬恩寺の歴史を聞きました。新しい町だと思っていた松原に古い建物や文化が残されていることに驚きました。上田ファームは自然の力で野菜を作っています。子どもたちは新鮮なミニトマトをいただきました。本キャンパスにも仕掛けがあり、ここにも街角写真クイズが2ヶ所も仕掛けられていたのは驚きでした。

 9日は探検の最終日で、集合場所は松原市役所。まずは市役所内を見学し、職員の説明を聞きながら、いろんな部屋を回ります。市長さんに会える予定でしたが、何か急用ができたらしく、実現しなかったのが残念です。老人福祉施設のパームコートを見学し、阿保神社を参拝。ここでも宮司さんから神社の正しい参り方を勉強しました。本殿の横にはクスノキの巨樹があって、力強く根を張っています。阿保の村には昔ながらの銭湯や昔懐かしの天ぷらを食べさせてくれるカフェ、豆腐工場や金網工場など、本当にたくさんの見どころがあって、子どもたちの探検は大いに成果があがり、私も随分と勉強になりました。

男の子ばかりの最強軍団
国際観光学部3回生 高飛娜

 大学は前期試験も終わり、学生がそろそろ里帰りを始めるころに、来村ゼミでは大きな活動がありました。松原市内から集まってきた25人の小学生が松原の街角を探検し、それをサポートする活動です。探検は6日間にわたって続き、私はその半分の3日間、参加しました。子どもたちは5人ずつの5班に分かれ、それをサポートするスタッフも最後まで同じ班を面倒見ます。子どもたちとの交流を深めるためです。初日は松原市役所に集まりました。子どもたちは小学校も学年も違いますので、お互いに顔も知りません。みんなそれぞれに孤独で、緊張して元気もありませんでした。子どもらしくなったのは、消防署の見学からでした。何種類かの消防車が並んでいます。消防署員が消防車や消防服の説明をすると、子どもだけでなく、私たち学生も興味津々に聴きました。この班の子どもは全員が男の子で、やんちゃです。柴籬神社は森に包まれていて、たくさんのセミがうるさく鳴いています。男の子たちは木に止まるセミを素手でつかまえ、大学生に突き出します。どうも先輩はセミが苦手らしく、怖がったのがいけませんでした。子どもたちは大人のお兄ちゃんが嫌がるのを見て大はしゃぎ、ますますセミを持って先輩を追いかけます。申し訳ないけど、少し滑稽でした。こうして子どもたちの緊張も消え、あとは元気いっぱいになりました。ハヤト君という6年生が大将になり、全員が遊び仲間になりました。5班のなかで最強のグループとなりました。
 7日は南キャンパスを基地として河内天美駅の周りを歩く活動でした。北野貴也君という松原高校の学生がカメラマンとして同行してくれました。探検隊の活動はあとで市民に報告するらしく、写真班やビデオ班が別に作られています。写真撮影は主に松原高校写真部の学生が引き受けてくれました。最強の男の子軍団は元気すぎて困ることもありますが、やるべきことはしっかりやります。この日は活動も3日目でしたので、5人はすっかり仲良しになり、結束はどの班よりも固くなったように思いました。街角写真クイズ、お地蔵さん見学、敬恩寺参拝、インターネットラジオ出演、魚屋さん見学と、炎天下を歩き回りましたが、最後まで元気でした。

 8日は4年生のマサキ君が用事で休み、4人だけの探検となりましたが、あいかわらず男の子たちは元気です。呉服屋の森田屋さんに行って、優しい奥さんの指導で浴衣の試着をしましたが、どうも慣れない和服を着るのが恥ずかしいようで、元気がありません。他の班の女の子たちが試着をして喜んでいたと聞いていましたので、これは意外な反応でした。本キャンパスの近くにある上田ファームでは、ビニールハウスが夏の暑い日差しをあびてサウナのようになっています。おじさんから「みんな中に入って」と誘われましたが、熱風に怖気づいた私は入り口で足が止まりました。けれども、子どもたちは平気で入ってゆきます。なんて元気なのでしょう。ビニールハウスから出てきた子どもたちは、意外な言葉を口にしました。「エアコンがかかっているの」と言うのです。それほど中が暑かったということですね。とにかく子どもの元気さに驚かされた活動でした。

数々の発見をした探検隊
国際観光学部2回生 掛尾敦史

 8月5日から10日までの6日間、すべての日の活動に参加しました。5班に分かれ、日ごとにコースを変えて探検をします。松原市役所を基地とする2つのコースと阪南大学の南キャンパスを基地とする3つのコースです。南キャンパス内のコースには宝探しゲームが含まれます。いずれにしても、子供たちがこの活動を楽しむためには、安全に気を配ることが一番です。そのため、交通量の多い道路では、前後から来る車や自転車に注意し、炎天下を歩くので、熱中症の対策にも注意を払いました。
 松原市役所を基地とするコースは、北の阿保神社へ向かうコースと、南の柴籬神社へ向かうコースの2通りです。私たちの班はまず阿保神社へのコースを探検しました。神社では宮司さんからお参りの仕方を教わります。阿保は「あほ」と読んでしまいますが、村の人は「あお」や「あぼ」と言っています。阿保神社の近くには銭湯があります。松原市内に9件しか残ってないうちのひとつです。金網工場や豆腐工場も村の中にあって、探検する場所は豊富です。次の日は南のコースを探検しました。消防署や商工会議所を訪れたあと、皿池を見学しました。池は松原中学校の北側にあって、長さは中学校の敷地いっぱいに広がり、200m以上あるのに対し、幅は5mばかりしかありません。どうみても溝ですが、ため池として使われてきたということで、「池」とされています。「これが、池?」と、子どもたちも驚きました。途中の上田町では「西田家を探せ」クイズで、実に西田姓が多いことにも驚かされました。柴籬神社では前日に教わったお参りの作法を実践しました。歯の神様と呼ばれる翁の顔の石があります。その歯に触ると、虫歯にならないということで、子どもたちだけでなく、スタッフも次々に触っています。みんな虫歯は嫌なのでしょう。3日目は南キャンパスのどこかに隠された宝を、地図を頼りに探し出す遊びを楽しみました。これは子どもたちに一番人気のイベントでした。子どもはひとりずつ地図をわたされ、学生がペアになってサポートします。学生は答えが記された地図を隠し持ってアドバイスを出しますが、私とペアになった子どもは賢くて、ヒントを出すまでもなく、どんどん見つけてゆきます。あっという間にクリアしました。私がチャレンジしても、そんなに早く見つけられなかったことでしょう。

 4日目と5日目も南キャンパスを基地として、河内天美駅の周辺を探検しました。呉服屋の森田屋さんから敬恩寺へ向かうコースと、天美西商店街を歩くコースに分かれます。敬恩寺で乗らしていただいた籠は、昔のご住職が使っていたものだそうです。子どもたちには新鮮な体験であったようです。商店街のスタジオでは、インターネットラジオの収録を行いました。これには子ども私たちも緊張しましたが、いい経験でした。駅の北側にはマンションが建つまで、弁天池という大きな池があり、そこにあった弁財天の社が移されて、マンション街の一角にまつられています。駅の近くに池が広がっていたことも初耳でした。さまざまに発見と体験をした、本当の街角探検でした。

子どもの気まぐれを見守る寛容さ
国際観光学部2回生 馬場ふみな

 6日間にわたる活動期間のうち、私はわずか1日だけしか参加できませんでしたが、有意義な活動をさせていただきました。松原こども探検隊の準備はこの年の3月から始まっていたようです。何度も会議を繰り返し、子どもたちを安全に楽しませ、いかに学習させるかを検討してこられたようです。そのような会議にも参加していませんので、具体的な活動内容がわからないまま当日を迎え、不安を残したままの参加となりました。参加日は8月8日(木)で、担当したのは3班。メンバーは小学6年生のハヤト君、4年生のユウキ君、3年生のノン君とサクラちゃん、1年生のサクラちゃんです。活動場所は阪南大学の南キャンパスで、まずは宝探しゲームから入りました。学生と子どもが1人ひとりペアになるのですが、私と組になったのはノン君。チームの中で一番元気で、活発で、落ち着きのない男の子でした。「大丈夫かなあ」というのが正直な第一印象でした。お互い初対面なので、ノン君も少し緊張気味でした。沈黙はよくないと思い、こちらから積極的に話しかけて、距離を縮めていきました。

 宝物は小袋に入れたガラスのおはじきやビー玉などです。子どもは喜びそうです。渡された地図を見て、子どもが順番に地図を探し、最後に宝物を探し当てるのですが、ノン君の場合、最初の地図がけっこう難しい場所でした。かなり難しいようでしたので、少しずつヒントを出します。そして、1分ほどで見つけ出したところはベンチの脚の上。普段は掃除をしないところですので、ホコリが溜まり、蜘蛛が巣を張っています。私には「ちょっとここは」と思える汚い場所でしたが、やんちゃなノン君はまったく気にしません。喜ぶかなと思った期待は外れ、早くも次の地図に集中しています。宝物を早く見つけたいという気持ちでしょうか、次の場所へ駆けてゆきます。ついてゆくのがやっとです。続いての隠し場所は庭木の説明板の裏でした。ところがここで思わぬ脱線。ノン君の興味は木に止まる蝉に移り、宝探しはそっちのけで、蝉取りを楽しみ始めました。いつまでも宝探しに戻ろうとはしません。思わず注意をしかけましたが、宝探しゲームは楽しませることが目的。子どもにとっては宝探しも蝉取りも、同じ「遊び」です。思い直して、しばらく放っておくと、蝉取りに飽きたのか、再び宝探しに戻ってきました。子どもの気まぐれを見守ることも大事だということです。そのあとは、ごみ箱の下、外のベンチの裏、看板の脚など、順調に見つけてゆきます。ただ、この日は特に日差しが強く、子どもよりも先に私が熱中症で倒れるかと思ったほどです。子どもは元気だとよく言いますが、その通りでした。結局、終わってみると、5人の中でノン君が一番早く、本人はそのことをしきりに自慢します。よほど嬉しかったのでしょう。余った時間は基地とした学生ラウンジで心ゆくまで遊んでいました。休むことを知りません。そのうち宝探しを終えた子どもがひとり二人と帰ってきましたが、みんなは相当にくたびれています。暑さにまいったようですが、探し当てた宝物を大事そうに持っていたのは印象的でした。

探検隊のマップ作りと発表会
国際観光学部2回生 山本歩

 8月10日(土)は松原こども探検隊の最終日でした。この日は、5日間の探検成果を子どもたちにまとめさせ、報告させました。回ったコースにある施設・社寺・店舗などを子供たちが地図上で探し、絵を添えながら探検マップを作ります。その作業を私たち学生がサポートしました。参加した25人の子どもたちは全員が集合し、これに国際観光学部の学生9人と来村先生、松原高校の学生3人、まちの案内人ガイドとスタッフの方々11人が加わり、合計49人が松原市のふるさとぴあプラザ2階の会議室でマップ作りに専念しました。
 まず、子どもたちは探検した場所を地図上で探し、シールを貼ってゆきます。5日間でそれぞれ違うコースを回り、探検した場所もかなりの数になりますので、思い出しにくい場合もありましたが、そのようなときは、こちらが行程表を見てヒントをあげます。「どこかでお参りをしなかった?」「どこかで何かを食べなかった?」などといった言葉をかけて、記憶をたどらせます。そうすると、子どもたちも思い出し、地図の上で場所を探し出します。見つけたときには、顔いっぱいに嬉しさを表します。そのようにしてシールで場所を確認したあとは、一人ひとりが好きな場所を選び、その場所のイラストを描きます。ひとつの場所を丁寧に仕上げる子どももいれば、自分が回った場所をできるだけたくさん描いてゆく子どももいます。それぞれですが、子どもたちが描いた絵はどれも素敵で、私たち大人でとは違った視点をもって、うまく特徴をとらえている作品もあります。イラストが仕上がれば、貼り付け作業に入ります。地図の周りにイラストを貼り付け、シールとイラストを結びます。それは定規で線を引くのでなく、毛糸を使いました。そのほうが簡単で味があります。この作業には子どもたちも大喜びで、わいわいと騒ぎながらも、器用に糸を張ってゆきます。手伝う必要もありません。私の役目は糸を固定するセロテープを適当な長さに切って渡すだけでした。子どもたちの作業は順調に進み、こんどはヒントをもらうことなく終わらせました。そして最後の仕上げです。空白の箇所やイラストの周りにコメントを書き込む作業です。地図のいたるところに店舗や神社などの説明が加えられてゆき、そのうち地図がイラストと説明で埋め尽くされました。驚くほど充実したマップです。

 マップの制作が終了したら、いよいよ6日間の総まとめとなる発表が始まります。班ごとに子どもたち全員が前に出て発表をします。できあがった地図をホワイトボードに貼って、その前で説明するのです。私は4班を担当したのですが、子どもたちは恥ずかしがることなく、自分が描いたイラストと指さしながら、コメントを読み上げました。他の班の子どもたちは聞き手ですが、長い時間にもかかわらず、しっかりと聞いています。たぶん説明されるどのコースも自分たちが探検した場所であったからでしょう。班ごとの活動で、分かれて探検したにもかかわらず、探検した場所や体験したイベントが同じであるため、経験と感想を共有できることができたのでしょう。実にまとまりのある発表会でした。

仲間と遊ぶ楽しさを取り戻す
国際観光学部2回生 村田真菜

 大学生にもなると、普段の生活のなかで子どもたちに接することはほとんどなくなります。将来はまた子どもたちと接する時期がやってくるのですが、ちょうど私たちの世代は接点の空白期間となります。そういう意味で、このたびの活動はとても良い体験をする機会になりました。活動はまさしく子どもたちと直に交流をする活動でした。そのなかでも、学生と子どもが1対1のペアになって動く宝探しは、親子のような触れ合いができる活動でした。
 私が担当したのは2班で、5年生のイクミ君、4年生のカンスケ君、コタロウ君、ミナちゃん、1年生のサヤノちゃんの5人です。5つの班のなかでは、一番まじめな班でした。担当日の8月9日も暑い日でしたが、予定通り阪南大学の南キャンパスで宝探しを始めました。学生はすべての隠し場所を記した地図を子どもに見せないようにして持ち、わかりづらい時にだけヒントを出します。子どもたちには次の地図の隠し場所が記されている小さな地図を手渡します。猛暑の中、子どもたちは元気いっぱいにキャンパスを走り、次の地図を探し回ります。暑さにも負けず、とても嬉しそうな顔をして一生懸命に探している子どもたちの姿が印象的でした。わくわくしている姿を見ると、こちらまで嬉しくなります。見つけたときには「やったあ」という声をあげます。本当に子どもは気持ちを素直に表現するものだと、改めて感じました。宝探しを終えたあとに聞いてみると、「楽しかった」「またやりたい」との感想。宝は小さなビニール袋に入ったガラスのおはじきやビー玉です。全員が終わるまでの空き時間に、そのおはじきを使って遊びました。童心に帰った気分でした。近頃はテレビゲームやスマートフォンが普及していて、こどもたちはついつい一人で遊ぶことが多くなり、外で友達と遊ぶ機会が少なくなったと言われます。宝探しゲームやおはじき遊びは、そういう子どもたちに本来の遊び方を教える絶好のきっかけになったのでは。

 この日の活動は宝探しだけではありませんでした。南キャンパスの東隣にある福祉施設を訪問しました。 「えるで」と言って、障碍をかかえた人たちがさまざまな物づくりの作業をしていました。こどもたちは入口で「はっ」とした表情をしましたが、すぐさま理解して、スタッフの話を真剣に聞いて施設創立のいきさつや指導の内容についても、しっかりと聞いています。子どもたちもたくさんのことを学びました。施設では挨拶を重んじています。作業場に入るときに挨拶を交わしてから見学をします。これは子どもたちだけでなく、私たちの勉強にもなりました。見学を一通り終えたところで、オリジナルのキーホルダー作りに挑戦しました。葉っぱの形に抜いた分厚い皮を水で湿らせ、ハンマーとポンチで打刻して好きな文様をつけてゆきます。アルファベットも打てます。子どもたちの個性が出て、見ているだけでも楽しい工作です。子どもたちは自分自身で作った自分だけのオリジナルキーホルダーがとても気に入った様子で、大事そうに持って帰りました。なかには、さっそくカバンにつけている子もいます。活動が終わり基地となった学生ラウンジで子どもたちと食べたカレーは格別でした。任務を無事に終えたあとの達成感がカレーの味をより美味しくしたのでしょう。

人見知りをするとのことでしたが
国際観光学部2回生 三好千夏

 7日から9日までの3日間、参加させていただきました。学年も学校も違う25人の子どもたちを5人ずつ分け、5班を作っています。学生や松原市まちの案内人のおじさんやおばさんもチームを作り、毎日同じ班をサポートします。私は1班を担当しました。6年生のユウタ君、5年生のミナちゃん、3年生のコタロウ君、2年生のカンスケ君とサヤノちゃんの5人です。3日間、彼らと行動を共にして、仲間になりました。
 7日のコースは、南キャンパス内での宝探しゲームと福祉施設「えるで」への訪問です。私がペアを組むことになったのは2年生のカンスケ君です。事前に保護者の方に書いていただいたプロフィールを読むと、「人見知りをします。打ち解けるのに時間がかかるかもしれません」と書かれていました。「初対面で年の離れた私と仲良くなってくれるだろうか」と心配になりました。ですが、宝探しが始まり、一緒に歩き回ってヒントを出したり、宝の地図を見つけて喜んだりするうちに、自然と打ち解けることができました。宝探しが終わり、「えるで」に行くまで、子供たちが見つけた宝のおはじきで遊びました。子供たちはおはじきが上手です。指を使う遊びは大切だと聞いています。コンピューターゲームがあふれている今でも、こういう昔ながらの遊びに子どもは喜びます。本来の遊びではないかと思いました。宝を早くみつけたため、まだまだ時間がありました。おはじきのあとは、キャッチボールをしたり、追いかけっこをしたりと、学生と子どもたちが仲間のように遊びました。子供たちはどれだけ走っても疲れを見せません。その元気さには驚かされます。「えるで」では障碍をもつ方々が百円均一ショップに卸す商品の袋詰めやハンガーの組み立てなど、さまざまな手作業をされています。遊んでいるときはやんちゃだった子どもも、部屋に入るときにきちんと挨拶をします。むしろ私たちが学ぶべき姿でした。

 2日目は河内天美駅周辺の町歩きです。そこでは敬恩寺での体験が印象的でした。ご住職の奥さんから参拝の作法を教わります。一人ずつお焼香もさせてもらいました。お焼香の作法は、今まで私がしていたのとは違い、こちらも勉強になりました。仏様へのご挨拶を終えて、子供たちは、昔のご住職がお葬式へ出かけるときに使われていた籠に乗せてもらいました。今で言う乗用車です。本堂に置かれた籠は本当に立派で、文化財にも指定されそうです。子どもたちが中に入って嬉しそうな顔をしています。思わず私も乗りたくなりました。続いて訪れたのは上田ファームです。ビニールハウスに入り、子供たちは自分で採ったトマトを食べさせてもらいました。普通のハウスの中でもかなり暑いのですが、その中に殺菌のため締め切って高温にしているハウスがあり、60度ばかりあるそうです。特別に開けて頂くと、ものすごい熱気で、中に入った子供たちはあまりの暑さで、逆に感動したのか、大騒ぎしていました。とにかく、私たちも経験したこともないメニューぞろいで、子どもたちには一生の思い出となることでしょう。

子どもを引きつけるコツを習得しました
国際観光学部2回生 小石川幸福

 6日間の活動のうち私は5日間の活動に参加しました。8月7日はどうしようもない用事で休みましたが、ほぼ全日、同じ班の子どもたちと行動をともにしました。子どもたちと仲よくなることはもちろん、子どもたちから信頼されることを目標として活動に臨みました。私は子どもが苦手です。「生意気で言うことを聞かない」という先入観を強く持っていました。はたして子どもたちとうまくコミュニケーションをとることができるのでしょうか。かなり不安でしたが、この活動を通じて克服したい、一緒に触れ合うことによって小学生から何か大切なものを得よう。そう望んで活動に臨みました。
 いざ活動を始めると、やはり最初はなかなか思うように距離を近づけることができません。子どもたちもそういう空気を感じたのか、緊張して、あまりしゃべりかけてきません。一方、3回生や4回生の先輩は子どもの扱いに慣れているようで、積極的に子供たちに話しかけ、先頭を歩いてコースを案内しています。見習わなければなりません。先輩たちは急に参加を決めたようで、活動の内容については、あまり聞いていなかったようです。それなのに、いきなりしっかりと役目を果たしています。その臨機応変の柔軟な行動力に感心しました。負けてはいられないと、私も積極的に働きかけました。「どんなスポーツが好きなの?」「どんなアニメに興味があるの?」と、子どもが自慢げに答えてくれそうな話題を出して、引きつける工夫をしてみました。話を聞いていると、私たちが小学生だったころとは違うゲームや遊びが流行っているようです。松原市まちの案内人のおじさんやおばさんは孫のように年齢の違う子どもたちとのギャップを感じておられることでしょうが、私たち学生と今の子ども世代とも、すでに大きなギャップがあるのです。そうしているうちに、活動の後半になると、こんどは子供たちから話かけてくれるようになりました。少しずつきずなが強まり、ギャップが埋まってゆく感じがしました。

 子どもたちは移り気ですが、逆にどんなことにも興味を示します。正直に言って、この活動に神社やお寺の参拝が含まれていることに疑問を感じていました。そんな古臭いところに行って、子どもたちが喜ぶはずはない。そう思い込んでいたのです。ところが、そんな予想は完全に外れました。子どもたちは境内で見聞きする珍しい物事に興味津々の様子です。とにかく知らないモノに引かれるのです。子どもの吸収力を私たちも見習わないといけません。ただ、逆に子どもは飽き性です。説明の話も長くなれば、すぐさま集中力を失い、他のことに気がとられます。説明する方々と子どもの表情や態度を見比べながら、ひとつのことを学びました。引きつけるコツは子どもとの距離をどれほど縮めるかだと。しかし、距離を言葉だけで縮めるのは難しいことです。阿保の銭湯では大きな風呂や番台に興味を示し、その役割についての話をよく聞いていました。つまり距離を縮める仕掛けが必要なのです。また、子どもの背丈で話をすることが大切です。上から教えるのではなく、仲間のように語りかける。そういうコツを学んだことで、これから子どもとうまく付き合っていけそうです。

松原のことが知りたくて参加しました
国際観光学部2回生 赤坂貴之

 初日の8月5日と5日目の9日に参加しました。5日目は来村先生にお願いして、急遽追加で参加させていただきました。それは自分自身の勉強になるかと思ったからです。その日は松原市役所を基地として、阿保の方面を探検するコースがあり、そこを担当しました。その班の大学生が休み、スタッフが足りないということでしたが、私にとっては幸運なことに、そちらの方面は行きたい所でもありました。松原市にある阪南大学の学生になって1年以上が経ちますが、なさけないことに、松原のことをほとんど知りません。また、国際観光学部の学生として、周辺の地域情報すら知らないのは恥ずかしい、という思いもありました。大学の東方にある阿保は古くからの村で、歴史があります。そこを一度は訪れてみたいと思っていたのです。
 その日のコースは松原市役所のなかを探索することから始まりました。普段は立ち入ることができない市長室や会議場に入らせていただき、子どもたちといっしょに説明を聞きます。「他に何か聞きたいことがありますか」。説明が一段落したあと、子どもたちは職員から逆に質問を受けました。いきなりの質問に子どもたちは固くなり、質問が思い浮かばなかったようです。そういう私たちも同様ですので、常にそういう気構えで人の話を聞くことの大切さを実感しました。次に訪れたのはパームコートという老人福祉施設です。そこから阿保神社をめざします。市役所から1.5kmばかりあります。その日は猛暑日で、5日目ということもあって、さすがに子どもたちも疲れています。探検は暑さとの戦いとなりました。子どもは探検に必要な荷物を色々と持っていますので、そのうち私が荷物持ちになっていました。阿保神社と近くにある銭湯の「清水の湯」を見学したあと、銭湯の向かいにあるカフェ「さわ」に入り、「昔なつかし黄色い天ぷら」を頂きながら涼をとることができました。子どもたちも我々スタッフも一息つけました。そのあとで訪れた「とうふキッチン」の工場では、近くの店舗で販売されている豆腐食品を製造しています。工場へ入ると、室内はサウナ状態で、小学生も暑さに耐えきれません。外へ飛び出そうとしますが、そこは我慢です。作業員の方が私たちのために、わざわざ豆腐を作ってくださいました。感謝の気持ちでいっぱいです。その後は中高野街道に沿った店舗に移り、そこではトコロテン作りを体験しました。子どもたちは押し出したトコロテンを袋に入れ、お土産として持って帰りました。

 市役所に帰ってからは、その日の体験について、子どもたちと語りました。暑い中、たっぷりと体験をしましたので、疲れてはいますが、話題は豊富です。私も松原の情報を少しは増やせました。それにしても子どもは元気です。疲れも残しません。休めば、すぐに消えるようです。近頃では子どもがインドアな遊びばかりしていると言われますが、少なくとも私が活動で接した子どもは、そのようなことを感じさせませんでした。新しいゲームにも夢中になりますが、その一方で外のモノや景色に引かれます。やんちゃも健在です。子どもはいつの時代にも元気に成長してくれる。活動を通じてそう確信しました。

私たちが作った宝探しゲーム
国際観光学部2回生 片山依莉

 8月6日(火)の活動に参加しました。一番元気な男の子たちだけの班です。6年生のハヤト君。5年生のショウタ君、4年生のマサキ君とヒロタカ君、そして2年生のコウキ君です。場所は阪南大学の南キャンパス、活動は宝探しゲームと「えるで」訪問です。その日の学生スタッフは4回生の河野充宏先輩、同じ2回生の布廣有紀さん、渡瀬菜花さん、山入端海月さんと私の5人です。1人ずつ子どもに付き、1対1のマンツーマンでペアを組んでの活動となりました。私は5人の中で一番おとなしそうな4年生のヒロタカ君と組になりました。
 他の男の子たちはやんちゃで、私には持て余しそうでしたが、ヒロタカ君なら何とか付き合えそうです。ただし、その分静かで、あまり話しかけてくれません。逆の意味で気をつかいます。宝探しゲームは基礎演習の授業で実際に学生たちが試みて、方法を検討しました。キャンパスの地図を頼りに次の地図を探し、何度か地図を探し当てて、最後の地図に宝のありかが記されているのです。最初の地図を渡すと、ヒロタカ君はさっそく探し始めました。ところが、意外に場所がわかりにくく、なかなか探し当てられません。「このあたりじゃないかな」などとヒントを出して導きます。自ずと会話が生まれます。おとなしいヒロタカ君もそのうち子どもの無邪気さが出てきて、さかんに話しかけてくれるようになりました。子どもとの距離が縮まってゆくのは嬉しいものです。そして最後には「見つけた!」と大声をあげて宝物を差し出し、笑顔で走ってきました。全身で喜びを表しています。私たちの試作段階では、「こんなもので本当に子どもが楽しんでくれるのか」「今の子どもは白けるのではないか」などといった不安の声もありましたが、やってみると大成功。子どもたちが最も喜んでくれたゲームとなりました。宝探しが終わったあと、「えるで」を訪問するまでに空き時間がありましたので、学生ラウンジで休憩していたところ、子どもたちの誰かが「鬼ごっこがしたい」と言い始めました。私たちも時間をどうつなごうかと考えていたところでしたので、「やろう、やろう」ということになったのですが、これが大変なことになりました。子どもたちは男の子ばかりですので、行動がすばやく、なかなか追いつけません。山入端さんは体力があって、負けずに遊んでいますが、私は全然ダメ。全く追いつくことができませんでした。「こんな暑い日に、よく走れるものだ」と感心し、そしてあきらめました。子供たちの体力は無限です。

 「えるで」では手作り体験をさせていただきました。障碍をもつ方がクッキー・パンなどの食品、籠やハンガーなどの実用品、そしてレザークラフトのキーホルダーなどを制作しています。籠の取手を付ける作業も、子どもたちがやると、なかなか思うようにはいきません。その一方、皮革のキーホルダーに自分たちの文様を打刻する作業は男の子たちも熱中。横で見ている私たちも、思わず体験してみたくなる作業です。大学のすぐ隣でこんな体験をできるとは思ってもみませんでした。さまざまな人たちに触れ合う機会が、踏み出せばいくらでもあることを知りました。

使命は子どもたちを守ること
国際観光学部2回生 山本紗希

 NPO法人子育て支援「ぽけっと」が主催する「松原こども探検隊」のスタッフとして6日間のうち3日間参加しました。松原市役所を基地として消防署・警察署・柴籬神社をまわるコースと、阿保神社・豆腐工場・とうふキッチンをまわるコースを子どもたちと探検し、最終日に「ふるさとぴあプラザ」で子どもたちの探検マップ作りを手伝いました。しばらく小学生と行動を共にする機会がなかったので、どう接すれば良いかがわからず、不安でしたが、その不安は活動を始めるとすぐに消え、子どもたちとの会話もはずみ、楽しく過ごせました。大変だったのは任務です。来村先生はあれこれと指示を出されませんでした。「君たちの任務は子どもたちを守ること。それだけはお願いします。あとは自分たちで適当にやってください」ということでした。
コースは普通の街角ですので、車もよく通ります。子どもたちは話に夢中になると、注意が散漫になり、もともと周りのことをあまり気にしません。とくに大通りを歩くときは車が勢いよく走ってきますので、注意が必要です。グループは学年をわざと揃えていませんので、年齢が違い、歩くスピードも違います。列が自ずと長くなり、下手をすると切れてしまいます。それに加えて、耐えられない暑さです。すぐに疲れて、神経を配れなくなります。それでも私たちは使命を忘れず、子どもたちの交通安全を図ることに全力を傾けました。正直に言って、大変な活動でした。それでも、得るものはたくさんありました。子どもたちとの交流を図れたこともそうですが、街角での発見も少なくはありませんでした。

 松原市に住んでいながら、行ったことがない場所がたくさんあります。とりわけ阿保で見たもの、体験したことは印象深いものでした。阿保神社では、子どもたちが宮司さんに参拝の仕方を教わり、私たちも横で見て学びました。作法は鳥居をくぐるところから始まります。「それでは、やってみなさい」と、一人ずつ体験させられる子どもは緊張した面持ちでした。本殿の横には大きな楠があり、木の幹はこども5人が手をつないでも輪にできないほどの太さでした。豆腐工場に行き、間近で豆腐作りを見学しました。豆腐作りは温度が大事だそうで、真夏にも冷房がない部屋で作業をされています。大変な仕事です。暑さにも負けず、たった1人で手際よく着実に作業を進めていく姿に感動しました。子どもたちも驚きの目をして見ていました。できたての豆腐を試食させていただきました。「こんなにおいしい豆腐、初めて食べた」と、子どもが正直な感想を口にします。確かにスーパーで市販されている豆腐とはまったく違う美味しさでした。その次に訪れたのは、工場で作った豆腐食品を販売している店舗で、「とうふキッチン」といいます。店頭には多種の豆腐、おからを使ったお菓子や料理が並んでいます。どれもヘルシーで美味しそうです。こんなお店があったのかと、ひとつの宝を見つけた気分でした。5日目のコースでは消防署の特殊車輛に乗せていただきました。子どもたちは中に積んであるさまざまな器具に興味津々。消防士の作業服を着せてもらい。ホースも持たせてもらいました。初めての体験が満載の活動に私たちも十分に楽しめました。子どもたちには最高の夏になったものと思います。

子どもたちの意外な力に感心しました
国際観光学部国際観光学科 坂本愛美

 3日目の8月7日に参加しました。私が担当したのは男の子ばかりの元気な班です。違う小学校から集まり、お互いこの活動で初めて顔を合わせたそうですが、もう近所の遊び仲間といった様子で、仲良しグループになっていたのは驚きでした。いかに2日間のメニューが密度の濃い活動であったかがわかります。この日は河内天美駅の西側を回るコースを探検しました。南キャンパスを出て、駅までの間に学生たちが作った「街角写真クイズ」にチャレンジします。あらかじめ学生が街角の面白風景を写してシートに並べ、それを見ながら撮影場所を当ててゆくクイズです。よく注意をして見なければ気がつかない風景もあります。ところが子どもたちは近所をよく回っているのか、クイズシートを見ただけで、「ここ知っているよ」と自慢げに話します。そしてすばやく撮影の場所を探し出してゆきます。子どもたちは普段から周りの風景をしっかりと注意して見ているのでしょう。ただ元気に走り回っているだけと思っていたのが大間違いでした。何事にも目を光らせながら遊んでいるのですね。子どもの一面を発見しました。
 駅の近くにある地蔵尊のところにやってきました。この石仏は道標も兼ねていて、地名が刻まれています。そこに「大坂」の文字がありました。今は「大阪」と書きますが、江戸時代には坂の字を使っていたようです。このことに興味を持ったようで、その理由を聞いていました。その北にある敬恩寺では、ご住職の奥さんが子どもの教育に熱心で、参拝の作法を子どもに教えているということでした。普段は入ったこともない本堂の厳粛な雰囲気と、奥さんの毅然とした教え方で、先ほどまでわが物顔にはしゃいでいた姿とは一変して、子どもたちは静かに正座をして聞き入りました。ところが、奥さんが作法の説教を終えて、籠の話に切りかえたとき、再び子どもたちの目が輝き始めました。前に置かれた籠は昔のご住職が出かけるときに使われていた乗用の籠です。また、担ぎ手が着ていたという衣装もあります。その衣装を身につけた男の子は大はしゃぎ。この日一番の笑顔を見せてくれました。ただ、籠は思ったより重たかったようで、「ほんとに昔の人はこんな重いものを持っていたの?」と首をかしげ、必死の形相で持ち上げようとしますが、子どもの力ではあがりません。そこで学生が代わりましたが、持ち上げるだけで精一杯。こんな重いものを持って走っていたとは。みんなは改めて昔の人の力強さを感じたようです。

 敬恩寺を出て南下し、天美西商店街を歩くと、OMBCというインターネットラジオ局のスタジオに着きます。ラジオ出演です。子どもたちから順番に学校名・学年・名前などの自己紹介をしたあと、私たちにもマイクが向けられ、子どもたち以上に緊張しました。最後に向かった魚屋さんでは、ご主人が子どものリクエストに応えて魚をおろしてくれました。「どの魚がいい」という質問に、アジ、とひとりの男の子が答えました。「家でお父さんがやっていたから」と続けます。「それじゃ、きれいなアジのさばきかたを覚えて、お父さんに教えてあげんとなあ」と、ご主人も嬉しそうです。私たち以上に店の人とコミュニケーションをとる子どもたちに感心しました。

世間の評価をくつがえす男の子たち
国際観光学部2回生 布廣有紀

 私の担当した男の子ばかりの5班は、松原市役所を基地とする探検から始めました。まずは市役所に隣接した消防署です。消防士の方についてゆく子どもたちを後ろから見守っていました。消防士は子どもたちの憧れです。興味深く話を聞く子どもたちがとりわけ興味をもったのは、消防士の早着替えでした。消防署は男性の世界だという先入観をもっていた私が心引かれたのは、男性署員にまざって任務についている女性署員の姿です。実に格好よく、同じ女性として、少し誇らしげな気持ちになりました。続く商工会議所には、松原の物産品が多く飾られていました。大阪の人間ではない私には、松原市でこんなものが作られているのかと、小さな驚きがありました。市役所から10分ばかり南へ歩いたところに欄間屋さんがあります。和室と和室の間を仕切る木彫の壁を作る工場です。ノミを巧みに使って彫刻をしてゆく手さばきを見学しました。職人の技に子どもたちも目を見張り、すばらしい作品を見て驚きの声をあげ、「すごいなあ」と、会話を交わし始めます。今日が初日であった男の子たちも、このあたりからよそよそしさが取れ、緊張が解けてゆきました。
 近くの上田町では「西田家を探せ」というユニークなクイズラリーを行いました。昔ながらの町や村は親戚が集まって住んでいますので、同姓の家が多いものですが、上田町では西田姓の家がやたらと多いのです。たまたま松原市まちの案内人を率いてこの活動に協力していただいている西田孝司さんがそのお一人でしたので、近所の西田家の表札を撮り、シートに写真を並べて、家を探すゲームを作ったのです。学生は答えの地図をもっていますので、子供たちにヒントを与えながら、すべての西田家を探させました。子どもたちはクイズを楽しむと同時に、日本の町や村の有り方に気づいたことでしょう。このころから学生と子どもたちとのコミュニケーションができてきました。

 2日目は南キャンパスで宝探しです。学生が1人ずつ子どもとペアになって、宝探しの手伝いをします。私とペアになったのは4年生のマサキ君でした。最初は「こんな子どもの遊びはできない」という顔で、冷めた態度をとっていたのですが、隠し場所を示す地図を見つけ出してゆくうちに、だんだん本来の姿が出てきました。楽しさを隠しきれず、そのうち走り始めました。たぶん内心では、最初から興味津々であったのかも知れません。成長する子どもの微妙な心を感じました。結局、マサキ君が最初に宝を探し当てました。宝探しが早く終わったので、マサキ君としばらく会話をしました。「今、君らの流行は何?」と聞くと、すかさず「サッカー」と答えます。てっきりゲームの種類を答えるものだと思っていましたので、この答えは意外でした。近頃の子どもは家でゲームばかりをしている、というのが世間の評価ですので、予想が外れても、これは嬉しい話です。そのあと、近所の福祉施設でキーホルダー作りの体験をしました。これにも男の子たちは熱中します。最終日のマップ作りにも熱心に打ち込むなど、やんちゃな子どもたちも期待以上に頑張ってくれました。触れ合ってみると、意外な面が見えてくるものです。

感動を素直に表現する子どもたち
国際観光学部2回生 長坂恵

 2回生の基礎演習の授業で「夏の活動の準備をするから」といって、何度かの野外学習がありました。街角の面白い風景を写真に収めたり、南キャンパスで宝探しゲームを作ったりと、子どもたちを遊ばせる仕掛けを考えました。その本番が8月5日から始まるということで、私は5日と6日の2日間の活動に参加させていただきました。大学に入って、それまではゼミ活動に参加したことがありませんでした。また子どもたちとの活動も初めてです。はたしてうまく活動ができるのか。かなり不安をかかえての参加となりましたが、他方では大きな期待をもっていました。私は両日とも阪南大学の南キャンパスを基地としての活動を手伝いました。担当したのは3班。6年生のハヤト君、4年生のユウキ君、3年生のノン君とホノカちゃん、そして1年生のサクラちゃんです。学年も学校もバラバラで、子どもたちどうしも他人です。はたしてどうなるのでしょうか。
 1日目は私たちの面白写真が活躍します。街角で撮った、子どもが喜びそうなスナップ写真をプリントに並べ、歩きながら写真の場所を見つけるゲームです。子どもが見つけると、学生がシールを貼ってあげます。単純なクイズラリーですが、これがけっこう人気でした。見つけると「あった。シール貼って」と叫んで駆け寄ってきます。これがすごいパワーで、そのときだけは暑さを忘れたようでした。探検したのは河内天美駅の周辺です。歩道が狭いところや、歩道のないところは車や自転車に気を使います。さかんに道の端に寄るよう注意しなければなりませんが、素直に「は〜い」と返事をしてくれるところが子どもの可愛らしさです。魚屋さんでは子どもたちの目の前でご主人が魚をさばきました。スーパーでは切り身の魚が多いので、そういう光景は私たちもあまり慣れていません。上手に素早くさばく技に子どもたちは驚いた様子です。「魚は好きじゃない」という子どもがいましたが、それでもおじさんの包丁さばきには興味津々。近寄ってじっと見ていました。インターネットラジオ局のスタジオでは、マイクを向けられての質問に戸惑う子どもたちでしたが、何度か練習をしているうちに、ハキハキと答えるようになります。私たちもインタビューされて戸惑いましたが、いい体験ができました。

 2日目も河内天美駅方面への探検でしたが、その日は途中の呉服屋さんで浴衣の試着体験をさせていただきました。阪南大学の学生もよくお世話になっている森田屋さんです。女の子だけでなく男の子たちも浴衣を着せてもらって、素直に喜んでいます。私も手伝いました。女の子たちは見たこともない形をした下駄をはかせてもらって大喜びでした。きっと思い出に残ることでしょう。意外だったのは、その日の最後に訪れた本キャンパスでの出来事です。私たちには見慣れた光景ですが、子どもたちは広いキャンパスと多くの学舎にびっくりした様子で、驚きながら眺めています。子どもたちと活動をしていると、意外なことばかりです。逆に言えば、いかに私たちが子どもたちと接する機会がないか、ということでしょう。共に活動をすれば、これほど親しく有意義に過ごせることに気づき、この活動の大切さを実感しました。

予想以上に高い子どものレベル
国際観光学部2回生 磯野晃

 私は来村ゼミの学生ではありませんが、先生がフェイスブックで発信しているオープンゼミの呼びかけに応じ、活動に参加させていただきました。国際観光学部ではゼミの壁を越えた野外活動を行っているので、興味ある活動に参加できて、ありがたいことです。この活動を通じて、これまでとは違った見方や視点を発見することができました。子どもたちや地域の方々との交流を通して、さまざまなことに気づきました。地域の状況、子どもたちの地域に対する知識、子どもたちの新鮮な疑問などに触れることができた、想像を超える活動でした。
 参加したのは活動も終盤にさしかかった8月9日でした。河内天美駅の周辺を歩き、地域の人々や歴史にふれる活動でした。子どもたちの体験活動を補助しながら、案内してくれる方々や学生たちも含めて、人々の表情をカメラに収める仕事を任されました。この活動では記録を重んじています。活動の終盤というだけあって、子どもたちの知識もかなり増え、説明を冷静に聴く耳ができています。「その話はもう聞いたよ」という声もあがります。子どもたちも遊んでばかりいるようで、真剣に活動を行っているのです。子どもたちが求めるレベルは意外に高い。そう感じました。天美西商店街の魚屋さんは何回も訪れた子どももいて、魚をさばく主人の姿も慣れた様子で見ていました。私たち大学生が思いつかないような質問も出ます。子どもはこんなことも考えているのだと、ただただ感心するだけでした。そういう子どもですが、低学年はまだやはり幼児から抜け出せず、シャイな態度を見せるところに安心させられます。

 さて、最終日を迎えました。活動に参加した子どもたちは25人。その全員が松原ふるさとぴあプラザに集まりました。スタッフを入れて、50人ばかりの人数です。この5日間で探検したところを思い出し、聞いたことやわかったこと、そしてどう思ったのかを絵とコメントで表現します。これまで通りの5班に分かれて机を囲みます。机には大きく詳しい地図が用意されました。その地図を見て、まずは探検したポイントを探してシールを貼る作業です。もちろん、子どもたちだけでは探せません。同行した学生たちが助けます。子どもたちの集中力は相当なものです。自分たちが探検したところのおさらいだから、なおさら楽しく作業ができるのでしょうか。それにしても地図の完成度に驚きます。探検地のイラストも思い出して描くのですが、学生よりも景色に対する記憶力がまさっています。コメントも的確です。私はグループに縛られず、どのグループにもまめに顔を出して、子どもたちと学生の話し合いを傍観しました。どの班も活発に会話が交わされ、この5日間でたっぷりと交流ができたことを実感させられます。地図が完成すると、いよいよ発表です。子どもたちの全員が前に出て発言をしました。もちろん子どもたちだけでは進められませんので、学生が司会と進行を務めます。いずれもいい勉強です。発表が終わったあとの達成感は、子どもたちよりもむしろ、「ぽけっと」のスタッフ、松原市まちの案内人の人々、松原高校の生徒たち、そして私たちが強く感じていたようです。地域と子どもたちに密着した活動でした。

熱中症の心配も吹き飛ばす元気
国際観光学部2回生 平池晴菜

 8月5日(月)から10日(土)に行われた松原こども探検隊に参加させていただきました。私はそのうちの8日と9日に南キャンパスを基地として行われた活動を手伝いました。ゼミ活動に参加するのは初めてでしたし、突然の参加ということもあり、少し不安もありましたが、子供たちの元気に圧倒されとても楽しい時間を過ごすことができました。8日に宝探しゲームでペアになった小学5年生のフウキ君は人見知りをして、初めのうちは口数が少なかったのですが、2人でゲームを楽しんでいるうちに、どんどん仲良くなり、蝉の種類の見分け方を教えてくれました。9日は小学5年生のイクミちゃんと1年生のサヤノちゃんについて河内天美駅周辺の街角を歩きました。イクミちゃんは家では末っ子ですが、サヤノちゃんが遅れたら待ってあげたり、手を引いてあげたりしています。普段は世話になっている子が、年下の子の面倒を見ることで、大きく成長していく様子が目に見えてわかります。実に嬉しい成果です。

 2日目はビデオの撮影も担当しました。探検隊は記録係りを決め、秋の報告会で発表するための素材作りに努めました。写真は主に松原高校写真部の学生たちが撮影してくれます。同時に、「ぽけっと」のスタッフがビデオ収録も行いました。私は来村先生から預かった本格的なビデオを持ち、自転車に乗って探検隊を追いかけました。本キャンパスの西にある上田ファームでは、子どもたちがトマトの収穫していました。とても楽しそうに収穫の作業をしています。ところが、トマトの嫌いな子がいて、水で洗ったトマトも口に入れようとはしません。しかし、自分で収穫したことに責任を感じたのでしょうか、そのうちかぶり始めました。さすがに「おいしい」という声は出ませんでしたが、苦手なトマトを丸ごとひとつ食べきったのは、その子にとっても初めてのことだったでしょう。他の子にはとても美味しいトマトであったようですので、これを機会にトマト好きになればいいですね。家では子どものわがままが通りますが、集団行動では許されず、そのことが子どもを変えるきっかけになることを実感しました。この日の最高気温は何と36度でした。体感温度はそれ以上であったかも知れません。それなのに、子どもたちは熱殺菌をするビニールハウスに喜んで入ってゆきます。中は60度もあるということです。ハウスの扉をあけると、熱風が噴き出てきます。その中で子どもたちは無邪気に走り回っているのです。「熱中症になるのでは」と心配しましたが、そのうち出てきて、「外が涼しい」といって喜んでいます。上田ファームのご主人に「なんでこんなに中を熱くするの」と、しっかり取材をしています。とにかく子どもたちは強い。そう感じました。それから自転車を飛ばして、福祉施設の「えるで」で手作り体験を楽しんでいる別の子どもたちに合流しました。宝探しをしたあとの活動なので、炎天下で走り回って疲れているはずですが、まったくそのそぶりをみせず、作業に専念しています。「ありがとうございました」と大きな声で挨拶もできました。2日間の活動でしたが、子どもたちの元気さに驚かされ、大きく成長していく姿を確認できました。

子どもたちのバランスを考えました
国際観光学部2回生 菅野樹彦

 松原こども探検隊の準備はこの年の3月から進められ、発足式は4月2日に行われました。私もそのときの会議から活動に参加し、意義や手段を真剣に話し合う社会人にまざってアイデアを出してきました。基礎演習の授業では、学生たちが工夫して、子どもたちを楽しませる遊びを考えました。街角面白写真のクイズラリーや南キャンパスでの宝探しゲームなどは、学生自らが試して、面白さを確認しました。ほんとうに子どもたちが自分たちの思惑通りに楽しんでくれるのか、という不安を残しつつ本番の8月5日を迎えました。私は6日間にわたって行われた活動のうちの1日目・3日目・4日目の探検に参加しました。担当の班は4班です。小学5年生のフウキ君、4年生のアン君、3年生のコウタ君とメイちゃん、2年生のアコちゃんの5人からなるグループです。学年の幅が広い班でした。
 8月5日は南キャンパスを基地にして、宝探しゲームをしたあと、東隣にある福祉施設「えるで」に行き、手作り体験をする予定となっています。宝探しは学生5人が子ども5人につき、2人1組になって行う予定でした。そのため宝探しのコースも5人分が用意されていたのですが、初日ということもあって要領を得ず、子ども5人が全員かたまって始めてしまいました。最初の地図を渡した瞬間に男の子たち3人が勢いよく走り出し、メイちゃんとアコちゃんが出遅れました。女の子2人がうろうろするうちに、男の子たちは早くも次の地図を見つけています。このままでは男の子3人だけのゲームになってしまいそうです。そこで私はみんなを集めて落ち着かせ、全員に地図を眺めさせました。探し出すタイミングを揃えたのです。これで女の子たちも平等に楽しめます。もちろん、女の子にはこっそりとヒントを与え、目ざとい男の子たちとのバランスを図ります。そのうち探すコツを覚えたのか、女の子からも「宝の紙を見つけたよ」という喜びの声があがるようになりました。遊びの領域ですが、集団のバランスを図る大変さと面白さを実感しました。結局、1人ずつに分けて行う予定であった5つのコースを5人が共に楽しめて、結果オーライでした。それにしても子どもたちの元気さには驚かされます。炎天下のキャンパスを走り回っても、疲れることもなく、ゲームを楽しみました。

 3日目の活動は河内天美駅周辺の街歩きと3つの体験です。森田屋での浴衣の試着体験、敬恩寺での籠乗り体験、上田ファームでの試食体験です。河内天美駅と阪南大学本キャンパスとの間にある敬恩寺では、本堂に古い籠が架けられています。その昔、ご住職が乗用されていたものです。それを床に降ろすには、男手が必要です。私はしばらく班から離れ、籠を降ろす作業を手伝いました。敬恩寺ご住職の奥さんである吉井宏子さんは寺に子どもを集めて活動をされているということで、子どもの扱いに慣れています。子どもたちに参拝の礼儀を教え、わかりやすく寺の歴史を語り、籠乗り体験をさせます。境内でのクイズラリーも用意されていて、厳しさと優しさを兼ね備えた奥さんでした。町には素晴らしい人がいるのだと、感心するとともに、ありがたさを感じました。

松原高校の生徒たちに助けられました
国際観光学部2回生 阪本妙恵

 8月7日・8日・9日の3日間、活動に参加しました。「毎日森田屋さんでお手伝いをさせて下さい」とお願いをして認められました。森田屋の奥さんには阪南大学の女子学生がよくお世話になり、着付けなども教わっています。このたびは子どもたちに浴衣の試着体験をしてもらおう、ということで主催者である「ぽけっと」の高田かおりさんが協力をお願いして、快諾をいただいたそうです。森田屋さんの奥さんは子どもたちを楽しませる工夫をされていました。ただ浴衣を着せるだけでなく、お手玉を渡し、浴衣姿で遊ばせます。お手玉は手触りのよい生地でできていて、中には松原で作られた貝殻のかけらが入っています。手触りがよく、投げやすいように工夫されているのです。子どもの器用さはまちまちで、1つだけで遊ぶ子もいれば、3つを投げて成功させる子もいます。ケマリを蹴って遊ぶまで子もいて、店内が保育所のような騒がしさになります。昔の子どもはこういう格好でこういう遊びを楽しんでいたのかなと、思いをめぐらせました。服の上から浴衣を重ね着して暑かったのか、奥さんにアイス棒をもらうと、慌てて食べていました。子どもには辛抱がありませんので、思ったこと、感じたことを素直に行動で示します。
 少し涼んでから、敬恩寺へ歩いて向かいます。子どもたちにも個性があり、銘々が違う行動をします。その行動を観察していると、普段の生活ぶりまで見えてきます。少し寂しく感じたことは、街を歩いているときも、道端で休憩するときも、気の合う友達だけで離れ、他の子どもたちに親しむことなく孤立している2人組がいたことです。そこにはすでに大人の顔が見えています。子どもたちに接すると、きれい事だけで済まない問題にも突き当たります。子どもたちの嫌な面にも向き合い、解決する努力をしてこそ、真の子育て支援ができるのだと痛感しました。

 助かったのは、阪南大学の学生のほかに、松原高校の生徒が参加してくれたことです。写真部のほかに、夏のボランティア活動として参加してくれた1年生も多く参加してくれました。私たち大学生は子どもたちと大人を結ぶ役目をしますが、高校生は子どもと大学生を結ぶ役目をしてくれました。ある高校生はブレイクダンスを披露して、子どもたちのヒーローになっていました。私たちはすでに「親」としての立場に移りかけていますが、高校生は子どもたちのお兄ちゃんやお姉ちゃんなのです。高校生と大学生、子育て支援のスタッフ、まちの案内人ガイドのおじさんやおばさんたち。あらゆる年齢層が集まると、いろいろな知恵で子どもたちを育てられます。ときには優しく、ときには厳しく、ときには仲間のように接してくれる人たちに育てられると、子どもたちも健全に成長するのではないでしょうか。家族でも親戚でもない子どもと長い時間を共にできるだろうか。子どもとどう接していいのか。そういう不安を抱いて臨みましたが、年下や年上の人たちに支えられ、少々の問題にぶつかっても、気にせずに乗り越えられました。子どもを育てようと意気込んで参加した私が、いつのまにか育てられていたようです。

たくさんの弟ができました
国際観光学部2回生 山入端海月

 松原こども探検隊の名を聞いたのは、基礎演習の授業でした。担当の来村先生が探検隊の世話もされるということで、夏の活動に向け、学生も準備をして参加しましょう、ということでした。学生が考えるのは南キャンパスの近くで行う街角面白写真クイズとキャンパス内で行う宝探しゲームでした。互いにクイズを作って試しあい、子どもたちが楽しめるかどうかを検証します。暑い中、街を歩き、雨にも遭いながら、安全なコースを確認しました。最初は「なんでこんなことをしなければ」という思いがあったことは確かです。ただ、試行錯誤しているうちに、「成功させたい」という思いが強くなってきました。子どもの気持ちや目線を考えることに楽みを覚えるようになりました。愛着が出てきたというのでしょうか。
 いよいよ8月になり、5日から10日までの6日間にわたる探検隊活動が始まりました。私は5日と6日の2日間の活動に参加させていただきました。自分たちが工夫した宝探しゲームの補助を担当できたのは幸いでした。もともと子どもが好きですので、活動には抵抗なく参加できましたが、実際に接してみると、大変です。ガキ大将みたいな男の子がいて、言うことを聞かず、勝手な行動をします。一方で、おとなしい子がいて、輪に入れません。これをどうまとめて楽しませるのか。こういう状態で、本当に宝物を探しあてられるのか。困惑しながら始めました。ところが、ゲームも後半になると、子どもたちどうしが仲よくなり、続いて私たちにも打ち解けてくれました。遊びで心がつながったのです。思いっきり汗を流し、次々と隠された地図を見つけていく子どもたちの姿は、微笑ましいものです。そのうち私は人気者になりました。宝探しのあとの休憩時間に腕白な子どもたちが近づいてきて、「ミヅキさん、遊ぼうよ」と無邪気に声をかけてきます。なにか本当の弟たちができた感じです。鬼ごっこをして遊びました。それにしても子どもは疲れを知りません。さすがにこちらは走り疲れましたが、いい汗でした。

 そのあと、南キャンパスの隣にある「えるで」を訪問しました。障碍をかかえた人のための福祉施設ですが、モノづくりの工房でもあります。普段私たちが百円均一ショップで目にしている商品や手作りのお菓子、キーホルダーなど、さまざまな作業をしています。そこで従事する方から直接お話しを聞きました。作業に責任を持って取り組んでいることが伝わってきます。子どもたちはふざけることもなく、飽きた顔をすることもなく、真剣に聴いています。何よりも玄関で自分たちのクツを並べ、大きな声で挨拶をして入って行ったことに驚きました。「近頃の子どもは挨拶もせず、礼儀も知らない」などと言うのは、大人の先入観であるようです。むしろ、私たちが子どもたちを指導できるでしょうか。自信がありません。こんな機会が大学の活動にあるなんて、思いもしませんでした。この活動に参加していなければ、大学のすぐ近くにこんな素晴らしい福祉施設があり、生きることを考えるお手本があることにも、気が付かなかったでしょう。周りを知る機会を与えていただいたことに感謝し、今後とも積極的に参加してゆこうと思っています。

印象に残った二つの体験
国際観光学部2回生 福崎美帆

 8月5日から10日までの活動期間のうち、後半に当たる7日から10日までの活動に参加しました。他の学生はそれぞれの班に張りついて、同じ子どもたちとの交流を深めていますが、私は補助員として参加しましたので、スタッフの少ない班に回り、毎日めまぐるしく班が変わりました。それだけに多くの子どもたちと触れ合えたのは幸いでした。また、任務は主に撮影でしたので、第三者的な目で大学生と子どもたちの活動風景を観察できたことにより、違った視点から探検隊の活動を見ることができました。さらには、探検コースの風景を観察できたこともありがたい経験でした。阪南大学は松原市にあって、私も駅から大学までの道すがら、街角の風景を見て親しんでいるつもりでしたが、道を一本それたら、普段の印象とはまったく違う風景が広がります。大学の周辺にどういう地域が広がっているのかを知らないまま今日まで通学していたのです。「地域を知る」などと簡単に言いますが、実際に歩いて体験してみなければ、知ったことにはならない。そういう道理もこのたびの活動を通じて学びました。ありがたい経験でした。
 印象に残った体験を2つ紹介しましょう。宝探しゲームとラジオ出演です。宝探しはその名を聞いても楽しそうなゲームです。基礎演習の授業で来村ゼミの2回生が準備をして下さったようで、感謝しなければなりません。場所は南キャンパスの全域で、庭木やベンチ、立て看板、水撒きの水道、物干し台、置物の下など、特徴のある隠し場所を探し、小さな地図の中に点をうち、裏には学生たちがイラストを描いてヒントにしています。その地図を見ただけでわくわくします。地図を読めない子どもも、そのうちにコツを覚え、隠し場所まで走ってゆきます。地図は小さなビニールの袋に入れられ、開けて見ると、次の地図のありかが記されているのです。そして最後の地図には宝物の隠し場所が。という仕掛けを、学年に応じて難易度と枚数を変えて準備しているのです。大変な苦労ですが、終了後のアンケートでは、子どもたちの一番人気で、「とても楽しかった」「もう一度やりたい」という感想が圧倒的でした。

 ラジオ出演はOMBCという松原インターネットラジオのスタジオを訪問して、子どもたちの感想を放送で伝えてもらう企画でした。局の人たちの協力により、全日にわたり子どもたちが出演しました。スタジオは天美西商店街の中にあります。松原市民たちの活動や情報を伝え、地域に密着したラジオ局であることを目指しています。松原こども探検隊もかっこうの題材であることから、子どもたちの出演が実現したのです。どの班も同じであったようですが、元気なこどもたちもスタジオに入ると緊張し、口数が少なくなります。マイクを向けられて、子どもがすらすらと答えられるはずもありません。学生たちですら無口になってしまう展開となりました。と言いながらも、務め上げたあとの達成感と、自分の声がインターネット上に流れることの誇らしさは、こういう経験をしなければ得られません。いい体験をさせていただきました。