2015年大学入門ゼミ第二回ビブリオバトルを開催

大学入門ゼミで第二回ビブリオバトルを開催しました。バトラーと紹介された本は以下のとおりです。

①原ほのか:渡辺和子『置かれた場所で咲きなさい』幻冬舎、2012
②野内健太郎:濱田伊織『英語で伝える和食』マガジンランド、2015
③西岡潤:坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』KADOKAWA、2013
④針木妃菜子:森絵都『カラフル』理論社、1998
⑤★橋口渉:ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』岩波書店、1979
⑥貞廣佑子:秦建日子『推理小説』河出書房新社、2004
⑦西岡里奈:乃南アサ『しゃぼん玉』朝日新聞、2008
※★がチャンプ本
 一番手は、原ほのかさんで、紹介してくれたのは『置かれた場所で咲きなさい』です。原さんはこの本の作者である渡辺和子さんの人生をえがいたTV番組を見て本書に興味をもったそうです。この本の最初3ページにはタイトルの意味が説明されており、「置かれた環境に不満を言うのではなく、そこで頑張れ」というメッセージが込められているそうです。原さんはこの本を読んで、悩んでいるときでも悩みを受け入れ、前に進むという姿勢にかわったそうです。著者の渡辺さんの体験をとおして、いろいろなことに気づき、ポジティブな思考になれそうな本だと感じました。

 二番手は野内健太郎君が紹介してくれた『英語で伝える和食』です。この本は和食のレシピを紹介する内容で、見開きの右のページには英語で、左のページには日本語でレシピが書かれています。日本人の作者が日本の食文化を海外に紹介したいという思いから筆を執ったそうです。野内君はビブリオバトルのために大学図書館で本を探している時に本書と出逢ったそうで、借りてすぐ揚げ物やお寿司を作ってみたそうです。英語の勉強にも役立ち、料理の腕前もあがる、一挙両得な本だと思いました。

 三番手は西岡潤君が紹介してくれた『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』、通称『ビリギャル』です。この本との出逢いは書店で、高校二年生の時だったそうです。この本は小林さんという学生が学年ビリの成績から偏差値を40あげて、慶応大学入学を勝ち取るまでの顛末を、小林さんが通う塾の講師の坪田さんがまとめたものです。この実話を読み西岡君は、人には支えが必要であり、周りからの信頼があってこそ頑張れる、ということに気づいたそうです。その後、西岡君は友人との信頼関係を築きながら苦手を克服し、頑張ってきたそうです。
 西岡君の紹介を聴きながら、坪田さんのように心から信頼してくれる人がそばにいるなら、受験に限らず、何にでも挑戦することができると感じました。このような人との出逢い、また坪田さんのようになれたらいいな、と思いながら紹介に聴き入っていました。

 四番手は針木妃菜子さんが紹介してくれた『カラフル』です。この本は、一度死んでしまった主人公がガイド役の天使に誘われ、「小林くん」という架空の男の子になりきって、その少年の日々を過ごすというストーリーです。針木さんは、ストーリーにくわえ、この主人公とガイド役の天使とのやりとりがお気に入りだそうです。読んでいる途中に結末がなんとなくわかったそうですが、そのやりとりに導かれ、楽しく読み進められたそうです。読んだ当時、主人公との年齢が近く、針木さん自身とかさねあわさることが多かったため、読了後、挫折したときこれまで気づいていなかった周囲の支えの存在に気づくことができるようになったそうです。なお題名の意味は読み終えたときにわかる、とのこと。

 五番手は橋口渉さんが紹介してくれた『はてしない物語』で、今回のチャンプ本です。この本は、全590ページにわたる大作。上下二冊の単行本も出版されているようですが、1980年に岩波書店から出版された赤い装丁の本がおすすめだそうです。橋口さんがこの装丁の本をすすめるには訳があります。それはこの本の主人公の男の子が、物語のなかで手に取る赤い表紙の本そのものだからです。この本のなかには、主人公が住む現実の世界と主人公が物語り中で手に取り、読んでいる赤い本のなかでえがかれる架空の物語とがからみあって展開されています。そして、現実世界については赤色で印字が、主人公が読むファンタージの世界は緑色で印字がされています。物語が進むにつれ、すべて緑色の印字へと変わっていきます。そのことが意味するのは。心の底から読みたいと思わせてくるビブリオでした。是非、読んでみたいと思います。

 六番目は貞廣佑子さんが紹介してくれた『推理小説』です。本をよく読むお姉さんにすすめられ読み始めたということです。この本は、ドラマや映画で有名なアンフェアの原作本ということもあり、聴き手が感情移入しやすい選書でした。貞廣さんは本書で展開されるスリリングな内容もさることながら、『推理小説』というタイトルでありながら、推理小説に否定的な表現がでてくる場面がお気に入り、とのことです。貞廣さんは3回生で、ゼミのSA。ビブリオ経験者ということもあり、聴衆を引きつけるコツを心得ている、と感じさせてくれました。内容はドラマや映画と異なる点も多々あるとのことで、すでにドラマ・映画を視た人でも楽しめる一冊ということなので、是非読んでみたいと思います。

 最後は、西岡里奈さんが紹介してくれた『シャボン玉』です。表紙やタイトルを視て主人公の成長を描いた物語かな、と思い手に取ったそうですが実は。本書は西岡さんの本書に対する第一印象をあっさりと裏切ってくれたようです。主人公は、ひったくり犯の少年で、ひったくりをしたはずみで女性を転倒させてしまいます。動転した少年は、山奥に逃げ込み身を潜めるのですが、ひょんなことで助けた年配の女性との出逢いが少年を別の展開へと導いてきます。とても続きが気になる。読んでみたい、と感じさせる、締めにふさわしいビブリオでした。
報告者:蛭間ゆみこ