2014.11.8

須佐徹太郎監督インタビューvol.2

須佐徹太郎監督インタビューvol.2

インカレ出場を確定させ、関西学生リーグ優勝に王手をかける阪南大学。
順調に勝ち星を重ねる中、須佐徹太郎監督が懸念することとは。

——2014年度後期リーグ8節終了現在、阪南大学は15勝1敗3分けの勝ち点48で、残り3試合で2位の関西学院大学に勝ち点7差をつけており、次節後期9節で京都産業大学に勝利すれば優勝が確定と、2012年以来の関西学生リーグ優勝に王手をかける。
 後期7節に大阪体育大学を3−0で下し、4位以上が出場となるインカレ(全日本大学サッカー選手権)出場権を獲得。次なる目標はもちろん関西学生リーグ優勝とインカレ初優勝だ。関西学生リーグ前期を首位で折り返して以降、後期に入ってからも一度も首位の座を明け渡さないまま、優勝に向かって邁進中で、8節終了現在総得点76、総失点21、得失点差+55という驚異的な破壊力を誇り、関西学生リーグの総得点最高記録更新にも意欲を見せる。結果としては順調すぎる結果を残しつつも、須佐徹太郎監督は「まだまだ課題はある」と、さらなる高みを追い求めている。その課題というのは、「攻撃面でチャンスの数を増やしていく」ことと、「守備面では中盤で不用意にボールを失わない」ということだと、前回のインタビューで須佐監督が語っているが(須佐徹太郎監督vol.1をご参照ください)、その2点に加えて、もう1点、今季のチームならではの氣になっていることがあるのだという。

 「今年のチームで氣になることというのは、根本的なことになるのですが、“4年生が少ない”ということですね。
 去年はAチーム27~28人の中に4年生が13~14人いたので、Aチームの半数が4年生だったのですが、今年は5〜6人くらいしかいません。
 今の4年生は上級生になるまでにやめる選手が多かったり、なかなか、下のチームから這い上がってくる選手が少なくて、最終的に4年になって残っている選手が少なかったんですね。もちろん、今の4年生は4年生で、人数が少ないながらも頑張っているのですが、もともと4年生が少ない中で、さらにチーム全体の中心にならないといけない選手が、これまで怪我で抜けたりすることも多かったんです。
 そうして故障者が出てさらに4年生の人数が少なくなってしまったということも、チームとしてやろうとしていることの浸透度がもうひとつ高くならないという問題点として残ってしまったのではないかと思います。

 そうして4年生が少ないということが、実はチーム全体の、“絶対にプロを目指す”とか、“優勝を目指す”というような、“勝者のメンタリティに欠ける”という要素に若干つながっているような面もありますし、そこは少し残念です。今の後期の段階で選手に勝者のメンタリティをまだ十分に浸透できていないという意味では、自分自身もとても残念ですね。

 選手たちも自分たちでミーティングをしたり、いろいろしているんですが、まだ我々指導者が期待しているほど、チームとして全員が同じ方向に向いていると感じるところまではいけていない。そこはやっぱり、4年生がそういう方向にチームをまとめきれていないという面も少しはあると思うので、4年生は自覚を持ってやっていってほしいということですね。

 今の段階でそんなことを言ってる場合じゃないにも関わらず、こういうチームが同じ方向を向いてるかどうかという面でも、まだまだだと感じる面もありますが、そこに近づこうと努力は続けています。
 ただ、「攻撃面でチャンスの数を増やしていく」ことや、「守備面では中盤で不用意にボールを失わない」というようなチームとしての課題は、本当に今はもうチームの最終段階として、実現できるようにしていかなきゃいけないし、そういう自分たちの目指すプレーを高いレベルで実現していこうとするためには、細かいところまで突き詰めていかないといけない。そのためには基礎的なトレーニングでもコツコツ積み上げていかないといけないのですが、まだまだ、自主的にそういう雰囲気にならなくて、トレーニングも、“指導者にやらされている”という感じでやってるんじゃないかと思います。
 そういうところも、4年生のリーダーシップがまだまだ不足しているのではと思いますし、そこは、こちらからも4年生に対しても、チーム全体に対しても、まだまだいろんな方向からアプローチしているところですね。そこは根本的な問題なので、そこをなんとかしていかないといけないと思っています。

 こうして今年の4年生が少ないことの懸念もいろいろ言いましたけど、去年も去年で、4年生がなかなか人数が揃わなくて苦労したんですよね。もちろん、去年の4年生はもともとの全体の人数も多くて、泉澤仁(大宮アルディージャ)、二見宏志(ベガルタ仙台)、可児壮隆(川崎フロンターレ)、窪田良(徳島ヴォルティス)、工藤光輝(コンサドーレ札幌)、原田直樹(ツェーゲン金沢)の6人がJリーグに行くなど、能力の高い選手が揃っていたのですが、そうしてJに行った選手が多かっただけあって、1年間でその6人が全員揃ったことは半分くらいしかなかったですからね。泉澤、二見、窪田の3人がユニバーシアード日本代表などに選ばれてチームを離れたり、その3人や工藤や可児もJリーグの練習に参加したり、特別指定選手としてJチームに帯同したりで入れ替わり立ち代わりほとんどいないし、4年生が6~7人いなくなることもあって、なかなかチームとしての完成度という面では、やはり去年も高い次元での目指すサッカーの実現度合いが少なかったなと感じています。
 ただ、そういう4年生が多く抜けたなかで、松下佳貴(MF・現3年)などが主力選手として位置づいたのは去年の収穫だったと思いますが。

 そうして、去年結局4年生たちが不在の期間が多かったことで、高い次元のサッカーを実現する度合いが少なかったという反省点も踏まえて臨んだ今季だったのですが、先ほども言ったように今年も怪我で離脱する選手がいたりで、なかなか4年生が揃う期間が少なかったことが、少しチームとしてのまとまりに影響を与えたのかなと感じています。

 それくらい大学サッカーにおいて、4年生の存在というのは大きいし、言い換えれば「大学サッカーをやる意味は4年生にある」といっていいんです。下の学年のときは自分が頑張っていればいいし楽なんですよ。4年生になると、やっぱりチーム全体のことを考えたり、自分たちが引っ張っていくという姿を見せたりしなければいけない。あるいは4年生になってようやく下のチームから這い上がってくるような選手がいて、その背中を見ている下のチームにいる選手たちが“自分たちも頑張ろう”と思うようになったりもする。それはチーム全体として凄く重要なことなんです。そういう意味で、4年生の存在というのは凄く大きいものなので、4年生に対しての要求は自然と厳しくなりますね。

 去年、そうして4年生がほとんど揃わなかったために突き詰められなかった面もあったという反省もあって、今年の4年生に対しての期待や要求が高くなっているのかも知れませんが、やはりそれだけ期待しているからですし、もちろん4年生自身も感じてくれているとは思うので、あとは、それを自分たちの思いだけでなく、後輩たちを巻き込んでチーム全体を引き上げていってもらえればと思います。

4年生への要求が高いのは期待しているからこそ
須佐監督も期待を寄せる4年生を紹介しよう

——4年生に対してやや厳しい言葉も率直に述べられているが、もちろんそれは4年生に期待しているからこそ。もちろん、当の4年生たち自身も、須佐監督の期待や最上級生としての自分たちの立場を十分に自覚していることは間違いないだろうし、“自分たちは十分頑張っている”という思いもあるのではと思う。実際のところ、今季のチームは昨年6人のJリーグ内定者を擁し、「阪南大史上最強か」と評されたチームをもってしても果たせなかった関西学生リーグ優勝に王手をかけ、インカレ初優勝を果たせるチャンスも大いにある。この今季の好調さを支える要因のひとつには、やはり、4年生たちの「去年の4年生がいなくなったから弱くなったと言われたくない」という反骨心がいい影響を及ぼした部分や、「自分たち(が最上級生)の代で頑張ろう」という思いが表れている部分も多分にあるのではないかと思う。
 須佐監督もそうした4年生の頑張りもわかった上で、あえて、この後期終盤となったこの時期に、こうして4年生へのさらなる要求を口にしたのではないだろうか。
 泣いても笑っても、4年生たちに残された大学サッカーは、最長で12月21日のインカレ決勝までの2か月弱だ。
 須佐監督が奮起をうながすのは、4年生たちにピッチ内外でチームをけん引する高い能力があるからこそ。その持てる力を存分に発揮しつつ、関西学生リーグ優勝、インカレ優勝を達成し、大学サッカー有終の美を飾ることが期待される今季の4年生を須佐監督から紹介してもらおう。

 まずキャプテンの成田恭輔は左足から繰り出すキックやドリブル突破が魅力の左サイドバックですね。去年まではヘディングのボールの処理や1対1の対応などに、まだ成長の余地があるなと感じていたのですが、4年生になってからはその部分を克服して成長を遂げ、かなりいいレベルまできています。
 そして絶対的なエースとして期待しているのは河田篤秀(FW・副キャプテン)ですね。身体能力も抜群だし、決定力もあります。
 金村賢志郎(FW・副キャプテン)もゴール前で絶妙なプレーをするし、シュートセンスがあるので大いに期待しています。
 センターバックではレフティの香川勇気がDFの軸として頑張ってくれています。香川ももともとは中盤の選手で、去年まではまだ多少ひ弱さを見せていたのですが、今年はそれを克服して強さを見せていますし、プレーも速くなってきていて今もさらに成長中です。
同じくセンターバックの多木理音は、入学時はFWだったのですが、センターバックにコンバートした選手で、セットプレー時の得点も期待できます。184?の高さ、強さもありますし抜群の身体能力を生かして、頑張ってほしいと思っています。
 また、この学年はなかなか下のチームから這い上がってくる選手が少ない学年だったと先ほど言いましたが、奴井名良真(MF)は主務でありながら下のチームから上がってきています。ハードワークのできるセントラルMFで、ハードワークでチームを支えてくれます。チーム全体の主務としては板山隆司(DF)が頑張ってくれているのですが、板山は阪南大クラブに所属しているので、Aチームにいないこともあり、奴井名がAチームの主務として、板山を手伝ってくれています。板山は左右どちらもこなせるサイドバックです。板山にしろ奴井名にしろ、主務というハードな役割と自身のプレーの両面で頑張ってくれていて、そこは素晴らしいですね。そういう頑張りは後輩たちにも伝わると思いますし、今年の4年生もリーダーシップを見せるところでは見せてくれています。
 ただ、やはり最終学年、まだまだ彼らのいいところを発揮できるところはあると思うので、自覚を持って頑張ってほしいですし、我々スタッフも選手たちが最大限の力を発揮できるように、アプローチをし続けていきたいと思います。

 前節でインカレ出場も決まり、次の目標はもちろん関西学生リーグ優勝です。優勝を狙うのも当然ですけど、「残り3試合絶対にしっかり戦おうぜ」ということでやっていってます。
 それと現在総得点が76(後期8節終了現在)なんですが、総得点、得失点差のリーグ最高記録もぜひ更新できるようにやっていきます。
 まずはリーグ優勝が目標ですけど、インカレのためにもしっかりレベルアップしないとと思っています。

(須佐徹太郎監督インタビュー vol.3に続く)
(写真・文/フリーライター・尾崎ルミ)