近年の国内市場は,アベノミクスやインバウンドによる爆買い効果などから景気回復といわれています。しかし,その実体は顧客ニーズの成熟化や多様性が進み、さらには、少子高齢化の進展、人口の減少により経済の活力も弱まり、消費は低迷しているといえます。その中で、企業は顧客満足(以下 CS)を勝ち得て、消費者から選ばれる存在になることが勝ち残る条件となります。ショッピングセンター(以下 SC)の場合は、テナント店舗で働く従業員満足(以下 ES)に問題があるとSC全体でのCS向上は難しく、売上に大きな影響を与えます。一般的に、ESが高まれば、顧客に優れたサービスが提供され、CSが高まるという関係性があります。このESから生まれる良循環サイクルをサービス・プロフィット・チェーン(以下 SPC)といいます。
 本ゼミでは、SCにおけるSPCの現状に着目し、運営母体であるディベロッパーと出店テナントへのフィールドワークをとおして、さまざまな課題と問題点を抽出させ,その解決への提言をおこなうことを目的としました。先ず,5月から27名のゼミ生を5チームに編成し,チーム単位で研究活動をおこないました。フィールドワークは,提言先であるルクア大阪をはじめ,天王寺MIO,心斎橋OPAなど11か所で実施しました。11月に5チームのプレゼン発表会をおこない,議論を重ねながら,課題発見とその提言をひとつにまとめ上げました。最終的に代表6名が提言先であるルクア大阪を運営するJR西日本SC開発株式会社様へ提言書を提出し,高い評価を得ることができました。提言書の主な内容は以下の通りです。

CS:(1) リペアサービスの充実,(2) 休憩スペースの効率化,(3) オムニチャネルの充実,(4) ハウスカードのサービス向上

ES:(1) 従業員休憩室の改善,(2) 従業員食堂の設置,(3) 従業員特典の充実,(4) 託児所の開設,(5) カルチャースクール開講

大村キャリアゼミ 活動報告写真

  • ① 商業施設へのフィールドリサーチ

  • ② PC教室でのチーム別プレゼン

  • ③ ルクアイーレ営業本部担当者へのプレゼン

  • ④ JR西日本SC開発株式会社様へ提言書提出

参加学生一覧

石井佳綾、石原令奈、大山加菜、奥野菜月、加藤瑛美、木村紗耶佳、久保山文菜、小杉遥、島田凪紗、曽根真希、高井美里、中内彩乃、中川愛梨、中熊萌、中谷皓平、中村千聖、西野杏菜、橋本まりあ、初川将弘、馬崎瑞希、古屋悠果、細田みのり、前田明日香、松岡成美、松岡真央、柳川拓哉、恩智彩

学生の感想

流通学部 加藤 瑛美

 キャリアゼミに際して、私はゼミ長として全員をどのようにリードしようかと考えました。先ずは27人という大人数のゼミのため、5チームに分け、各チームにニックネームをつけて、仲間意識を持つように工夫しました。次に、顧客満足と従業員満足の定義やSC業界の現状を調べることから本格的に活動がスタートしましたが、調べると色々なことが分かり、事前学習の重要性が理解できました。フィールドリサーチは、ルクア大阪へ何度も足を運び、お客様や従業員の満足についての実態調査を行いました。また、天王寺ミオや心斎橋オーパ、京都BALなどでも調査を行いました。これだけ多くのSCを見ていくと、自然に各SCの差別化戦略やテナント誘致の違いなどが分かります。調査の重要性が再認識出来ました。そして5チームの調査結果をもとに皆と話し合って、新しい提案を提言書としてひとつにまとめ、JR西日本SC開発?営業本部リーダー舟本様にプレゼンをさせていただきました。舟本様からは、お褒めと適格なアドバイスをいただき、感謝申し上げます。今回の貴重な経験を今後の就職活動などでの糧となるよう、日々頑張っていきたいと思います。

教員のコメント

流通学部 大村 邦年 教授

 本ゼミは、SCの顧客満足と従業員満足の関係性にスポットをあて,学生目線による課題発見からその解決策を提案させることを目的としました。ゼミ生27名という大きな組織では,活動に際して,「共通認識」「役割分担」「コミュニケーション」が重要なポイントとなります。活動はフィールドリサーチを重視し,5つの小グル—プに分かれて,グループ単位で自ら事前学習とキャスティングを考え行動し,課題発見とその解決策を試行錯誤で考え抜きました。グループ発表会では,起承転結のストーリー性あるプレゼンテーションを念頭に,相手へ伝えるスキルが身についたようで,素晴らしい内容でした。最終段階のグループ合同会議では議論を重ねながら,5グループの提案内容から1つの提案へと苦労しながらまとめ上げることができました。ゼミ生は、協働と議論から生まれるチーム力や深く考え抜くことの重要性を肌で感じたと思います。これらの活動プロセスを経て,企業(JR西日本SC開発)様へSCの顧客満足と従業員満足に関する提案に到達したことは,今後のさらなる成長への重要な経験価値になったと確信します。