キャリゼミ2016最終報告 国際コミュニケーション学部 大野ゼミ 3年生

活動の目的及び取り組む課題

 『TVガイド』で知られる、テレビ情報誌出版の最大手である㈱東京ニュース通信社。その地下倉庫に眠る1960年代からのNHK・民放各局の「番組企画書」「番宣用写真」「新聞雑誌の切り抜き」などの放送番組に関する紙資料を本格的に調査・分類し、昭和の高度成長期におけるテレビ番組の企画・成立過程の「知られざる事実」や「データ化する事で初めて判った事実」を明らかにし、テレビ史研究の一助となる事を目的とする。
 とりわけ、1960年代〜80年代の資料は、放送各局にも残っていないものが多く、また、それぞれの番組にまつわる新聞や雑誌の切り抜きを集めたものは、新聞縮刷版があっても、実際に番組ごとにまとめるのは物理的に不可能である。これらを調査し、当時のメディアや社会から、それぞれの番組がどう評価されていたのか、その名声の移り変わり・実態を考察する。
 そして、番組とタレントに関する本格的なデータベースの足がかり・基礎を構築することが最大の目標である。
 これらを通じて学生たちに実務で役立つレベルはどの程度なのか、その質と量のレベルを体感させ、社会に出ても通用する調査力と課題発見力を養わせたい。また、自分たちの成果物を世に出すことで自信をつけさせたい。
 また、本研究プロジェクトは、放送文化基金ならびに高橋信三放送文化振興基金からも支援を受けて行われる。

活動内容

 メディア業界について研究を行っている、阪南大学 国際コミュニケーション学部 大野 茂研究室は、東京ニュース通信社と提携し、過去50年分のテレビ番組のデータベース化に取り組んでいる。
 『TVガイド』で知られ、テレビ情報誌出版の最大手である東京ニュース通信社には、1960年代からのNHK・民放各局の「番組企画書」「番宣用写真」「新聞雑誌の切り抜き」などの放送番組に関する紙資料が残されている。その中には該当局にも残されていないテレビ放送草創期のものや、今となっては収集困難な新聞記事スクラップなど、歴史的価値のあるものも少なくない。しかし、紙資料につきものの破損・劣化・散逸の危険にさらされている状態であった。
 今回、大野研究室はその膨大な資料を調査・分類し、保全作業も行い、昭和の高度成長期におけるテレビ番組とタレントに関する本格的なデータベース化を進めている。作業は数年をかけて行われる予定である。また、このデータベースをもとに、さまざまな番組の企画・成立過程を検証し、まとめ、逐次発表をする計画である。
 すでに第1弾として、専門誌の月刊GALAC 2月号(放送批評懇談会)に「民放版『ゆく年・くる年』知られざる舞台裏」として寄稿されている。今後も「2時間サスペンスドラマ」「情報ワイドショー」など視聴者からの人気がありながら、あまり研究の対象となっていないジャンルの番組研究に重点的に取り組んでいく。

代表学生の感想

 データベースを作ると聞いたときには、何かもう、とてつもなく膨大な資料を前にして、どうしたらいいのか分からないというのが正直な感想でした。入力対象となるのは、過去のテレビ番組やタレントさんの名前なので、そこは少し親しみやすいところはありましたが、それでもすべてが自分たちの生まれる前の番組に関することです。初めは手さぐりでスタートしました。
 データベースを作る過程で面白かったのは、番組の名称やサブタイトルから、むかしの流行や社会の話題が見えてくることです。とくに二時間ものの推理ドラマはそれが顕著でした。
 また、春の東京合宿で、提携先の東京ニュース通信社を訪問し、雑誌社の内部のようすや実際の出版物を目にして、自分たちのやっていることとのつながりが意識できたのも、データベース構築のときのモチベーションにつながったのもよい経験でした。

国際コミュニケーション学部 3年 落合 誠

参加学生一覧

宮川 澄香、大野 彩香、大元 実瑠久、越智 甫、小松 裕征、島田 恵里奈、中島 美乃里、増井 大資、山本 未羽、渡邉 友香、井口 亮太、伊藤 侑加、井戸木 愛、井福 美樹、大迫 葵、落合 誠、菅原 琴子、高島 知花、田中 莉奈、遠山 皓介、難波 利紗、西側 愛華、西澤 佑実子、廣田 千尋、村上 瑞季、森田 幸々路、山岡 梨紗子、米津 拓也

連携団体担当者からのコメント

株式会社東京ニュース通信社  関根 禎嘉氏

 産学連携という当社にとって前例のない試みによって、懸案となっていたテレビ番組資料のアーカイブ化に着手できたことには大きな意義を感じています。メディア環境の変化に即応する大学生のみなさんとの協働は、未曾有の変化に直面している業界の一員として非常に得るところがあります。資料を通じて、過去のテレビと時代を超えたコミュニケーションをしていると言っても過言ではありません。今回扱っている資料の多くはみなさんの生まれる前のものですが、この取り組みがメディアやコンテンツの歴史について知識を得たり思索を巡らせたりすることに繋がれば望外の喜びです。

教員のコメント

国際コミュニケーション学部 大野 茂 教授

 デバイスが多様化する中で、「コンテンツの二次利用」や「アーカイブス」という言葉が注目を集めている。また、現在は検索をすればすぐ答えがわかる便利な社会である。
 しかし、その便利さや、古いコンテンツに新しい価値を付加するには、その前提となる地道な作業が必要になる。学生たちには、その作業の大変さを理解する良い機会となったであろう。
 また、自分たちの分類作業のちょっとした工夫で、その後の作業が大きく変わってくることも理解できたであろう。

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