「全国レベル」のチーム力へ

前期を首位で折り返し、後期も首位を独走中。
インカレに向けてチームの仕上げを目論むも、
新戦力を試しきれないという誤算も

——阪南大学サッカー部は、2012年以来となる関西学生リーグ優勝を目指して、後期リーグを戦っている。前期リーグを9勝1敗1分けの勝ち点28の首位で折り返し、後期第4節終了現在、11勝1敗3分けの勝ち点36、総得点58点、総失点16点、得失点差42点と、抜群の攻撃力を見せつけながら、関西学生リーグ首位をひた走る。
 リーグ優勝とともに、2012年以来の優勝を目指して臨んだ総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントでは、1回戦で札幌大学を7−2で撃破、2回戦で駒澤大学を3−1で下したものの、準々決勝で優勝した流通経済大学に1−3で敗れ、ベスト8で敗退した。
 総理大臣杯ベスト8の悔しさをバネに、リーグ優勝、そして念願のインカレ(全日本大学サッカー選手権)初優勝に向けて、後期リーグをまい進しているチームの現状、そして、今後のビジョンを須佐徹太郎監督が語る。

 「総理大臣杯後のリーグ戦再開に臨むにあたり(今季の関西学生リーグ前期は9節終了時点の6月22日から中断期間に入り、総理大臣杯後の8月30日からリーグ戦が再開。後期は9月14日に開幕している)、前期2試合と後期開幕からの3試合を9月シリーズ、以降を10月シリーズ(4節〜7節)、11月シリーズ(8節〜最終節)という3つのシリーズと考えて、それぞれをしっかり戦い抜くという考え方をしていました。

 そうしたなか、前期を首位で折り返しはしたのですが、前期再開後の前期10、11節の2試合と後期開幕からの3試合、つまり9月シリーズと位置付けていた5試合ではなんと2勝1敗2分けというように、今季リーグ戦初の敗戦を喫し、さらに2つも引き分けていますし、非常にかんばしくない結果を残しています。

 その9月シリーズでは、前期の中断前は故障者がいたり、選手のコンディションのバラつきもあって、チームのメンバーがかたまってないということもあったので、できれば後期終盤戦に入るまでにいろんな選手を試せればと思っていたんです。
 関西で勝ち抜くことも難しいのは間違いないですが、そうして終盤に向けて選手をほぼ固めていくと同時に、9月、10月、11月シリーズをキッチリ勝ち抜けていくことができれば、全国レベルのチームになるだろうというところで、後期は「インカレに向けての仕上げだ」というふうに位置づけて戦っているのですが、その最初の9月シリーズで、さっきも言ったように、2勝しかできずに、1試合負けて、さらに2つも引き分けてしまいました。
 しかも、1−1で引き分けた後期3節の大阪学院大戦では1点しか獲れずに1点ゲームを喫してしまいました。1点しか獲れなかったというのは、今季リーグ戦で初めてなんです。
 なので、9月シリーズで選手を試しながら勝ち抜くということは、なかなか思うようにはいかなかったですね。

 “選手を試しながら”ということについても、前期10節のびわこ大戦(2●4)で、ボランチに堀川雄平(3年)を使ったり、前期11節の大阪体育大学戦(3◯1)では同じくボランチに田中雄大(3年)を使ったり、新しい選手を起用したりはできたんですけど、後期1節目の同志社大戦(2△2)は、前期前半戦とほぼ同じようなメンバーだったりしました。
 後期2節の大阪教育大学戦(4◯0)では1年生の山口一真(FW)が初先発して、次節の大阪学院大戦(1△1)でも先発で起用しようと思っていたんですけど、怪我をしてしまって起用できなかった。大院大戦ではボランチに起用しようとしていた重廣卓也(1年)が問題なく起用できたのはよかったのですが、もうひとり起用しようとしていた松尾雄斗(1年・FW)も前日、急きょ授業のために練習に来ることができなくなったために先発での起用ができませんでした。
 こうして、何人かの新戦力は起用できたのですが、起用しようとしていた選手にアクシデントがあったりして、起用できなかったこともあって、9月シリーズは積極的に選手を試すことができたというよりも、なんとか選手をやりくりした中での起用しかできなかったような氣がします。

1試合平均3.87点を叩き出す抜群の攻撃力だが、
前半戦に比べてチャンスの数が減っているのが課題

——後期4節を修了し、総得点は58。前期2節同志社大学戦(12◯1)の12得点や、前期4節の桃山学院大学戦(9◯1)の9得点を筆頭に、1試合平均3.87点を叩き出す攻撃力は、もちろんリーグトップだ。(総得点2位はびわこ成蹊大の41得点)。後期3節の大阪学院大戦では今季初の最少得点1得点を記録したが、リーグ戦15試合を消化し、まだ1試合も無得点ゲームは喫していない(後期4節終了現在)。しかし、「インカレ優勝」という目標を追い続け、つねに「全国レベル」を目指すチームだからこそ、須佐監督はその高い攻撃力にも、「前半戦に比べてチャンスの数が減ってきている」と警笛を鳴らしている。

 ここまで思っていたほど積極的な選手起用ができなかったことに加えて、もう少し、氣になっていることがあるんです。確かに得点は多く獲っているんですが、試合によって内容にムラがありすぎるんですよね。全試合で完全に回数を集計して把握しているわけではないんですけど、決定的なチャンスの数や、チャンスになりかけの数が前半戦に比べて少なくなっている。たとえば、後期開幕戦の同志社大戦(2△2)では、同志社大よりチャンスの数が少ないんですよ。特に試合の後半にそういうことが起こっています。
 試合によって内容にムラがあることが、こういうところに現れてくると思うので、そういうところが問題ですし、シュート数そのものも少ない試合が多いんです。

 4−0で勝った大教大戦(後期2節)ではシュート数20本と、よく打ったのですが、大院大戦では11本しか打ってないし、大体大戦でも結果的に12本、びわこ大戦でも12本しか打ってません。
 つまり、シュートに持ち込める場面が非常に少なくて、しかも突破の形をつくることにもムラがあるし、突破の形を作ったとしてもそこから決定的なチャンスに持って行く回数が前期の前半戦に比べると激減しています。
 そこはネガティブな面ですね。

 前半戦からトータルで見ると、平均4点近くは獲っているのですが、9月シリーズからで言うと、びわこ大戦(前期10節)が2点、大体大戦(前期11節)が3点、同志社大戦(後期1節)が2点。大教大戦(後期2節)では4点獲っていますが、大院大戦で1点、ここ5試合で2.4点というように、前半戦に比べて得点力が減っていることは確かです。
 大教大戦だけ4点と多く点が獲れていますけど、ほかはほぼ1〜2点どまりになってるので、やはり、ゴール前の入り方だとか、相手DFの裏への抜け出し方というのをもっともっとやらなければいけないし、それをするためにも、もっと氣をつけなければいけないこともあります。
それは、中盤で不用意にボールを失なわないこと。ボールをただ不用意に失うんじゃなくて、“失いそうだな”と思ったときに、もっと味方同士のタイミングを合わせたり、連携をとったりすることで、相手のプレッシャーを外したり、タメを作ったりして、中盤からストッパーへいったん戻して組み立てなおしていくようなこともしていかないといけないんですけど、そういう面では、関西学生サッカー選手権(4位)あたりから、不安定さを見せていて、その傾向がまだ残っています。

 練習では、そういう傾向がなくて、うまく連携がとれたりするのだけれど、同じことがゲームの複雑な場面になったりしたときに、すぐ抜け落ちてできなくなってしまう。
 それができるようになるには、基礎的なトレーニングをきちっとやることに尽きるのですが、ゲームになって、相手も100%の力で来るし、こっちも100%でいかなきゃいけない、つまりスピードアップしたり、パワーを使わなきゃいけない、というときに、やっぱりやろうとすることがブレてしまう。それはつまり、まだレベルが低くてやりきれないということなので、それが実現する度合いを大きくしていかなくちゃいけない。そのためには、基礎的なトレーニングも大事だし、ウェートトレーニングも重要になってきます。ウェートトレーニングで身体が柔らかくなったり、パワーがつくことで、目指していることができるようになる度合いも増えるようになるので、ウェートトレーニングにもきちんと取り組んではいるのですが。
 また、いったん相手に攻められたときに、すごくもろい部分があるので、全員に守備の意識を徹底していくことが、今後も大事ですね。ボールを奪われた瞬間の守備、攻守の切り替えのときの守備をもっともっとしっかり、意図的、意識的にやりぬけるようにする、というようなところは当然まだまだなんで、試合をやりながら積み重ねていかざるを得ないですね。

 試合をやりながら…、という面では、9月シリーズからの取り組みとして、いま、お話ししたようなことに加えて、もうひとつ、大切な取り組みをしてきました。今まで、リーグや大会期間中の平日などに、そんなに練習ゲームを入れてなかったのですが、平日に練習ゲームを入れながら、実戦の中でゲームで出た課題を改善していくようにしたんです。

 練習で取り組んでいることを、いろんなタイプのチーム相手にできる、あるいは、練習でやっていることが試合で上手くいかないときに、どんな方法でやれば自分たちのよさが出していけるんだろう、という対応力を高めるためにという意図のもと、高校生相手だったり、大学生相手だったり、試合の翌日にガイナーレ鳥取と対戦したり、ファジアーノ岡山とも対戦したりしています。
 相手に自分たちの良さを消されても、なんとか突破の恰好が繰り出せる、あるいは自分たちの良さが出せるまで粘りながら、その間は相手の良さも出させないようにしていくサッカー、そういうことをゲームの中で、コミュニケーションをとりながら、やっていかないとうまくいかないだろうということですね。
 試合翌日の練習ゲームに関しては、30分1本だったり、45分1本だったりと制限は設けていますが、前日の公式戦に出たメンバーも使ったり、来週、このメンバーで試合を組みたいなと思ってる選手を使ったりもしながら、練習の中で培ってること、目標としていることを、実戦の中で出していけるようにするために練習ゲームを取り入れています。
 それは9月シリーズだけの取り組みではなく、10月になってからもまだまだ続けようと思っています。

 9月シリーズでは、試合を勝ち切りながら選手をいろいろ試していくということは、思うようにはできなかったけれども、それまでの戦いでできなかった点、不十分だった点を重点を置いてトレーニングすることはできました。
 不十分だった点というのは、さっき言ったように、攻撃面では突破の形の作り方と詰め、つまり相手DFの裏を突くということとか、ゴール前へのパスの出し方及びフィニッシュへの入り方ということ。守備面では中盤で不用意にボールを失わないということなんですが、それを徹底してやってきました。

 最近の試合でもまだまだダメなところはあるんですけど、ただ、ゴール前の入り方とか、相手DFの裏をつく、という点では、共通理解が膨らんでいることは間違いない。
 だから、10月シリーズからのさらに厳しくなる戦いをしっかり乗り越えて、守備面も含めてそういう共通理解の高まりを出していくことができれば、と思っています。

 これから10、11月とシーズン終盤の厳しい戦いに向かうにあたっての課題は、攻撃面ではやはりチャンスの数を増やしていくという点と、守備面では中盤で不用意にボールを失わないという点の2点ですね。そのために練習で取り組んでいることを、試合の難しい場面でも出せるようにするということです。

 ただ、その2点とは別に、まだもう1点、懸念していることがあるのですが…」
(須佐徹太郎監督インタビュー2に続く)

  • 「現役Jリーガーも多数訪れた2013年度のサッカー部OB会にて、 多くの教え子たちとともに」

(写真・文/フリーライター・尾崎ルミ)