経済学部三木ゼミ 2年生夏季海外研修レポート2(バンコク日系製造業訪問・香港バンコク市場調査編)

 2014年8月13日(水)〜20日(水)、経済学部の三木ゼミ2年生は夏季海外研修を実施しました。今回はそのレポート第2弾で、バンコクでは日系製造業現地工場の視察と支援機関でのヒアリング、及びまた香港・バンコクで百貨店、スーパーマーケット等を中心とした市場視察の内容を報告します。
 今回の海外研修の実施目的、全体スケジュール、香港フードエキスポレポートについては、過去に掲載した下記内容をご参照下さい。
 三木ゼミは、グローバル人材を育成する「グローバルキャリアプロジェクトゼミ」であると同時に、民間企業出身の教員が指導するという特色を活かし、企業/行政/地域との接点をできるだけ多く持つようにしています。今回は2014年度第6回校外学習となります。

今回視察研修の実施目的(前回に続き再掲)

・香港フードエキスポに出展者側(のお手伝い)として参加し、また見学者として各ブースを回ることにより、グローバル化を図る日系食品関連企業の動きを実感・体感する
・日系製造業(大企業/中小企業)の海外工場を見学し、海外生産が進む日系製造業の実態を知る
・香港、バンコクに進出している日系外食産業・小売業等を見学する
・在バンコク日系企業支援機関を訪問し、現地事情のブリーフィングを受ける
・日本語が通じない環境に身を置くことにより、語学の重要性を身にしみて感じてもらう
 なお、以上の内容はゼミ全体としての実施目的であり、それぞれの学生は個別に明確な参加目的を設定しています。

全体スケジュール(前回に続き再掲)

2014年8月13日(水)
 <午前> 関空→香港移動 CX567便 0920発 1220着
 <午後> 香港そごう/citysuper見学
8月14日(木)
 <終日> 香港フードエキスポ参加(出展社のお手伝い)、飲茶(やむちゃ)体験
8月15日(金)
 <終日> 香港フードエキスポ参加(出展社のお手伝い)
 <夜> 菊池食品工業様、かね善(香港)様、かね善様、香港人学生との夕食懇談会
8月16日(土)
 <午前> 生鮮食料品市場/Wellcomeスーパー見学、ビクトリアピーク見学
     雑貨市場見学
 <午後> 香港→バンコク移動 CX703便 1705発 1900着
8月17日(日)
 <午前> UFM Fuji Super/Emporium Shopping Complex/GATEWAY EKAMAI/マックスバリュ見学
 <午後> Siam Paragon/Central World Plaza見学、足裏マッサージ体験
8月18日(月)
 <午前> Panasonic Appliances Cold Chain (Thailand)訪問
 <午後> バンコク日本人商工会議所/京都銀行バンコク駐在員事務所訪問
 <夜> Thai NNP Internationalとの夕食懇談会
8月19日(火)
 <午前> 王宮及び周辺寺院見学
 <午後> Chizu Electric (Thailand)、Asahi Electric (Thailand)、Taiyo Technology Industry (Thailand)訪問
 <夜> バンコク→香港移動 CX702便 1850発 2240着(乗継)
8月20日(水)
 <午前> 香港→関空移動 CX566便 0140発 0620着

感想・ご講評

日系企業は規模や業態を問わずグローバル化が進展していました / 2年生 李 章徳

 今回、私は8月13日から20日の日程の中で、香港フードエキスポへの参加以外に、香港とタイにおける日本製品の市場調査と、バンコク進出日系製造業他訪問を行いました。日本製品の市場調査では百貨店、スーパー等の小売業を見学しました。香港ではシティスーパー、そごう等、バンコクではフジスーパー、マックスバリュ等を調査しました。
 シティスーパーでの調査では水曜日にしては人が大変多く苦労しました。シティスーパーの主なターゲットは富裕層で商品の値段も他のスーパーよりも高く設定されていました。店内を一周まわり、商品を見ているとドリンクコーナーで日本の企業が作っている飲料水が多く目に留まり、大塚製薬などの日本の企業ががんばっていることに感銘を受けました。また、岡山県産のマスカットが13,000円、小さいメロンが6,000円もしていて、普段私が日本で買っているマスカットやメロンの何倍もの値段で売られていることに気づき、この値段でも売れるのかと考えさせられました。それ以外にも日本産のすしや刺身の盛り合わせ、野菜などは同様に高い値段で売られていて、円換算すると私にとっては買うことが難しいものばかりで、外国産のメロンは安いのに何で日本産はこんなに高いのだろうと考えさせられました。しかし、高い値段でも売れるから置いてあるわけで、日本の食材はほかの国に比べて味もおいしいし、見た目もよく、なおかつ安心して食べられるので日本産というブランド価値が高まり、値段が高くても香港の人たちは買っていくのだということがわかりました。
 そごうのアパレルコーナーでも値段は高めで私が普段日本では見られないブランドや食器などがおいてあり、なかではEVISUというアパレルのショップ(本社:滋賀)が印象的でした。それ以外にもおもちゃ売り場ではトミカ、キッチン用品のコーナーでは京セラが作ったセラミックでできた包丁などがあり、色んなところで日本の企業が活躍されているのを目にしました。

 バンコクの日系スーパーのマックスバリュやフジスーパーは、香港のシティスーパーほど値段は高くないといった印象でしたが、やはり、日本の食品、製品になると値段が高いことが香港とバンコクの共通点ではないかと気づきました。バンコクでは日本の人がたくさん住んでいるので特にフジスーパーなどでは日本の食品が数多く並んでいて、日本人が初めての海外赴任でバンコクに駐在しても安心して買い物ができると思いました。バンコクは特に鶏肉が安いことがわかり、その国々のスーパーで高いもの安いものも変わってくることに気づきました。

 バンコクの日系製造業訪問では、大手企業の進出例としてPanasonic Appliances Cold Chain (Thailand)様を、中堅・中小企業の進出例としてCHIZU Electric (Thailand)様、ASAHI Electric (Thailand)様、TAIYO Technology Industry (Thailand)様の3社を訪問させていただき、現地での説明を受けました。
 Panasonic Appliances Cold Chain (Thailand)様では、業務用冷蔵庫・冷凍庫を製造して、タイ国内外の飲食店、コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどに販売しています。チェストフリーザーと呼ばれる冷凍庫も数多く市場では売れているのですが、価格競争が厳しいとのことでした。また最近では南国タイでもワインを飲む習慣が出てきており、ワイン冷蔵庫が流行っていることを知りました。南国のことですからコールドチェーン機器の需要はいくらでもあるだろう、そんなに厳しい市場競争はないだろうと思っていましたが、地場メーカーも力をつけていることがわかり、難しさを感じました。

 電池をはじめとする生産設備(ライン)や合理化・省力化設備の製造をしているCHIZU Electric様では、現在タイ国内の労働力が不足しまた賃金が上がる中、企業は合理化投資を行いワーカー数及び人件費の削減に取り組んでいて、合理化設備の需要が増えていることがわかりました。また、組立の際にお客様の意見を積極的に機械に反映するなどの工夫もされており、中国(東莞工場)では日本の技術が浸透してきていてある程度のことは自前(現地)で完結できるレベルに達しているとうかがい、とうとう中国も日本に追いついてきたのかと考えさせられました。また、電力制御盤等を生産しているASAHI Electric様は、日本ではCHIZU Electric様と全く取引がなかったのですが、現地では共同作業も行っていることを知り、日本の中小企業の絆を感じることができました。
 TAIYO Technology Industry様は主に自動車オーディオ用部品(樹脂塗装製品)及びめっき製品を中心に製造している企業です。取引先は大手自動車メーカーで、部品に欠陥が無いか細かくチェックしている作業員の様子を見て大変な作業だと感じましたが、こうしたことが大手自動車メーカーから信頼を得、発注をいただける要因だとわかりました。また、私が特に印象的だったのはハードディスク向けモータ部品のめっき技術が高く、大手電機メーカーから受注が来ることを知り、日本の技術は今でも健在であることをわかりました。
 上記3社の日本人現地責任者の皆さんに「自分がこうして海外で働くと思っていましたか」と質問すると、皆口を揃えて「海外で働くとは全く思ってもいなかった」と回答されました。「採用面談の際には海外赴任の可否を聞く。海外赴任できないから即不採用とはならないが、海外赴任可能な人材の比率を上げていきたい」ともおっしゃっていたので、これからはどの企業に入っても海外で働くことを念頭に置いておかなければならないと思いました。また、海外進出しているのは大企業だけだろうと思っていましたが、中堅・中小企業でもこの3社のように海外に進出してきていることを目の当たりにし、日本市場が縮小する中、中堅・中小企業といえども海外に打って出なければ生き残れない時代になっているのだなと身にしみて感じました。同時にグローバル人材の需要は今後更に高まっていくと思いました。

グローバルで活躍する皆さんの姿は輝いていました / 2年生 松本光司

 私たちは、香港とバンコクにてスーパーマーケットや百貨店の市場調査を行いました。香港では、そごう、シティスーパー、ウェルカムを対象に回りました。まず、そごうは、内装が日本の百貨店と同じ雰囲気になっていました。最上階に飲食店が入っていない(注:日本の百貨店は最上階の飲食店フロアにお客様を引き込み、その行き帰りに各階に立ち寄りの購買を誘発する「シャワー効果」を期待するケースが多い)というのが日本と少し違う点でした。そして、何よりも驚かされたのが、日本産の果物の値段が、日本ではあり得ない高値で売られていたことでした。ぶどう2房で日本円の1.3万円相当、桃が6000円相当でした。日本から輸送されてくるので日本での価格より高いのは当然ですが、それにしても値段があまりにも高いことから、日本産の果物は香港では高級品の扱いであると感じました。また、シティスーパーでも果物や牛肉などかなりの高値で売られていました。しかし庶民的スーパーであるウェルカムでは日本産の果物はあまり見られず、比較的安価なものが多く売られていました。
 バンコクでは様々な日本の商品や文化が浸透していました。最も驚いたものは、日本の秋葉原などでよく見られるメイドカフェがモールのテナントとして入っていたり、ショッピングセンターの飲食店フロアにおけるお寿司屋さん比率が異常に高かったりしたことです。店内のお客さんの入り具合も悪くなかったので現地でも親しまれているようです。

 バンコクでは6社の企業・支援機関を訪問しました。東南アジアの中では最も製造業の裾野産業が発展していて、部品調達や加工などをかなりの部分タイ国内で済ませることができるため、数多くの日系企業が進出してきていますが、実際に進出してみると、どの企業でも現地人と日本人との価値観の相違が課題となっているように感じました。
 企業訪問を行ったところで、私が最も興味を持った企業は京都銀行様でした。正直なところ、訪問する前は銀行がなぜ海外進出しているのか理解できず、今回の訪問に関してもあまり興味が持てませんでした。しかし、実際にお話を聞いてみると目頭が熱くなりました。私が全く理解していなかった仕事内容として、タイに進出してきた日系企業やタイで起業した企業との情報交換、進出する際・進出後のお困り事のよろず相談やビジネスマッチング(販路拡大)支援、融資斡旋(注:京都銀行バンコク駐在員事務所はあくまで駐在員事務所のため、融資のような銀行業務はできず、提携している地場銀行の紹介等にとどまる)といったものでした。

目先の利益には至らないのに、相談事を持ってきた顧客企業にきちんと対応しているという事実に、訪問をする前に考えていた自分の無知な考えを恥ずかしく思いました。所長様はバンコクだけでなく、東南アジアほぼ全般を行き来されていて、グローバルに活躍する姿は非常に輝いて見えました。
 私も将来的に海外に身を置き仕事をすることになるかもしれませんが、今回訪問した全ての企業の皆様同様に、自分に自信を持って前向きに仕事に取り組む社会人になれるよう頑張りたいです。

担当教員(三木)からの全体講評

 2人とも、大変お疲れ様でした。松本くんは海外初渡航、李くんも高校の修学旅行以来の海外渡航で、しかも2人とも十分に英語ができないという条件のもと、その割には結構ハードなスケジュールで、本当はかなり疲れていたのではないかと思います。しかしそんな中、2人が日に日に何かを吸収し成長している様子が手に取るように感じられました。私も前職時代に3回の海外ミッション企画・派遣経験があったものの、学生引率は初めてで、十分行き届かなかった点も多々あったかと思いますが、お2人のレポートを拝見すると結果としてこちらの想定をはるかに上回る成果となって現れた、と言っても過言ではないと思います。
 企業や社会のグローバル化が進む中、グローバル人材への需要はますます高まっていくことが予想されます。今回初年度である三木ゼミ2年生夏季海外研修の成果を踏まえ、お2人には産業界に求められる人材に育ってもらうよう今後も指導していきます。また夏季海外研修については、来年度も今年度に負けない、充実したプログラムを用意したいと思います。
 最後に、今回の夏季海外研修でお世話になった皆様には感謝の念に堪えません。改めて心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。