活動の目的及び取り組む課題

 大阪府能勢町は大阪府の最北端に位置し、人口減と少子高齢化、第一次産業の衰退、およびそれらに伴う里地里山の荒廃といった日本の典型的な農村問題に直面している。特に子育て世代の町外流出は、継続的な人口減とコミュニティ消失の要因となっている。そこで能勢町では、2016年に町内小中学校を統合した「能勢町立能勢小学校・中学校(能勢ささゆり学園)」を新設し、子育て世代の増加による地域活性化を図っている。一方で近年、共働きの家庭が増加し、下校しても保護者がいない家庭が増えている。そこで能勢町では、町内の小中学生を対象に、学校生活では経験できない活動を「アフタースクール」として実施することで、子どもの教育環境の充実化を通じたコミュニティの活性化に取り組んでいる。本活動は、本学の学生が小学生対象のアフタースクール活動を自主的に企画運営することで、自身の社会人基礎能力の強化と自己実現につなげるとともに、能勢町の教育活動の充実に貢献することを目的として実施した。

活動内容

 6月には、能勢町のおおまかな現況を理解するため、現地視察と地域活性化活動に取り組んでいるキーパーソンへのヒアリングを実施した。
 7月から8月には、アフタースクール活動を行ううえでの基礎知識を獲得し目的意識を明確化するため、日本の農村問題や地域活性化活動に関する文献を輪読し、また、6月のフィールドワークで得た情報を基に、能勢の問題に大学生としての自分たちがどういった形で貢献できるのかを検討した。
 9月から10月には、学生たちが2つのグループに分かれてそれぞれアフタースクール活動の企画を行い、企画書を作成する活動を行った。学生自身が作成した企画書を教育委員会に提出し、修正・改良すべき点やのアドバイスをいただき、再度学生自身が修正するというやり取りを重ねて完成させた。また、10月には、実際にアフタースクール活動が実施されている現場を訪ね、講師(地域ボランティア)の方の指導のもと運営の補助に参加した。終了後には講師の方に、活動を実施するうえでの注意点や課題についてヒアリングを行った。
 11月に、学生たち自身が企画したアフタースクール活動を実施した。当日は45名程度の児童たちの参加があった。一つのグループは学校の体育館をお借りして、学年の異なる小学生でも同じように楽しめるよう考案したスポーツ企画を実施した。もう一つのグループは多目的室をお借りして、学年混合でチームになって競わせるゲーム企画を実施した。いずれもトラブルなく終了し、子供たちが非常に楽しそうにしていたほか、本学学生たちとの別れを惜しんでいる様子が見られた。

代表学生の感想

 能勢町でのアフタースクール活動を実施してみて、私は子供たちが純粋な気持ちで、私たちが提案したゲームを楽しんでくれたことをとても嬉しく感じました。活動を実施する前の私は、正直、初めて会う子供たちとうまく一緒に過ごせるか不安を持っていました。しかし、今回のアフタースクール活動で、子供たちが一生懸命に私たちと触れ合おう、関わろうとする気持ちや行動を見て、私は子供たちからとても多くを学ばされました。誰だって最初は、初対面で、しかも年齢の異なる人たちと、どう接していいのかはわかりません。しかし子供たちは、自分たちならではの接し方で、この場を盛り上げよう、交流を深めようとする行動してくれました。それを見ていると、自分がどんなちっぽけな思いを持っていたのかと恥ずかしく感じました。不安に思うことでも積極的に取り組むこと、それが人と人との関係を深めることを、アフタースクール活動を通じて能勢町の子供たちから学びました。

経済学部 3年 西田 健介

参加学生一覧

荒木 拓弥、北野 奨馬、喜田 勝成、木戸 康介、大鵬 翔希、高見 航平、田所 信次郎、田端 健太郎、寺本 光、出野 友理、中野 寿希也、中ノ 友里恵、中村 燎、那須 智也、西田 健介、橋本 直希、東本 悠矢、柳田 望光

連携団体担当者からのコメント

能勢町役場・能勢町商工会

 後期のキャリアゼミ活動に関しましては、平成28年度に開校しました新学校で実施しております「アフタースクール」活動にご協力いただきました。本活動の企画・立案から携わっていただくことで企画力等の強化及び自己実現につなげ、また地域で成長する子どもたちや地域で暮らす方々と直接交わることにより、社会の担い手として新たな価値や可能性を見出していただけたものと期待しております。立案いただきました活動内容も大変好評であり、今後も引き続き教育活動やコミュニティの活性化に寄与していくものと考えております。学生の皆さまには、今回の連携活動で得られた知識や能力を実社会でも活かしご活躍されることを祈念申し上げるとともにこのような機会を与えていただいた貴大学並びに千葉様、関係者の皆様に感謝申し上げます。

教員のコメント

経済学部 千葉 知世 准教授

 子供たちの放課後環境をどれだけ豊かにするかは、全国の教育現場が取り組む重要課題です。今回のキャリアゼミ活動では、いわゆる学童保育の一環として行われているアフタースクール活動に取り組ませていただいたことで、教育環境の充実化と人口流出の抑制という壮大なテーマを、現場でリアルに学ぶことができました。
 活動の内容については、最低限の注意を除いて教員からほとんど口出しをせず、学生たち自身に企画させました。アフタースクールに参加する子供たちは1年生から6年生までいるため、体格も知能の発達度合いも全く異なるほか、互いに初対面の子供たちもたくさんいます。性質の違った子供たちが活動から学べるには、等しく楽しめるにはどのような場をつくればよいのか。学生たちの創意工夫力が試されました。結果的に独自のルールのスポーツやゲームを考案し、当日は子供たちの溢れんばかりの笑顔を見ることができました。学生たちは、企画・準備・運営の一連をグループで責任をもって担ったことで、マネジメント力やチームワークの向上といった成長を得られました。

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