【阪南経済Now12月号】再生可能エネルギーと地域経済の活性化

再生可能エネルギーとは

 再生可能エネルギー(Renewable energy)は、石油、石炭などの有限な資源(化石燃料)とは異なり、太陽光、太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱、潮力など、利用しても再生が可能なエネルギーです。資源エネルギー庁によると、日本は、エネルギー供給の8割以上を石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に頼っています。電力についていえば、年間発電電力量に占める水力を除く再生可能エネルギーの割合は、近年上昇傾向にあるとはいえ、3.2%(2014年度)しかありません。

再生可能エネルギー普及のカギ:固定価格買取制度

 電力産業は、電気を作る発電所などの発電部門とその電気を消費者に送る送電部門に分けられます。日本では、発電部門と送電部門を同じ会社(全国10の電力会社:一般電気事業者)が行っています。欧米諸国では、発電と送電を別々の会社が行っており(発送電分離)、電力料金も自由化されています。日本でも2018年から2020年をめどに、発送電を分離し、電力料金を自由化する予定です。
 通常、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによって発電した電力は、電力会社に買い取ってもらい、電力会社の送電網を使って、電気を送電してもらいます。再生可能エネルギーは、火力、原子力などの既存の発電方式に比べると、発電効率は低く、発電コストが高くなります。そのため、再生可能エネルギーの利用拡大を図るには、政策的な補助によって発電コストを引き下げ、民間企業が発電事業に参入し易くなる条件を整えなくてはなりません。

発電コストの比較(2014年試算)

 普及のためのカギとなる制度が、再生可能エネルギーで発電した電力を一定の期間、一定の価格で電力会社(配送電会社)が買い取ることを義務付けた固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff)です。日本でも2012年に導入され、導入後の発電設備導入量は、2014年度末で1,876万kWに達し、導入前に比べて1.9倍に増えました。
 増加分の8割を占めるのは、地上設置型太陽光発電施設です。出力1MW以上の大規模施設は、メガソーラーと呼ばれています。確かに、太陽光発電は、発電パネルなどの設備は高価です。しかし、設置は簡単で、風車のような騒音も出ず、環境アセスメントも短期間で済み、土地があれば、すぐに発電事業を始められます。こぞって民間企業がメガソーラー事業に参入しているのは、FIT導入によって、事業採算性が向上したからです。

地方活性化策としての再生可能エネルギー

 これまで太陽光や自然の風力、豊かな森林といった地域資源は、農業や林業で活用する以外には、経済的価値はあまりありませんでした。しかし、FITなどの制度が整備され、地方の豊かな自然環境=地域資源は、新しい経済的価値を持ち始めています。
 風力発電は、適地の多い北海道や東北地域で盛んに導入されています。風力発電の最適地の1つとされる北海道の宗谷地域には、国内有数規模の5万7千kWの大型風力発電所があります。この発電所を運営するユーラスエナジーは、さらに出力60万kWの増設を計画しています。また、工場跡地や閉鎖したゴルフ場跡地を、太陽光発電所として活用する動きも広がりつつあります。日本ゴルフ場経営者協会によると2014年末までに、全国の59コースは、太陽光発電所に転用されました。
 日本が豊富な賦存量を持つ木質バイオマスは、カーボン・ニュートラルなエネルギー源です。人口約3,500人、町面積の約9割を森林が占める北海道下川町では、2004年からバイオマスボイラーの導入を始めました。現在では、公共施設の熱需要量の約6割を木質バイオマスで賄っています。
 これまで地方の中山間地や半島部、離島部は、地理的制約から製造業の立地が難しく、農林水産業や観光業以外の地域活性化手段は限られていました。しかし、再生可能エネルギーの利用拡大は、地方の豊かな自然環境という地域資源に新たな経済的価値を与えつつあります。下川町の人口は、2012年、2013年に社会増となりました。再生可能エネルギーは、条件不利地域にとって、経済効果や雇用増加をもたらす新たな産業となりうるポテンシャルを秘めています。