デジタル化された生活

 2007年にiPhoneが米国で発売され、日本では2008年に販売が開始されました。これを契機にiPhoneのみならず、アンドロイド端末も含めて、利用者は増加しています。地域差はありますが利用者の約7割がスマートホンを利用しています[1]。スマートホンは、これまでのフィーチャーホンとは異なり、グラフィカルな操作が可能で、直観的な利用が可能であることから、急激に利用者が拡大しています。スマートホン、フィーチャーホンを使わない日はないというくらい、私たちの生活に無くてはならないモノになっています。  通信網の整備と共に、利用方法が拡張されています。このような環境の中で、ネットバンキング、ネットショップ、ナビゲーション、SNSなどインターネットを利用したサービスが充実し、私たちの暮らしの中でデジタルと関連した活動の割合/が高くなっています。ビデオや音楽などのオンデマンド配信などのアミューズメントに限らず、健康維持のため生体モニタリングなどの健康・医療分野などその利用範囲は、様々な分野に及んでいます。私たちの生活がこのようにデジタル化することによってビジネスの様式も大きく変り始めています。
  • 出所:メディア定点調査2016(博報堂)[1]

消費者の変化がビジネスの変化へ

 消費者である私たちのほとんどが、スマートホンを常時携帯しています。若い世代では、風呂にまでスマホを持ち込んでいる人もいるとの話を聞きます。このようにスマホは生活の中の様々なシーンで活用がなされています。多くの企業で、スマホ用の独自のアプリを開発し、顧客とのつながりを深め自社製品へのロイヤルティ(顧客から店に対する親密性や信頼性)を高めるマーケティングを展開しています。例えば、無印良品では店舗近辺でスマホアプリを用いてチェックすることでポイントが取得できるサービスを展開しています[2]。また、半径数十メートルに情報発信できるビーコン(Beacon)を使ったマーケティングも始まっています。
 コカ・コーラでは、自社の自販機からビーコンを発信し、自社のアプリをインストールしているスマホに対して、クーポンやポイントを発行するサービスが開始されています[2]。このビーコンを使える環境であれば、個々のユーザの特性にあった情報やサービスの提供が可能になります。この機能を使ったプロモーションにKDDIの「SYNC YELLプロジェクト」[3]が報告されています。このプロジェクトでは、あらかじめ専用のアプリを受け取っていた人が状況後すぐに、地元の両親、友人、知人から大画面で心温まるメッセ—ジを受けとるというプロモーションです。スマホアプリとビーコンによって、その人が来たことを把握して、大画面に地元方からのメッセージを提示し、それを見た人に感動を与えるストーリになっています。

デジタル化を支える新しい技術

 このビーコンなどの通信方式に限らず、ドローン、ロボット、自動車の自動運転など新しい情報技術が発明、開発され続けています。最近では、インターネットをはじめとして大量に蓄積されるデータから高度は判断や診断を可能にする人工知能関連の技術も進化しています。人工知能の話題が出ない日はないくらいに、人工知能に対する関心が高まっています。「将棋、囲碁でプロ棋士に勝つ」「ヒットする曲を判別する」「犯罪発生場所を推定する」「これまで弁護士がしていた判例の自動仕分け」など高度な判断を必要していた意思決定をコンピュータが高い確信度で判断できるとの報告もあります。これまでの想像を超えてコンピュータの利用が始まっています。ビーコンは、通信範囲にユーザが存在することを把握し、そのことによって提供するサービスを変化させる仕組みでした。通信を介して人工知能を利用することで、ユーザに対する個別のサービスの充実も可能になっています。例えば、iPhone や アンドロイド端末の音声入力の仕組みはその一例です。アンドロイドでは入力音声をネット上で機械翻訳してその結果を端末に返す仕組みになっています。ネットワーク上の機械翻訳装置には、人工知能も利用されており、そのことで翻訳の精度向上を進めています。

 以上のように、情報通信機器の個々の技術要素の技術的進化が進む中、通信技術の向上と通信ネットワークの敷設によって、それらが組み合わさって新たなサービスが創造されています。今後はこの傾向が顕著になっていくと予想されます。このような中では、ICTに熟知しそれらをうまく組み合わせて新しいサービスを創造しビジネス展開できる人材が今後ますます必要になる時代になるように感じられます。
参照
▶[1]メディア定点調査2016、メディア環境研究所 2016/06/20
▶[2]特集 顧客とつながる企業の決め手〜顧客とつながる 企業の決め手
   日経コミュニケーション 第607号 pp。15-29 2014。8。1H
[3]SYNC YELLプロジェクト