2012.7.13

コリアタウン探訪記

コリアタウン探訪記

 日本には、コリアタウンがいくつかあります。その中の一つは、大阪の鶴橋にあります。しかし、約20年間大阪で暮らしている者でさえ 鶴橋のコリアタウンについてあまり知りません。コリアタウンが存在することさえ知らない人もいるかもしれません。隣国であるにも関わらず、今まで韓国のことを詳しく調べようと思ったことはありませんでした。しかし、最近では韓国の歌手やドラマの人気が上がり、韓国に旅行に行く人も急激に増え、日本全体が韓国ブームとなっています。私たちも韓国に興味を持ち始めたので、今回みんなでコリアタウンを訪問することにしました。
韓国の歴史を調べるうちに、日本と韓国は昔から交流があったことや、鶴橋だけでも多くの韓国人が住んでいること、やがて鶴橋にコリアタウンが誕生したことなどを知りました。そこは日本でありながら日本ではないような風景が広がっています。写真を見た限りでは、その場だけがまるで韓国のようでした。しかし、コリアタウンで商売をしているのは韓国人だけでなく、半分くらいは日本人だということも分かりました。
そもそもコリアタウンとはどういったものなのでしょうか。また、鶴橋のコリアタウンではどのような体験ができるのでしょうか。
*この活動は、阪南大学【実学志向型総合的キャリアシステムの構築】事業の2012年度キャリアゼミ支援事業「異文化交流と比較文化論的調査により多文化共生を目指す!(CHOゼミ)」の補助を受けて行われました。
*この活動は阪南大学学会から補助を受けています。

藤原菜摘:紹介

コリアタウンはいったいどういうところでしょうか?
コリアタウンとは、世界各地に駐在する韓国・朝鮮系住民の集合地のことです。その集合地はアメリカ・中国・日本を中心に存在していますが、ロシア・中央アジアにも一定数出ており、最近ではカナダにも増え始めています。
大阪にもコリアタウンがあり、鶴橋駅周辺には、韓国・朝鮮系の大規模な市場が存在しています。鶴橋駅前の商店街は、在日コリアン社会の色彩を最も強く放つエリアです。鶴橋商店街は、6つのエリアで成り立っており、最も観光客などで人通りが多いのが「鶴橋商店街復興組合」(180店舗が加入)に属するエリアです。
狭い通りの両側にはチマチョゴリの専門店ばかりが立ち並ぶ通り、韓国料理店や韓国食器、韓国輸入薬を売る薬局が並ぶ通り、ブランドバッグや宝石の店、チヂミやトッポギなど屋台料理を焼いている店など、さまざまな店が集まっています。
そして、「鶴橋といえばキムチ」と言われる程キムチが有名で、千日前通りから一歩中に入ると、どこを向いても赤く染まったキムチが並べられています。白菜やきゅうりのキムチはもちろん、山芋キムチやスルメのキムチなど多数取り揃えられています。キムチだけでなく、他にも常温で置かれた豚足や煮豚などの肉類もあります。人通りの激しい高架の下で、干物を売る光景も見られます。
鶴橋に住んでいる韓国・朝鮮系住民は、分かっているだけでも約13万人います。2世、3世の韓国人は、日本人として暮らしている者も多く、そのような人達も合わせるとさらに増え、日本一の人口となっています。付近の学校に韓国・朝鮮人の生徒がいるのは当たり前であり、韓国人の親を持つ子供でありながら、韓国語が全く分からない者もいます。
鶴橋駅の改札を出ると、もうそこから韓国のような風景があり、焼き肉屋が数多く存在します。焼き肉屋が多いため、駅のホームにいる時でさえ焼き肉のにおいがします。焼き肉屋が多い理由は、“大阪といえばたこ焼き”というように“韓国といえば焼き肉”と思う人が多いためです。少し歩くと魚市場があり、朝から魚を売る光景が見られます。この魚市場の賑わいは午前中だけです。昼には魚市場内のほとんどの店が閉まっており、暗くて殺風景な雰囲気になっています。

 コリアタウンは1本の直線の通りになっています。その通りのあちこちで、キムチやチヂミや韓国グッズが売られています。面白いのは、店ごとにキムチやチヂミの味が異なるということです。そのため、よくコリアタウンを利用する人の中には、‘キムチを買うならこの店’‘チヂミを買うならこの店’などと、モノによって店を使い分ける人もいます。
鶴橋駅付近の通りには、韓国料理やチマチョゴリ、洋服などを売る多くの店があります。しかし、通路が狭くあちこちに分かれているので、初めて訪れる人は迷ってしまう程です。とはいうものの、最近の韓国ブームの影響で、特に休日は観光客でとても賑わっているようです。

魏 慧華:歴史

 では、こういう風景はどう言った背景から生み出されたのでしょうか?
 コリアタウンの住民構成を調べてみると、朝鮮半島の日本統治時代に経済的理由などにより日本に移住してきた者や戦後に朝鮮戦争の難を逃れて日本に移住してきた者が多いです。一方の日本側ですが、明治・大正時代の大阪は、急激な工業化に伴い大量の労働者を受け入れ、名実ともに日本最大の都市となります。そして、現在の生野区や大阪市、八尾市あたりには、豊かな生活を求めて朝鮮半島から移住した大勢の人々が定着することになりました。1925年以降、大阪はそれまでの農村地帯や住宅地から中小企業の密集地帯へと発展していきました。同時期に、大阪—済州島間の直行便が就航を開始したのをきっかけに、働き口を求めて済州島から大阪に出稼ぎにやってきた済州島出身者、もしくはその子孫の多くが大阪のコリアタウンに合流しています。こうして自然と朝鮮市場が誕生し、それを核に商店街が形成されたのです。

増田麻乃:コリアタウンのイベント

 コリアタウンのイベント「共生まつり」について紹介します。
 コリアタウン共生まつりは、年に一度11月に行われます。来賓のあいさつの後、いくつかの朝鮮学校の生徒たちがパレードをして練り歩きます。ステージは、西・中央・東の3つに分かれていて、芸能人や朝鮮学校の生徒、有志団体が歌や踊り、演奏を披露します。芸能人のトークショーなどには特に多くの人が集まります。また、公園では一般客も混ざってみんなで一緒に踊ったりします。歌や踊りのほかにも、チマチョゴリで来場した人に抽選で商品券をプレゼントしたり、韓流スターの似顔絵展を開いたりしたこともあるそうです。
調べてみての感想ですが、コリアタウン共生まつりはこのへんにはないようなお祭りで、見る側も披露する側も両方楽しめる全員参加型のお祭りという感じがしました。規模が大きく一年に一度しかイベントがないのが残念で、もう少し規模の小さいイベントを年に何回か開催した方がお客さんを呼び込むにはより効果的ではないかと思いました。
 実際に鶴橋コリアタウンを訪れて、体験の世話役の方から聞いた話によると、コリアタウン共生まつりの日程が統一されていないのは、コリアタウンの方々は旧暦を主に使っているため、旧暦上のお盆や法事の時期を避けるためだと聞きました。
 また、コリアタウンの近くのお寺にも訪れました。お釈迦様の誕生日が近かったため、外には色鮮やかな提灯がたくさん飾り付けられていました。本堂に入ると日本のお寺とは違い、金などの豪華な飾りつけが印象的でした。

シヨウ燕:体験

 コリアタウンに行くときには、ぜひいろいろな文化体験をお勧めします。私たちもいろいろなことを体験しました。コリアタウンの主な体験としては、キムチ作り体験、チマチョゴリ試着体験、チヂミ作り体験、チャンゴ演奏体験、ハングル入門講座、朝鮮舞踊体験などがあります。それぞれ申し込みが必要となり、料金は体験毎1000円です。体験が行われる場所については申し込み後に連絡が来ました。
キムチ作り体験は2時間かかり、当日必要なものはエプロン、歩きやすい服装、靴、雨具などです。チヂミ作り体験は、韓国のお好み焼き「チヂミ」を実際に焼きながら学ぶ体験です。時間は30分で、持ち物としてエプロン、タオルが必要です。キムチ作り体験もチヂミ作り体験もお土産付きで、自分が作ったキムチとチヂミは体験の後持って帰ることができます。
 食文化だけでなく、チョゴリ試着、チャンゴ演奏体験、朝鮮舞踊体験などを通して韓国の伝統文化に接することもできます。これら三つの体験は所要時間が同じ30分です。さらに、ハングルに興味を持つ人を対象に、韓国と日本の共通点からアプローチするハングル入門講座も行われています。
 今回の訪問で、私たちはキムチ作りとチヂミ作りの体験をしてきました。まず、チヂミ作りの様子から紹介したいと思います。材料は、えび、いか、ニラ、チヂミの粉を使います。アツアツの鉄板の上にチヂミの粉を入れ、えびといかをのせて丸く整え、そのまま焦げ目がつくまで焼き、裏返しして5分ぐらいで出来上がり!
 次は、キムチ作りです。エプロンと手袋をつけて、塩漬けした白菜に赤い特製タレ(ヤンニョムと呼ばれます)を塗り込んでいきます。白菜に一枚ずつ根気よくヤンニョムを塗り、白菜全体が赤く塗られたらキムチ作りは完了です。
 鶴橋のコリアタウンは、日本の中のリトル韓国といえると思います。今回いろいろな異文化体験をしたことによって、私たちは異文化にさらに興味を持つようになりました。
◎参加者:藤原菜摘、増田麻乃、魏慧華、シヨウ燕 (以上4名)
なおこの活動は阪南大学学会より補助を受けています。