2014年阪南大学サッカー部蹴り納め

 2014年を締め括るイベントとして、12月29日高見ノ里グラウンドで毎年恒例になっている阪南大学サッカー部蹴り納めが行われました。
 午前中は学生と地域の子どもたちとのふれあい教室があり、新年度に入部予定の高校生と新トップチームとの試合をはさんで、午後からは学生が阪南大サッカー部OBと対戦。OBチームには現役Jリーガーも参加するという豪華メンバーでの開催です。地域の方々やファンも大勢見学に来られ、一年の終わりにふさわしい賑やかな一日になりました。

(午前の部) 〜地域の小学生とふれあいサッカー教室〜

 地元のサッカークラブを中心に、100名を超える小学生が集まって開催されたサッカー教室。いくつかのグループに分かれて学生たちが子どもたちにサッカーを教える趣向です。グラウンドには子どもたちの歓声が響き、終了時間がきてもまだまだ遊び足りない様子で学生たちにまとわりついていました。
 サッカー教室について「子どもたちと学生、お互いにメリットのある取組みです」と話すのは、指導にあたった北條コーチ。「地域の小学生と交流をもって、松原という地域を盛り上げようというのが目的のひとつです。教室というよりは一緒に楽しくサッカーをする感じですね。子どもたちには刺激になるだろうし、いつもは指導される立場の学生も逆に指導する立場になりますから、すごくいい経験だと思います」。
 また、こうした活動について、サッカー部の須佐監督は次のように語ってくれました。「地域貢献というと落下傘的に上から企画を投下するイメージですが、そうではなくて、下から湧き出てくるような地域に根差した活動が重要だと考えています。単にスクールを開くのではなく、地域に根差したチームとして展開していきたい。しかし、根付かせるには手間も時間もかかります。今はサッカー部が独自に行う活動ですが、今後は学部とも連携し、スポーツマネジメントコースの一環として取り組んでいきたいと考えています」。

(午後の部) 〜阪南大出身Jリーガー+4回生VS阪南大現役部員〜

 今回で7回目を迎えるOBとの交流戦。現役Jリーガーも多く、サッカー部の選手たちもこの試合を毎年楽しみにしています。今回は4回生を加えたOBチームと大学生チームが前後半30分ハーフで対戦しました。
 前半はなかなか連携が整わないOBチームの隙をつき、開始早々に得点を決める大学生チーム。インカレが終わってからまだ日が浅いこともあり、連携やスピードといったメリットを活かして、開始から20分そこそこで3ゴールをあげる健闘ぶりでした。
 しかし徐々にOBチームも本領を発揮。「連携面で慣れてきた」(松岡亮輔選手:モンテディオ山形)と語るように、連携が取れるようになると、フィジカル面で有利なOBチームが少しずつ攻勢に出始めます。中盤から左右に揺さぶって攻撃を仕掛け押し込む巧みな試合はこび。前半のうちに2点を返し大学生チームの序盤のリードを確実に縮めていきました。
 その後は両チームともに譲らぬ試合展開。プロの華麗なプレーあり、一瞬の隙をつく学生の素早い走りあり、迫真のマッチアップあり。終了してみると3−3の引き分けで、得点シーンも多く見ごたえのある試合となりました。
 多くのJリーガーを輩出してきたからこそ実現できるこの試合。これまで28年間指揮を執り続けてきた須佐監督のコメントも印象的でした。「人と人のつながりなんですよね。こういうイベントにOBが来ることで、何世代もの人たちが紡がれていくんです。名前は知っていても面識がないOB選手が、実際に自分の先輩なんだって認識を学生に持たせたかった。先輩は先輩らしくね。それに、地域の人たちにこんなに阪南大出身のJリーガーがいるんだよって知ってほしいと思います」。

参加OB(敬称略)

深谷友基(FC岐阜)
大西容平(カターレ富山)
廣瀬浩二(栃木SC)
松岡亮輔(モンテディオ山形)
吉川健太(カターレ富山)
井手口正昭(YFC-MD(横浜FC香港)、来シーズンより横浜FC復帰)
本多勇喜(名古屋グランパス)
工藤光輝(コンサドーレ札幌)
可児壮隆(川崎フロンターレ、来シーズンより湘南ベルマーレに期限付き移籍)
窪田良(徳島ヴォルティス)
原田直樹(ツエーゲン金沢)

選手インタビュー
井手口正昭選手(11年卒。YFC-MD(横浜FC香港)、来シーズンより横浜FC復帰)

——このイベントには毎年参加されているのですか?
「毎年参加はしていますが、ちゃんと試合に出たのは初めてでした。いつも怪我とかで途中からだったので」
——ではこのグラウンドに来るのも一年ぶりくらいですか?
「今季プレーした香港では5月にシーズンが終わるので、7月あたりに練習に参加させてもらっていました。その後はまた香港でしたけどね」
——4回生の多木理音選手、河田篤秀選手がともにアルビレックス新潟シンガポールに入団します。アジアでプレーした井手口さんから見てアドバイスはありますか?
「行ったらすべてが刺激的です。コミュニケーションが大事ですが、阪南大にいたら大丈夫だと思いますよ。わいわいした感じは似ていますし、すぐ溶け込めると思います。」
——井手口選手の来季に向けての意気込みをお願いします。
「また蹴り納めに来るときに恥ずかしくないプレーをするように、来年一年を頑張ります」
——最後に後輩に向けてメッセージをお願いします。
「目標を持ってしっかりと頑張ってください!」

松岡亮輔選手(07年卒。モンテディオ山形)

——今日の試合はいかがでしたか?
「全然ついていけなかったです(笑)。内容は、後半になったら連携面で慣れてきたというのと、相手がJリーガーの面目を気にしてくれましたね(笑)」
——対戦した現役部員はどう見えましたか?
「毎年思いますけど、年々プレーが洗練されています。ぼくらの頃は、特にぼくがハードワークをずっと売りにしていて巧さに関しては無縁でしたからね。今の選手は全体が平均的にしっかりうまい」
——意識も変わっているのでしょうか?
「プロを目指す選手が集まってきているという印象はあります。大学に思い出作りに来ているのではなく、真摯にサッカーに向き合い、阪南大の4年を経てプロに行きたいという若者が目をギラつかせているな、って思いました」
——須佐監督の印象はどうでしょう。
「監督自身は変わられてないと思います。ただ、こちらの受け取り方が変わった。教授と学生ではなく、今は一人の大人としてリスペクトしながら付き合っている感じです。監督はずっとサッカーが好きで、サッカーを研究している方です。サッカーに携わる者として、ぼくたちもずっと監督の背中を見ていきたい」
——後輩へのメッセージをお願いします。
「永遠のサッカー小僧でもある須佐監督やコーチ陣が、学生に対して言っていることをいかに真っ直ぐに聞くことができるか。学生ゆえに反発する気持ちもわかるんですけど、いかに経験のある人から吸収するかは大切なんです。いろいろな人から吸収して、そして最後は自分で決断する。その大事さに早く気づけたらいいですね」
——松岡選手の来季に向けて一言をお願いします。
「来季は山形のJ1残留。やっぱりJ1にずっと、泥臭くてもいいから残り続けていくのが、昇格組の残留の道なんじゃないかなと思います。年始からは残留に向けて、しっかり考えて体を動かしたいです」

工藤光輝選手(14年卒。コンサドーレ札幌)

——今日の試合を振り返っていかがでしたか?
「疲れました(笑)。でもいつも良い雰囲気で楽しいですね。昨年は4回生としてOBチームでプレーしたので、今年はOBチーム2回目でした。いや、本当に負けなくてよかったですね…これに尽きます今日は(笑)」
——OBチームはやりやすかったですか?
「同じ須佐イズムの元でやっていたメンバーだったので、考えていることはだいたい一緒でやりやすかったですね。そういう意味では4年間で監督の教えは浸透しているんだなと思いました」
——現役部員はどう映りましたか?
「うまいですよね。ボール取りに行ってもハマらなかったし。取れると思ってもかわされたし。体型は華奢でもうまいなーって、ベンチでも話していました」
——後輩へのメッセージをお願いします。
「インカレは残念でしたが、これから常に優勝を狙えるチームだと思うので、ひとつでも多くのタイトルを取って、名前を全国に知らしめてほしいです。ぼくらOBはそれが最高に嬉しいし、モチベーションにもなるので、期待しています」
——工藤選手の来季に向けて一言をお願いします。
「ぼく自身、今シーズン試合に絡めない時期が多かったので、早く結果を出したいです。ぼくらの結果がみんなのモチベーションにつながればとも思っているので、いっぱい活躍したいと思います。“阪南大の選手は行ける!”そう思ってもらえるように頑張ります」

深谷友基選手(05年卒。岐阜FC)

——試合結果は引き分けでしたが、後半にOBチームが追い上げました。
「立ち上がりはポンポンとゴールを入れられましたね(笑)。OBチームはそこからみんな体が動き始めました」
——対戦してみて、現役部員はいかがでしたか?
「阪南大に来る人はみんな個々の技術がうまいですね。遠慮していたところもあったようですが、こういう場は楽しくていいですね」
——深谷選手が在籍していた頃と比較して、環境は変わりましたか?
「ぼくらのときは芝生ではなく土のグラウンドだったので、羨ましいですね。環境も良く、質の良い練習もできそうなので、もっともっとJリーガーがここから出てほしいと思います」
——深谷選手の今シーズンはいかがでしたか?
「開幕前のキャンプで膝を怪我してから怪我続きの一年でした。ちょっと気合が入りすぎたのもあったかと思います。2015年は、ぼくのサッカー人生の中で勝負の年。良い意味で少し肩の力を抜いて、でもしっかりと戦いたいと思います」
——最後に後輩へのメッセージをお願いします。
「監督、コーチ、環境面も含めて、とても良いところでプレーできていると思います。全タイトルを取る気持ちでプレーしてください。そして、一人でも多くの選手にJリーガーになってほしい」

本多勇喜選手(13年卒。名古屋グランパス)

——蹴り納めはいかがでしたか?
「ここにはちょくちょく来ているので久しぶりという感じではないですが、プレーするのは去年の蹴り納め以来1年ぶりです。阪南大の先輩として後輩には頑張ってほしいと思っているので、こういう交流の場は絶対必要だと思います」
——本多選手の今シーズンはどういう年でしたか?
「充実はしましたが、結果としては上位にも行けていないので悔しかったです」
——来季に向けての意気込みをお願いします。
「アシスト数などの結果の部分をもっと上げていきたい。オフのトレーニングでしっかり見つめなおしたいです」
——後輩へのメッセージをお願いします。
「阪南大に来るからにはやっぱりプロを目指していると思います。良いときも悪いときもあるけれど、めげずに、芯を持ってやってもらいたいです」

多木理音選手、河田篤秀選手
(ともに流通学部4回生。アルビレックス新潟シンガポール入団予定)

——OBチームとして参加した蹴り納めでした。
多木選手「Jリーガーの方々はレベルが違いました。なんとかついていけたと思いますが(笑)」
河田選手「昨年まで一緒にやっていた良くん(窪田良選手)と可児くん(可児壮隆選手)が中盤にいたときに、やっぱりパスの相手がよく見えていて。久々の感じですごく懐かしくて楽しかったです」
——大学最後の一年を思い返していかがですか?
多木選手「最初このままじゃ降格するという危機感もあったんですが、結果がついてきてくれました。その分楽しかった。インカレは負けたけど、最後になるにつれてチームがまとまっていく過程を感じることができて、今後にもつながると思います」
河田選手「ぼくらの学年(4回生)が少ないというのもありましたが、あまり叱るタイプの人間がいなくて、上下関係もなく仲の良いチームでした。最初は緩くなって結果が出なかったら嫌だなと思っていたんですが、最高の結果とは言わずとも、リーグでは優勝できて、楽しく強いチームになれたので、良かったです」
——来季はプロになります。意気込みをお願いします。
多木選手「学生と違い、結果が伴わないと消えていく仕事。気を抜いたらすぐ落ちていくと思うので、毎日毎日を大事にして、レベルアップできるように、生活もプレーも磨いていきたいです」
河田選手「サッカーで給料をもらうということに責任を感じて、それを楽しめるような一年にしていきたいです」
——後輩へのメッセージをお願いします。
多木選手 「今シーズンは下級生が中心になってくれたときもあったので、来年は後輩をうまくまとめて今シーズンを上回る結果を残してほしいと思います」
河田選手 「下級生は、はちゃめちゃな奴が多いんですよね(笑)。サッカーのときは、楽しむとともに真剣にやってほしいなと思います」

蹴り納めの後は、参加したOB選手やサッカー部のスタッフ、マネージャーたちも交えてのOB会も賑やかに開催。代表やJリーグで活躍している選手も、出場機会は少なかったけれどチームに尽くしてきた選手も、みんなが同じように盛り上がる様子に、阪南大学サッカー部の絆の強さが表れていました。
阪南大学サッカー部の一員であることを誇りに、2015シーズンも選手たちは全力で戦います。

文:石川祐介(one制作チーム)