村上ゼミの活動紹介

1.経済学部で統計学

 かつて英国の首相であったベンジャミン・ディズレーリはこう言ったとされます。

There are three kinds of lies: lies, damned lies, and statistics.
(嘘には三種類ある。嘘と真っ赤な嘘,そして統計である。)
 誰かしらが何らかの意見を表明する時に,その根拠として統計を利用することが多々あります。情報化が進展した今日,巷にはデータがあふれかえり,「根拠としてこれらの統計がある」と言われると多くの人は安易にそれを信じることでしょう。統計に騙されて判断を誤る可能性はなきにしもあらずです。根拠となる統計はどのように作られたのか,根拠となる指標はどのように計算されているのか・・・?根拠となる統計は対象となる集団をすべて調べ上げたものなのか,一部だけを調べたものなのか・・・?経済学ではこのように説明されるが,実際はどうなのか・・・?数字に騙されない人になるために,また,上の事柄を意識できる人になるために,統計学という一つの学問分野は大きな力を発揮します。

2.村上ゼミの活動紹介

 村上ゼミでは,ゼミ生2名〜3名でグループを作り,統計学のテキストの担当章を決め,みんなの前でプレゼンするという形でゼミを進めています。村上ゼミに所属するゼミ生は統計学を多少知っている者から全く知らない者まで様々です。これまでの経験では,最初はテキストの内容理解とプレゼンの資料作りに四苦八苦していたゼミ生が,人に教えるということに次第に慣れていき,スムーズにテキストの内容を紹介することができるようになっています。最初に用いるテキストの内容は統計学の一分野である「統計的記述」です。ここでは,データをどのようにまとめると集団の特徴をうまく捉えることができるのかについて理解します。プレゼンにも慣れてきた頃に統計学のもう一つの分野である「統計的推測」分野に進みます。プレゼンに慣れてきたゼミ生はここで再度四苦八苦します。確率を取り扱うからです。
 巷にあふれる統計は,対象となる集団の一部のみを調べたものがほとんどです。例えば対象となる集団の一部を調べ,そこから得られた平均値は,集団すべてを調べて計算される平均値とどのような関係にあるのか?全く違うのか,それとも・・・。実は一定の関係性があるわけですが,この理解のためには確率について学ぶ必要があります。そうです。一部を調べてすべてを知るには,その根拠としての理論的道具が必要になるのです。統計学はその理論的道具を提供します。
 村上ゼミは同様の学問分野を学ぶ他の2ゼミ(青木博明ゼミ<ビジネスデータ分析>,西本真弓ゼミ<計量経済学>)と連携した「ビジネス統計分析パッケージ」の中にあります。毎年,3ゼミのゼミ生達が切磋琢磨する場としてプレゼン大会が開催されています。昨年の村上ゼミのプレゼン内容の一つに,「阪南でgetだぜ〜実験計画法による袋怪物出現確率の分析〜」というものがありました。阪南大学の敷地内で袋怪物(ポケモン)の出現確率が異なるのかを,R. A.フィッシャーが提唱した「実験計画法」の三原則に従って調査・分析するというものでした。これは先に述べた「根拠となる統計をどのように作るか?」をゼミ生達自らが実践したものだと言えるでしょう。
 また,村上ゼミは,統計検定の資格取得にも力を入れています。統計検定とは,統計質保証推進協会が実施しており,日本統計学会が公式認定し総務省が後援しているものです。昨年は,統計検定2級(大学基礎課程(1・2年次学部共通)で習得すべきことについての検定)に,村上ゼミから1名(パッケージ全体で2名)の合格者がでました。後輩のゼミ生にも是非続いてほしいものです。

3.最後に

 このように,村上ゼミでは統計学の知識を深めるという大きな目標をもち,日々活動しています。知識を深めるために日々葛藤するゼミ生がいます。彼らは,知識の蓄積については道半ばですが,統計学を全く知らない人よりは数字に騙されない人になっていると思います。さらに上を目指すために自己研鑽を積んでほしいと思います。
 最後に,冒頭で紹介したディズレーリはこんなことも言っています。

To be conscious that you are ignorant is a great step to knowledge.
(無知であることを自覚するのは,知識向上の大きな一歩である。)