2017.5.10

「経済法」科目紹介

「経済法」科目紹介

 みなさんが朝起きて、ごはんやパンを食べ、授業に出るために外出用の服に着替えて大学に来るという、ごくありふれた日常の中にも経済取引と市場(しじょう)に関わる事柄が多く存在しています。朝食のごはんやパンはスーパーやコンビニエンス・ストアなどで購入したものでしょうし、「今日はどんな服を着ていこうかな?」とあれこれ探しているカッコいい服やおしゃれな服もデパートやブティックなどで、数ある商品の中から値段や品質、機能性などを考えつつ選んだものでしょう。多くの場合、みなさんは消費者(需要者)という市場のプレーヤーとして経済取引に関わり、企業は商品やサービスを提供する側(供給者)として市場に参加します。このような市場での経済取引においては、多くの供給者と多くの需要者が公正で自由に商品やサービスを売り買いすることができる状態が最も望ましいとされます。つまり、市場での経済取引においては、公正で自由な競争が確保されれば、需要者は安くて品質の良い商品やサービスを受け取ることができ、企業などの供給者は、低い費用で効率的に商品やサービスを提供することができるのです。
 「経済法」の中心となる「独占禁止法」(正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」)は、市場での競争を回避、制限、あるいは排除しようとする市場参加者の行為を禁止し、市場競争を維持、促進しようとする法律です。例えば、みなさんが朝食に食べるパンを製造しているメーカーが、市場での競争を回避するために、同じような品質、種類のパンについて、その販売価格を同一にしようという話し合いに基づき、以前よりも販売価格を高く設定し、お互い同じ値段で販売してしまったらどうでしょうか? みなさんは、どこのメーカーのパンを買っても競争があるときよりも高い価格で購入するしかありません。
 また、人気の高い有名ブランドの衣料メーカーが他のブランドを排除するために、デパートや小売店と自分としか取引をしてはならないという約束をした場合はどうでしょうか? その人気有名ブランドが特定の衣服の市場において有力な地位を占めていた場合には、他のブランドは、小売店などの流通業者との取引の機会を奪われてしまいます。これは同時に、消費者であるみなさんにとって、商品選択の幅が狭まることを意味します。

 私の授業では、市場での競争を確保しようとする独占禁止法の基本的な内容を実際の違反事例の紹介を中心に丁寧に解説しています。独占禁止法を学べば、将来、会社を起業して経営する場合はもちろん、会社員として営業の最前線で活躍する場合にも、企業の自由な経済活動、経済取引の中でどこまでが許され、何をすれば違反となるのかという感覚を養うことができます。私たちの日常生活が市場での公正で自由な競争を基本とする市場経済と切っても切れない密接な関係にあることを考えると、阪南大学経済学部で経済学の基本をしっかりと学んだうえで(それゆえ、3、4年次配当科目となっています)、市場競争の促進を目的とする独占禁止法を学び、理解することはとても重要なことのように思います。
 独占禁止法は、「ミクロ経済学」など経済学の基礎理論に基づき法規制が組み立てられているという意味で、経済学部における中心的な法律科目であると言えるでしょう。

 独占禁止法が促進しようとする「競争」は、単に競争の当事者が優劣を競い合い、勝ち負けに一喜一憂する単純な競争ではありません。当事者間の競争の成果は、当事者以外の第三者、つまり世の中の多くの人々に多大な利益をもたらします。例えば、みなさんがいつも使っているスマートフォン、メーカー各社は日々、少しでもライバル会社に勝とうとして研究開発を重ね改良を続けています。その結果、次から次へと高品質で低価格の機種が世の中に出現してくるのです。そして、その「競争」の恩恵を受け取るのは最終的には「一般消費者」と言われるみなさんなのです。