老後を沖縄で暮らすという選択肢!

 西本ゼミではゼミ活動の一環として、沖縄の介護施設「イリーゼ八重瀬」を訪問し、介護施設における実態について聞き取り調査を行ってきました。以下で、その内容について報告したいと思います。

「イリーゼ八重瀬」の移住介護
3回生 寺井愛

 私は、「イリーゼ八重瀬」という住宅型有料老人ホームを訪問しました。八重瀬は、沖縄の南部に位置する町で、沖縄らしく自然に囲まれたとてもいい場所でした。「イリーゼ八重瀬」は平成26年3月にオープンしたばかりで施設内はとても綺麗でした。「イリーゼ」という住宅型老人ホームは、沖縄には2ヶ所あり、八重瀬ともう1ヶ所は北部の今帰仁にあります。八重瀬は、ゆったりとした環境の住宅型老人ホームで、今帰仁はリゾート気分が味わえるような住宅型老人ホームになっています。また、「イリーゼ」は長谷川介護サービスという幅広い介護サービスを提供している会社が運営しており、東京などの都心にもあります。
 まず、私は「イリーゼ八重瀬」の入居者について調べました。ここに入居している人の約2割〜3割が県外の方だそうです。県外の人たちが、なぜ沖縄を選んだかというと、一番多い理由は沖縄が好きだからで、沖縄ファンの方が多いそうです。他には、ご家族が沖縄出身で住みやすかったから、そして、自分自身が沖縄出身で老後は沖縄で過ごしたいと思っていたからという人など、さまざまな理由がありました。さらに、沖縄は東京や大阪などの都心に比べ物価が安いため、料金が安いというところも沖縄で介護を受けたいと思う理由の一つのようです。こういった移住して老人ホームなどの介護施設に入ることを「移住介護」といい、沖縄ではこの「移住介護」に重点を置いているそうです。

 私は県外から沖縄に移住してご家族と離れて暮らすにあたり、ご家族は心配されていないのか疑問でした。しかし「イリーゼ八重瀬」では、ケアスタッフが365日、24時間常勤しており、看護師も365日、日中時間帯に常勤しています。また、月に2回以上、医師・歯科医師が往診してくれ、相談や健康管理、お薬の手配などの医療体制がしっかりとられており、異常があった場合は直接緊急搬送してくれるなど医療連携もしっかりとれているので、ご家族も安心して介護をお願いすることができます。
 今回「イリーゼ八重瀬」を訪問し、医療体制の良さや価格の安さ、住みやすい環境などが「移住介護」につながっているのだと思いました。しかし、東京や大阪のような都心と比較すると「イリーゼ八重瀬」の料金は安い方なのですが、沖縄は賃金水準が低いため、費用が月に10万円以上となるような施設に対しては、費用負担を重荷に感じる人が多く、入る人は少ないそうです。そのため、イリーゼのような住宅型有料老人ホームは「移住介護」で成り立っているのだと思いました。

沖縄の財政力
3回生 林田彩

 今回、沖縄の有料老人ホームを訪問するにあたって、事前に大阪の一般的な有料老人ホームの月額利用料金がどのくらいなのか調べてみました。平均的に大阪の月額利用料金は、15~20万円となっており、これに加え、入居金として10万円ほど必要となってきます。今回訪問させていただいた「イリーゼ八重瀬」は関西の有料老人ホームに比べ、利用料金は15万円台となっており、さらに入居金が0円となっていました。また、施設自体が関西と比べ綺麗であることが特徴的です。沖縄ということもあり「介護施設」、「ホーム」というより、「リゾート」といった開放的なつくりになっており、施設内容も充実していると思います。
 それでは、なぜ沖縄は大阪に比べて入居にかかる負担額が少ないのでしょうか。一番の要因としていえることは、沖縄は大阪に比べ経済力が低いことがあげられると思います。歴史の背景からみれば戦争があったことや、琉球王朝時代の名残などがまだ残っているということなどがその理由として考えられます。もちろん、ここ20年で経済力・行政サービスの面や人口的な面からみても、ずいぶん回復はしてきています。しかし、大阪との経済力を比較するために具体的な例をあげてみると、大阪の最低賃金が819円に対して、沖縄の最低賃金は664円となっています。最低賃金は2割ほども違い、はっきりと経済力の差が出ているのがわかります。給料が安ければ必然的に利用料(入居費)も安くなります。

 ここで疑問に感じたのが、最低賃金の差が2割ほどとなっているのに対して、月額利用料金は5万円ほどの差に納まっていることです。沖縄の有料老人ホームで入居者が支払える金額のボーダーラインは10万円が一般的だそうです。そう考えると、今回訪問させていただいた「イリーゼ八重瀬」は決して沖縄の経済力・賃金からみて、とても安いとはいえないことがわかってきました。そのため「イリーゼ八重瀬」では他の施設と差別化をはかるために、入居金を0円にすることや、介護度が上がるにつれて負担額が安くなるという工夫がされていました。
 訪問するまでは有料老人ホームの負担額を数字でしか比較をしておらず、安いのはどうしてだろうとばかり考えていましたが、同じ日本であるのに、ここまで沖縄と大阪では経済力に差が生じていることに正直びっくりしました。数字だけで一概に比較することはよくないということがよくわかりました。この経済力の差は、介護の面だけでなくさまざまな面でも問題が出てくると思うので、今後、政府がどのような対策をとっていくのかがカギになってくると私は考えます。

「イリーゼ八重瀬」のレクリエーション
3回生 坂本拓磨

 私は「イリーゼ八重瀬」が行っているイベント・レクリエーション活動に焦点をあてたいと思います。「イリーゼ」では一年を通して様々なイベントが行われており、一日の大まかなスケジュールの中にもレクリエーションの時間が設けられています。地域の人々との交流も積極的に行われており、今年の3月には、地元で行われたJA具志頭まつりに施設のみんなで参加し、また玉城グスクロード公園へのお散歩といった施設の外に出て行われるアクティブな活動もしています。さらには、交流ボランティアとして地元の具志頭小学校の子どもたちを招待し、リコーダー演奏会を披露してもらうといったこともあり、子どもたちとのふれあいもあります。
 また、玄関前には「がちまやー畑」と呼ばれる畑があります。「がちまやー」とは食いしん坊という意味で、自分たちでちょっとした畑を作っていこうという企画だそうです。訪問した時には、オクラやピーマン、ミニトマトが栽培されていました。他にも、八重瀬職員による演劇披露会もあります。演劇披露会では、沖縄周辺の伝説上の生物、樹木の精霊である「きじむなー」の話をテーマにした演劇を行い、非常に好評だったとのことです。また、厨房の職員と協力してのたこ焼きパーティーを開いたり、8月にはみんなで冷たいかき氷を食べたりしていました。また、入居者の一人の誕生日をみんなで祝う、お誕生日パーティーも開かれており、入居者たちの仲もとても良いものとなっています。

 レクリエーションとしては、外部から体操の先生を招待して、3B体操(ボール、ベル、ベルターを道具として使って行う体操)といわれる赤ちゃんからお年寄りまでみんなで楽しめる健康体操を実施しています。今年の8月から月に二回実施されることになり、みんなで楽しく元気に体操しています。また、体操以外にも、書道への取り組みも熱心に行われており、季節ごとにいろいろな字を書いているそうです。
 こういったイベント・レクリエーションは、職員みんなで企画しているそうで、入居者のみんなに楽しんでもらえるような企画にしたいという思いが、話を聞いている中でとても伝わってきました。私たちが訪問したときには、どうやらちょっとしたお祭りが終わったあとだったようで、玄関のところにはお祭りのために入居者のみんなが作った提灯がぶらさがっていたり、施設の中の少ししたところからも、入居者による取り組みの姿が見えていました。こうした取り組みは、「イリーゼ」の職員が入居者みんなに喜んでもらいたいという気持ちから行われていて、しんどい時もあるけど入居者みんなの笑顔を見ると頑張れる、との話もいただき、みんなが楽しんでいる良い施設だと思いました。

サービスに特化した施設運営
3回生 藤岡美央

 私たちは沖縄県における有料老人ホームの現状や入居者に対するサービスなどについて、沖縄県南部にある住宅型有料老人ホームの「イリーゼ八重瀬」でお話を聞かせていただきました。
 現在、介護サービスにおいても国の財政、消費税を含めて財源をどうしようか、というところで大きな展開を迎えています。政府の中では、自分で予防できるものは自分でしようという、人の介護を受けない生活、いわゆる自立した生活が国の方針です。ただし、少子高齢化であるため、介護業界ではサービスというところをしっかりおさえていかないといけません。介護業界も膨張しては整理されるというサイクルが繰り返され、今ちょうど膨張して一度整理に入る時期にあるそうです。
 そこで「イリーゼ八重瀬」では、理念としている「あなたに会えてよかった」といわれる介護サービスの実現を目指し、介護十訓というものを朝の申し送り、朝の会議で周知しているそうです。その介護十訓や入居者の目線でしっかり仕えられないと介護業界の中で維持できないため、サービスに特化する必要があります。

 「イリーゼ」は全国に介護施設を展開しています。そこで私は、複数の場所で施設を運営するにあたっての利点とサービスの特徴について述べたいと思います。全国に複数の施設を展開していることは、「イリーゼ」の特徴の一つでもあります。全国それぞれの土地で何らかの特徴、すなわちサービスの付加価値が重要となります。沖縄県の今帰仁では南国リゾートを意識した四阿(あずまや:建屋のこと)や、全室オーシャンビューなどをサービスの付加価値として持っています。北海道の定山渓では温泉施設を有料老人ホームの中に設備しており、北国リゾートを意識しています。東京の洗足池では昭和レトロの雰囲気に統一した空間を提供し、大正から昭和初期生まれの入居者に懐かしんでもらえます。また、空間だけではなく、レクリエーションや懐かしい遊びも取り入れています。このようなサービスの差別化を打ち出していくことが、入居者に満足していただけるような取り組みに繋がると思いました。
 福祉業界はきつい、賃金が安いといわれています。すなわち離職率が高いということです。「イリーゼ」では経営するにあたって、離職ではなくスタッフの入れ替えと補充を徹底しており、サービスの低下を軽減することができると共にスタッフ間でしっかりとしたオペレーションを組むこともできます。さらに利用者によっては、寒い時期は東京ではなく沖縄の今帰仁に入り、春先の暖かい時期になるとまた東京に戻るということもできます。また、各施設で共有できるものを購入し、できるだけ費用を少なくするという金銭的配慮ができます。これは複数の施設を運営している「イリーゼ」だからこそできることであり、メリットでもあります。ここでもほかの有料老人ホームとの差別化を図っていることが感じられました。
 今回お話を聞かせていただき、入居者のサービスの満足、ここで住みたいという気持ちを第一に、「イリーゼ」の理念である「あなたに会えてよかった」といわれる介護サービスの実現について深く学ぶことができました。